児童虐待―ゆがんだ親子関係 (中公新書) | |
池田 由子 | |
中央公論社 |
★ 本棚にあったので池田由子さんの「児童虐待 ゆがんだ親子関係」(中公新書)を読んだ。
★ 著者は心理学者で医学博士。初版は1987年だから30年あまり前に書かれたものだ。
★ 「児童虐待とは何か」「児童虐待の歴史」に始まり、身体的虐待、性的虐待、ネグレクトなど臨床例が紹介されている。
★ 虐待をする親の特性について知りたいと思ったが、その点は物足りない。新書ゆえか。
★ 1980年代、児童虐待への関心はあったようだが、法的な整備や対応策は不十分だった。それから月日は流れ、児童相談所の権限もかなり強化されたが、児童虐待の事例は後を絶たない。むしろ人々の関心の高まりが認知件数を増やし児童相談所が機能を失っているのではないかとさえ危惧される。
★ 事故や災害など緊急時の対応であるトリアージができれば良いのだが。担当官の経験と勘だけが頼りか。
★ 「いじめ」と「ふざけ」の識別が難しいように、「しつけ」と「虐待」の識別も難しいようだ。子どもの命が第一という点では異論はないだろうが、家庭という密室、家族関係にどこまで立ち入るのかが難しそうだ。
★ 今朝の「天声人語」、千葉の事件を取り上げ、夫の暴力から逃れるために娘への暴行を容認していた母親の証言を紹介、さらに父親の恫喝に屈した教育委員会や児童相談所を非難している。守るべきものは何なのか、考えさせられた。