「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

新しい真空管アンプ~最終回~

2013年03月01日 | オーディオ談義

以前の「新しい真空管アンプ~第3回~」からの続きです。

参考までにこれまでの途中経過を述べておくと、

新しい真空管アンプキットの組み立てをオーディオ仲間のMさん(奈良)に依頼し、とりあえず(組み立てが)終了したものの、その試聴結果の報告が一向に入ってこない。不安な気持ちとMさんへの慰めを兼ねたメールを送ったところまで記載していた。

すると、すぐに次のようなメールが返ってきた。

「実は14日まで、〇〇さん(自分のこと)の予想が的中していました。紹介した責任もあるし・・・。ところが、15日に蒸留水から変身して旨み、コクが出てきました。エージングがかなり必要なアンプ部品あるいは真空管だったのか、やっとお返しできる音になりました。初段の真空管は、4種ともに見るからに銘球の風格があり、音の差がジャッジ出来ないくらいです。ということで、19,20日あたりに発送いたします。もうしばらくお待ちを!」

どうやら、「超シンプルな回路のため、蒸留水のような無味乾燥な音になっているのでは」という当方の予想が半分的中していたようである。実は、昔から論理的思考は苦手だが”カン”は動物並みに冴えているほうだと自負している(笑)。

期待していた初段の4種の真空管の試聴結果については、きっとMさんが遠慮されたに違いない。Mさんは何しろ物事の順番を付けたり、決めつけたりすることを絶対と言っていいほどされない方である。この辺は、いつも断定口調を避けて選択の範囲を広げ何らかの含みを残す作家の村上春樹さんの作風とよく似ている。

そして、順調にエージングが済んだと見えて、新しいアンプが我が家に届いたのが先週の20日(水)の夕方だった。

梱包を解くと、意外と軽くて小さいアンプだなあというのが第一印象。昔から「音質は(機器の)目方に比例する」という不滅の方程式のもとで育ってきたマニアなので、「こんな小さな出力トランスで大丈夫かいな?」と、正直思ったのだが、真空管を挿し込んで鳴らしてみたところ驚いた。

           

想像以上に”たくましい音”が出てきたのである。しかも音が澄んでいる。使ったSPユニットはJBL3ウェイシステムのうちの中域部分を担当する「375ドライバー(16Ω)+ウッドホーン」。何しろ能率が高くて100db以上あるので出力3ワット程度でも充分鳴ってくれた。しかもこれまで使ってきたPX25・2号機とまったく遜色はなく、むしろクセのない素直さにかけては上回っているほどの出来栄え。

(ちなみに、写真では右側にボリューム端子が映っているが、これはもちろん回路配線からは外してあって、その代わりにダミー抵抗が挿入してある。)

375が見事に合格したので、今度はひときわ繊細なSPユニット「AXIOM80」に繋ぎかえてみた。このユニットは相性の悪いアンプを遠慮会釈なく跳ねつけるので有名だが、はたして?

「おお~、なかなかいけるじゃない!」、雰囲気の再現力は現在使っているWE300Bシングルアンプ(モノ×2台)にやや劣るが、万一故障したときの代役は十分果たせると思った。


さあ、これでアンプを作ってもらった当初の目的を十分に達成したことが分かってひと安心。ここからがハイライトとなる初段管4種類の真空管の聴き比べである。超シンプルな回路なので真空管の性格がモロに反映されるのがこの上ない楽しみ。

ささやかなポリシーの一つだが中・高域に限っては絶対にトランジスターアンプを使わない理由も実はここにある。

ここで、ふと思い付いたのだが、Mさんがあえて順番付けを遠慮されたのは、当方が先入観を持たないようにとの親心だったのかもしれない。

            

左から順に銘柄を並べるとGE、シルヴァニア、RCA、(以上アメリカ製)、そしてイギリス製のSTCの「CV569」だが、この順番で挿し替えて、SPユニットのJBL375ドライバ-でクラシックからジャズまでじっくり試聴してみた。

ちなみに古典管の泰斗である大宰府のMさんによると、6SL7GTで一番音がいいのはイギリスのメチャ旧いエジソン・マツダ製だそうで、この球はこれまでオークションでも見かけたことがないので幻の球的な存在。

さて、試聴の結果だが実を言うと、プレートがニッケル製のGE(1950年代)に一番期待していたのだが、まだエージング不足のせいもあってかそれほどでもなかった。次に、シルヴァニアは少し淡泊過ぎるようだ。RCAは多彩な響きで情報量も多いと感じた。STCはさすがにイギリス製だけあって、音の佇まいや雰囲気に一日の長があった。

結局、情報量ではRCA、品の良さではSTCが双璧でいずれを選ぶかはまったくお好み次第。出力管(RCAの2A3:アメリカ製)との相性を考えるとRCAがいいような気がして、当分の間、同じ銘柄でいくことにした。

こうして、改めて聴いてみると以前から気になっていたJBL特有のヴァイオリンの音色が随分と艶やかな響きになり、クラシックがそこそこ聴けるようになったのは大きい。アンプや真空管の銘柄次第でこんなに変わるのだからつくづくオーディオは怖いなあ。

ちなみに、このアンプキットにもともと付属している球は、ソブテックの2A3(出力管)とロシア製の6SL7GTだが、これだけでは少々物足りないと思うのは自分だけではないはず。

これから、オーディオ仲間に来てもらってご意見を伺うことにしよう~。

 


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