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「厚い雲が月を隠すと、江戸の夜の闇は、ずしりとのしかかるように重かった。
前も後ろもない、うっかりその闇の中に踏み込んだら、そのまま落ちていきそうな、
ひやりとする暗さ。その黒一面の中を、提灯の明かりがぽつりと、わずかに夜を
分けて進んでゆく。」
くぅ~、巧いねぇ~!現代と違って大江戸八百八町とはいえ、夜は漆黒の闇であったろう。その暗闇の中を一つの提灯を頼りに歩いてゆく光景が、まざまざと目に浮かぶ。本作の冒頭の一文であるが、どうやったらこういう文章を思いつくのだろう。山本一力なみですな!
話としては眉間に皺を寄せて読むようなシリアスな内容ではないので気軽に読める。憎めない妖たちに囲まれた鬼太郎のような若旦那が、これからどんな活躍を見せてくれるか、どんな妖が現れるか、続編が楽しみである。さっそく続編「ぬしさまへ」を読もうと思ったがいくつかの本屋で売り切れだった。畠山さん、私が知らないだけで結構人気作家だったのかな?
尚、ちなみに「しゃばけ」とは「娑婆気」のことで、俗世間における様々な欲望のことだそうです。