見もの・読みもの日記

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踊る、競う、愉しむ/遊びの流儀(サントリー美術館)

2019-07-08 22:23:07 | 行ったもの(美術館・見仏)

サントリー美術館 サントリー芸術財団50周年『遊びの流儀 遊楽図の系譜』(2019年6月26日~8月18日)

 美術のテーマとなった「遊び」に着目し、双六やカルタ、舞踊やファッションなど、男女が熱中した楽しみごとの変遷をながめ、特に近世初期の「遊楽図」における屈指の名品の数々を展観する。導入部には梁塵秘抄の有名な一節「遊びをせんとや生まれけむ」が掲げられ、蹴鞠の鞠が高く虚空に浮かんでいる。展示ケースの中には、鞠挟(まりばさみ)に据え付けられた蹴鞠。かと思えば、瀟洒な草花蒔絵双六盤(江戸時代)。本展は、遊楽の様子を描いた絵画・美術作品と、遊具そのものを並べて見られるところに醍醐味がある。小さな雀小弓(徳川美術館)には遊んだ跡がたくさんあった。永青文庫のレアな貴重品・三人将棋盤(漢代以降)も出ていた。

 絵画も初めて見るものがけっこう多かった。山口蓬春記念館所蔵の『十二ヶ月風俗図』(桃山時代)は、3月の鶏合、5月の印地打ち(と菖蒲葺き・更衣)など、まだ戦国の遺風を感じさせる。写真で見た12月の雪遊びは、ロールケーキみたいな雪玉をつくっていた。根津美術館の中国絵画『三星囲碁図』(元代)も記憶になかった。解説に登場人物の行為が「意味深」だと書かれていて、逆にどのへんが意味深?と考えてしまった。

 さて遊楽図屏風(特に邸内遊楽図)の系譜は、サントリー美術館の得意分野のひとつだと思うが、新しい発見がたくさんあって楽しかった。『婦女遊楽図屏風』は、ほとんどの登場人物が女性らしいのだが(例外的に野卑な下郎が2人?)、女性どうしでしっとり睦みあっている姿もあって、ちょっと百合っぽい。『邸内遊楽図屏風』は妓楼で戯れる男女で、左隻の端には混浴らしい湯殿も描かれる。大胆に足の腿を見せている(ように見える)女性も。

 この時期に描かれた輪踊りには独特の陶酔感があって好きだ。関節が溶けてしまったような柔らかな姿態。頭を低くして、顔を隠して踊り続ける男女が多い。

 逸翁美術館所蔵の『三十三間堂通矢図屏風』は六曲屏風に真一文字に三十三間堂を描く(気のせいか、三十五間ある?)。お堂の縁側の左端で矢を放つ人の姿。見物人の視線を追うと、的は画面の右に見切れているようだ。『祇園祭礼図屏風』や『賀茂競馬図屏風』は、実際の(現代の)お祭りの記憶がよみがえってきて、大好き。

 後半、階段を下りたスペースでは、双六・カルタに注目。西洋双六すなわちバックギャモンを遊ぶために作られた『清水・住吉図蒔絵螺鈿西洋双六盤』は、本展の一押し資料のひとつ。この内側の模様が、展覧会入口のバナーに使われているのだが、はじめ何だか全然分からなかった。伝・狩野山楽筆『南蛮屏風』はよく出るものだが、右隻の港に入って来る帆船の上では、西洋人たちが日本風の双六に興じている。図録に当該箇所の拡大写真が収録されており、彼らの表情の真剣さが分かって楽しい。

 囲碁・将棋・双六を「三面」と呼び、近世には婚礼調度にもなったというのは知らなかった。ということは、上流階級の花嫁は、当然、これらをたしなんだのだろうな。双六は、江戸時代後半から絵双六となって独自の発展を遂げ、ポルトガル由来のカルタからは、百人一首かるたやいろはかるたが生まれる。

 最後のテーマは舞踊とファッション。サントリー美術館の『舞踊図』は3面ずつ展示。そのほか前期には個人蔵の、後期には京都市所蔵の類似作品も展示される。奈良県立博物館の『踊り絵巻』は少ない色彩と素朴なタッチがかわいい。展示替え後も見たい。

 最後の最後、出口の前のパネルには、サントリー美術館の『誰が袖屏風』から取った、無造作に駒の散らばる双六盤の図像が使われていた。まるで「双六が終わるとき」を暗示しているみたいな、粋な終わり方。しかし大和文華館の『婦女遊楽図屏風(松浦屏風)』は後半(7/31-)展示なのか。これはやはり、もう一回来ないわけにはいかないだろう。

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