Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

東芝、HD DVDから完全撤退 その先に見えるもの

2008-02-19 20:31:38 | Thinkings

 メディアの歴史に、また重要な一ページが刻まれました。
 良い言い方をすれば、DVDの未来が開けた。悪い言い方をすれば、”第二のベータ”が決定したのです。

 二つ前の記事で、このネタは後2回くらいと書きましたが・・・これがその最後の一回になりそうです。

東芝がHD DVD事業終了を正式発表,Blu-ray対応AV機器の販売計画はなし ITPro

 東芝は2008年2月19日,HD DVD事業を終了すると正式に発表した。HD DVDプレイヤーやレコーダーだけでなく,パソコンやゲーム機向けのHD DVDドライブに関しても新製品の開発と生産を終了する。流通への出荷も3月末に終了する。

 確かに、HD DVDの開発資産や設備投資、市場に出回った分を考えれば「残念」と言えるかも知れません。そもそも、製品発表前の歩み寄りの時点でBlu-Rayと規格を一本化してしまえばこのようなことは起こらなかった、と言うことは簡単です。ですが、製品発売から一年、ワーナーのBlu-Ray一本化の発表からわずか1ヶ月半での東芝の撤退判断は、ベストとは言えないまでも、ベターだったと言えるでしょう。少なくとも一年間は規格争いにからんだ価格競争も行われましたし、次世代メディアへの関心も少なからず引くことが出来ました。さらに言えば、その次世代メディアの市場がまだまだ小さかったことも幸いし、ベータとVHSほどの傷跡は残らなかったのです。

 総じて言えば、潔く、適切な幕引きだったといえるでしょう。これで漸くメディア規格の争いは終焉を迎え、普及期へ向けて舵を取ることが出来そうです・・・が、もう一つ興味深い・・・というよりも、むしろこっちの方が重要だと思われる下りがありました。

 今後のAV機器事業に関しては,現行のDVDプレイヤー/レコーダー事業を継続するが,Blu-rayを採用した次世代DVDプレイヤーやレコーダーに関しては「販売する計画は無い」(西田社長)という。また今後は,「半導体NANDフラッシュ・メモリーや小型HDDといったストレージ,画像処理技術,無線技術,暗号処理などの強みを生かした,デジタル・コンバージェンス世代に適した事業を検討する」(同)とした。

 以前、このブログでも紹介したシーゲイトCEOの講演の内容を覚えているでしょうか。

「勝者はBlu-rayでもHD DVDでもなく、ハードディスク」--シーゲイトCEOが発言 CNET

「Blu-rayが競争に勝利したと言われているが、それは問題ではない。本当の争いは物的流通と電子的配信との間で行われており、Blu-rayもHD DVDもこの争いでは敗者だ。この争いでは、フラッシュメモリとハードディスクが同じ陣営にいる。決着はすでについており、物的流通の陣営は敗北した」

 Blu-Ray陣営に参画せず、NANフラッシュやHDDストレージの強化を宣言した東芝社長の言葉は、このシーゲイトCEOの発言を思い出させました。
 東芝もREGZAを持ち、AV事業を続けていく以上、フルHDメディアサービスからは避けて通れないはず。そう考えると、パッケージメディアを捨て、ネットワーク等に新たな活路を開くしか道は残されていないでしょう。

 期待するのは、換装などを含めた、使いやすいHDDメディアストレージシステム。そもそも、ムーブやダビング10も、光メディアに焼くから起こる問題なんですから、HDDにためて、いっぱいになったらHDDだけを簡単に交換できるような、「ムーブしない」レコーダーが出来たならおもしろいのでは。
 また、色々とブレイクスルーが必要ですけれど、日本版のAppleTVを目指すというのが一番わかりやすい路線でしょう。お世辞にも、どころか、国内では全くヒットしなかったAppleTVですが、フレッツやYahoo!といった企業、もしくはCSと組むことが出来るなら、もしかしたら化けることが出来るかも知れません。

 東芝は確かに「撤退」はしました。けれども、決して「敗走」ではないと思うのです。今のBlu-Rayの普及状況もふまえて、東芝の動向いかんによっては、市場に風穴を開けるかも知れませんね。

 

 ・・・精一杯好意的に解釈すれば、ですけれどね。「Blu-Rayに絶対に屈しない事を期待する」東芝の今後に期待です。