黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『クローバー・レイン』大崎梢(ポプラ社)

2012-06-27 | 読了本(小説、エッセイ等)
老舗の大手出版社・千石社で文芸部で働く編集者・工藤彰彦。異動3年目ながら売れっ子作家も担当しており、順風満帆。
そんなある日、自分が担当する作家ながら、これまであまり関わりのなかった作家・家永嘉人とある賞のパーティで出会い、言葉を交わす。成り行きから、酔った彼を自宅まで送り届けた際に、未発表の原稿『シロツメクサの頃』を読み、その内容のすばらしさに感銘を受けた彰彦は、是非とも自らの手で本にしたいと、家永からその原稿を預かるが、何故か家永自身は、千石社から出版するのは無理だと、あきらめている様子。もし駄目ならば早目に教えて欲しいと頼まれる。
その理由は後に明らかとなる……過去には良い作品を発表しつつも、次第に作家として埋もれていった家永。そんな彼の作品を出版するには、何等か話題性が必要で、すぐに出版のOKは出せないらしい。
さらに新たな問題も発生。作品で重要な意味を持つ詩は、作者の許可を得ずに引用したものだというのだ。その作者は、疎遠になっている家永の娘・冬実。彼女の許可を得るべく会いに出かけるも、けんもほろろの対応に、とりつくしまもない。
さらにやり手営業マン・若王子とのいざこざ、他出版社からの牽制、そんないくつものハードルを越えつつ、奔走する彰彦だったが、そんな彼にはどうしてもその本を読んでほしい人物がいて……

『プリティが多すぎる』と同じ出版社・千石社が舞台。自分が惚れこんだ作品を出版すべく、奔走する若手編集者・工藤くんのお話。
いい作品だからといって、必ずしもすぐに出版できるわけではない等、シビアな出版界の現実が描かれていますが、さりげに彼をバックアップしてくれる人たちも魅力的。
編集者は第一の読者でもあるわけで、ここまで思い入れられる作品に最初に出会えるのは冥利に尽きるでしょうね~。
是非この位の熱意を持って、現実の編集者さんたちにも素敵な作品を世に送り出す手助けをしていって欲しいなぁ、と思いました。

<12/6/27>


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