「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

「位相調整」にオーディオの奥深さを見る

2014年08月05日 | オーディオ談義

オーディオをやり始めのころはとにかく知識を得ようと闇雲にいろんな本を読んだものだが、今となってはずっと記憶に残っているのは五味康祐さんの「西方の音」「天の声」そして菅原昭二さんの「ジャズ喫茶“ベイシー”の選択」ぐらい。(瀬川冬樹さんのエッセイは単行本ではないので除く。)

オーディオに関して人にアドバイスするほどの資格はとても持ち合わせていないが、もし「何か参考になる本を紹介してください」と、問われたら真っ先にこの三冊を挙げる。

ただし、前二冊はクラシックの愛好者向きなので、純粋なマニア向きという観点からするとやはり「ベイシーの選択」に落ち着く。

               

本書の122頁に次のような箇所がある。

「能率100デシベルを軽く超えるジムランの大型3ウェイ・マルチスピーカーシステムは相手にとって不足はないが“レベル調整”と“位相調整”には手を焼く。

完成品の名器をお使いの方は、このスピーカーシステムの“位相調整”の苦労はあまり経験しなくて済むので気が狂うことがない代わり、ある部分“勉強不足”で生涯を終えるかもしれないが、気が狂ったまま終えるよりはまだ“まし”かもしれない。」

ここで「位相って何?」という方もおられるかもしれないが、簡単に表現すると誤解を招く恐れがあるので別途ググって研究していただくことにしよう(笑)。

さて、この文章には明らかに著者独特の諧謔的かつ逆説的な意味が込められており、自分には「位相調整の苦労を体験しない人はオーディオの奥深さを最後まで味わえない」と、読めて仕方がない。

前置きはこのくらいにして実はつい最近、この位相調整の難しさを身をもって体験したので「生きた教材」として紹介してみよう。

オーディオ仲間のGさん(福岡)が恒例の夏休みの家族旅行(別府の大型レジャーホテル)の途次、「ちょっと時間が出来ましたので」と我が家に立ち寄られたのは7月31日(木)の午後のことだった。

Gさん宅には昨年の10月下旬に訪問させていただき、自作されたWE300Bアンプでもって心ゆくまでホーンシステムの音を堪能させていただいた。

         

Gさんはものすごく耳のいい方でいつも貴重なご意見をいただいているが今回の試聴もそうだった。

というのは、例によってはじめに「AXIOM80」(以下「80」)を聴いていただいたところ、「ちょっと両方のユニットの間で位相がずれているようですよ。何となく違和感があります。」

以下、かなり専門的な話になるが悪しからず~。

我が家の「80」システムは、ここ3週間ほど「80のフルレンジ+AXIOM301」に落ち着いている。

                       

「AXIOM301」(口径30センチ。以下「301」)ユニットをサブウーファー代わりに使っており、いわば変則2ウェイシステム。

愛用している「80」の良さは改めて言う必要もないが、どうしても低音域に物足りなさを覚えるのでそれを補うために「301」の方に8.3mh(ミリヘンリー)のコイルをSPコードのプラス線に挿入しておよそ200ヘルツ(6db/oct)でハイカットしている。同じ「AXIOM」ブランドのユニットの組み合わせとあって、双方の音色にあまり違和感がなく今のところ狙いが的中した印象を持っている。

ところが、Gさんによるとこの「301」のSPコードにコイルを挿入したことにより「80」との間で位相のズレが生じており、もし位相を合わせようと思ったら、「80」側のSPコードにコンデンサーを挿入しなければとのご指摘だった。

これは聴感上、本当にごくごく微妙な差での話だが理論的に説明を受けると成る程と納得。しかし、本丸の「80」にコンデンサーを挿入することはそれなりの音質の劣化があるだろうし、なかなか迷うところ。

そこで、とりあえず次の二つの対策を講じてみた。

 「301」のSPコードのプラスとマイナスに新たにコンデンサー3個(24μF+20μF+20μF)を並列に挿入して、ハイカットをおよそ300ヘルツ(12db/oct)とし、次にSPコードのプラス、マイナスを逆にしてアンプ(PX25シングル)と接続。両者の周波数の重なる部分を少しでも減少させる作戦。


           

 もう一つの方法はGさんが仰るように正攻法として「80」のSPコードのプラス線にムンドルフのコンデンサー(150μF)を直列に挿入し、「301」の方は従来どおり8.3mhのコイルを挿入するだけにする。これで「80」と「301」の双方が肩落ち「6db/oct」となる。なお、「301」のSPコードのプラス、マイナスを逆接続にする。

これで、両方を比較試聴してみると、プラス、マイナスがあってどちらとも軍配を上げ難い気がして大いに迷ってしまうが強いて言えばどうやら後者に分がある印象を受けた。

ただし、最終判断までにはもっと時間が欲しいところで今回、改めて位相調整の難しさをホトホト痛感した!

「ベイシーの選択」の著者の菅原さんが「気が狂う」と形容されたとおりである(笑)。

 


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