「音楽&オーディオ」の小部屋

クラシック・オーディオ歴40年以上・・身の回りの出来事を織り交ぜて書き記したブログです。

音楽談義~「春の祭典」~

2011年03月29日 | 音楽談義

九州地方の今年の冬はことのほか「寒さ」が厳しかったので「桜の開花が遅れる」という声がチラホラ聞こえてくる今日この頃。

時期的には春がすぐ目の前にやって来ているのに朝晩の底冷えがいまだにひどくて、手が届きそうで届かないこのもどかしさ。

「早く春がやってこないかなあ」

さて、クラシックの話だが周知のように20世紀最高の作曲家といわれるストラヴィンスキーの作品にバレエ音楽「春の祭典」がある。

「暖かい春の陽射しに虫たちが蠢き始め、乙女たちの狂乱の舞が始まる~」という音楽。

このところ我が家のオーディオ装置に対して自信喪失気味だったが、久しぶりにこの曲のおかげでやっと「愁眉」が開いた。

オーディオの方に一足早く「春」がやってきた!

以下は、その顛末。

かねての予定どおり27日の日曜日、快晴の中、福岡から「音楽とオーディオ好き」の仲間たちがご来訪。

いずれも福岡高校時代の同級生たちで全部で5名〔途中で1名追加)。

1月に心臓血管にステントを入れる手術をしたが、そのお見舞いも兼ねてのことで大変ありがたいこと。

たしか3年ぶりくらいの試聴で、現在のシステムに切り換えてからは初めて。

さあ、どんな感想が聞けるかな~。実を言うとこの2週間あまり、
室内の片付けと音質調整に余念がなくて直前の昨日になってもアキシオム80の前に置くデフューザーを小さい玉に替えたりジタバタしていた。

挨拶もそこそこに早速聴いてもらった。

ご持参のCDが6枚ほどあって、ヨーヨーマのチェロ、ブレンデルのピアノ、チャイコフスキーの「憂鬱なセレナード」など次から次に。

サワリの部分だけなので、すぐに種切れになって、今度はこちらから「悲愴」の4楽章、テバルディの詠唱「私の名はミミ」など数曲を。

最後にかけたのがバレエ音楽の「春の祭典」。

         

「これ、誰の指揮?」

桐朋学園大学を卒業して欧州に留学、指揮者チェリビダッケに師事し現在も音楽研究所を経営しながら若い音楽家を育てているO君からの質問だった。

この曲に移って、ようやく彼の「音楽マインド」が刺激されたようだ。

「うん、ゲルギエフだよ」

「素晴らしい指揮だね。こんなに音楽に没入している演奏は滅多に聴けない。実際に眼前でのバレエを髣髴とさせてくれる演奏で、これまで聴いた春の祭典の中で間違いなくベスト。録音場所のキーロフ歌劇場にも行ったことがあるよ」

このCDのライナーノート(宇野功芳氏)にも「史上最高の演奏、今後長く語り継がれる」とあったが、例によって「宇野節」なので、話半分と思っていたのだが、こうやってプロの音楽家から絶賛の言葉があると素直に受け止める気になる。

とにかくO君の音楽の聴き方がまるで自分とは違うのに驚いた。

「曲頭のファゴットのソロだけど、極めて演奏が難しい部分だが音程が崩れかかっているものの辛うじて〔奏者が)持ちこたえている感じ」と”こともなげ”におっしゃる。

O君以外からも、ピッコロ、オーボエ、クラリネットなど次から次に加わる多彩な楽器群の色彩的な表現力に賛嘆の声が相次ぐ。

とにかく前衛的な音楽なのでモーツァルトのような美しいメロディを期待すると完全に裏切られるが、楽器の使い方ひとつでイメージを表現するのが目的の曲目。

したがって、オーディオ装置がいかに楽器の音色を忠実に再生できてバレエの情景を生々しく喚起できるかが勝負の岐れ目となる。

熱気が充満してきて、この曲目でようやく本日のハイライトを迎えたようなので、「頃は良し」と、今度はタンノイ・ウェストミンスターとの聴き比べ。

このオーディオ・ルームに入ったときにO部君やS君から「ウェストミンスターをテレビの視聴用に限定するなんて勿体ない、贅沢だなあ」と、慨嘆(?)の声が自分の耳に届いていた。

裏を返すと「アキシオム80がそんなにいいかなあ」という懐疑心にもにつながる話。〔疑り深くてゴメン!)。

さあ、その根拠を今日こそ納得してもらおうではありませんか、といっても自分は「駄耳」なので強気と弱気が微妙に交錯しているのがホンネ。

オーディオは端的に言うと、どういうスピーカーを使うかでおおかた決まる。

「ウェストミンスター」と「アキシオム80」の同じイギリス勢同士の一騎打ちがいよいよ開始~。

もったいぶらずに結果から言うと、オーディオとしての優劣は別として「アキシオム80」の聴こえ方のほうが自然で素敵というのが全員の意見だった。

集約すると、ウェストミンスターは奥まったステージのオケピットから演奏が聴こえてくるかのような、いかにも音楽を再生してますという”かしこまった”表情が拭えない。

一方、アキシオム80の方は、ステージとか一切関係なしに、バレエの情景そのものが浮かんでくる印象。

「オーディオからこんな自然な印象を受けたのは初めて」とのO君の言葉をはじめ、「音がスッと抵抗感なしに出てくる感じでこちらのほうが断然面白い」という意見が続出した。

この辺の感想はO君の最新ブログ「jmc音楽研究所」に専門家らしい分析が実に分かりやすく記載されているので是非合わせて読んでいただきたい。

 「音」が”踊る”(クリック可)
 

いやあ、試聴するにしても「選曲」というのはことのほか大事ですねえ!

「春の祭典」と「ゲルギエフ」の指揮の組み合わせで初めてオーディオ装置の真価を問うことが出来て大きな自信につながった。

「春の祭典」さん、どうもありがとう。

同時に、日頃当たり前と思っていた「アキシオム80」の表現力の凄さに改めて思い至った。

  

「蝶ダンパー、エッジレス、強力なマグネット」という特別のツクリにより、コーン紙の振幅速度が抜群に速くて音声信号への追従性が極めて高い。つまり「音の立ち上がり」がコーン紙を使ったユニットの中では別格の存在。

このため中高域の繊細で柔らかな再生能力にかけて、このユニットの右に出るものはないとの確信を益々深めたが、その一方で「使いこなし」は筆舌に尽くしがたい
ほどで、持つ人誰もが大いに手古摺る。

どなたかのブログに「このSPユニットを使う者はあまねく人生を誤る」とあったが、まったく麻薬のような趣がある。

とにかく、「いろいろ欲を出すとキリがない、これだけ鳴ってくれればもう充分」という気になった。

迷いが吹っ切れたので、これからしばらくは「もうこれで充分」が口癖になりそう。

なお、最後の最後にU君がO君の音楽研究所でとった「生録音」を聴かせてくれたが、ソフトで自然な肌触りの音に思わず魅せられてしまった。携帯用の録音機器も昔と比べると長足の進歩を遂げているようだ。

時刻も16時半頃となり、これから別府名湯のひとつ「竹瓦温泉」に向かうとのことで、どうか温泉で疲れを癒して欲しいと見送った。


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