秋も段々と深まりつつあって、実に過ごしやすい季節になった。当然のことながら人の動きも活発になる。
17日から18日(金)にかけて、我が家に相次いでお客さんがお見えになった。
17日の午前中が市内のY先生、その日の午後がAXIOM80(以下、「80」)の同好者のKさん(福岡)。そして18日(金)の午前中が超弩級アンプの製作者のMさん(太宰府)。
まずY先生から。
今年の猛暑の間はすっかり鳴りをひそめられていたご様子だったがつい2~3日前にメールが入ったばかり。いつぞやのブログで紹介したように70歳台後半、三菱重工業~大学教授を経て悠々自適の生活を送られている。
専用の地下室を利用しての木工や絵画、音楽と幅広く趣味を楽しんでおられ、豊富な社会経験に裏打ちされた人生の四方山話が実に楽しい。
「趣味に没頭するとどうしても道具が増えてしまいます。生前のうちにある程度整理しておくなんて話をよく聞きますが、遺品の整理をするのは遺族の勤めですよ。割り切って存分に楽しむことにしています。」
「いやあ、先生のお言葉を聞いて安心しました。死んだ後の道具なんて“野となれ、山となれ”ですよね。元気なうちに精一杯楽しむことにします。」
ちなみに持参していただいたのが次の本。
背筋がゾクゾクしてきそうな本で、しばらくお借りして読後の感想をいずれブログに登載してみよう。
午後1時近くには予定どおりKさんがご来訪。「80」をグッドマンのオリジナル・エンクロージャーに収めてからは始めての試聴となる。さあ、試聴後のご感想はいかに。
「まだまだですね。80の実力はこんなものでありません。エージング不足を感じます。うまく鳴らすのに少なくとも3年は覚悟する必要がありますよ。」とKさん。
「80」はこれまで、ずっと周波数200ヘルツでローカットして聴いてきたので、低音域を含めたフルレンジとしての鳴らし込みが不足しているのは十分承知。その辺をズバリと指摘されてしまった。
オーディオ・システムの中でもスピーカーは別格的な存在でまるで楽器と同じところがある。ピアノもヴァイオリンなども含めてすべて楽器は馴染んでくるまでにどうしても時間がかかるがそれと同じことで、鳴らせば鳴らすほど音がこなれてくる。
この辺は消耗品そのもののアンプなどとはまったく性格が違うようで、システムにおいて改めて「王様と家来」の認識を深めた。まあ、そういうわけで我が家の「80」も気長に鳴らし込むことにしたが、「鳴かぬなら鳴くまで待とうホトトギス」(笑)。
「80」のあとに今度は「JBLの3ウェイシステム」を聴いていただいたところ、「いやあ、実にうまく鳴ってますねえ。375でこんなに艶やかなヴァイオリンを聴けるとは思いませんでした。」
現在「375+075」を駆動しているのは、小出力の2A3真空管シングルアンプだが、久しぶりに例によって「球転がし」をやってみた。
マルコーニ(カナダ)、RCA、そしてKさん持参の1枚プレートの稀少管「アクチュラス」。
古典管アクチュラス(刻印)が欲しいの一言だが、もはやどこにも売ってないとのことで残念。同じ2A3でもこう違うと考え込まざるを得ない。
Kさんとの試聴は5時間以上に及んだ。「ここに来るといつも時間を忘れてしまいます」。夕闇の気配が漂う中を「どうか、道中お気をつけてください」と見送った。
そして、最後に大宰府のMさん。あれは4年ほど前のことだっただろうか。
我が家で試聴していただいたときに「この音は間違っとる!」と血相を変えて怒鳴られたことがある。当時はサブウーファーを使って、「低音=命」みたいな鳴らし方をしていたときで、こうして面と向かって指摘されたのは始めてだが、むしろ清々しさを覚えたことだった。
いわば非常に正直な方なのである。
しかし、緊張するのも事実で、何だかお師匠さんに「これでいいでしょうか」と、恐るおそる答案用紙を差し出すような気になる(笑)。
はじめに「80」そして「JBL3ウェイ」を聴いていただいた。
「どちらも曇りのない音だね」との一言に、ほっと一息。
この機会だとばかり率直に伺ってみた。「どちらのシステムがお好きですか」
「80の雰囲気をJBLのスケール感で鳴らせるといいのだが・・・。オーケストラはJBL、ボーカルや室内楽などの小編成は80というところかな。」
「まったくその通りだと思ってます」と、自分。
さて、昨日の午後からはkさんの助言にしたがって「80」をなるべく日常的にエージングを進めるためにフル稼働させることにした。つまりテレビ視聴のときもアルテックを外して「80」で聴くことにしたわけだが、現在「80」を駆動しているのは名管「WE300B」アンプ(モノ×2台)。
いくらなんでもテレビの音ごとき(?)に1950年代物の「WE300Bオールド」を使うわけにはいかない。プリアンプの真空管「7308」だってそう。そうなんです、我が輩は本質的にケチなのです(笑)。
現在日本と非常に仲の悪い某国製の真空管をスペアとして持っていたので、これを挿してみることにした。「おっ、なかなかいけるじゃない。オリジナルじゃなくてもこれで十分だ」
ところが、2時間ほどぶっ続けで聴いていると、どうも耳(脳)が疲れてくる。これ以上どうしても生理的に受け付けない感じ。
「やっぱり、そうか」と、球を元に戻した。
WE300Bは太平洋戦争当時に軍事用通信管として使われていたこともあって長寿命で知られている。
現在手元にあるのは、1950年代製、1960年代製、そして1988年製の計3ペアだが、自分の寿命とを考え合わせてみると、耐用年数は十分お釣りがくる計算になる。
これじゃあ、今のうちにジャンジャン使わないと損をするなあ(笑)。