勝手に映画評

私の見た映画を、勝手に評論します。
基本的に、すべて自腹です。

明日への遺言(2007年)

2008年03月02日 | 邦画
第二次世界大戦後、撃墜された米軍爆撃機の搭乗員の処刑の罪を問われ、BC級戦犯容疑で起訴された東海軍司令官岡田資中将の法廷闘争の実話を描いた映画です。岡田中将は、この法廷闘争を自ら「法戦」と名づけて戦いました。

この映画まで、岡田資中将の事は全く知りませんでした。非常に興味深いのは、岡田中将は、数多くの日本の戦犯裁判において、米軍による都市爆撃を国際戦時法規で違法とされている無差別爆撃であると立証したほぼ唯一存在であるという事。このことは、岡田中将を裁く法廷を指揮したラップ裁判委員長が、公正に裁判を指揮したと言うこともあるかもしれませんが、岡田中将の「全ての責任は、自分にある」と言う「法戦」を戦う姿勢も影響しているのかもしれません。

実話、しかも裁判を描いた映画なので、場面がほとんど法廷で代わり映えせず、始めのうちはちょっと退屈な印象を与えますが、物語が進み、岡田中将の成し遂げようとした事が明らかになるにつれ、ちょっとした感動を覚えるとともに、物語に引き込まれていました。終わってみれば、「え、もう終わり」と言うくらい、時間が短く感じました。

大岡昇平の「ながい旅」が原作なのですが、驚くほど原作に従っています。原作本に出てきたセリフがそのまま、映画中で語られるほど。これには、ちょっとビックリ。また、最後の、岡田中将への判決言い渡しの場面では、MPではなく、第一騎兵師団の部隊記章を付けた兵士が付き添うんですが、これって、正しいのでしょうか?(後日追記:法務将校の人手不足のため、兵科の将校・下士官も裁判に借り出されたことはある模様。ただし、映画のように法廷警備まで実施したかは不明)

竹野内豊がナレーションを務めています。ただ、ちょっとどうかなぁと言う感じです。何故だか、時々、涙で声を詰まらしたような感じに聞こえ(そんなことは、無いはずですが)、違和感を覚えました。

いまこの時期に、何故この映画なのか?と思いましたが、「品格」を問われることの多い今だからこそ、この映画なのかもしれません。奇しくも、 イージス護衛艦「あたご」と漁船「清徳丸」衝突し沈没した事故がありましたが、これこそ、その指揮官の品格を問われる出来事。防衛省・自衛隊の幹部に、ぜひ見てもらいたい映画です。

内容が内容だけに、お年寄りが多かったですね。

タイトル 明日への遺言
日本公開年 2008年
製作年/製作国 2007年/日本
監督・脚本 小泉堯史
原作 大岡昇平「ながい旅」
出演 藤田まこと(岡田資)、ロバート・レッサー(フェザーストーン主任弁護人)、フレッド・マックィーン(バーネット主任検察官)、リチャード・ニール(ラップ裁判委員長)、富士純子(岡田温子)、西村雅彦(町田秀実)、蒼井優(守部和子)、田中好子(水谷愛子)
ナレーション 竹野内豊

[2008/03/02]鑑賞・投稿