じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

遠藤周作「ヴェロニカ」

2018-04-13 21:09:18 | Weblog
☆ 遠藤周作の短編エッセイ集「聖書の中の女性たち」(講談社文庫)から「ヴェロニカ」を読んだ。

☆ この作品、遥か昔に中学校の国語の教科書に載っていた。ゴルゴタの坂道を70キロもの十字架を背負いながら登っていくイエス・キリスト。長期間の拷問ですでに体力は奪われ、進んでは倒れる。苦悩の表情を浮かべる彼に群衆は容赦なく唾を吐き石を投げる。そんなとき、一人の女性が彼に駆け寄り、血と汗に汚れた彼の顔をぬぐった。「罪人」を助けることによって彼女自身が危うくなるかもしれない。しかし、彼女はそうせざるを得なかったのだ。彼女の名前がヴェロニカだといわれる。

☆ その時のイエスの安堵の表情が印象的だ。

☆ エッセイはもう一つのエピソードで締めくくられている。大戦中、フランスの村に傷ついたドイツ兵が舞い込んだ。彼を見つけた女性は、彼を敵兵として差し出すべきか、それともかくまって傷の手当てをするか葛藤する。そして彼女は後者を選んだ。しかし、そのことは他の知るところとなり、ドイツ兵もそして彼をかくまった彼女もリンチの末、殺されてしまう。

☆ 群集心理の恐ろしさ。そして、群集心理の中にあっても「人」として為すべきことをする人の存在。それが男性ではなく女性であったことに作者は感動する。ここにもヴェロニカがいたと。

☆ 以前、アーレントの作品でアイヒマンのことを知った。淡々と事務作業のようにユダヤ人の虐殺を遂行した人だ。逮捕されて見ればごく普通の人だったという。彼をその行為に駆り立てたものは何だったのだろうか。

☆ 私たちの中にも「ヴェロニカ」は存在する。どのような状況であれそれを見失わないように心がけたいと思った。
コメント

破廉恥

2018-04-13 16:43:07 | Weblog
☆ 男性にとっては厳しい時代になってきた。週刊新潮は財務次官の発言とする音源を公開した。

☆ どういうシチュエーションでの発言なのだろうか。酒の席での軽口なのか。記者相手というのは、はめられたのか。そうとしても官僚機構のトップにあるような人材がこんなことではめられてては、特定秘密も何もあったもんじゃない。

☆ お得意の「記憶にない」で逃げるか。それはそれで、そんな健忘症の人に仕事が務まるのかと批判を浴びる。

☆ 文書書き換え問題の火の粉が、思わぬところに飛んできたということか。

☆ おまけに、元首相秘書官の「記憶」もどうも危うい。エリートは言い訳が下手。
コメント

「ウォールストリート・ダウン」

2018-04-13 09:59:54 | Weblog
☆ 映画「ウォールストリート・ダウン」(2013年)を観た。

☆ 「・・・ダウン」という題名が最近目につくが、原題は「Assault on Wall Street」、ウォールストリートでの「攻撃」という意味だ。

☆ 現代アメリカの健康保険制度の不備、強欲資本主義のもと、富を蓄積する人々と搾取される人々。時代はリーマンショックの頃。舞台はウォールストリートの証券会社(投資銀行)。

☆ 元海兵隊のジム・バックスフォードは警備の仕事に就いている。妻の病気で多額の治療費がかかる。日本のような高額医療制度などはないようだ。少しでも利潤を得ようとジムは投資に手を出するが、証券ショックですべてを失い、さらに追加の費用まで要求される。解決を委ねた弁護士はカネだけとって手を打たず、地方判事補は多忙を理由に会おうともしない。ブルーカラーの窮状など誰も顧みないのだ。銀行は融資を断り、会社には解雇された。見るに見かねた妻は死を選ぶ。遂に、ジムはキレた。

☆ 立場によって評価は分かれそうだ。ジムの行動は私憤を晴らすための暴力であり「テロ」ともいえる。法治国家ではあってはならないことだが、「法で裁けぬこの世の闇を・・・」ということで、危険な爽快感がある。

☆ ジムの行動をわがまま、身勝手な暴力と捉えることもできる。投資である以上リスクはわかっていたはずだ。ブローカーや証券会社を詐欺師呼ばわりするが、そのカラクリに気づかなかった自分自身に反省はないのかと。

☆ 最後、ジムは証券会社のオーナーに資本主義のカラクリを暴露させる。弱肉強食、それが資本主義で、軍産共同体にも言及する。
コメント