じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

混迷するシリア

2018-04-14 17:54:23 | Weblog
シリア情勢――終わらない人道危機 (岩波新書)
クリエーター情報なし
岩波書店


☆ シリア政府軍が化学兵器を使ったとして、アメリカ、イギリス、フランスが政府軍の施設への攻撃を開始した。シリアのアサド政権を支持するロシアは攻撃を非難。米英仏VS露中と国連の安全保障理事会を二分する事態になっている。

☆ 長期化するシリア「内戦」。難民はEU崩壊の要因にもなりかねない。民族の大移動ともいわれる。そもそもシリアでは何が起こっているのだろうか。興味を持って上記の本を読んだ。

☆ いやー実に複雑だ。古代文明も栄えた東西交通の要所。それだけに民族、宗教、利権が入り乱れている。それでもかつてシリアは中東の優等生でその強さを誇っていた。それがなぜ今日のようになってしまったのか、大変よく分かった。

☆ 今に至るまで5つの局面があったという。「民主化」「政治化」「軍事化」「国際問題化」そして「アル=カーイダ化」。

☆ そもそもは「アラブの春」が始まりだという。アラブの長期政権が次々と倒されていった出来事だ。シリアも例外ではなかったが、シリアでは政権は倒れなかった。本書ではその要因も分析している。ただ、この時政府が行った弾圧が体制派と反体制派の武力衝突をエスカレートさせていったという。どうも「独裁政権」対「民主勢力」というような単純な図式ではないらしい。

☆ 「民主化」がやがて権力争いになり、それが軍事衝突となる。これに外国が絡んでくると事態は一層複雑になる。何が「正義」なのか、まったくわからない。

☆ 本書ではアサド政権についても言及している。「世襲共和制」というのは初めて聞く言葉だった。北朝鮮も似たようなものなのだろうか。現大統領のアサド氏と元大統領の父親のアサド氏との対比が興味深かった。後継とみなされていた長男が事故死して、眼科医を目指していた次男が後継となったという。


☆ ところで代理戦争の様相を帯び泥沼化していくシリア。これからどうなっていくのだろうか。 
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村上春樹「パン屋再襲撃」

2018-04-14 14:16:55 | Weblog
☆ 村上春樹さんの短編集「パン屋再襲撃」(文春文庫)から表題作を読んだ。

☆ 哲学的な自問から始まる。この段階で怠惰を感じたら先へは進めない。専門書の「まえがき」のように作品を読み終わって改めて読むと何某かの道理が伝わってくるようなものだ。

☆ 主人公はある深夜、どうしようもない空腹感を覚えた。このあたりはカフカの「変身」のようで、いきなり事件が起こる。現在、法律事務所に勤める主人公はかつて貧窮のあまりパン屋を襲撃したことがあったという。そのことを妻に話したばかりに、奇想天外な冒険劇が始まる。

☆ 夫はかつて「パン屋を襲った」という呪縛にとり憑かれている。この呪縛を解くには再びパン屋を襲わなければならないというのだ。そして今度のターゲットは大手ハンバーガーチェーン。襲撃の様子は映画「パルプ・フィクション」のシーンのようだ。

☆ さてこの理不尽な襲撃の結末は。夫婦の空腹が満たされ、眠りについたことは間違いなさそうだ。
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