黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『ヴェネツィアの恋人』高野史緒(河出書房新社)

2013-03-10 | 読了本(小説、エッセイ等)
日本から、東欧のある小都市の音楽院の講習会に参加していた女性ヴァイオリニストの<私>。しかし自分が井の中の蛙であったことを思い知ることとなり、傷心のままパリへと流れてきた。
モンパルナスの駅で降りた私は、ホテルに滞在するが、その部屋で聴いた音に心惹かれる。誘われるようにヴァイオリンを弾いていた私は、ヴァイオリンのコレクションを趣味とするホテルオーナー・ラザレフに気に入られるが……“ガスパリーニ”、
マダム・カペーこと王妃マリー・アントワネットが断頭台の露と消えてから2ヶ月。
パリの法学校を卒業し、6年ぶりに帰郷したヴィクトールは、安酒場でムッシュウ・カペーこと元国王ルイ十六世そっくりだという噂の錠前屋の男を見て驚く。
その錠前屋は、半年ほど前、どこからともなくやってきて町はずれに居着いたという。身の回りの世話をする薄ら馬鹿を連れて、酒場に現れるが、自分は何も食べようとはしない。
ヴィクトールは、ムッシュウ・カペーの身代わりが存在するという青本で読んだ筋書きを思い浮かべるが……“錠前屋”、
ロシア平原のど真ん中。モスクワから東北方向に四時間半の町、スズダリ。
スイス人医師である私は、スズダリの北のはずれにあるスパソ・エフフィミエフ修道院の僧房に付設された精神病棟に、治療と自説の研究のためにチューリヒからやって来た。そこには、いくつもの大きな鐘を一人でつくことのできる男・イワンがいた……“スズダリの鐘つき男”、
カザフ共和国の首都アルマ・アタ。カザフ大学の歴史学科助教授であるワレリー・イワノヴィチ・セリョツキーは、失われた黄華文字について研究している。
そんな彼の元にある日、戦略ミサイル軍のカジェゲリジン中将と秘書めいた男がその専門分野について話を聞きに訪ねてきた。しかし男は秘書ではなく、実際は音楽院こと軍事外交アカデミーの、参謀本部情報総局のエリート、カスイムジョマルト・アバイェヴィチ・ウテムラトフ。
翌日、たまたま彼に再会し車に乗せて貰ったセリョツキーだったが、その夕刻ウテムラトフのその車は、激突して大破して、死亡。
その後、周囲でたびたびおかしな事件が起きて……“空忘の鉢”、
占い女に、その時そのものを取り戻したいと願ったアンドレアス。願いを叶える条件は一つ。
四十年以上前にマルセイユの劇場で、群舞を舞う踊り手の一人だったヴィオレッタ。かつてプリマに帯同して行ったヴェネツィアの劇場で、台本作家の若者アンドレアス・ホルツァーとつかの間恋に落ちたことがあったと告げられるが、何故かその記憶は失われていた。
取り戻したいと占い女に願ったヴィオレッタに、あなた自身の芸術に捧げるのが条件だと告げられる……“ヴェネツィアの恋人”、
バイエルン王国の王ルートヴィヒ二世。ワグナーに会いたいと切望していたが叶えられない彼は、密かに王宮を抜け出し、祝祭歌劇場を探して彷徨う。
その途中で、男装の少女パルジファルに出会い……“白鳥の騎士”、
1952年夏、レニングラード。理科の教師であるアマチュアチェロ奏者ニーナは、昨年知り合った音楽院の教授、ロシア共和国人民芸術家にしてレーニン勲章受賞者であるショスタコーヴィチに見込まれ、ソ連作曲家同盟の保養所<音楽家の家>で開催される、才能ある市民音楽家のためのキャンプに参加することになった。
そこに集められたのは、二十七人の市民音楽家と六人の音楽院教官、助手役を務める七人の音楽院生。その助手の中に、ニーナの母方の親戚である少女・マルガリータの姿を見出したが、すっかり老成し、成熟した女の色香を漂わせる彼女に驚く。
そんな中、音楽院の校医であるエフゲニー・エミリエヴィチ・ジューコフというイワノフスキー記念病院の青年医師に声をかけられたニーナ。
感染症の治療や研究が専門であるジューコフ曰く、マルガリータは二年ほど前に授業中に高熱を出し倒れた後、女性的に変化したという。他でも突然そういった状況に陥る例があったというのだが……“ひな菊”の7編収録の短編集。

異国情緒と音楽あふれる幻想小説短編集。
めくるめくあやしい世界が展開されて、素敵でした♪

<13/3/10>



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