黒猫書房書庫

スイーツ多めな日々です…。ブログはちょー停滞中(´-ω-`)

『トネイロ会の非殺人事件』小川一水(光文社)

2012-05-09 | 読了本(小説、エッセイ等)
日本宇宙機構(JSA)の閉鎖環境長期滞在実験施設<BOX-C>実験に参加した、さまざまな分野から選ばれた六人……蓮台美葉流、泉耀介、児玉有果、国崎勝利、久保田正孝、そしてリーダーの江綱守人。
BOX-Cは、月面基地建設を見据えて作られた練習用の月面基地で、そこでの行動から月基地に派遣される二名が、六人の中から選ばれることになっている。
だが八ヵ月にわたる生活の中、優秀ながらも人の仕事に口を出す美葉流の存在が、人々の中に微妙な空気を作り出してしまっていた。
その最後を締めくくる為のパーティでもひと悶着あり立ち去った彼女が、その夜ピットで窒息死しているのが発見される。警察を呼ぶと、月基地計画自体の存続が危うくなる為、何とか自分たちだけで事態を収拾しようと、犯人に名乗り出るように呼びかけるも反応はない。
やむを得ず、皆で誰が犯人たり得るのか検証することになり……『星風よ、淀みに吹け』、
母・藤が亡くなった後、介護施設・三宝園で学費を出してもらいながら住み込みのバイトをしている女子高生・石沢花螺。認知も断り、一度も会ったこともなかった実父であった資産家・伊瀬山礼三が亡くなる寸前、伊瀬山の使いだという男…花螺の従兄妹・多岐廉次よりその枕元に連れてこられた。そこで彼女が目撃したのは、死にかけの伊瀬山が、居並ぶ人々ににこやかに財産を分け与える奇妙な光景。そこで花螺は、伊勢山が住んでいた橡屋敷を遺される。
多岐曰く、それは<くばり神>といい、伊瀬山に住んだことのある資産家によく起こることで、長生きした末に亡くなった人が財産を皆に配ってしまう現象だという。
しかし、これまで彼女たち母娘に何もしてこなかった伊瀬山のそんな行動に、納得のいかない花螺はくばり神について調べることに……『くばり神の紀』、
一代一人という恐喝者に弱みを握られ、それぞれの生活が壊されてしまった十人……元准教授の静歌、未亡人のほとり、バス運転手・皓一、アスリートの翔子、女子高生の沙夕良、外構工事人・雄大、雇われパチンコ店長・悦耶、元事業家・始、僧侶の守吉、ペンションの主人・風太郎が結集。あるミステリのひそみにならい<トネイロ会>と名付けた会を作り、風太郎の所有するペンションに一人を呼び出した上で、彼を殺害する計画を立てた。
それは、眠らせた一人に縄をかけ、皆が下げた水を入れたペットボトルの重さで、じわじわと首を絞めていくというもの。誰が死に至らしめた瞬間のボトルを下げたのかはわからないように、それぞれ他人の行動に干渉しない方式を採った。
翌朝、計画は完了し、皆が成功を祝う中、ペットボトルが一本だけ空になっていることが明らかとなる。彼らの中で、ただひとり実行しなかった“非犯人”は誰なのか……『トネイロ会の非殺人事件』の3編収録。

ミステリ3編。前2編はちょっとSF的。
トネイロって何?と思ったのですが、何気に表紙と裏表紙で一目瞭然でしたね(笑)。

<12/5/9>