黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『制服捜査』佐々木譲(新潮社)

2009-05-12 | 読了本(小説、エッセイ等)
北海道警で起きた不祥事のあおりを受け、捜査1課から十勝平野に所在する志茂別の駐在所に異動させられた、川久保篤。
赴任して4日目の夜、町営墓地で誰かが喧嘩しているようだと通報を受けるが、防犯協会の会長・吉倉ら町の有力者3人に執拗に勧められ、酒を飲んでしまっていた川久保は答えに窮するが、その場は、吉倉が通報者に話をつけて、場は収まった。
翌日、山岸明子が高校生の息子・三津夫が、昨日から出かけたまま戻らないと駐在所に知らせてきた。出かけたといった友人・上杉の家を訪ねた川久保だったが、来ていないとの返事。そんな聞き込みの中で、彼らは友人関係というよりも使い走りのような関係だったとの証言を得る。
その翌朝、三津雄が遺体となって発見されたが……『逸脱』、
酪農家・大西の放し飼いにしていた飼い犬が、猟銃で射殺される事件が発生。至近距離から散弾銃で撃たれており、顔はなくなっていた。
近所に住んでおり、猟銃を所持する篠崎征男の元を訪ねた川久保。篠崎に訊いたところ、大西の犬を知らないと証言するが、後に彼が犬の存在を知っていたこと、そして篠崎の牧場で働く中国人研修生の扱いに関係し、大西ともめていたという。
そして2日後、篠崎征男の息子・章一から、父親が血まみれで倒れていると通報が。研修生たちは車と共に姿を消していた為、彼らが篠崎を殺害したものと見られたが、川久保は納得できず、独自に聞き込みを始める……『遺恨』 、
子供が恐喝されているという連絡を受け、現場に向かった川久保。しかし彼が到着した時には既に誰もおらず、通報者に確認すると、そこにたまたまいた見慣れぬ男が口を挟んで、助けたのだという。その男は、大工の大城。前科者ではあったが、真面目な男だと判明する。
その後、Aコープの店長から万引の連絡を受けた川久保。万引をしたのは、先の恐喝の被害者であった少年・山内浩也だった。母の再婚相手である義父に半ば虐待のような扱いを受けている彼は、空腹のあまり万引をしてしまったのだという。
そんな浩也を大城の元に預け、大工の見習いをさせながら、仕事をすることを覚えさせることにした川久保だったが……『割れガラス』、
町で、不審火による火災が続発。川の付近には浮浪者や旅行者などがおり、彼らの中に犯人がいるのではないかと疑う、防犯協会メンバーの大路ら。
不審火のあった4件の中で、冷蔵庫から2回食べ物が消えている事から、犯人が空腹なのではないかと推測、しかし町の合併推進派だった人物所有の建物も被害に遭っており、そちらの可能性も考えられる状態だった。
住民たちの中で、夜回りをするという話が持ち上がるが、同日、本部の捜査員が密行することになり、川久保は理由を明らかにすることなく、住民たちを夜回りさせないようにと言い渡される。そしてその晩、再び火の手があがり……『感知器』、
夏祭りの折、別荘で滞在中だった横浜の少女・大月亜矢香が仮装盆踊りの最中に失踪し、未解決となっていた事件から13年。
それ以来中止されていた、仮装盆踊りが今年から復活されることとなり、不安を抱く川久保。そんな彼は、会場である広場で、事件当時の駐在であった竹内と、亜矢香の母である大月夫人と出会う。
当時の状況について話を聞いた川久保は、その事件の背景に住民と警察との間に生じた軋轢があり、少女を捜索する上で悪影響を及ぼしたのだと知る。
そんな中、13年前同様に少女が失踪。しかもその頭には、亜矢香がつけていたものと同じティアラがあり、かつての事件との関わりもあるらしい。その捜索を急ぐ川久保だったが……『仮装祭』の5編収録の連作短編集。

北海道警で起きた癒着による事件による不祥事により、その事態を防ぐ為、同じ人物を同じ場所に長期間勤務させないという方針の下、捜査1課から畑違いの小さな町の駐在所勤務に飛ばされた川久保さんが、一見平和そうに見える町に蔓延る荒廃の陰と立ち向かうお話。
捜査権がない(…んですね駐在さんって)故の自分の無力さを感じながらも、何とかしようとする姿が格好良いです。

<09/5/12>



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