「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

グッドマン VS フィリップス

2016年12月22日 | オーディオ談義
先日(10日)の試聴会でのお客さんのコメントがいまだに耳に残っている。

「グッドマンはよくある上級者の音には違いないんですけど、フィリップスと比べると感動を覚えるというまでにはいきません。」

並み居るグッドマンの3個師団の精鋭部隊がフィリップスの一個小隊に撃破されてしまった!(笑)

同じ身内同士の勝負なので、まあ、うれしいやら、悲しいやらだが、やっぱりしばし考えるところがあった。この間の事情を察したメル友の「I」さん(東海地方)から次の様なメールが届いた。


「人間ならば誰にでも、現実のすべてが見えるわけではない。多くの人は、見たいと欲する現実しか見ていない」(塩野七海・ローマ人の物語より)
 

これをオーディオに置き換えると「人間ならば誰にでも、音のすべてが聴こえているわけではない。多くの人は、聴きたいと欲する音しか聞いていない」となるでしょうか。
 
オーディオは人生と同じくらい難しくて、面白いな~と思います。」

ほんとに、思い通りにいかないという点ではオーディオと人生はよく似ている。

この機会に改めて「グッドマン VS フィリップス」について考えてみた。


まずグッドマンについて

良く言えば「いぶし銀」を思わせるような音、悪く言えば「暗~い音」である。周波数レンジの広さとかクリヤーさとか、オーディオ的な音を望むと裏切られる。したがって「ちょっと聞き」には不利なタイプ。

人間生きていると楽しいときもあれば落ち込むときもあるが、グッドマンには思い通りにはいかない人生の憾みをそっと慰めてくれるところがある。そういう聴き方をする人に通じる何かがあって、その魅力にハマるともう手放せない(笑)。

「音の品位」を言葉で表現するのは難しいが、たとえて言えばヨーロッパの上流社会において「50歳代の貴婦人が持つ気品」といったところだろうか。


次にフィリップスについて

世界中の放送局でモニタースピーカーとして採用されていただけのことはあって、オーディオ的に聴くとまったく不足のない音である。録音現場の雰囲気までをも再生するかのような実力を秘めている。音の品位をグッドマンの例にたとえると「30歳代の貴婦人」にたとえられるだろう。こちらの方が瑞々しいのはたしかだが相手にするのはちょっと疲れる(笑)。

ただし、このフィリップスのユニットはとてもエンクロージャーを選ぶところがあるので要注意である。

以前、ウェストミンスターの箱に容れて半年間程鳴らし込んだが現用の「AXIOM150マークⅡ」に比べるとイマイチだった。このユニットに長大なバックロードホーンは合わない。

そこで、あまり期待せずに非常にシンプルな自作の箱(といってもそれなりのノウハウはあるが)に容れてみたところ、まるで水を得た魚のように生き返ったわけだから、まさに「瓢箪から駒が出た」ようなものだった。

また、接続コードを変えただけで音に精彩が無くなったりするのでとてもセンシティブなユニットである。今のところもっとも相性がいいのは「チューブ・オーディオ・ラボ」(新潟県)さんから購入したウェスタンの単線ケーブルでこれを使うとほかのケーブルはもう使えない。とうとう3ペア購入してしまった。


ところで、どちらをメインスピーカーにしようかと迷うところだが、とても決められないので当分の間両にらみといこう。

ちなみに最近、インターネットラジオで「モーツァルト専門チャンネル」を楽しんでいるが、システムを2系統にして鳴らし分けているので、その接続状況を記録しておこう。

NTTの「モデム」からLANケーブルでマランツのDAコンバーター「NA11-S1」に繋ぎ「INTERNET RADIO」を選択する。

☆ 第一系統

「NA11-S1」 → パワーアンプ「171シングル」(インターステージ・トランス入り) → スピーカー「AXIOM150マークⅡ・イン・ウェストミンスター」

☆ 第二系統

「NA11-S1」 → 「デジタルケーブル」 → DAコンバーター「エルガープラス」 → プリアンプ「大西式プリ」 → パワーアンプ「71Aプッシュプル」 → スピーカー「フィリップス」

以上のとおりだが、丁度いい機会なので使用している「71系のパワーアンプ」について一言述べておこう。

仲間うちで「クセのあるスピーカーを使って困ったときは71系アンプを使え!」という合言葉がある。それほど71系の真空管は素直で使いやすい。

オーディオ仲間曰く、「71系は礼節を知っている球です。けっしてスピーカーの弱点を露わに暴き立てることがありません。」まったくその通りだと思う。ただし満点を取るまでには至らないが(笑)。

         


現実に「AXIOM150マークⅡ・イン・ウェストミンスター」に「171」アンプ(出力1ワット)を使うと、とても音が素直になる。我が家に限っての現象かもしれないが、大型スピーカーになればなるほど小出力のアンプが似合っているのだから不思議。むしろ、そっちの方がエンクロージャーの響きをよく出してくれる。

真空管アンプの場合、「パワーが足りない」という嘆き節をよく聞くが、むしろ「パワーがあり過ぎる弊害」についてもっと声高に語られていいような気がする。ただ、我が家の場合は昔の能率の高いSPユニットばかり使っているのでその兼ね合いもあるが。

最後に、「グッドマン VS フィリップス」の結果だが、「いい音」なのはフィリップスだし、「好きな音」はグッドマンとなる。

両方の音を随時に切り替えて楽しめるのはまったくオーディオ冥利に尽きるが、「聴く時間」の長さとなると、やっぱり「好きな音」の方なんですよねえ(笑)。
 

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