黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『人形遣いの影盗み』三木笙子(東京創元社)

2011-03-19 | 読了本(小説、エッセイ等)
芸者・花竜が出入りしている、新橋の御茶屋・びいどろの女中が先月失踪した。美奈子という名で、歳は十七。勤め出して三年だったという。花竜は、周囲には内緒で、神田にほど近い日本橋の私塾・長澤塾に通っており、そこに圭子という長野出身の普通の友人もいる。そんな塾の出身で電話交換手をしている、高田芳子は、接点のないはずの圭子をどこかで見た記憶があるという。その圭子は、花竜に「急に近づいてきた人がいたら、その人のいうことを聞いてはだめ」と謎めいた忠告をする。そんな中、びいどろの女中・お清が、びいどろに行けば、好きな学校に入れてもらえるという噂が流れていると聞いてきて……“第一話 びいどろの池の月”、
雑誌記者・里見高広が暮らす、京橋区南紺屋町にある静修館は、評判のいい下宿屋ながら、とある筋からはひどく恐れられてもいる。大家の梨木桃介は、年は礼たちとさほど変わらない青年ながら、無類の世話好きで家事万端を見事にこなす。徹底的な実際家で、天才絵師である有村礼の絵にも関心を示さず、金持ちの御曹司が部屋を借りたいとやってきても、断ってしまう人物。
そんな静修館の屋根の修理費用捻出の為、桃介が作っている野菜を売ることになり、そのための店番を募集していたのだが、その貼り紙をみて愛川という人相の悪い男がやってきた。その男と、下宿を訪れていた礼、さらに居合わせた保険屋らしき男・竹下の三人は食事をご馳走してもらい、その代わりに、下宿の掃除を手伝うことになったのだが……“第二話 恐怖の下宿屋”、
礼が、師匠の画家・嵯峨の代わりに絵を教えに行っている華族の令嬢のところから、姿を消した彼女の兄が島流しになった、という話を聞いてきた。その話を受けてきて、いつものごとく調査に乗り出すことになった高広は、詳しい話を聞く為、礼とともに乃木坂の屋敷に赴くことに。
彼女は、松平伯爵の妹・雛で、現在は次兄の顕昌が爵位を継いでいるのだが、いなくなったのは、昔から慕って、心の支えとしていた長兄・顕芳。彼が姿を消す前、顕昌と船が沈む云々という言い合いをしているところをたまたま聞いてしまった雛。それから九年、もうすぐ結婚させられそうだという雛は追い詰められ、家捜しの末、島の地図を見つけたことから、長兄が島流しにあったのではという疑念を抱くに至ったのだという。
そんな雛の話では、兄二人はさほど仲が良くはなかったというが、昔を知る嵯峨によると仲の良い兄弟だったという。さらに世評では冷酷だという噂の顕昌を、やさしい人だという乃木坂の屋敷で働くふみ。
やがて顕昌がある寺へ墓参りに行っていることを知った高広は……“第三話 永遠の休暇”、
礼の噂をを聞いているかと、情報屋の佐野徹平に問われた高広。どうやら、新富町の『三星楼』という柄の悪い料理屋に、彼が出入りしているという噂があるのだという。そこで、ふたりの男たち…日本人と英国人と会ったらしいのだが、その英国人の名前は…“Sidney Edward Paget”だと聞き、驚く高広。
三星楼を探るべく、出入りの水菓子屋に扮して佐野とともにもぐりこんだが……“第四話 妙なる調べ奏でよ”、
司法大臣である養父・里見基博に呼び出された高広。政友会の実力者である田無和盛の奥方が、影を盗まれて寝込んでいるのだという。元々、その話を聞いて来たのは養母・よし乃。
先月の終わり、芝居好きな現当主の招きで、大和製糖の仁井田の屋敷に、友人たちと出かけた田無夫人。そこで謎の老人に出会ったという。
爪哇から来た伝統芸能のワヤンと呼ばれる幻惑的な影絵芝居の一座の長だという、彼に何故か影を盗まれたと思い込んでいるらしい。
その怪事件を調べることになった高広。どうやらその一件には怪盗ロータスも絡んでいるようで……“第五話 人形遣いの影盗み”の五話収録。

明治時代の帝都・東京を舞台に、ホームズ好きの美形天才絵師・有村礼と彼の友人である雑誌記者・里見高広が謎を解くミステリ。<帝都探偵絵図>シリーズ第三弾。
一話は花竜視点(ちゃんと二人も出てきます)。四話は短い話で、微妙に拍子抜けな内容ですが、礼の為に一生懸命な感じの高広が何気に微笑ましいです(笑)。

<11/3/19>


最新の画像もっと見る

コメントを投稿