見もの・読みもの日記

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2014年4月@東京:栄西と建仁寺(東京国立博物館)

2014-05-09 22:56:03 | 行ったもの(美術館・見仏)
東京国立博物館・平成館 開山・栄西禅師 800年遠忌 特別展『栄西と建仁寺』(2014年3月25日~5月18日)

 京都最古の禅寺・建仁寺を開創した栄西禅師(1141-1215)の800年遠忌にあわせ、栄西ならびに建仁寺、さらに全国の建仁寺派の寺院などが所蔵する宝物を一堂に集めた展覧会。

 まず導入部でインパクトのある肖像彫刻と向き合い、そうそう、栄西禅師といえばこの平たい頭頂部、と思い出す。また、この展覧会では、典拠に基づき、栄西を「ようさい」と読む、という説明を読み、ふむふむと納得。ふと後ろを振り返ったら、巨大な展示ケースの中に、寺院の方丈内部らしい空間が再現されていて、その規模にびっくりした。

 毎年4月20日、栄西禅師の生誕の日に行われる四頭茶会(よつがしらちゃかい)の空間を再現したものだという。襖絵に囲まれた室内の正面には、栄西像と龍虎図を掛ける。三幅対の前の卓上には銅製のいわゆる三具足。手前に、もう一つ螺鈿の卓があって、どっしりした円筒形の青磁香炉が載っている。また、縁高の丸い盆に、使い込まれた天目茶碗が無造作に並び、銅製のポット(浄瓶)の細長い注ぎ口には、茶筅がひっかけてあった。

 実際の四頭茶会の様子がモニタに映し出されている。4人の主客(四首頭)が32人の相伴客に給仕するのか。給仕役として動き回るのは全てお坊さん。お茶受けはピリ辛の蒟蒻と紅白の菓子。客が捧げ持った天目茶碗に茶筅を差し込んで掻き混ぜ、片手でお茶を点てる。不作法なようだが、これが作法だという。初めて見る光景で、短いビデオを食い入るように眺めてしまった。

 さて、少し心を落ち着けて、栄西禅師に関する資料を見て行く。仁安3年(1168)平家の庇護のもと、半年足らずではあるが南宋に留学(厳島神社造営の年だ)。清盛の死後、衰退する平家に代わるパトロンを見つけ、文治3年(1187年) 再度の入宋を果たす。いつの時代も交渉力や現実的な世渡りの才覚がないと、高僧にはなれないんだなあ。

 建仁寺派の僧侶たちの名宝では、一山一寧の墨蹟『雪夜作』(建仁寺蔵)に惹かれた。私好みの軽やかな草書。いま展示図録を見ていると、私の見たかった書画作品は前期に多かった気がする。うう、ちょっと残念。狩野山楽の淡彩墨画『四季耕作図』はよかったけど、色数の多い『狩猟図』が見たかったな。どちらも正伝院の襖絵。肖像彫刻は多数出ていたが、どれも足元に「沓」が置いてなかったのは何故なんだろう。

 建仁寺本坊方丈の障壁画は海北友松筆。前後期に分けて展示されており、後期は「雲龍図」が二匹揃いで登場。阿吽である。爪は三つなんだな。方丈の中央(室中)を飾る「竹林七賢図」は左半分だけだが、ん?四頭茶会の再現展示なら全部見られるのかな?と思い、もう一度、会場の冒頭に戻ってみたが、やっぱり全部は見られなかった(再現展示は、部屋の奥行きを半分にしてある)。

 仏像はそんなに多くなかったが、六道珍皇寺の小野篁像が出ていたのが珍しかった。江戸時代の作だが、押し出しが立派でよい。付属の冥官像と獄卒像もよい。照明の効果で玉眼の金目が妖しく、不敵に光る。道教系の絵画を数多く持っていたり、かなり不思議なお寺なのは、やっぱりパワースポットなのだろうか。

 友人から、宗達の『風神雷神図屏風』は最後だよ、と聞いていたので焦りはしなかったが、到達したときは、ああやっと、という気持ちだった。いつまで眺めていても飽きないけれど、逆に、いつでも頭の中にある作品。満足々々。

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