Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

MicrosoftのAPI技術資料公開に思うこと

2008-02-22 23:59:59 | Thinkings

 リチャード・ストールマン氏やリーナス・トーバルズ氏の様な、オープンソース・コミューンの人たちの最大の敵と言えば、やはりMicrosoftでしょう。WindowsにOfficeという、世界最大のプロプライエタリ(オープンでない)ソフトウェアを有す同社は、コミュニティにとってもっとも攻撃”しやすい”存在です。

 しかしながら、オープンソースコミュニティの最大の拠り所であるLinuxベンダー各社(Novel、Xandros、etc.)と積極的な提携を始めたり、FireFox開発チームと接触を求めたりと、最近は関係を緩和させているように思われます。

 そして今回、それをさらに進めるかのような発表が成されました。
 WindowsやOfficeで使われているAPI(外部アプリケーションから機能を使うための命令セット)の技術資料のうち、特殊なものに関しては、同社とライセンスを結ばないと使うことが出来ませんでした。しかし、無償での利用に限り、技術資料の無償公開に踏み切ったのです。これによって、「非営利」オープンソースコミュニティは、WindowsやOfficeについて、より競争力のある製品を開発、配布できるようになったわけです。

 これで、オープンソースコミュニティに大きく歩み寄った様に思われますが、もちろん同社の企業戦略はしたたかです。

MSの新たなオープンソースの約束:但し書きを読む ZD NET

  Microsoftがオープンソース開発者を提訴しないという約束は、同社の特許で保護されたプロトコルやインターフェースを非商業的に利用している開発者にしか適用されない。換言するとMicrosoftは、Red Hatやその他のLinuxベンダーに特許保護協約に署名させようという取り組みを断念するわけではないのだ。

 簡単に言えば、コミュニティーや個人など、趣味やボランティアでやっている活動については無償で技術資料を公開する。しかし、StarOfficeを発売するSunや各種セキュリティベンダーなど、商業目的での利用に関してはきちんと提携してくれと言っているのです。これはオープンソースコミュニティにとっては大きな前進であるし、Microsoftにとってはぎりぎりの譲歩点であると思います。なんと言っても、Windowsのシェアは、Linuxに比べるべくもなく多いのですから・・・

 しかしながら、この譲歩はLinux(オープンソース)ベンダーとの提携を加速させるかも知れません。
 というのは、「無償に限り使用を認める」と言うことは、「提携するならばより競争力のある製品をリリース出来る」事を、技術資料という「ダイレクトメール」で示すことが出来るからです。もし、ベンダーにとって「ダイレクトメール」の内容が(しかも実際に使って試したうえで)魅力的だったなら、提携に向けての大きな一押しとなるでしょう。今回のMicrosoft狙いの一つはここにあると思います。

 ところで、多分、フリーソフトウェア財団は「まだ足りない」と言ってくるでしょうし、欧州委員会もさらなる圧力をかけてくるでしょう。ですが、どうにも違和感を感じるんですよね。

 ソフトウェアだって立派な創作物ですから、作り上げた製品に対して対価を求めて何か悪いことがあるのでしょうか?企業が長い時間をかけて、とてつもない資金と人的コストを費やして作ったソフトウェアの全てを無償で公開し、金の工面は別のアプローチで・・・というフリーソフトウェア財団の考え方は何とも独善的に思えてならないんです。少なくとも、WindowsやMacOSは、ある程度の模倣ができこそすれ、そこまでの完成度に持って行くと言うことはオープンソースコミュニティーの活動のみでは難しいと思うのですが。

 また、最近の欧州委員会によるMicrosoftへの攻撃は、正直目に余るところまで来ているように思います。独占禁止法の名の下ならば、世界一のソフトウェアベンダーならば何をやっても許されるというのは明らかに間違いでしょう。何というか、あまりにも度が過ぎると「ソフトウェアを金にするとリスキーだ」と、ソフトウェア業界全体を萎縮させてしまうように思いますけれど・・・