長年オーディオをやってると同じオーディオ機器を使っても日によって音の鳴り方が違うことを経験したことがある方は多いのではあるまいか。
去る19日(土)に近所のオーディオ仲間Yさんをお迎えしての試聴会がそうだった。
1週間前の12日(土)に開催した「AXIOM80愛好家の集い」で大好評を博した「PP5/400シングルアンプ」だったが、なぜだかこの日はあまり冴えなかった。満を持して登場させたのに、音の重心がやや腰高になっている印象を受ける。Yさんも首をひねるばかりで、むしろその前に鳴らした「WE300Bシングルアンプの方がいいみたいです。」とまで仰る。
あれから、この「PP5/400アンプ」のどこも弄ったわけではないのに~、トホホ・・。
原因その1
当日のお天気次第、とりわけ湿度の違いによってスピーカーのコーン紙が含む湿り気が違ってくるので音が変わる。
原因その2
家庭に供給される電圧は100Vと決まっているが、電力会社の都合や家庭内での使用状況によっては100V以下になったりして不安定になる。
原因その3
CDやSACDの場合、エンジニアによって録音状況が千差万別である。ゲインが極端に低かったり高かったりする。この違いがアンプに及ぼす影響はとても大きい。
原因その4
睡眠不足など本人の体調次第で違った音に聴こえてしまう。
とまあ、闇夜の鉄砲みたいに「数撃ちゃ当たる」式で挙げてみたが今回の場合は「原因その3」が該当しそうに思った。
Yさんが持ってこられた試聴盤が極端にゲインが低かったのである。プリアンプのボリュームを通常9時の位置で聴くとすると、この盤に限っては12時の位置ぐらいまで上げざるを得なかった。
製造元は「ドリアン ディスカバリー」(フランス)という有名なブランドでマイクからの接続にデジタルケーブルを使うそうだが、この盤の第3トラックには10分間の中にボーカルとかマンドリンとかいろんな楽器が含まれていて試聴盤にはもってこいだったが如何せん録音のゲインがとても低くて、Yさん宅みたいに大出力のトランジスタアンプで鳴らすと苦もなく再生できるのだろうが、パワーに弱点がある真空管アンプとなるとすぐに馬脚を現してしまう。ただし優秀録音であることは間違いない。
ちなみにフランス製のオーディオ関連品は真空管をはじめ独特のセンスがあって、オーディオ仲間のKさんともどもいつも感心している。アメリカ、イギリス、ドイツなどにはない味がたしかにある。
さて、これまで録音ゲインの低いソースの再生となると、すぐに思い浮かぶのがジャズの名盤として知られる「サキソフォン コロッサス」で、これをうまく鳴らすためにどれだけ苦労したことか!
この曲目に焦点を合わせると、ほかのソースがうまく鳴らなかったりしてとうとう両立を諦めざるを得なかった。
ソースの録音レベルばかりは、マニアにとってはどうしようもないので、結局すべてのソースをうまく鳴らそうなんて思わない割り切り方が必要になると思うが、そもそもオーディオであらぬ方向に行ってしまい「ストレイ シープ」になってしまう悲劇の一因はこの辺りにありそうな気がしている。
閑話休題
アッ、そうそう、この日の試聴会のメインは新たに手に入れた整流管「SPARTON」(アメリカ)の「480」だった!(笑)
たいへん稀少なメッシュプレートの逸品である。画像でよくご覧になっていただくと中央の2本の黒い柱(プレート)が網目状になっているのがお分かりだと思う。通常の真空管はここが金属の板状になっている。製造年代は定かではないがおそらく1930年前後だろう。
この整流管を「371シングルアンプ」に挿し込んで、ドリアンレーベルのCDの第3トラックをYさんに聴いていただいた。
システムの組み合わせは次のとおり。
CDトランスポート「ヴェルディ・ラ・スカラ」(dCS) → DAコンバーター「エルガー プラス」(dCS) → プリアンプ真空管式「大西プリ」 → パワーアンプ真空管式「371シングル」 → スピーカー「AXIOM80」(最初期版)
以下続く。