○畠山記念館 冬季展 開館45周年記念『懐石のうつわ-向付と鉢を中心に-』(2010年1月23日~3月22日)
私は「茶道」と言えば、お茶を立てて飲むことだと思っていたので、その前に供される「懐石(料理)」もお茶の一部であり、亭主の心遣いの見せどころであるということは、五島美術館の『向付(むこうづけ)』や根津美術館の『陶磁器ふたつの愉楽』など、最近の展覧会で、ようやく理解したところである。
しかし、懐石のうつわだけで、そんなに面白い展覧会になるかなあ、と思っていたが、意外と面白かった。最初に目に入ったのは、チラシにもなっている『織部手鉢』。四角い手付鉢で、最も織部らしい、銹絵と緑釉の組み合わせの意匠である。写真の印象よりも大ぶりなうつわで、大胆で清新、現代人が創ったようなデザインだ。盛られた料理を取りあっているうちに、底の模様がだんだん見えてくる、という解説を読んで、なるほどと思った。モダンといえば、仁清の『水玉透鉢』もすごい。穴だらけなのである。中に盛るものは亭主の智恵の見せどころ、とはいうけれど…。
乾山の『色絵絵替り土器皿』(~2/18展示)は、畠山記念館でも指折りの逸品だと思うが、畠山即翁が非常に大切にしていた品で、あるときは向付のうつわに使ったが、ずっと出しておくのも心配で、客が食べ終わるやさっと下げて代わりのうつわに交換したそうだ。今回の展覧会、このように実際に使用したときのエピソードや、料理を盛ってみた写真(美味そう~!)が添えられているのが、とても楽しい。ところで、私がこの乾山の色絵絵替り皿を使うなら、色のぶつからないものがいいと思うので、白一色の薯蕷饅頭か羽二重餅を選びたいと思う。どうかしら?
その隣りには、畠山即翁の『来客日記』が展示されていた。茶会の記録帳である。横長の大幅帳みたいなスタイルで、茶色のインクで印刷された見出しの下に、日時・場所・来客者名・献立・道具などが墨筆で記入されている(→参考:石川県立美術館「美術館だより」第236号/2003)。展示箇所は、昭和26年1月7日の記録で、これを「可能な限り再現した」懐石のうつわが、通路を挟んだ大きい展示ケースに並んでいる。うーん、着想は面白いのだが、ちょっと分かりにくかった。墨書が判読しにくいのと、完全な再現にはなっていないためだ。「懐石 飯椀 真小丸」「向付 鯛こぶ〆 うつわ 祥瑞開扇(?)きせと皿 交互ニ」とあり、確かに再現展示は『真塗小丸懐石椀』に『黄瀬戸輪花平向付』。でも「焼物 まながつほ 福ノ字呉寿鉢 青赤二枚(?)」と読めたように思ったが、再現展示では『呉須赤絵金花鳥鉢』になっていた。このへん、該当のうつわは散逸しちゃったのかなあ。ちなみに、非常に興味深かった『来客日記』だが、1階ロビーに縮刷複製品が展示されていて、自由に手に取って見ることができる。実はミュージアムショップの売りものなのだ(35,000円)。ぱらぱらめくってみたら、益田孝とか田中親美とか、いろいろ有名人の名前が散見される。実は、最近、茶会記なるものを読み始めたところでもあり(感想はいずれまた)、非常に興味深かった。国会図書館のOPACやNACSIS Webcatを探してみたが、残念ながら、どこにも所蔵がなかった。買っておけよ~日本の図書館。
さて、2階の展示室だが、私が今回の白眉だと思ったのは、いちばん奥の展示ケースの乾山作『色絵牡丹文四方皿』→同『銹絵染付絵替り四方向付』→楽道入作『柚子味噌皿』の3点の並び。『牡丹文四方皿』は、緑釉に黄の縁取り線で描かれた深紅の牡丹が重厚で見事。惜しむらくは、真上から覗き込みたいのに、展示台が高すぎて、それができないこと。隣りの『銹絵染付』は側面が見どころなので、ちょうどいいのだけど。磁州窯っぽくて、もっとモダン。それぞれに漢詩句(?)が書かれているのが気になる。その隣りの赤楽焼の『柚子味噌皿』は、一度見たら忘れられない、乱暴力というか、縄文力というか…道入(ノンコウ)って、こんな皿もつくるんだ、とびっくりした。
絵画作品は2/20から展示替え。現在は、新春にふさわしく、おめでたい作品を揃えており、後半は、本格的な春を迎える作品に替わるようだ。こんなところにも、茶の湯の精神である「おもてなし」の心が生きているように思われて、最後に、1階ロビーの大きな木彫りの即翁像(平櫛田中作)に「今日はありがとうございました」と挨拶して帰りたくなる。
私は「茶道」と言えば、お茶を立てて飲むことだと思っていたので、その前に供される「懐石(料理)」もお茶の一部であり、亭主の心遣いの見せどころであるということは、五島美術館の『向付(むこうづけ)』や根津美術館の『陶磁器ふたつの愉楽』など、最近の展覧会で、ようやく理解したところである。
しかし、懐石のうつわだけで、そんなに面白い展覧会になるかなあ、と思っていたが、意外と面白かった。最初に目に入ったのは、チラシにもなっている『織部手鉢』。四角い手付鉢で、最も織部らしい、銹絵と緑釉の組み合わせの意匠である。写真の印象よりも大ぶりなうつわで、大胆で清新、現代人が創ったようなデザインだ。盛られた料理を取りあっているうちに、底の模様がだんだん見えてくる、という解説を読んで、なるほどと思った。モダンといえば、仁清の『水玉透鉢』もすごい。穴だらけなのである。中に盛るものは亭主の智恵の見せどころ、とはいうけれど…。
乾山の『色絵絵替り土器皿』(~2/18展示)は、畠山記念館でも指折りの逸品だと思うが、畠山即翁が非常に大切にしていた品で、あるときは向付のうつわに使ったが、ずっと出しておくのも心配で、客が食べ終わるやさっと下げて代わりのうつわに交換したそうだ。今回の展覧会、このように実際に使用したときのエピソードや、料理を盛ってみた写真(美味そう~!)が添えられているのが、とても楽しい。ところで、私がこの乾山の色絵絵替り皿を使うなら、色のぶつからないものがいいと思うので、白一色の薯蕷饅頭か羽二重餅を選びたいと思う。どうかしら?
その隣りには、畠山即翁の『来客日記』が展示されていた。茶会の記録帳である。横長の大幅帳みたいなスタイルで、茶色のインクで印刷された見出しの下に、日時・場所・来客者名・献立・道具などが墨筆で記入されている(→参考:石川県立美術館「美術館だより」第236号/2003)。展示箇所は、昭和26年1月7日の記録で、これを「可能な限り再現した」懐石のうつわが、通路を挟んだ大きい展示ケースに並んでいる。うーん、着想は面白いのだが、ちょっと分かりにくかった。墨書が判読しにくいのと、完全な再現にはなっていないためだ。「懐石 飯椀 真小丸」「向付 鯛こぶ〆 うつわ 祥瑞開扇(?)きせと皿 交互ニ」とあり、確かに再現展示は『真塗小丸懐石椀』に『黄瀬戸輪花平向付』。でも「焼物 まながつほ 福ノ字呉寿鉢 青赤二枚(?)」と読めたように思ったが、再現展示では『呉須赤絵金花鳥鉢』になっていた。このへん、該当のうつわは散逸しちゃったのかなあ。ちなみに、非常に興味深かった『来客日記』だが、1階ロビーに縮刷複製品が展示されていて、自由に手に取って見ることができる。実はミュージアムショップの売りものなのだ(35,000円)。ぱらぱらめくってみたら、益田孝とか田中親美とか、いろいろ有名人の名前が散見される。実は、最近、茶会記なるものを読み始めたところでもあり(感想はいずれまた)、非常に興味深かった。国会図書館のOPACやNACSIS Webcatを探してみたが、残念ながら、どこにも所蔵がなかった。買っておけよ~日本の図書館。
さて、2階の展示室だが、私が今回の白眉だと思ったのは、いちばん奥の展示ケースの乾山作『色絵牡丹文四方皿』→同『銹絵染付絵替り四方向付』→楽道入作『柚子味噌皿』の3点の並び。『牡丹文四方皿』は、緑釉に黄の縁取り線で描かれた深紅の牡丹が重厚で見事。惜しむらくは、真上から覗き込みたいのに、展示台が高すぎて、それができないこと。隣りの『銹絵染付』は側面が見どころなので、ちょうどいいのだけど。磁州窯っぽくて、もっとモダン。それぞれに漢詩句(?)が書かれているのが気になる。その隣りの赤楽焼の『柚子味噌皿』は、一度見たら忘れられない、乱暴力というか、縄文力というか…道入(ノンコウ)って、こんな皿もつくるんだ、とびっくりした。
絵画作品は2/20から展示替え。現在は、新春にふさわしく、おめでたい作品を揃えており、後半は、本格的な春を迎える作品に替わるようだ。こんなところにも、茶の湯の精神である「おもてなし」の心が生きているように思われて、最後に、1階ロビーの大きな木彫りの即翁像(平櫛田中作)に「今日はありがとうございました」と挨拶して帰りたくなる。