「いらん世話!」と言われそうだが、丁度2年ほど前に「オーディオの衰退とその行く末」というタイトルでブログに記事を登載したことがある。
まあ、内容についてはタイトルどおりのもので、ここ20年ほどのオーディオの衰退は目に余るものがあるのでその理由を列挙したもの。
とはいっても、年齢的には今の30~40歳代以前の方にはピンと来ないかもしれない。
今から30年ほど前には、それはそれは日本のオーディオ業界はたいへんな活況を呈していた。
次から次に新製品が誕生し、売れ行きも順調だったし、何よりもメーカーが工夫をこらし、力を傾注していたので製品の質が高かった。
自分などは今でも、当時の製品(ケンウッド「01ーA」:電源が別筐体で非磁性体アンプ)をパワーアンプに改造してもらい大切に使っているほど。
それがいつのまにか現在のようにオーディオ業界が「尻すぼみ」の一途をたどることになってしまったのはほんとうに淋しい限り。
「CD(レコード)にこんな微妙な音が入っていたのか」、「同じ音楽がオーディオ装置によってこれほど違う印象を受けるのか」という素直な驚きは「オーディオの究極の愉しみ」とも言うべきもの。
こんな素晴らしいオーディオ文化が衰退しているというのはひとりの熱心な愛好家として大変残念な話で、そもそもこの原因は一体何だろうか?
というわけで、当時(2年前のブログで)次の5つの理由を挙げておいた。
1 高価すぎるオーディオ製品
2 未成熟なオーディオ関係者
3 素敵なオーディオ装置に巡り会う機会に恵まれない
4 正しい音楽鑑賞とは
5 「音楽とオーディオ」が両立した啓蒙家の不在
もちろん、これらは自分勝手な独断によるものなので見当違いもあるだろうが、(オーディオ衰退の)第一の原因は何といっても1の「高価すぎるオーディオ製品」ではないかと今でも推察している。
改めてこの部分を再掲させてもらうと、
オーディオはマイナーな趣味なので大量生産というわけにもいかず、総じていい製品になると開発費も関係して値段の方も高くなる。
高くても「いい音であれば構わない」のが愛好家というものだろうが、「音楽は好きだし、オーディオにもある程度興味はあるがそれほどまでして”のめり込む”のはどうも」という入り口付近に佇む大多数の人にとってはそのコストと満足感のバランスが大きな問題で、ちょっと製品価格が高すぎて門戸が狭すぎるんではなかろうか。
この不況の時代、それに昨今の新聞には高級車にも興味を示さない草食系男子の記事が載っていたが、CDトランスポート、DAコンバーター、プリアンプ、パワーアンプ、スピーカー、洒落たケーブルなどの一式をそろえて、”そこそこ”の音質で音楽を聴こうと思えばまず100万円程度の出費は覚悟しなければならないが、こういうまとまった出費に抵抗感を覚える人が多いのは容易に想像できる。
「開発費はかかるし大量に売れないので安価に供給できないメーカー側」→「高価すぎて購入しない消費者側」→「中途半端な製品を購入してオーディオとはこんなものかと失望する消費者側」→「オーディオ離れにより沈没する良心的な中小メーカー」の嘆かわしい負のスパイラルをどこかで断ち切らなければいけない。
ソニー、パナソニックあたりの大メーカーが赤字覚悟で良質の製品を作ってくれるといいのだが。
と、最後の結論ではたいへん”虫のいい”ことを期待していたわけだが、「こんなに面白いオーディオを”特殊な層の趣味”だけに留めておくのは勿体ない。もっと手軽に、そして気楽に愉しめないものか」という気持ちは今でも変わらない。
たいへん僭越だが、こうしてブログを公開する機会に恵まれている以上、質が良くてリーズナブルな値段の製品を紹介するのも一つの役目とも思うのである。
ただし、読者に信用してもらえるかどうかは別問題~。
そして、ようやく最近になって理想的なメーカーを発掘することができた。
メーカーといっても個人の方で仮に「H」さんとしておくが、つい最近オークションで落札した製品を使ってみると実に精緻を極めた”つくり”で性能も圧倒的に良かった。それに信じられないほどリーズナブルな価格。
すぐにメールや電話でやりとりをしたところ、Hさんの「ハンダ付け」へのこだわりが大いに印象に残った。
「オーディオはハンダ付けに始まって、ハンダ付けに終わる」とは、自分の勝手な造語だが、Hさんは独特の圧着方法を採られていて「ハンダ付けは錆止めという意味でやってます。」と明言されるので感心してしまった。
残念なことに「ブログには固有名詞の記載をご遠慮ください」と、釘をさされているので具体的な製品名の紹介を控えるが、まだまだオーディオの世界にも「儲け主義」とは縁遠い方がいることに大いに感激~。
つい調子に乗って長年の課題だった真空管式のチャンネルデバイダー(通称、「チャンデバ」)をお願いしたところ、「ひとつ返事」でこれも信じられないような価格で作っていただくことになった。
周波数帯域を200ヘルツ付近でクロス、肩落ちのスロープを12db、2ウェイ仕様で使う真空管は6DJ8(ECC88)3本と整流管1本、コンデンサーはスプラグ。
この真空管はたしか往年のブランド「カウンターポイント」社のプリアンプの名器「SA5000」に使ってあったはず。
この待望の「チャンデバ」があと1週間もすると我が家にやってくる~!