ちびずマムのマイペースな育児・料理・翻訳日記

2007年生まれの1号くんと2010年生まれの2号くんに振り回されつつ、自分の夢もなんとか追っていきたい、ちびたちのマム

梓崎優『叫びと祈り』

2021年06月23日 | 読んだ本(日本語)
梓崎優著『叫びと祈り』

短編集です。1話目を読んだ感想。
「ずるい!!!!!!」(笑)

(ネタバレ)
『砂漠を走る船の道』
これってきっと叙述トリックってやつなんですよね?
やられた!って感じでした。まさかメチャボが……。
文章を読んで、砂漠のイメージとかすごく上手で、風景がめっちゃ目に浮かぶのに、
なぜかメチャボだけイメージできなかったんですよ。
ラクダの群れに埋もれて見えなくなっている、みたいな描写があって。
ん? メチャボは歩いてるん? 大人はラクダに乗ってるのに?
それともラクダに乗ってるけど、子どもだから背が低くて見えないとか?
ん~~~~~よくわからん、と思いつつ読み進めていたら。
ずっと「子ども」だと書かれていたメチャボが人間の子どもじゃなかったなんて!
ずるいわ~。ずるいわ~。っていうか、砂漠の民の「塩>ラクダ>人間」という
考え方、価値観に基づく殺人。

『白い巨人』
サクラはセレッソですか。先入観を見事に利用された。悔しい。
平和なお話。誰も死なない。過去の伝説では死んでるけど。

『凍れるルーシー』
いや、ずっと目を閉じて祈っている「私」が、実は死体のフリをしていたなんて、ずるいわ~。
描写ずるいわ~。っていうか、最初に「私」が目撃した人は誰なん? 私ことスコーニャの前に
死体役をしていた人?? これも独自の価値観に基づく殺人。
ちょっと?が残るお話だった。

『叫び』
うん、私も学習しますよ。これも私たちには理解できない価値観に基づく殺人だな!
犯人は生き残った先住民のどちらかなんだろうけど、どっちだ?と思ったら、そっちか!
でも、タイトルの『叫び』はそっちが犯人だったからなんだな、と納得。
言葉が通じないから、思いは叫んでも届かない。

『祈り』
今度はどんな叙述トリックが!と警戒&注意しながら読んでたら、ちょっと違った。
これまでいろんなところを旅してきた主人公・斉木が、心を壊してしまったのだった。
んで、森野は今まで名前しか出てこなかったヨースケかぁ。

描写も美しいです。切ないロマンスとか書いてくれたら号泣できそう。

うひゃおぉお!

2021年06月21日 | 日記
翻訳書の重版決定のお知らせをもらいました!
学術系の書籍なので、読む人が限られていて、刷り数がものすごく少ないんですよね。
なので、印税も少なくて(冊数✕書籍単価✕印税率だから)、労働時間で計算すると
(計算しちゃダメ!)もんのすっっっっっっっっごいブラックな労働。

それが! 初めての重版なのです~~~。なんか嬉しすぎて、部屋で初版本を持って
踊っていました(笑)。

ほかにも叶えたい夢はいっぱいあります。
小説の重版、続編、コミカライズ、ドラマ化(これはさすがに無理だと思うけど)。
続編を出すのってものすごく大変なんだと最近痛感。

翻訳の仕事が減って落ち込み気味だったけど、またがんばれそう。
がんばれ、私。がんばる、私!

当面の目標は、とりあえず仕事が途切れないこと……(^_^;)

原宏一『星をつける女』

2021年06月18日 | 読んだ本(日本語)
原宏一著『星をつける女』

世界的に有名な食のガイドブックで格付け人をしていた牧村紗英が、
日本支社と考え方が合わなくて退社、独立、(融資を考えたりする)クライアントから依頼を受けて
飲食店の格付けをこっそり行う覆面調査の会社を興す。

んで、大学時代からの腐れ縁(?)の真山(劇団団長&アルバイター)と一緒に
夫婦とかいろんな設定で覆面調査を行う話。

最初の「メゾン・ド・カミキ」で、店ぐるみの食品偽装を告発して
スーシェフを辞めた智也がものすごく気の毒で(だって、身重の奥さんがいるんだよ!)。
1つめのこのお話を読んだ後、紗英って冷たい、読むのがちょっとつらい、と
思ってたけど、2つめの「麺屋勝秀」で智也も仲間に!(アルバイト掛け持ちしながらだけど!)
紗英の会社もまだまだ経営が大変で、真山も智也もアルバイトを掛け持ちしている。

んで、このお話で店長を辞めた七海も、もしやと思ったら3つめのお話で仲間に!
この4人体制になって終わり(続編へどうぞ!?)。

紗英は努力して味覚を身に着けた人で、フランス人の元夫との間に中学生の娘がいるシングルマザーで
ものすごい苦労人。智也も真山も苦労人。七海もどちらかといえば苦労人(笑)。

だからこそなのか、冷たそうに見えて奥にある人情味がよい。でも、1話の智也に対する紗英は
やっぱりちょっと冷たかったんじゃないかな、と思う。智也のためを思ったにしろ。

フランス人って本当に仕事中のランチタイムにワインを飲むんだろうか。
すごいな、お国柄の違い。私も自分の働き方を見直したいと思うけど……
現実に生活かかっているとそうもいかない(ため息)。

フランス料理がいっぱいでてきます。おいしそう。

石田衣良『1ポンドの悲しみ』

2021年06月13日 | 読んだ本(日本語)
石田衣良著『1ポンドの悲しみ』

タイトルが『悲しみ』なので、もしかして悲しい恋のお話ばかりなのかと思ったけど、
違った。なんだろう、すごい。1人で10編もこんなに違うお話をいろいろ書けるなんて。
と思ったら、なんかいろんな人の話を聞いているそうで。解説によると石田さんは
聞き上手だとか。

ほうほう、私もネタに困ったらいろんな人の話を聞くか!(聞いただけじゃダメなのはすごくわかる)

30代前半の恋がテーマだそうで。なんかすごく共感できたり、胸にぐっと来たり。
どのお話もよかった。一番好きなのは最初の『ふたりの名前』ってお話かな。
別れたときのためになんにでも名前のイニシャルを書いている同棲中のカップルが、
もらった仔猫が病気で、そのためにふたりの関係性が変わっていく感じ。よい。

夫が自分のことをぜんぜん見てくれなくなって、このままじゃ心が渇いちゃうって思い、
心に潤いを与えてくれる人と出会うけど(その日常の育み方が大人ならではの淡い切なさ)、
子どももいて捨てることができない生活がある。
切ない話だけど、悲しいだけじゃない『十一月のつぼみ』もよかった。

遠距離恋愛も、やってたのでなんかすごくわかるな~。でも、悲しみの感じ方は違ったけど。
いや、きっとあんなにつらかったんだろうけど、もう思い出せない『1ポンドの悲しみ』。

石田衣良さんの本、ほかにも読んでみたい。

ジョン・ル・カレ『スパイはいまも謀略の地に』

2021年06月10日 | 読んだ本(日本語)
ジョン・ル・カレ著、加賀山卓朗訳『スパイはいまも謀略の地に』

ちょっと前に日本人スパイが主人公の小説を読んだけど、これはイギリス人スパイが主人公の小説。
なんだろう。ジェームズ・ボンドっぽいのを想像してたらぜんぜん違った。
ハラハラドキドキ追跡劇、戦闘シーンとかはまったくない。

ベテラン情報部員のナットも中年となり、引退の時期が迫っていた。イギリス国内は
EU離脱で混乱し、アメリカはトランプが大統領。そんな時期。

対ロシア活動を行う部署の再建を打診され、引き受けたものの、なんかいまいち
パッとしない部署。一方で趣味のバドミントンで若者エドと親しくなる。
まー、なんかあとあと絡んでくるんやろな、と思ったら、案の定。

休眠工作員が眠りから覚めるっぽくなって、ナットがそっちの対策で忙しくなったとき、
エドが彼自身の理想とする考えから、ドイツの大使館に仕事で知り得た超極秘情報を売ろうとする。
ドイツはいったん断ったのに、やっぱりちょうだいと言ってきて、不思議に思いつつエドは信頼されるために
極秘情報をいくつか売る(というか漏らす)。でも、それが実はドイツとのやりとりを聞きつけた
ロシアの情報局で、それをイギリス情報局が掴んでエドを始末(決して殺すという意味ではない)しようと
するけど、ナットとそのすばらしき奥さん(やり手弁護士)が海外に逃がしてあげるっぽい話だと理解した。

なんか複雑で、何日かかけて読んでたら、だんだんこんがらがってきてしまった。

それにしてもナットの部下で、(上司の妻の悪事を暴こうとして)解雇されたフローレンスが
エドと結婚したのはなんだか急展開。嘘かと思ったら本当だったからちょっとびっくり。

アクションではなく心理戦のようなものなのかな。

過去の作戦を思い出しながら話している、といったような語り口の小説だった。