画像は我が家の小さなキッチンの調理台の面材だ。キッチンを専門にトータルに面倒みてくれる有名メーカーもあるが、世の中にはいろいろな小規模な仕事をオーダーメードで請け負う業者さんもいて、我が家のは後者の製作による。多少のデザイン的希望、シンクの大きさ、面材はオークにすることをこの家全体の施工を請け負ってくれたブレイス代表の丸山さんに伝えたら、丸山さんがそうした業者さんに発注してくれたものだ。我が家のキッチンにピタッと収まっている。ちなみに八ヶ岳の山荘も同様だ。タカラとかサンウェーブとかの有名メーカーのシステム・キッチンなどと較べれば格安で、オークの素材感も私好みで我が家にはこれで十分である。
さて本日の話題。床から調理台天板までの距離はどれくらいが適当なのか。 日本は何でも低いということを前に書いた。欧米でもアジアでも海外に長い間住んでいた人が久しぶりに成田空港に戻った途端、トイレの便器や洗面所の水栓やリムジンバスの椅子やレストランのテーブルや椅子やドアノブが皆妙に低いと感じることも多いだろう。日本の調理台天板も一般的にはそうだ。 しかしことはそれほど簡単なものでもない。
建築家は天板の床からの妥当な高さの公式は
使う人の身長(cm) ÷ 2 + 5cm であるという。
この公式に従うとすると身長が150cmの人なら80cm、160cmの人なら85cmが妥当な高さということになる。日本の調理台の既製品のほとんどが高さ80cm、85cmで作られているのは、日本女性の多くがおおよそこれくらいの身長であるからだろう。しかし、それにしても80cm、85cmでは長時間の洗い物で腰に負担を感じる人も多いのではないだろうか。
ましてやdancyuを愛読し厨房に入って中華鍋を振り回し、秘かに料理の鉄人となる野望を抱く男子諸君は、今や平均身長が170cmを超える時代だから、腰にかなり負担があるはずだ。まだ包丁でものを切る作業は良い。中華鍋を振り回すのも良い。問題はシンクでの食器洗いだ。天板よりも低い所に手を突っ込んで食器や調理器を洗うのは背中から腰にかけて負担が大きい。
こうしたことから我が家では天板の高さを92cmほどにしてもらった。かなり高めではあるが、それでも私は腰に来る。妻はちょうど良いと言っている。
本日の結論だが、それは「一般化して『妥当』と呼べる高さなど存在しない」である。どこの家庭でもたいていは夫婦や家族に身長差があるだろう。つまりひとつの家に複数の人間がいて、調理なり後片付けなりで、その複数が皆フェアに厨房に立つ場合、「この家にはこの天板の高さがピッタリ!」というケースはほとんどないのである。誰かにピッタリなら、他の誰かには高過ぎるか低過ぎるのだ。
追記: とかなんとかブツブツ言いながら、本日も自宅厨房でランチ作りに励んだ。カルボナーラに初挑戦。うまく出来た。