ゆるゆるらいふ

とりあえず、今日も一日機嫌よく・・・

【観劇メモ】藪原検校 ~こまつ座~

2012年06月24日 | 演劇
土曜日の夜は友人ご夫妻と舞台を観に、
三軒茶屋の世田谷パブリックシアターへ

井上ひさしさんの戯曲だけを上演する
制作集団「こまつ座」の舞台は
結構好きでちょくちょく出かける

笑いあり、涙あり、そして奥が深くて・・・
といういつものパターンとはちょっと違って、
ところどころ笑いはあるものの、全体的に暗く重く
救いようのない「悪」が描かれている。

今回は、江戸期の盲人で、稀代の悪人の一代記。

検校(けんぎょう)というのは、
実在した盲人の自治組織、当道座の最高位のこと。

野村萬斎さんが演じる盲人 杉の市が
検校に登りつめるために悪事の限りをつくし、
邪魔な人たちを次々と殺してしまう。
とうとう「藪原検校」を襲名する直前、殺人が露見し、
浮かれた民衆への見せしめのために残虐に処刑される・・・
という内容だけれど、
野村さんの杉の市は、悪党だけどどこか憎めない感じがしたのは
私だけだろうか・・・

さすがは狂言師だけあって、
動きは美しいし、声はよく通るし

劇中、浄瑠璃のパロディーを語る場面では、
狂言師野村萬斎の舞台をみているかのよう・・・
って狂言は観たことないけれど

なりふり構わずのし上がっていく杉の市とは対照的に、
小日向文世さんが演じる盲人の大学者 塙保己市(はなわ ほきいち)は
盲人であるがための記憶力の良さを武器に、
学問を究め、品よく、思慮深く、禁欲的に、こつこつと
自分の地位を築き上げていく。

最後は、思いがけず冷徹な面を見せて、
静かな笑みをたたえながら、
杉の市の残虐な処刑方法を提案する。

それまでの穏やかな様子とのギャップが
余計にぞっとする恐ろしさを感じさせる・・・

処刑のシーンは、大きな大きな張りぼての人形の首を切り落とす
というものだが、およそ人間には見えない人形の首を
切り落としているというのに、妙にリアリティがあって、
ちょっと気分が悪くなるくらいだった

全編にわたって、とにかく盲人がたくさん登場する。
江戸時代、彼らが生きていくのがどれほど大変だったか
盲人でなくても、弱者が生きにくい、ということでは
現代も変わらないかもしれないが・・・

津軽三味線のようなギターの調べに乗せて、
浅野和之さんが演じるやはり盲目の太夫が、
劇中、ところどころ中断して解説を入れたり、ミニコントをしたり と、
どこまでも暗く沈みがちな雰囲気を押し戻してくれる

いつもは、舞台の上をするすると軽やかに動き回り、
軽妙にセリフを転がすような浅野さんが今回は一か所にすわったまま、
というのも珍しい

残念なことに、せっかくの語りがはっきりと聞き取れなかった。
滑舌?
早口?
座席の位置のせい?
いつもよりも咳き込む人が多かったから?

今回一番の「残念」だ・・・

井上ひさしさんの戯曲は、いつも社会の下層にいる弱者が、
必死に生きていく様を描いているように思う。
弱いながらも団結して、社会のひずみに立ち向かおうと
あがいている人々を応援しているような…

今回の舞台はなんだか後味のよくない感じが残るけれど、
深く、ずーんと重く、心に染み入るものだった。

さてさて、来週は気を取り直して、
三宅裕司さん率いる「熱海五郎一座」の 
こてこてのお笑いを観に行く予定

大笑いしてすっきりしてこようっと


















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