前回からの続きです。
1か月ぶりに我が家に試聴にお見えになったKさんが、はたしてどういう感想を述べられるか興味津々の中、初めにJBL3ウェイシステムを聴いていただいた。
ソースは「ヴァイオリン協奏曲」(モーツァルト:パールマン&レヴァイン)だったが、「JBLにしてはヴァイオリンが良く鳴ってますね」と、何だか気乗り薄の月並みな寸評。どうやら外交辞令のようで、残念。
次に本命のAXIOM80システムに切り換えた。「あれっ、この前と音が変わりましたね」。
したり顔で前回のブログで述べたような変更点を“とくとく”と解説(笑)。なお、前回の試聴のときに指摘されていた低音域のスピードの遅れを解消するために、エンクロージャーの下部に開けた4つのポートをすべて密閉した点も補足したが、この理由を詳細に説明すると長くなるので省略~。
どうやら、やっと本腰を据えて聴く態勢に入られたようで、やおら持参されたCDを取り出された。
アルゼンチンのフォルクローレ歌手「ヒナマリア・イダルゴ」。
ソプラノの中でも一番高い音域とされる「コロラトゥーラ」に分類される歌声の持ち主である。コロラトゥーラといえば、大好きなオペラ「魔笛」(モーツァルト)の「夜の女王」が有名。
このイダルゴはKさんが30年来のファンだそうで、ようやく最近になってお目当てのCDを見つけ、ニューヨークのCDショップからわざわざ取り寄せたという稀少盤。さっそく聴かせていただくと、これがものすごい美声の持ち主だった。
まるで天井まで突き抜けるように高い方まで音域が伸び、しかも透き通った声。これは凄い。世界にはまだ自分の知らない名歌手がいるんだと、ほとほと感じ入った。
Kさんの愛聴盤は村田英雄からシェリングの弾くバッハまで実にバラエティに富んでいて生来の音楽好きを窺わせる。
Kさんから「もう少し低音域のボリュームを落としてくれませんか」との注文が入った。ボーカルの周波数帯域は男性、女性合わせておよそ100~1万ヘルツほどだが、伴奏の低音域部分が中音域の方まで邪魔して音が被(かぶ)ってくるので、その辺を意識してのご注文。
いいも悪いも含めてマルチ・アンプ・システムならではの現象で、スケール感と分解能(清澄感)が両立できれば理想だが、ソースによって録音状態も違うし、なかなかグッドバランスが取りにくいのが悩みの種。
自分の知っている範囲だが「AXIOM80」愛好者は、音量ボリュームを出来るだけ控えめにする傾向がある。
6月1日に試聴した福岡のSさんもそうだし、Kさんもそう。先日のブログで瀬川冬樹さんのことを紹介したが、その中で「80~8000ヘルツの帯域がしっかり出ていれば、人はいい音に感じる」とあった。
まるで「AXIOM80」のためにあるような言葉で、音のスピードと切れ味、音色と彫の深さで勝負するユニットだからこれは十分うなずける。けっしてオーディオ的に周波数レンジを満たして楽しむスピーカーではない。
「AXIOM80がここまで鳴ればもう十分ですよ。正直言ってオーディオは4割で、残りの6割は音楽です。後はもっと、いいソフトを見つけて音楽を楽しみましょうよ」と、Kさん。
まったく、望むところです。これからはどちらがより多くの“いいソフト”を見つけるか、その競争をやりましょう!