岡山県のスピーカー修理専門店に出していた「アキシオム80」だが、約束の14日(火)になってもウンともスンともいってこないので、9時前に電話をかけてみた。
店主が出て、「無事、修理が済んで昨日の月曜日に発送したので今日着くでしょう」との返事。それならそうと一言いってくれればいいのに・・・。しかし、予定通りというのはありがたい。
「どういう状態でしたか?」
「悪かったですね。使い方というよりも製造したときからのハズレというものでしょう。アキシオムは製造時期によって一代目~三代目とありますが貴方のは二代目です。マニアが喜ぶのはもちろん一代目でツクリの精度がひときわ高いのが理由です。」
「念のため確認しますが大きな音が入ってもビリツキ音はしないでしょうね」
「非常に歪みの少ない状態に調整できています。カンチレバーを本来の位置に取り直してあります。まあ、聴いてみてください」と、自信満々の返事。さらに「絶対にカンチレバーを締め付けるネジには触らないでください、もちろん誰にも扱わせないでください」とは、これもアキシオム愛好家のために付言しておくべきだろう。そのほかいろいろと細かい調整のノウハウを教えてくれた。
ようやく、ひと安心というところだがやはり実際に聴いてみなければ何とも言えないのはこれまでの経験で百も承知。首を長くして待っていたらやっと11時過ぎに代金引き換え払いで到着。
包装を解くのももどかしく早速アンプに応急的に結線して試聴開始。テスト盤はエンヤの「カリビアン・ブルー」。
「ペイント・ザ・スカイ~ザ・ベスト・オブ・エンヤ~」
この曲目はこのCD盤の2番目に収録されているもので冒頭に「ドスーン」という腹にしみわたるような豊かな低音が入っている。このときにビリツキ音がなければまずOK。実に重宝している盤である。もちろん、曲自体も癒し系としてなかなかいいし、エンヤの中では一番好きな曲目である。
修理直後のSPユニットを始めから大きな音で聴くほど自分の神経は太くない。恐る恐る小さな音で聴いてみたが実に澄んだ音がする。「ウム、これならよさそう」。すぐにボリュームをぐんと上げて本格的な試聴に。
「良し!」見事に合格。
これは松戸市のSさんからつい最近購入したうちの1台だが、あんなにジャリついていた音がこんなに良くなるなんてと大いに感激。「さすがに(店主は)アキシオムを300台ほど直してきたと豪語するほどの腕の持ち主だ」と納得。
「これなら、大丈夫と」早速、これまで聴いてきた右チャンネルの「アキシオム80」も修理に出すことにした。普段聴いているレベルでは目立たないが、前述した「カリビアン・ブルー」の衝撃音に対してビリツキが際立つので早く直しておくに越したことはない。
午後からは、平面バッフルに取り付けたアキシオムの交換作業。北海道産の楢材で出来た厚さ5cmの重たいバッフルを降ろしたり上げたりするのにひと苦労。”オーディオは腕力勝負”なのを改めて実感。汗びっしょりになりながらひとまず取り付けて結線のハンダ付けも終了。
平面バッフルに取り付けた元のネジ穴をそのまま利用したが甘くなっていたので、オーディオ仲間のM崎さんから教えてもらったとおり爪楊枝を適当に折って4本のネジ穴に放り込んだらきつくなってピタリと締まった。
それからは手当たり次第にいろいろと試聴したが最後に落ち着くのはやっぱりグレン・グールドが弾くモーツァルトの「ピアノ・ソナタ」。なんだか自然と気持ちが穏やかになりいつまでも音楽の世界に浸りたくなるので自分にとっては子守唄のようなもの。アラウも内田光子さんもピリスも好きだがやはりモーツァルトのピアノ・ソナタはグールドにトドメをさす。
それも、このくらいの名曲と演奏になると細かい音質の差なんか気にならなくなって、CDプレーヤー(ワディア270)よりもむしろiPodを利用した「170iトランスポート」の方がCD4枚分を切れ目なく演奏してくれるので助かる。
それからもう一つ特筆すべきは、よく調整されたアキシオムは実に澄み切った音色になり、しかもふくよかで余韻が奥のほうに広がってゆっくりと静かに空間に溶け込んでいく。それは、それは見事なもので”ため息”が出るほど美しい。「本領を発揮したときは・・・絶品!」と言われるはずである。
「雑音さえ出なければそれでいい」とこれまで雑音の有無だけを修理のポイントにしてきたがこれは大間違いで店主が言うとおり雑音以前の微細な調整の方がはるかに音質にとって重大なことが分かった。
とにかくこれで「アキシオム80」が4台になったのでいつ故障しても大丈夫。これまで突然ご機嫌が悪くなりはしないかとハラハラし通しで友人、知人に「聴きにおいで」と自信を持って誘えなかったのが一転して勇気100倍である。
さっそく、大分市にお住まいのN松さんに電話してみた。N松さんは古典菅「PX25」アンプがお好きで、ずっと以前から「同じイギリス製のアキシオム80との組み合わせを是非聴きたい」とおっしゃっていたのだが修理の事情を話し、お誘いが遅れたことをお詫びしたところ大喜びされ「近々是非お伺いします」とのこと。こういう「気品のある音」ならどんな人に聴かせても恥ずかしくないと思う。
以上、どうも自己のSPに肩入れしすぎたようで結果的に自画自賛になってしまった。「我田引水」は傍から見てもあまり品のいい話ではないが実際にそう思えるのだから許してほしい。
しかし、世の中は広い。個人の思いつきや工夫などは所詮、高が知れている。
自分以上にうまくアキシオムを使いこなしておられる方がきっといるに違いないし、そういうノウハウをつとに知りたくなってくる。
初代と二代目のユニットの音質の差、相性のいいアンプ、ボックスの材質と大きさ、形態、低域に向けてのコンデンサーによるカット周波数など知りたいことは山ほどある。
全国的に視野を広げて現在「アキシオム80」を愛用している方はどのくらいいるのだろうか?こういうクセのある約50年前のSPユニットに固執するくらいだから音質に相当こだわりを持っている方々ばかりなのは間違いない。
ぜひ「アキシオム80研究会」みたいな情報連絡網を作りたいものだが~。