見もの・読みもの日記

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東海岸見聞録(7):NY続き/MoMAなど

2006-11-26 11:19:32 | ■USA東海岸見聞録2006
 以下は全くの観光記。
 
 昼食のあとは、おのぼりさんらしく、エンパイアステートビルに登ることにする。入場券売り場で「Inside only, OK?」と言われても、私は事情が飲み込めなかったが、晴れている日は屋外展望台に出ることができるらしい。この日は、次第に天気が崩れて、風が激しくなっていたので、ガラス越しに外を眺めることしかできなかった。

 流れる雲と霧のせいかも知れないが、上から眺めたニューヨークは、意外と古さびた街だった。ニューヨークというのは、最先端でなければ生きていけないような、ピカピカの街だと思っていたので、私の趣味とは相容れるところがないだろうと思って、敬遠していたのだが、少し愛着を感じるようになった。

 それから、地下鉄でMoMA(ニューヨーク近代美術館)に向かう。閉館時間の17:30まで、ちょうど1時間くらい。「図書館に長居しすぎたなあ」と言い合っても、いまさら仕方がない。

 5階の絵画ギャラリーから、順に降りていくことにする。第1室に入ってキョロキョロしていると、ほら、というように、上司に合図された。MoMAに行く話になったとき、「私はこれが見たい!」と宣言していた、アンリ・ルソーの『眠れるジプシー女』である。いやー嬉しい...思えば、10月に世田谷美術館の『ルソーの見た夢、ルソーに見る夢』を見に行ったときは、まだこのアメリカ出張の話も不確実な段階で、自分がニューヨークまで行き、この絵に向き合えるとは思ってもいなかった。

 ふと気がつくと、カメラを構えて展示作品を撮っている参観客がいる。そうか。ここは、フラッシュを焚かなければ写真を撮ってもいいのだ、と気づいて、私も写真を撮っていくことにする。 



 この絵には、ルソーらしい深い緑の植物の繁茂がない。『夢』や『蛇使いの女』のように裸身をさらした熱帯の女神もいない。しかし、私はこの絵に濃厚なエロティシズムを感じてしまう。獰猛なライオンの前に横たわるジプシー女の、無心で無防備な身ぶり。その様子に誘われ来たったライオンは、猛獣らしくひとくちに女を喰い殺してしまうこともできるはずだが、これから起こる惨劇に、むしろ女以上におののいているようにも見える。ジプシー女とライオンがあらわす、どこまでも受動的な無邪気さと、閃くような獣性は、ルソー自身の二面性であるとも言えよう。

 このほか、ゴーギャン、ゴッホ、ピカソなど、意外と「古典的」な名作が多くて、懐かしかった。それにしても、日本の美術館って、どうしていつもあんなに混んでいるのかなあ。

 3階のギャラリーでは『Manet and the Execution of Maximilian(マネとマキシミリアンの処刑)』という特集展示が行われていた。マキシミリアンは、もとオーストリアの大公。1855年、メキシコの革命勃発に際して、フランス、イギリス、スペインの3国が内政干渉に乗り出し、フランスが押し付けた傀儡政権の皇帝である(溥儀みたいだ)。1867年、革命が再燃し、フランス軍は撤退。残されたマキシミリアン皇帝は、新生メキシコ共和国の軍事法廷により、「国家反逆の罪」で銃殺された。マネはこの衝撃的なニュースを絵画にしたが、のちに自らバラバラに切断してしまった。さらに後日、画家のドガが集めて再構成し、貼り合わせたという(以上、下記のサイトを参考にさせていただきました)

■マキシミリアン(カフェ・ド・エルサイトウ)
http://www.el-saito.co.jp/cgi-bin/el_cafe/cafe.cgi?mode=res&one=1&no=2922

 ゴヤの『1808年5月3日』(ナポレオン軍によるスペイン民衆の処刑図)との比較など、興味は尽きなかったのだが、警備のおじさんが「We will close!」と大きな声で呼ばわりながら回ってくる。やむなくギャラリーを出たあと、18:30まで開いているギフトショップでお買いもの。ぶ厚い収蔵品カタログに手を出すのはよそうと思っていたのだが、『Manet and the Execution of Maximilian』の展示図録に目がとまり、「買っちゃえば?」というそそのかしに乗ってしまう。

 そして、次第に強くなる雨の中、ブロードウェイに急いだのである。

■MoMA:The Museum of Modern Art(ニューヨーク近代美術館)
http://www.moma.org/

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