じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

「ラディカルにいこう」

2020-01-21 11:13:30 | Weblog
★ 朝日新聞「オピニオン&フォーラム」のページ、「ラディカルにいこう」と題するアメリカの若手政治経済学者、グレン・ワイル氏のインタビュー記事が載っていた。

★ ポスト資本主義に向けてラディカルな提言だった。資本主義の基礎ともいえる「私有財産」を廃止しろというのだ。私有財産を廃止するというと共産主義のようだが、そうでもないらしい。「私有財産」を廃止し、「利用権」を売買する仕組みを提言している。

★ 低成長と格差の拡大、その一因が少数者による経済支配、独占の現状があるという。これを解決するために、「フリードマンの自由主義より市場の利点を追求し、かつ、マルクスの社会主義の平等や協働をめざす社会」を求めるべきだという。

★ 「私有財産」を「利用権」と名札を変えただけで、結局は富める者に富が集中するのではないか(それもより加速して)と思うのだが、どうだろうか。

★ 資本主義の段階は、産業資本主義→独占資本主義→国家独占資本主義と言われる。「私有財産」を廃止し、「利用権」として、それを調整する仕組みはどうなるのだろうか。「国家」の役割はもはや不要なのか。「神の見えざる手」に再び委ねるのか。独占者が「神」になるではないか。

★ ワイル氏は民主主義の原則である「1人1票」制へも疑問を投げつける。ポイント制を導入し、票を売買する仕組み。少数意見の尊重を強調するが、「1票」に市場原理を導入する仕組みが、人々の幸福に結びつくかは疑問だ。

★ デジタル社会に対応した政治や経済の仕組み。もしAIが進化し、人類が駆逐され、AIが支配する世界になれば、こうした提言が生かされるかもしれない。とても合理的だからだ。

★ その点、人間社会はやっかいだ。身近な課題で言えば「情報格差」の問題がある。情報格差=経済格差にならないくもない。また、人間の社会を前提にするなら「欲望」とか「感情」とかいった非合理的な要素をどう考えるかがある。

★ 農業革命、産業革命、そして「第3の波(情報革命)」を予言したのはアルビン・トフラー氏だっただろうか。ここ数十年の社会の変化は劇的だ。情報、データという数字と記号の集積がGAFAを中心とする知的企業に独占される時代になってきた。そのデータを握るものが市場の勝者となりつつある。

★ 理念やイデオロギーで社会が変革できるとは思わないが、イデオロギーは構造的な変動に先だつともいう。歴史は振り返ってみなければわからないが、今私たちが大きな変革期に生きているのは確かであろう。
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原民喜「翳」から

2020-01-19 10:14:59 | Weblog
★ 今年の大学入試センター試験、国語に原民喜さんの「翳」が出題されていた。

★ 原作を読んでみようと本棚をさぐり、青空文庫を検索したが、掲載されていなかった。講談社文芸文庫「原民喜戦後全小説」に収められているようだ。どうも手に入りにくそうなので、とりあえず入試問題を読んでみた。

★ 作者は妻の死を知らせる葉書を身近な知人に送ったという。「魚芳」にも送ったが、返事が来なかったという。「魚芳」とは近所の魚屋の小僧で、名は川端成吉といった。愛嬌のある男で近所ではなかなかの人気者だった。

★ 時代は日中戦争から、やがて本土空襲が頻繁になる時期へ。御用聞きでにぎやかだった露路も、次々と兵役にとられ、閑散としていく。「魚芳」も最初、中国本土に送られ、除隊になっって一度帰国したが、その後満州で吏員になったという。

★ 妻の知らせも満州に送ったのだが、しばらくして、「魚芳」の父親から封書が届いた。「魚芳」の死を知らせるものだった。満州で病に倒れ、何とかたどり着いた故郷で数日のうちに亡くなったという。作者は在りし日の彼の面影を手繰る。失った妻の思い出と共に。

★ 受験者はそれどころではないが、味わい深い作品だ。

★ 時代の翳、戦争へと邁進する翳、死の翳、明るい平凡な日常に立ちふさがる翳。それは作者の心に重くのしかかっていく。

★ 問題文では省略されている「魯迅の作品の暗い翳」が気にかかる。機会があれば原作を読んでみたい。

★ 話しは飛躍するが、長寿アニメ「サザエさん」。あの明るさがいつまでも続くように祈りたいものだ。
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韓国映画「ポイントブランク」

2020-01-18 16:17:40 | Weblog
★ 映画「ポイントブランク~標的にされた男」(2014年)を観た。同名の映画がいくつかあるようだ。「ポイントブランク」とは至近距離からの直射といった意味らしい。

★ 最近、アクションといえば韓国映画だ。銃創を追った患者が病院に搬送されてくる。一命はとりとめるが、命を狙う侵入者が。たまたまめぐり合わせた医師が救命したが、今度は医師の妻が誘拐される。警察内部にも悪ははびこっているようで、登場人物入り乱れてのアクションの連続。目が離せない。

★ ショッピングモールなどのカメラワークはすごいなぁと思った。

★ 日本の俳優なら誰が演じるかなと想像しながら観た。銃創を追った元傭兵は中井貴一さん、弟役は成宮さんかな。医師役は妻夫木さんでどうだろう。血潮に顔を染め、青筋を立てた怒りの演技、日本の俳優でそういう演技ができる人が少なくなったように感じる。

★ 広域捜査課の悪徳班長。あの憎々しい演技もすさまじかった。ああいう輩が警察権を握ると正義も何もあったもんじゃないね。
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京極夏彦「死ねばいいのに」

2020-01-17 22:37:05 | Weblog
★ 京極夏彦さんの「死ねばいいのに」(講談社)を読み始めた。面白い。

★ 亜佐美という女性が死んだ。殺されたのだという。ケンヤというチンピラ風の男が、彼女の周りの人々に彼女について話を聞くという流れ。

★ 目次を見ると6人まで話を聞くようだが、まず「一人目」を読んだ。

★ 亜佐美が派遣で勤めていた会社の上司・山崎の視線で物語が進む。敬語も使えず、目上への態度もなっていないケンヤ(山崎はケンジだと思い込んでいる)、けんか腰の話し方に不快感をもつ山崎だったが、だんだんケンヤにやり込められていく。

★ 会話のやり取りは、まさにソクラテスがソフィストを言いくるめるような感じだ。読者も最初はケンヤの無礼な物言いに辟易するが、話が進むにつれて彼の言っていることの方が正論に思えてくる。

★ 理屈をこねまわしケンヤの攻めをかわそうとする山崎だが、話せば話すほど深みにはまってしまう。結局自分の言っていることは自己保身でしかないこと、自己顕示欲でしかないことを暴露されてしまう。周りに責任転嫁ばかりする山崎にケンヤの放った言葉は強烈だ。「死ねばいいのに」。

★ 読み進めたい。次は「二人目」だ。
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ハンス=ウイルヘルム「ずうっと、ずっと、大すきだよ」

2020-01-16 13:13:29 | Weblog
★ 今月から小学1年生が2人入塾してきた。大手のフランチャイズ塾が閉じられるので、そこの先生の紹介だという。ありがたいことだ。

★ しかし、小学1年生を教えるのは随分と久しぶりだ。算数はともかく国語は何を教えよう。まずは教材研究ということで、学校の教科書を見てみた。小学校、中学校の教科書は一通りそろえてあるが(4月から改訂なのでまた買い替えなくては)、生徒のいない学年は置くだけになっている。

★ 私の時代は何だったのだろう。さすがに「サイタ サイタ」や「ススメ ススメ」の時代ではないけれど。

★ 光村図書「こくご 一下 ともだち」。まずは「くじらぐも」。四時間目、子どもたちが体操をしていると、空に大きな雲のクジラが現れた。子どもたちと一緒に「一、ニ、三、四」。子どもたちが走ればクジラも走り、子どもたちが回れ右をするとクジラも回れ右をする。子どもたちはクジラに「おうい。」と呼びかける。クジラも「おうい。」とこたえる。子どもたちが「ここへ、おいでよう。」と誘うと、クジラも「ここへ、おいでよう」と誘う。遂に、子どもたちは「くじらぐも」にとびのることに、という話。

★ ファンタジックな作品だ。絵が美しい。

★ 次に、説明文「じどう車くらべ」があって、その後が、ハンス=ウイルヘルム作の「ずうっと、ずっと、大すきだよ」(ひさやま たいち 訳)。家で飼っているエルフという犬の話。エルフのあったかいお腹を枕にするのが好きだった「ぼく」。家族はみんなエルフが大好きだった。でも言わなくてもわかると思っていたから、誰も「好き」って言ってやらなかった。

★ 犬の寿命は人より短い。それは仕方のないこと。「ぼく」が大きくなるよりもすっと早く、エルフは年をとっていった。グングン太って、歩くのがおっくうになり、寝ている時間が多くなった。そして、「ぼく」が朝起きると、エルフは死んでいた。家族はみんな泣きながらエルフを庭に埋めた。「ずっと、大好きだよ」と言って。

★ この後も少々話は続くけれど、犬好きはこの辺りで涙腺が緩んでくる。これは授業で朗読はできないなぁ。

★ 以前、教科書に載っていた「とっときのとっかえっこ」(サリー・ウィットマン作 谷川俊太郎訳 東京書籍「新しい国語」四上)もよかったなぁ。バーソロミューというおじいさんのルックスが私と似ているらしくて、バーソロミューとあだ名をつけられたりした。

★ 小学生の教材だと言って舐めてはいけない。感動作が満載だ。 
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湊かなえ「空の彼方」

2020-01-15 18:18:31 | Weblog
★ 湊かなえさんの「物語のおわり」(朝日新聞出版)から「空の彼方」を読んだ。

★ 舞台は「ベーカリー・ラベンダー」、その店の中学生の娘が主人公。盆地の小さな町から出ることもなく(乗り物には酔うし、修学旅行など大きなイベントになると高熱を出す)、山のむこうを眺めるのがクセだった。

★ そんな彼女が推理小説と出会い、自らの作品を書き始める。閉ざされた世界から外の世界へのあこがれ、それが作品となった。

★ 毎朝、定番のハムサンドとハムロールを買ってくれる高校生。彼女は彼を「ハムさん」と呼んだ。それからいろいろあって、本人もびっくりするような急展開。「婚約」という事態に。

★ 一方で、上京した友人からは、著名な作家の弟子入りを勧められ、人生の分かれ道。さてどうする。

★ ということで、後は読者に委ねられてしまう。ひとそれぞれに続編が書けそうだ。
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映画「グランド・ブダペスト・ホテル」

2020-01-15 12:21:48 | Weblog
★ 映画「グランド・ブダペスト・ホテル」(2014年)を観た。

★ ファンタジックな作品だったが、何が言いたいのかイマイチわからなかった。色彩豊かな映像と豪華キャストなのだが。

★ 激動するヨーロッパ、設定はヨーロッパ東方の架空の国。ナチスの侵略、共産主義化が風刺をこめて描かれている。

★ 「国破れて 山河あり」という。時代は移り変わり、人も変わっていくけれど、じっと生き(建ち)続けるホテルには荘厳さがある。天上の眼差しを感じる。

★ 自然や遺跡、遺産というものが無言で語り掛けるものと共通しているのかも知れない。

★ コミカルタッチなので、深読みせず、楽しめばよいのだが。
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映画「野菊の如き君なりき」

2020-01-14 00:18:26 | Weblog
★ 映画「野菊の如き君なりき」(1955年)を観た。原作は伊藤左千夫さんの「野菊の墓」。

★ 物語は故郷を訪れた老人(笠智衆)の回想で進む。政夫と民子は従妹同士。民子の方が2歳上。幼い頃から仲良しだった彼らも思春期を迎えている。民子は17歳。政夫は中学をめざして勉強中だ。年頃となると、周りの視線も厳しくなる。

★ 大人たちの無理解の中で、二人の純愛は引き裂かれてしまう。明治時代、田舎の農村、世間体や家父長制が残っていた時代。恋愛結婚などが珍しく、年上の女性との恋に理解がなかった時代、それにカネの誘惑。民子の両親は有力者との縁談を進めようとする。

★ 民子は政夫への想いを断てないまま、両親が勧める縁談を受け入れてしまう。そして・・・。

★ 監督は木下恵介さん。世慣れした大人たちの思惑と無垢な若者の純粋さが、美しい風景の中で対比される。

★ 画像はさすがに時代の流れを感じるが、モノクロは効果的だ。日本の原風景を見るようだ。楕円形の独特の画像。回想シーンはこの形式で映し出される。

★ かつての日本、こういう悲恋が数多くあったのだろうね。

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浅田次郎「椿山課長の七日間」

2020-01-13 23:55:17 | Weblog
★ 浅田次郎さんの「椿山課長の七日間」(朝日文庫)を読んだ。コミカルでいてシリアス。浅田ワールドを堪能した。

★ デパートの中間管理職、椿山課長は日々忙しく仕事をしていた。妻子にも恵まれ、それなりに安定した幸せな生活を営んでいた。ところが働き過ぎがたたったのか急死してしまう。

★ 行き着いたところはこの世とあの世の中間点。極楽へ行くか「こわいところ」へ行くか判別される。椿山課長は現世に未練が多々あり、また「邪淫の罪」との濡れ衣を着せられたのに納得できず、7日間だけこの世に戻るというの「特例」を申請する。しかしこれにはルールがあった。復讐の禁止、正体がバレないこと、制限時間の厳守。ルールを破れば「こわいこと」になるという。

★ 椿山課長は、人違いで射殺されたヤクザの親分、そして交通事故で死んだ7歳の男の子と共に、この世に戻った。生前とは真逆の姿で。

★ それぞれが現世でやり残したことを整理するために動くのだが、話が進むにつれて、つながっていく。 

★ 椿山課長の描写も良いのだが、誤射された組長と極道社会の様子、誤射したヒットマンの描写が秀逸だ。ある時は「仁義なき戦い」の菅原文太さん、ある時は「唐獅子牡丹」の高倉健さんの姿が目に浮かぶ。文体も何かしら演歌のリズム感だ。

★ たたみかけるようなエンディング。親子の情にホロっとさせられる。
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川田弥一郎「白く長い廊下」

2020-01-12 19:26:08 | Weblog
★ 川田弥一郎さんの「白く長い廊下」(講談社)を読んだ。

★ 手術をした直後、患者が死んだ。手術のために投与した筋弛緩剤、自発呼吸が確認できたから医師は中和剤を投与した。しかし、手術室から病室までの長い廊下で患者は呼吸を停止し、帰らぬ人となった。

★ 自分の判断に間違いがあったのか。自問する医師に周りの視線は厳しかった。患者の遺族が補償を求めるようになって、医師の立場はますます厳しくなった。

★ 自分の判断に間違いはない。そう確信した医師は、自ら事件の解明に乗り出す。

★ 動機や展開に強引さは感じたが、現役の医師の作品だけに、医療現場の内実がリアルに描かれていた。

★ 医師になるのはほとんどが偏差値70以上の優等生だ。国家試験に合格し免許を手にした医師、しかし医師の業界にもいろいろとしがらみがあるんだなぁと感じた。
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