黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『東京へ飛ばない夜』ラーナ・ダスグプタ(ランダムハウス講談社)

2009-05-19 | 読了本(小説、エッセイ等)
東京へ向かっていたジャンボ機・ボーイング747機。しかし、東京が記録的な吹雪に見舞われ、とある国に臨時着陸することに。おりしもその国では、国際博覧会が開催されており、ホテルはどこも満室。
それでも何とか323名の乗客のうち、310名分の部屋は確保できたのだが、13名だけがあぶれてしまい、閑散とした夜の空港で過ごすことに。そんな中、ひとりの男の発案により、飛行機が出発する翌朝まで、皆でそれぞれ物語を話す、夜話を始める……

どこにでもあるようなのどかな国。
ある夏、小さな町を訪れた王子・イブラヒムは、そこに住む仕立屋・ムスタファに、服の仕立を依頼する。豪華な素材を取り寄せ、古い文献を研究し、数年後に服を完成させたムスタファは、王子の元へ持っていったのだが……第一話 仕立屋、
ロンドンの裕福な株式仲買人の、三番目の息子として生まれたトーマスは、ふたりの真面目な兄とは違い、空想好き。そんな彼は、ある日図書館で出会った老婆から、予言めいた言葉を告げられる。
やがて成功した父はさらに金持ちになるが、そんな彼の不興を買い、家を出ることになったトーマス。
町で声をかけられたジョーという女性から、遠からず人々が“集団健忘症”にかかり、記憶力がなくなってしまうこと、そしてそれに備えて、さまざまな記憶データの中から思い出をパッケージ化して売るという計画を聞く。唯一記憶を失わない彼は、その膨大な記憶データから、トラウマになるような映像を取り除く作業を依頼され……第二話 過去をつむぐ男、
巨大な企業グループを所有し、インドでも有数な大金持ちラジブ・マルホトラ。ボリウッドのスーパースター、ミラ・サルダリと結婚し、なに不自由ない幸福な人生だと思われたが、彼には眠ることができないという悩みがあった。
ゆえに子供ができなかった夫婦は、知人のスティーブン・ホール博士の手を借り、ようやく子供を授かった。しかし生まれてきた男女の双子のうち、男の子は異形の姿。ラジブはその子供を密かに捨て、残った娘・サプナだけを育てることにした。しかし彼女には生命力を増幅させる力があり、それ故に幽閉されて暮らすことに。
一方、捨てられた子供は、イムランと名付けられて育てられ……第三話 富豪の眠れない夜、
ドイツのフランクフルトに、クラウス・カウフマンという地図制作者がいた。
ある時、トルコへ出かけた彼は、砂漠で行き倒れになっているところを老婆に救われる。老婆は、自分の娘・デニズを彼の妻にしてくれるようにと頼む。彼が帰国後、デニズは彼の館を訪れ……第四話 地図屋の館、
ロバート・デ・ニーロが旅先で中国人の女と関係を持ち、子供ができた。しかし他に家庭を持っていた女は、男の赤ん坊を産み落とすとすぐに捨て、彼はポーランド人に拾われ、パヴェルと名付けられる。
その後、ブルックリンの水族館で働く、彼同様数奇な生い立ちの女性・イザベラと知り合ったパヴェルは、恋人同士に。
そんな彼らは、魔法のオレオクッキーを手にし、店に変身できる能力を得る。そこで売られる洋服が評判をよび、マンハッタンの人気ブティックとなったイザベラ。ふたりは大金を手にするが……第五話 店、
ナイジェリアのラゴス島にマルボロという青年がいた。高架下に育ち、ずっと家にいて人々から様々な相談を受けるようになった彼。
そんな彼は、近隣のマーケットを独占しようとする大物実業家キングロード・ボンバータ氏の為に働くことになったのだが……第六話 高架下の少年、
デトロイト郊外の大きな家に住んでいたザックとマリーの夫妻。ふたりには、バイク好きな息子のマットと娘のジャスティンがいた。
ある日、家の前に不必要と思われるスピード防止帯が設置されることになったが、その作業は一日では途中のまま翌日に持ち越されることに。ところが……第七話 ちょっとしたこと、
ごく普通の家に育ったユキオは、ノバルティス日本支社で働き、昇進。やがて取引先であるマッキンゼーのコンサルタント・ミナコと知り合い、恋人に。しかし彼女の父は日本を代表する不動産開発会社を経営するヨネカワ・ヨシハル。身分違いを反対されながらも、何とか結婚したふたりだったが、仕事の忙しさからすれちがいの日々。
ひょんなことから等身大のリアルドールを自作したユキオは、彼女にユキコと名付け……第八話 東京ドール、
イスタンブールのラーレリ。
トルコの女商人・ナタリアは、そこでバングラデシュから来た船乗り・リヤドに一目ぼれするが、彼がこの地に留まるのは一日限り。次に来るのは6ヵ月後の1月だという彼と、再びこの地で再会することを約束したナタリアだったが……第九話 イスタンブールの逢瀬、
人間に酷似している“チェンジリング”という種族。永遠の命を持つ種族ゆえに、パリ市民の多くは彼らを嫌っていた。そのチェンジリングである男ベルナール・デュソリエは、人間である妻・クレアにその正体がばれてしまい、家を出た。そんな彼は町を放浪している中で、余命いくばくもない老人・ファリードに出会う。
根本的な部分にある静寂を覆う言葉を、彼の代わりに探すことにしたベルナール。そんな中、天然痘が流行し、パリが封鎖されることに……第十話 チェンジリング、
ポーランドの小さな町・ビトム。もともと子供が欲しくなかった夫・ヴィトールは、妻の留守中に1歳間近の娘・キャティヤを内緒で捨ててしまう。その後、近くの町・カトヴィツェで拾われた彼女は、母の仕事である仕立て屋を手伝うようになるが、人の心を読むことに長けた彼女のおかげで繁盛。
しかし自分が実子でないことを知った彼女は、ワルシャワに働きに出る。そんな彼女は、自分の能力を活かし、有力者たちが集まる地下クラブで働き始め……第十一話 地下室の取引、
湖南省にある小さな村に、暁松という青年がいた。彼は幼い頃に父と共に高熱を出して一度埋葬されかけたが、奇跡的に息を吹き返して生還。その後、幸運の持ち主として知られていた。
そんな彼は、家の近くで髪を切り、耳掃除をする仕事をしている中で、音放という少女と恋人同士に。
しかしいつまでも田舎に留まるのではなく、都会である深圳に行くようにと母に言われた彼は、その地を離れる。
これまでと同じように床屋として働き始めた彼は、ある日、客としてやって来た呉氏に認められ、彼が支配人を務めるコンピュータ製造会社で働きはじめて、どんどん出世。
ところが、ある形が彼の目の前をちらつき始めてからというもの、仕事が手につかなくなり……第十二話 幸運な耳掃除屋、
ブエノスアイレスに映画をこよなく愛する男・グスタポがいた。彼は娯楽チャンネルを配信するサービスを始めて、多くの映画を紹介し繁盛していたが、経済恐慌がやってきて事業は傾き、店をたたんだ彼は奇妙な夢を見る。
その夢の中で、彼は夢を譲ってくれる人間を募集。13の夢が集まりそれを1つの夢に編集したテープを作り、ケーブルテレビで放送することに……第十三話 こんな夢をみた を収録。

とある国の空港で一夜をすごすことになった13人が語る、ちょっと奇妙な物語。
いろんな国のいろんな話で、特に統一性はなく、まとめて語られることに対するオチもない(百物語っぽくなるのかなぁと思ったのですが/笑)。
最後にボルヘスっぽい話を持ってきているあたりが、全体として幻想テイストなのかなぁという気はするのですが、もうちょっとひねりが欲しいかも(意図したことなのか、語っている人たちの存在感が妙に希薄過ぎるし)。

<09/5/18,19>


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