卍の城物語

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大日本人

2007-07-02 22:15:02 | 映画
久し振りに映画館に行こうと思った。
「マトリックス・リローデッド」振りである。単純に見たい映画がなかったからである。

全盛期のハリウッド映画は勢いを急激に衰え、ネタ不足に陥った。
日本映画が活気であるというが、ハリウッド映画の減衰が大きな要因であり、テレビドラマの延長のような作品が跋扈し、ロリコンファンタジーアニメが世界的にヒットしたと幼稚なアニオタが騒いだところで、結局はここ何年も日本映画に変わりはない。

私は映画が大好きだけど、CMで、観客が「感動して涙が止まりませんでした」などと姑息な手段で動員を促そうとするゴマスリ映画など見るに値しない。
配給側も観客も、落ちるところまで落ちたなと思った。ハリウッドは死んだと確信した。

松本人志が映画を撮っているとはかなり前から知っていた。本作の共同脚本である松本・高須のラジオ番組「放送室」で喋っていたので。
松っちゃんはベテランらしからぬ超多忙なスケジュールで映画制作をしていた。
そして映画は完成し、カンヌ映画祭の正式招待作品となった。そしていよいよ一般公開された。

殆どの映画をレンタルで済ませる私にとって、映画館にまで足を運ぼうと思ったのは、松っちゃんのプロモーション活動からである。
あの松っちゃんが「笑っていいとも」や「さんまのまんま」に出演していたことに衝撃を受けるも、それほど多くの人に自身の作品を見て欲しいのだと感じたからである。
映画の内容をほとんど話さなかったことから、もったいぶっているのではヤキモキした。
しかし、事前の知識・情報を一切知らずに、フラットな状態で見て欲しいとの本人のコメントから、そのために、プロモーションに徹した松っちゃんの心意気に感服し、映画館で観ることに決めた。

しかし、ワーナーマイカルシネマズ弘前で上演してない・・・。
一番近くて、柏のシネマビレッジ8だと分かり、レイトショー狙いで夜8:45から上演。
50人ほど収容の小さな客席。そこには、私を含め、オッサン四人しかいなかった。
却ってリラックスして観れてラッキー。というわけで始まる。

敢えて、おおまかなストーリーを書きます。
先祖代々から、謎の巨大宇宙怪獣を、強大な電力で巨大化して倒してきた大佐藤一家。時代錯誤と世間から叩かれながらも、現在唯一人「獣」と戦っている男の姿を、インタビュー形式で送る悲喜劇。

淡々と描かれる男の日常。セリフひとつひとつに重きを置く演出。
そして悲しき男を演じる役者・松本人志と、他の多くの無名役者たちの演技。
戦闘シーンでは迫力のCG。世界背景、歴史・伝統観、生命・倫理観、業界体質などを暗に含ませた脚本。その多くが秀逸である。

映画がクライマックスに差し掛かるまでは凄く良かった。どんな終わり方をしてくれるのかと期待していたら・・・、正直ガッカリなラストでした。

総合的な感想は、イマイチだったなと。個人的にラストシーンを重要視するタイプなので、あの終わり方に納得できないだけで、途中までは本当に良かった。プッとか、クスクスした笑いの連続であり、老人ホームのシーンなどは泣けてくる。
無駄な伝統という面は、現在の日本の最も考えるべき情緒の問題に深く共感。
子供の獣の、世間の偽善的倫理観の表現もよかった。

それよりなにより、一番評価されるべきは、演技力である。特に松っちゃんの演技は素晴らしい。
セリフまわしはそうでもないが、やっぱり独特の「間」の取りかたである。そして目で訴える演技などは感動すらした。
助演のUAの演技も素晴らしかった。映画に何本か出てることは知ってたけど、ここまで上手いとは知らなかった。
他にも板尾、四代目の爺様(撮影中に亡くなってしまった)、防衛庁幹部、離婚した嫁、スナックのママなど、無名の役者たちの演技がまた最高であった。
インタビュー形式だから、本当にドキュメンタリーみたいなナチュラルな演技だった。埋れておくには勿体無い実力役者たちの今後に期待。

この記事を書く前に、この映画のレビューを見た。本当に賛否両論だね。極端に100点か、0点とか、ざらにいた。
ネットのレビューなので、大したこと書いてないし、「映画代返せ」などの暴論も多くあった。
お前自信の意思決定を否定している阿呆に評価される映画監督も大変な商売である。
いろいろ書いてあったけど、演技の素晴らしさについて全く書いてなかった。どこを観ていたのだろうか?
確かに暗喩たっぷりの小難しい映画だけど、かしこまったり、見抜いてやろうなどという感情が邪魔して「作品」としての評価がなされていない。
本作のCGは、ハリウッド的CG映画に対するアンチテーゼである。それぐらいは理解するべきだし。
多くあったコメントで、「映画でやる必要はない」とのこと。これは全然違う。テレビと映画は影響力が違うのだ。
本人も言っていたが「映画になれば海を越えれる」と。DVDとして作品を出したほうが、ローリスクハイリターンだとも言っていた。それを映画としてのいち作品として、世界中で見ることが出きるが、当然非難される立場を受け止めなければならない。

「ごっつええ感じ」の「トカゲのオッサン」から「ビジュアルバム」路線といった感じの内容で、ベタベタのインパクトある笑いはない。
小さな非現実の人間のおかしさや悲しさが単純に面白いのに、「笑えなかった」という発言もどうかと思う。
映画で「アホアホマン」や「ゴレンジャイ」をやればよかったのかと問いたい。
といっても、私がこの作品に点をつけるとしたら60点くらいだけどね。

もうひとつ感じたことは、「エヴァンゲリオン」みたいだなと。
キモチワルイ怪物に、ひ弱な武器一つで戦うスタイル、そしてラスト。
本作のラストは意図して作っただろうけど、ついつい「予算切れ?」とエヴァの悪夢が脳裏をよぎった。
そんなわけはないんだけど、あのラストは観客側を不安に陥れたと思う。言わんとしてることは勿論理解しているけど、結局曲解されたら何も意味がないわけだし。それは個々の判断ですけど。

天才・松本人志の第一回監督作品として、かなりの高いハードルになって、しかも内容は秘密ということで、多くの動員を記録するも、評価は真っ二つに割れた。
私の過去・現在のお笑いの一番はいまだにダウンタウンだけど、松っちゃんの信者というわけじゃないし、この作品はイマイチだったと声を大にして言える。
ま、これからいろいろな映画を作っていけばいいわけだし、莫大な予算も、もはや回収できたみたいで、映画ならずとも今後に期待しましょうね。

最後に一言。「松本人志は誰よりも人の弱さを知っている。」

オススメ度(映画評価)・☆☆☆

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