「家」 @ 鎌倉七里ガ浜 + 時々八ヶ岳

湘南七里ガ浜(七里ヶ浜とも)から発信。自分の生活をダラダラと書きとめるブログ。食べ物、飲み物、犬の話題が多い。

Paddington Station Clock

2009-03-29 09:54:25 | 内装・インテリア
現在英国政府は「Visit Britain」キャンペーンを推進中である。GDPに占める金融セクターの割合が大国の中では群を抜いて大きい同国の通貨であるポンドは、金融危機以降他の先進国通貨に対し下落を続け、歴史的安値を記録した。したがって外国人が英国旅行をすると、その滞在費も買い物代金もおみやげ代金も皆格安に感じられる。同国政府はそれがおかれた経済的逆境をも利用する商魂逞しいキャンペーンを行っているわけだ。日本においても全国紙に大きなキャンペーン広告を掲載した。

私も大いに興味をそそられたが、時間もそして安いとは言え、なによりお金もかかることから、英国旅行の楽しみは来年以降にとっておくことにした。しかしポンドの下落から得られる外国人としてのメリットは享受してみたいので、通販で買い物をした。それがこの壁掛け時計で、Paddington Station Clockと呼ばれている。壁掛け時計を買うのはなんと20年ぶりのことだ。注文したら1週間ほどで我が家に到着した。ちょっとした作業を経てダイニングの壁のかなり上のところに収まった。この時計は少し大き目である。直径が40cm近くあり、厚みが7cmほどもある。

  

パディントン駅はロンドンの交通の要所である。アガサ・クリスティの推理小説のファンなら彼女の代表作のひとつ「パディントン発4時50分」をご存じであろう。ここを出た列車は西へ向かう。アーサー王伝説で有名なコーンウォール等のイングランド南西部、あるいは素朴さが心に浸み入るウェールズに向かう列車は皆この駅から出る。また数多くの地下鉄線もここに駅を設けている。加えて言えば「クマのパディントン」のストーリーでも有名である。駅内はご覧のとおり、英国らしい立派な景観を呈している。私もかつて通勤で週日は毎日セント・パンクラス駅を使っていたが、ちょうどこんな感じであった。これくらいの駅になると、毎日利用することが楽しみにすらなるものである。背筋を伸ばして歩かなければ、という気にさせられる。

私が買った壁掛け時計はPaddington Station Clockと言ってもおもちゃみたいなものだが、画像の左端に立派な本物のPaddington Station Clockが写っている。デジタルにしないところが良い。このまま変わらなければいいが。


Source: PhotoEverywhere.co.uk

さて、我が家の壁掛け時計の細部を見てみよう。まずは「Paddington Station Clock」とあるが、ひとつひとつの文字の太さの不均一なところや、フォントにシャープさがないところが大変古めかしい。その上には「GWR」とある。Great Western Railwayの略称である。かつてイングランド南西部やウェールズに向かう鉄道の運営をしていた企業の名前だ。第二次大戦後になってBritish Railwaysに吸収されて今に至るが、昔の「GWR」のロゴを描いてあるところがなんとも芸が細かい。



さらに下に移るとねじ巻き穴がある。この時計は電池式時計である。単三電池ひとつで長年動き続ける時計なのだからして、ねじはないのだから、ねじ巻き穴などまったく不要なのだが、意図的にねじ巻き穴が設けられていてますます芸が細かい。いいでしょう? その下には「Thomas Kent」とある。この壁掛け時計のシリーズにはいくつか同様な時計があり、皆「Thomas Kent」と呼ばれるのだが、では「Thomas Kent」とは何か? それがまたなんともシャレているのだ。以下は私の推測である。



この時計のメーカーは Art Marketing Limited と言い、その所在地はロンドンの北にあたるハードフォードシャーを代表する街 St Albans (下の地図の赤字)である。St Albansは歴史的な立派な街だ。ローマ人がイングランドを支配していた頃、多くの軍道が直線的に造られたが、そのひとつであるWatling Streetはこの St Albans を通っている。緩やかに曲がる道路が魅力的な英国においてやたら直線的な道路はたいていローマ人がつくったものであり、武田信玄の棒道と同様である。どこの国でも軍人にはあまり芸術的センスがないらしい(現在私が住む西武七里ガ浜住宅地もなぜか道路のつくりが残念ながらローマ的であり信玄的である)。St Albans は駅で言うと、かつて私が住んでいた街の駅(Elstree & Borehamwood)から2つ北方に行った所だったから、よく遊びに出掛けたものだ。

この St Albans の19世紀の市長の一人の名が Thomas Kent なのである(下右画像)。さらに St Albans と言えば有名なのが時計塔である。500年以上前の歴史的建造物である時計塔は、今も中を見学することが出来る。Thomas Kent という名はメーカーの所在地である St Albans を想起させ、そして St Albans と言えば時計塔へと連想が広がるわけで、なかなか良いネーミングだと思う。

  

英国の交通機関は面白い。ロンドン・トランスポートはポスターのリプロを販売している。以前紹介したものだが、これはロンドン動物園のペンギンを題材にしたものである。ペンギンの体の柔らかさがうまく表現されたCharles Paine氏の「For the Zoo」と呼ばれる1921年の作品だ。地下鉄は彼の地では「Underground」あるいはもっとくだけて「Tube」と呼ばれる。決して「Subway」ではない。毎年地下鉄沿線の観光スポットが美しいポスターになる。発表後何年か経てば、オリジナルはかなりの高値で取引される。私のはリプロなので2,000円ほどで買えた。



最後にバスとタクシーもどうぞ! ヒースロー空港で買ったミニカーだ。



今回の大きな壁掛け時計、Paddington Station Clockは今なら邦貨で10,000円もしない。チャンスだ。あなたも英国政府の「Visit Britain」キャンペーンに買い物だけでも乗ってみませんか。


コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする