「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

余禄

2013年10月05日 | 独り言

去る10月1日(火)は月1度の検診日。

クリニックの待合室で診察の順番が来るまで何気なく備え付けの毎日新聞(朝刊)を手に取って読んでいると、第一面のコラム≪余録≫に目が留まった。つい先日亡くなられた作家「山崎豊子」さんの追悼記事である。

一読して、「おっ、これはブログの材料になりそうだ!」。

顔見知りの受付嬢にそっと、「たいへん勝手なお願いですがこのコラムの部分をコピーしていただけませんか?」と、平身低頭でお願いした。

「今回限りですからね、ほかの患者さんに分からないようにしてくださいね。」と、迷惑顔で渋々応じてくれた。どうも、ありがとさん。次回に行くときはお礼にお菓子でも持参しよう。仲良くなれればもっといい(笑)。

山崎豊子さんといえば医学界の腐敗をテーマにした「白い巨塔」をはじめ、商事会社の内幕を鋭く追及した「不毛地帯」、中国残留孤児問題を扱った「大地の子」などが強烈に印象に残っている。現代社会の病巣を鋭くえぐった話題作が多く、大半が映画化、テレビドラマ化されているほどの人気作家。

さて、≪余録≫の中に次のような箇所があったので引用させてもらおう(抜粋)。

『「あなたはおそらく生涯、原稿用紙と万年筆だけあればいい人なんだ。臆せず書くことですよ」。新聞社を離れた山崎さんへの週刊新潮の名編集者、斎藤十一の助言である。~中略~

常に時代を代表する話題作を世に送り続けた山崎さんが亡くなった。先の斎藤に言われた「藝術家に引退はない。書きながら柩(ひつぎ)に入るのが作家だ」との言葉そのまま、週刊新潮に「約束の海」を連載中の訃報だ』

山崎さんの話題はこの辺にして、実は興味があったのは文中に再三登場する「斎藤十一」氏のことである。この斎藤氏は、自分の無二の愛読書である「西方の音」(五味康祐著)の中で「S氏」として頻繁に登場してくる方である。

五味さんが浮浪者同然の時代に物心両面にわたって援助し、同時に当時は貴重品だったレコードを心ゆくまで聴かせてあげた人として広く知られている。後年、五味さんが「喪神」という作品で芥川賞を受賞されたが、まさに「育ての親」であり「恩人」とも言うべき方だった。

ずっと昔から五味康祐さんのような音楽の聴き方をしたいと憧れてきたので、つい懐かしくなって「斎藤十一 五味康祐」でググってみると、まさに≪余録≫ならぬ余禄≫で五味康祐氏が秘かにメモしていた愛好する曲目「ベスト20」なるものを発見した。

あまり世間に流布(るふ)されていないと思うので参考までにそれらの曲目を挙げてみよう。

1位 モーツァルト「魔笛」(カラヤン)  2位 ドビュッシー「ペレアスとメリザンド」(アンセルメ) 3位 バッハ「平均律クラヴィーア曲集(ランドフスカ) 4位 「空欄」 5位 バッハ「無伴奏チェロソナタ第1番、2番」(カザルス) 6位 「空欄」

7位 バッハ「三つのピアノのためのコンチェルト」(カサドジュ) 8位 ヴィオッティ「ヴィオリン協奏曲」(ペーター・レヴァー) 9位 フォーレ「ノクターン6番」(エンマ・ボワネ) 10位 モーツァルト「フィガロの結婚」(カラヤン) 

11位 バッハ「ゴールドベルク変奏曲」(ランドフスカ) 12位 ミヨー「子どもと母のカンタータ」(ミヨー) 13位 「空欄」 14位 ベートーヴェン「ピアノソナタ第30番 作品109」(バックハウス) 15位 バッハ「パルティータ」(ランドフスカ) 16位 モーツァルト「弦楽四重奏曲第19番“不協和音”、17番“狩”(クロル四重奏団)

17位 ハイドン「弦楽四重奏曲第77番“皇帝”」(クロル四重奏団) 18位 ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番」(バックハウス) 19位 ベートーヴェン「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」(フランチェスカッティ) 20位 シベリウス「ヴィオリン協奏曲ニ短調」(カミラ・ウィックス)

順位に空欄(4位、6位、13位)があるところがミソで、熟慮に熟慮を重ねた順位であることが推し量られるが、凡庸な音楽評論家などが及びもつかないような鑑賞力を持った五味さんが「魔笛」を1位に挙げておられるとは、まったく小躍りしたくなるほどうれしくなる。

(ちなみに指揮はカラヤンになっているが、カラヤン嫌いの五味さんのことだからおそらくまだカラヤン色が出ていないデヴュー当時の1950年録音盤に違いない。究極の王子(タミーノ)役としてアントン・デルモータ(テノール)の熱唱が光る名盤中の名盤である。)

           

このブログでも再三再四取り上げているように「魔笛」の魅力はどんなに語り尽くしても足りないほどで、このオペラにはモーツァルトの音楽のすべてが詰まっている!

「魔笛を愛さずしてモーツァルトを語ることなかれ」とは、調子に乗ってちと言い過ぎかな(笑)。

しかし、2位の「ペレアスとメリザンド」、9位の「フォーレのノクターン6番」、12位の「子どもと母のカンタータ」は残念なことにこれまで聴いたことがない。

さっそく“HMVオンラインで注文”といきたいところだが、名演には違いないものの何せ当時のことなので録音状況が問題で、どうせ古いモノラル録音に決まっている。レコードならともかくCDで鑑賞するとなると、ちと考え込む。

音質を無視して演奏をとるか、演奏を無視して近代のデジタル録音をとるか、実に悩ましい!


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