残りわずかの命であると自覚している92歳の老女、藤崎松恵は、それまでの人生を振り返る。
両親のどちらにも似ず、美しく生まれた娘・奈緒子。それ故に、夫は本当に自分の子供なのかと疑ったままだった。
かつて曾孫・東真が幼い頃描いてくれた、焔のような柿の絵を気に入り、額に入れて飾っていたのだが、いつの間にか彼自身が持ち去ってしまった。その絵を再び見たいと願う松恵は、柿の絵を描いて欲しいと言い残して……序章 葬送の唄、
亡くなった曾祖母が言い残した、絵を描けという言葉。しかし、彼は付き合っていた恋人・瑞樹映子が描いた絵を見て、自分の凡庸さを痛感し、もう描かないと決めていたのだった。
そんな中、映子が彼の元へやってきて……第一章 風の唄、
義祖母が亡くなり、その祭壇に飾る為の竜胆100本を、義母が花屋に注文している場面に遭遇し、女王のようだと感じる美代子。
そんな彼女の姉・早季子は子供の頃に交通事故で亡くなり、母はずっと美代子の影にその姿を見ていた。姉の死から10年が経ち、美代子の成人式の振袖を選ぶことになり、母と出かけた彼女。その場では決められず、再び選びにいく展示会の時に、姉ではなく自分でいいのかと問うつもりだったのだが、両親はその前日に事故で他界。宙に浮き、幻のまま落花したその思いに答えてくれたのが、夫・充であり、義祖母だった……第二章 竜胆の唄、
小波渡史明が働く長谷生花店に、竜胆100本が欲しいという無理な注文が舞い込んだ。その竜胆は藤崎松恵の葬儀に飾られるものだと聞き、彼がこの店に就職する前に出会い、助けられた、3年近く前のことを思い出す。
彼を妊娠中に捨てられた母は精神が不安定になり、出産後自殺、祖母に育てられた小波渡。ずっと愚痴られ続ける成長した彼だったが、生まれてこなければと言われ、思わずナイフで祖母を刺してしまう。しかし、祖母は自殺としてその事実を隠蔽してくれ、小波渡は一人残された。その後、コンビニをクビになり、仕事もなく腹を空かせていた彼は、知らずに松恵の作った牛肉の甘露煮に引き寄せられていて……第三章 遥かなる子守唄、
和箪笥から喪衣を取り出した奈緒子は、その樟脳の匂いで、ふとそれにまつわる過去を思い出す。
姉・美恵子の小さくなった振袖を、母から着せられた奈緒子。しかしそこへ現れた、姉は自分の着物を盗ったといい、諍いに。聞く耳を持たず、そんな姉の味方につく父に疎外感を受ける奈緒子。
そんな思いもある所為か、美貌に恵まれつつも、つねに愛を求め続ける彼女は、夫・伸人ともうまくゆかず、離婚していたが、そんな彼が母の葬儀にやってくるという……第四章 大樹の唄、
鮮やかな青空の下、行われる松恵の葬儀。人々はさまざまな思いを抱いて……終章 金色の野辺に唄うを収録。
92歳で天寿をまっとうする松恵と、いろんな屈託を抱えるその周囲の人々との心の軌跡を描いたお話。
温かく包み込むような松恵さんの存在感と、ラストで描かれる光景の美しさが印象的でした。
<08/8/27>
両親のどちらにも似ず、美しく生まれた娘・奈緒子。それ故に、夫は本当に自分の子供なのかと疑ったままだった。
かつて曾孫・東真が幼い頃描いてくれた、焔のような柿の絵を気に入り、額に入れて飾っていたのだが、いつの間にか彼自身が持ち去ってしまった。その絵を再び見たいと願う松恵は、柿の絵を描いて欲しいと言い残して……序章 葬送の唄、
亡くなった曾祖母が言い残した、絵を描けという言葉。しかし、彼は付き合っていた恋人・瑞樹映子が描いた絵を見て、自分の凡庸さを痛感し、もう描かないと決めていたのだった。
そんな中、映子が彼の元へやってきて……第一章 風の唄、
義祖母が亡くなり、その祭壇に飾る為の竜胆100本を、義母が花屋に注文している場面に遭遇し、女王のようだと感じる美代子。
そんな彼女の姉・早季子は子供の頃に交通事故で亡くなり、母はずっと美代子の影にその姿を見ていた。姉の死から10年が経ち、美代子の成人式の振袖を選ぶことになり、母と出かけた彼女。その場では決められず、再び選びにいく展示会の時に、姉ではなく自分でいいのかと問うつもりだったのだが、両親はその前日に事故で他界。宙に浮き、幻のまま落花したその思いに答えてくれたのが、夫・充であり、義祖母だった……第二章 竜胆の唄、
小波渡史明が働く長谷生花店に、竜胆100本が欲しいという無理な注文が舞い込んだ。その竜胆は藤崎松恵の葬儀に飾られるものだと聞き、彼がこの店に就職する前に出会い、助けられた、3年近く前のことを思い出す。
彼を妊娠中に捨てられた母は精神が不安定になり、出産後自殺、祖母に育てられた小波渡。ずっと愚痴られ続ける成長した彼だったが、生まれてこなければと言われ、思わずナイフで祖母を刺してしまう。しかし、祖母は自殺としてその事実を隠蔽してくれ、小波渡は一人残された。その後、コンビニをクビになり、仕事もなく腹を空かせていた彼は、知らずに松恵の作った牛肉の甘露煮に引き寄せられていて……第三章 遥かなる子守唄、
和箪笥から喪衣を取り出した奈緒子は、その樟脳の匂いで、ふとそれにまつわる過去を思い出す。
姉・美恵子の小さくなった振袖を、母から着せられた奈緒子。しかしそこへ現れた、姉は自分の着物を盗ったといい、諍いに。聞く耳を持たず、そんな姉の味方につく父に疎外感を受ける奈緒子。
そんな思いもある所為か、美貌に恵まれつつも、つねに愛を求め続ける彼女は、夫・伸人ともうまくゆかず、離婚していたが、そんな彼が母の葬儀にやってくるという……第四章 大樹の唄、
鮮やかな青空の下、行われる松恵の葬儀。人々はさまざまな思いを抱いて……終章 金色の野辺に唄うを収録。
92歳で天寿をまっとうする松恵と、いろんな屈託を抱えるその周囲の人々との心の軌跡を描いたお話。
温かく包み込むような松恵さんの存在感と、ラストで描かれる光景の美しさが印象的でした。
<08/8/27>
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