じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

村上龍「空港にて」

2018-04-27 16:13:24 | Weblog
☆ 村上龍さんの短編集「空港にて」(文春文庫)から表題作を読んだ。

☆ 最初はぼんやりとした描写から始まる。主人公が男なのか女なのかさえ分からない。場所はわかる。空港だ。搭乗手続きを待つ人でにぎわっている。

☆ 読むにつれて、だんだん情景がはっきり見えてくる。霧が晴れるように。

☆ 知らない者同士がベンチに座っている様子、それと主人公のドラマが縦横の糸のように織りなしていく。主人公の境遇は坂道を転げるようだ。ただそこに1点の小さな光が輝き始めている。

☆ 主人公はこの空港から新たな人生を始めることができるのだろうか。
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歳月をかけた殺人計画

2018-04-26 20:26:53 | Weblog
☆ 人間の怒りの継続時間は数秒とも数分とも言われる。いずれにしてもそう長くは続かない。ところが殺意となると必ずしもそうではないようだ。

☆ 「松本清張傑作短篇コレクション」(文春文庫)から「捜査圏外の条件」、宮部みゆきさんの短編集「人質カノン」(文春文庫)から「十年計画」を読んだ。

☆ 「捜査圏外の条件」は妻子ある上司が主人公の妹と怪しい関係になる。周りの目を盗んだ逢瀬の旅で妹は病死、上司は不倫の発覚を恐れて逃げる。その事実を知った兄が7年の歳月をかけて完全犯罪を目指すというもの。

☆ 「十年計画」は恋人に裏切られ捨てられた女性が、交通事故に見せかけた復讐を計画するというもの。なんと10年の歳月をかけて。

☆ 足を踏んだ人はすぐに忘れるが、踏まれた人は長く忘れないという。心したいものだ。

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浅田次郎「獬(シエ)」

2018-04-26 14:17:16 | Weblog
☆ 浅田次郎さんの短編集「姫椿」から「獬(シエ)」を読んだ。

☆ 獬(シエ)とは伝説の動物らしい。具体的な姿はイメージしにくい。それはさておき、江國香織さんの「デューク」以来のウルウルする物語だった。

☆ 愛ネコが死んだ。喪失感に襲われる鈴子はふとペットショップに立ち寄る。そこで出会ったのが獬(シエ)。何とも異形の動物だが人懐っこい。それにこの生き物は善い人と悪い人を見分けるという。

☆ 獬(シエ)との生活。毎夜鈴子は獬(シエ)に愚痴を語り涙を流す。鈴子の生い立ちや日々の生活がだんだん明らかになっていく。

☆ やがて獬(シエ)とも別れの時が来る。そのときの獬(シエ)の独白がたまらない。「幸せ」って何かなと考えさせられる。鈴子さんには幸せになって欲しいと思った。

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「希望」がなくなり分党へ

2018-04-26 10:01:16 | Weblog
☆ 安倍政権が批判されても危機感がイマイチなのは野党が弱いからだ。選挙目当てに離合集散していたのでは、国民の信頼は得られない。

☆ 先の衆議院選挙、小池旋風に便乗しようと民進党の多くが「希望の党」に移ったが、所詮は理念なき選挙互助会。結果は周知の通り。

☆ 次は来夏の参議院選挙。「希望」では勝てないと足元がおぼつかない議員さん。「希望」を捨てて次は「国民民主党」とか。部外者がケチをつけるのは悪いが「国民民主党」とはいかがなものか。

☆ 「国民党」「民主党」ならすっきりするのだが。「国民党」はかつての蒋介石率いる中国国民党のイメージがあるのか。あるいは郵政民営化に反対する人々がつくった「国民新党」のイメージがあるのか。

☆ 「民主党」は本家争いなど大人の事情があるのかな。

☆ いっそ、「日本国民党」ならわからなくもない。「民主」へのこだわりは「立憲民主党」への秋波か。

☆ いずれにせよ泡沫と消えゆく運命。こだわる必要はないか。国会議員たる人々は自分の議席・地盤より国民のことを考えて欲しいものだ。結果的にはそれが勝利に導くと思うのだが。
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「ボディーが弱点」

2018-04-26 09:41:47 | Weblog
☆ 朝日新聞の風刺画。針すなおさんの作。

☆ 財務省のパンツをはいた麻生大臣らしきボクサー、辻本選手から強烈なボディー攻撃を受けている。観衆からは「ハラだ! ハラ・ハラ! セクハラ問題だ!」のヤジ(声援)。

☆ 麻生選手、効いているようだがなかなかしぶとい。ボディーはじわじわ効いてくるという。それは地獄の苦しみとか。

☆ さて、辻本選手はロープに追い詰め、決定打でKOできるのか。はたまた、麻生側のセコンドからタオルが投げられるのか。絵には描かれていないが審判がTKOの判定を下すのか。それとも、起死回生の一発で麻生選手の逆転勝利か。

☆ 試合はいよいよ終盤戦だ。
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ハプニング解散も

2018-04-25 20:56:58 | Weblog
☆ 自民党の国対委員長が「解散も選択肢」と言ったとか。審議拒否を続ける他党への牽制らしいけれど、そんなに易々と「解散」を言ってよいものか。

☆ 本気で解散をするときは皆さん結構口が堅くなる。総理自ら「解散のかの字も」といい側近は「総理の専決事項なので」と明言を避けるのが通例。「解散、解散」と言っているときは、むしろ解散はないかも。

☆ ただ、国会が行き詰まっているのは確かだ。モリカケ問題を始めとして、財務省、防衛省、文科省の問題。国民に嫌気が広がっている。内閣不支持率の上昇がそれを物語っている。

☆ 安倍総理が負けを覚悟で「自爆」解散に打って出るか、それとも会期末に何らかのハプニング解散となるのか(例えば自民党から造反が出るとか)。来年は統一地方選や参議院選がある。天皇の譲位や消費税増税もある。公明党は嫌がるが衆参ダブル選挙という見方もあった。しかし、それが早まるかも知れない。

☆ 今国会の会期末は6月20日だという。あと60日足らずだ。
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向田邦子「思い出のトランプ」

2018-04-25 19:33:19 | Weblog
☆ 向田邦子の短編集「思い出のトランプ」(新潮文庫)から「花の名前」「かわうそ」「だらだら坂」を読む。

☆ どの作品も50代前後、銀婚式を迎える頃の夫婦の話。肉欲に裏付けられた情熱は年とともに冷め、夫はだんだん子どもに返り、妻はだんだん母になっていくように感じた。

☆ 「花の名前」は堅物の夫が外に女をつくった話。電話がリビングに鎮座し、内外の情報の出入り口であった時代。良い知らせも悪い知らせも、この機械がもたらした。妻が受けたのは夫の女からの電話。会ってみたいという。さて、修羅場となりますやら・・・。

☆ 「かわうそ」は定年間近の夫が病に倒れた話。夫の目線から妻の姿を描いている。何かぞっとするような後味の悪いエンディングに感じた。ある意味ホラーだね。

☆ 「だらだら坂」は中小企業の社長が愛人を囲う話。男の目線で描かれているが、随分と男は身勝手だ。男というのはいくつになっても、また社会的地位が上がっても幼児性が抜けないようだ。いやむしろ、だんだん幼児のようにわがままで自己チューになっていくのだろうか。

☆ どの作品も不倫を正面切って非難していない。それが一層恐ろしくもある。
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野坂昭如「火垂るの墓」

2018-04-24 16:06:28 | Weblog
☆ 野坂昭如の短編集「アメリカひじき 火垂るの墓」(新潮文庫)から「火垂るの墓」を読んだ。

☆ 先ごろ亡くなった高畑勲監督のアニメを見たり絵本で読んでいたので、ストーリーは知っていた。ただ原作はまだ読んでいなかった。

☆ 空襲で神戸が焼かれたとき、母を失った兄と妹が生き残るも、やがて栄養失調で死んでいく話。ドロップの缶と人形を抱きしめ、首からがま口を下げた妹・節子の健気さが涙を誘う。

☆ 原作は、助詞が少なく、名詞を畳みかける韻文のような野坂節。その独特の口調から在りし日の野坂さんが思い出される。(「ソソソックラテスかプラトンか~」のCMが懐かしい。ちなみに「おもちゃのチャチャチャ」は野坂さんの作詞とか)

☆ 空襲の場面は映画以上に迫力がある。野坂節の文体の合間に出てくる節子の話し言葉はなんとも沁みる。

☆ 真っ暗な海辺の洞窟。そこで生活を始めた兄妹の周りを火垂るが舞う。静かに微かな光を放って。翌朝には半分が死に、節子は火垂るの墓をつくってやった。母のお墓を思い浮かべながら。
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「柘榴坂の仇討」

2018-04-23 23:34:51 | Weblog
☆ 映画「柘榴坂の仇討」(2014)を観た。原作は浅田次郎さんだ。

☆ 主人公・志村金吾は剣術の腕をかわれ井伊直弼の籠周りの警護を下命される。1860年3月3日、桜田門外の変。主君を守り切れなかった金吾は、それから市井に身を潜め刺客を追う日々を過ごす。

☆ 刺客も多くは死に、残るは一人。佐橋十兵衛を残すのみとなった。。彼もまた車夫となり、死に遅れた身を恥じて生きながらえていた。桜田門外の変から13年。遂に金吾は佐橋の居所をつかむ。時代は明治となり、もはやサムライ階級は存在していない。

☆ 十兵衛が死にそびれた柘榴坂、そこで13年前に時が止まってしまった二人が刃を交える。

☆ 主演は「壬生義士伝」の中井貴一さん。敵役には阿部寛さん。ソース顔の阿部さんのこういう役は珍しい。最初はどうかと思ったが、良かった。(そもそも誰も幕末の顔ではない。)

☆ 何のための仇討か。金吾は主君が好きだからと答える。美しい答えだがテロリストとしては一番扱いにくいタイプだろうと思った。

☆ 時代の激変期、何が正しくて何が間違っているのか誰にもわからない。後の人は何とでも言うが、当時の人々にとっては余計なお世話かも知れない。あれこれ言わず、様式美を楽しむのがよかろう。
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松本清張「地方紙を買う女」

2018-04-23 18:54:45 | Weblog
☆ 宮部みゆき責任編集「松本清張 傑作短篇コレクション」(文春文庫)から「地方紙を買う女」を読んだ。

☆ 何度もドラマ化されている作品だ。新聞の連載作家が真相を解明していくところは少々強引だが、読み進むほどに引き込まれてしまう。

☆ なぜ女は地方紙を買ったのか。読者はまずそこに興味を持つ。作者の思うつぼにはまる。それが入り口。

☆ 次に読者は連載作家の目を通して事件の真相解明に参加させられる。毎週「土曜ワイド劇場」や「火曜日の女」を見て、ミステリーには慣れているのに、トリックにはハラハラする。「ミスディレクション」。

☆ 最後は、夏目漱石「こころ」の先生の遺書、ドストエフスキー「悪霊」のスタヴローギンの「告白」のようだ。
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