1週間ほど前に購入した「由紀さおり」(敬称略)のアルバム「1969」にすっかり”はまって”しまった。
このところ毎日のように聴いているが、万一、取扱い上のミスでこのCD盤に傷を入れたらたいへんだと、この際、予備としてコピー盤を作っておくことにした。
これまでに苦い経験があって、ひときわ大切にしていたウィーン・フィルのフルート奏者「ウォルフガング・シュルツ&ウィーン弦楽四重奏団」による「魔笛」のCD盤を裸のまま落としてしまい、アンプのトランスの角に当たって傷が入って、使いものにならなくなり、ショックのあまり寝込んでしまう(?)ほどだったので念には念をいれることにしたもの。
コピーは「著作権法」で禁止されているが、たしか自分だけで楽しむ分には許されているはず。
さて、こういう大切な愛聴盤をコピーするとなると、おのずからコピー先のCDーR盤もそれなりのものにしてあげたいものである。
そこで久しぶりにエース級の出番となって「CD-R for master」(以下、マスター用)の登場である。
発売元の「太陽誘電」によると、
〇 エラーレート、ジッター等を極限まで抑えるため、特別に製造した究極のCD-R
〇 新開発のプロテクトシートが傷やほこり、紫外線からディスクの記録面を保護
〇 マスターディスク制作のために特別に製造したCD-Rの品質を記録の直前まで維持
とある。
ずっと以前に購入したものだが、たしかその頃は1枚が400円前後したような記憶があり、(自分のような)貧乏人にはうかつに使えないCD-Rである。
定評のあるパソコン用外付けCDドライブ「プレクスター」により、読み込み速度「10倍速」、書き込み速度「4倍速」でコピー作業をしているうちに、ふとCD-Rの材質によってコピー盤の音質はどれくらい変わるのだろうかと、思いついた。
現在、3種類のCD-R盤を持っていて、ほかの2種類のうちの一つは同じく太陽誘電の「CD-R for AUDIO」(以下、オーディオ用)で、開発者ゆえの高信頼性を標榜しており、まあCD-Rの中では中級品といったところで、たしか1枚が150円程度かな、そして、もう一つは量販品で1枚50円程度のデータ用のCD-R盤(以下、データ用)である。
ちなみに、CD-R盤を購入するときは開発者ゆえの初期投資があったことだろうとメーカーに敬意を表して「太陽誘電」ブランド(「That’s」)を努めて購入することにしている。これは奈良県にお住いのオーディオ仲間のMさんからのアドバイスによるもの。
さて、読み込み速度、書き込み速度がすべて同じ条件で3種類のCD-R盤が出来上がった。
さあ、いいよ試聴開始である。こういうときは湯布院のAさんのご意見もぜひ参考にしたいところなので連絡してみると「それは面白い実験ですね、私も大いに興味があります」というわけで、11日(日)16時から一緒に試聴ということに。
試聴した曲目は「1969」のアルバムの中から、9トラック目の「イズ・ザット・オール・ゼア・イズ?」1曲だけに絞った。この曲目はリズム感といい、スイング感といい大のお気に入りでAさんには悪いが繰り返し聴いてもあまり苦にならないから。
始めにオリジナルCDを聴いて、次に「データ用」「オーディオ用」「マスター用」の順に聴き、そして最後に再度オリジナルCDを試聴した。
当事者(自分)の感想よりもAさんのコメントの方が「信憑性」があるし、分かりやすいと思うのでそのまま記載してみよう。
〇 データ用はまったく響きが良くないです。中域の情報量が少なくて狭いし、オリジナルとは全然違います。全体の三角形が小さすぎます。
〇 オーディオ用は随分良くなりました。これは音楽になっています。しかし、ちょっと品がないというか、色気が足りませんね。由紀さおりが素っ気なく歌っている印象を受けます。
〇 マスター用は最初のピアノの音からして違います。すごい情報量です。これだとオリジナルに引けを取りません。解像力はちょっと落ちますが、むしろ声の「品」はこちらのほうが優っている感じです。
オリジナルの方が安っぽく聞こえます。CD-Rの素材の良さが際立っていますね。キメが細かく、なめらかでむしろ総合力ではオリジナルより上ではないでしょうか。CDメーカーもこのCD-Rの素材を使って録音して販売してくれるといいのですが。
ただし、繊細な「Axiom80」で聴くからこの違いがはっきり分かりますが、別のシステムではおそらく分かりずらいでしょうね~」。
最後に自分からほんの一言だが、「マスター用は”由紀さおり”の声がイギリス系の”いぶし銀”のような光沢を帯びて聴こえた」とだけ述べておこう。
参考までにCD盤の目方を測ってみると、「データ用」、「オーディオ用」、「オリジナル」がいずれも同じ19g、そして「マスター用」が20gだった。この1gの差に何か秘密でも隠されているのだろうか。
仮に「1969」のアルバムが世界中で500万枚売れたとして、CD素材が200円違うだけで
10億円のコストが浮くので、メーカーも簡単には妥協しないだろうが、(メーカーが)音質にも配慮してくれる時代の到来を期待したいものだ。
それにしても驚いた!
オリジナルよりも「コピーCD」のほうが”音がいい”なんて、いったいそういうことがあるのだろうか。(あくまでも我が家のシステムで聴けば、という条件つきだが。)
音質に関しては日頃、オーディオ機器の方に目を奪われがちだが、CD盤の素材の方も大切とはまったくの盲点だった。これから極め付きの愛聴盤はすべて「マスター用」CDーRにコピーしなければいけないのか。さあ、たいへん~。
前述したように傷が入った「シュルツ」のオリジナルCD盤もすぐに「マスター用」にコピーしてみたが、「プレクスター」には独自のデータ修復機能があるとみえて見事に雑音を克服して完全復活。オリジナルを上回る「コピーCD」に変身~。
これぞまさしく「怪我の功名」。
由紀さおりの「1969」もこれからは「マスター用CD-R」で聴くことにしたが、念には念を入れて「読み込み速度2倍速」「書き込み速度4倍速」の限界値により再度「マスター用CD-R」を作成した。ただ、ちょっと時間がかかり過ぎたのには閉口した。
さ~て、オリジナルCD盤はどのように処分しようか?「お役御免」で情け容赦なくオークションにでも出してみようか。
しかし、今は配信主体の「PCオーディオ時代」だから、「そんなものは必要ない」と”そっぽ(外方)”を向かれる可能性が高いなあ~。
まあ、お客さんが見えた時の比較試聴用として使いながら、話の”たね”にするのが一番いいのかもしれない。