呑む気オヤジ/蔵王山麓蓬莱庵便り

蔵王山麓暮らしのオヤジの日記。合唱も映画もドライブも温泉も、たまには俳句も・・・😄

呑む気オヤジの読書感想分~寅の1「ちんぷんかん」

2010-01-09 | 本の話
ちんぷんかん (新潮文庫)
畠中 恵
新潮社

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♪「ちんぷんかん」畠中恵著 新潮文庫

しゃばけシリーズ第6弾。
相変わらず病弱で頼りない「若だんな」と、お馴染みの「妖(あやかし)」が繰り広げる江戸市井の人情話。
今回は、「出会いと別れ」がテーマ?
若だんなには、腹違いの兄松之助や幼馴染の栄吉、桜の花びらの妖小紅との別れが待っていた。ほろ苦く切ない別れ・・・。
小紅をなんとか生かしたい、寿命を少しでも延ばしたとあれこれ悩む若だんなに、仁吉と佐助の兄やたちは神なる「荼枳尼天(だきにてん)」の庭へ連れて行くことをさり気なく伝える。
あとから若だんなは気づくのだが、荼枳尼天の庭に行くということは、この現世から異次元の神の棲家に移り住むということ。
そこなら病弱の若だんなでも、歳をとらず数千年の間生きていられる。
しかしその後兄やたちはその話は持ち出さず、若だんなも躊躇する・・・。

若だんなは今後どうやって生きていくのだろう。
何度も生死の境を経巡り、寝たり起きたりで歳を重ねてゆくのだろうか。
もう少し元気になって、妖たちと活躍して欲しいと思う。


*本当はこの本、去年のうちに読み終えた。でも今年になってから感想文を書いたので、「寅の1」
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呑む気オヤジの読書感想文・丑の番外編「のだめカンタービレ#23」

2009-12-19 | 本の話
のだめカンタービレ #23 (講談社コミックスキス)
二ノ宮 知子
講談社

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♪「のだめカンタービレ #23」二ノ宮知子著 講談社コミックスKISS

あ~ぁ、ついにのだめがグランド・フィナーレを迎えてしまった。
残念だなぁ~、さみしいなぁ~。
かつてこれだけ笑えて、泣けて、胸がキュンと来るクラシック音楽漫画があっただろうか!?(と、みんなが口を揃えて言っている)
「のだめ」については、これまでも何度も書いているので繰り返しは避けるが、僕にはこの漫画に登場する若き音楽家たちが羨ましくて仕方がない。
もちろん、いくら自分が音楽好きであっても、音大に行ってプロの音楽家になるほどの力は全然ないことは知っていたから、その道は選ばなかった。
でも、ここに登場するメンバーはなんと楽しそうに音大生活を過ごし、なんと素晴らしい演奏活動を経験しているのだろう。
漫画の中のお話と分かっていても、羨ましい限りだ。
まぁ、もっとも僕も最近は男声合唱に巡り会って、結構充実した音楽活動に身を置いている。
のだめを読み始めた頃は、何か音楽活動をやりたくて悶々としていた。
今は一応そのモヤモヤが晴れたので、幸せであります。
アマチュアだって十分に楽しめるさ!
音楽を自ら楽しみ、そして聴く人に感動を与えたい。この気持ちはプロもアマも一緒です!

さて、前号までは・・・。
Ruiに千秋とのコンチェルト共演の先を越され、落ち込むのだめ。
シュトレーゼマンの巧みな誘いにより、なんとロンドンフィルとショパンのピアノコンチェルト1番を演奏し、プロデビューを果たしてしまう。
そしてその演奏があまりにも素晴らしく、千秋とコンチェルトを共演してもこれ以上の演奏をする自信がないと悩んで落ち込んでしまう・・・。

そしてグランド・フィナーレ。(以下、ネタバレあり。でも随分端折っていますが)
メランコリック・ロンリー・ジャーニーから帰ったのだめは、意識的に仲間と接触せず、子供たちと遊んでばかり。
「もじゃもじゃ組曲」や「おなら体操」を子供たちと楽しそうに弾く姿を見て、千秋はもうこれ以上クラシックに縛り付けるのは止めようと思う。
しかし、たまたま“まじめに”弾いたベートヴェンのソナタを聴いて、千秋はやはりのだめをクラシックの更なる高みに引き上げてやりたいと思い直す。
強引にのだめの手を引きピアノの前に座らせる千秋。
「モーツァルトの2台のピアノのためのソナタ、これなら弾けるだろう?さぁ、いくぞ!」
初めて二人で共演した曲、のだめは弾きながら以前のピアノへの情熱と千秋への想いを取り戻し、たちまち演奏に夢中になる。
弾き終わって目を合わせる二人。
「しぇんぱいの背中、飛びつきたくてドキドキ。これってフォーリンラブですか?」
こうしてのだめは、コンセルヴァトワールにも戻りプロとしての演奏会も引き受け、音楽とピアノの真髄を目指し千秋と共に歩むことを決めたのでありました・・・! FIN


本単行本の最後の方に出てくる、僕のお気に入りの言葉。

「何百年も前に記された音符が、生まれ育った国も性別も目の色も、なにもかも違うふたりに同じ音を思い描かせる。わかり合えないと思っていた人と、たった一音でわかり合えたり、惹かれ合ったり・・・」

う~ん、音楽のまさに真髄であります。
のだめと真一、そしてその仲間たちに、心からBravi!!
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呑む気オヤジの読書感想文・丑の9「ブラバン」

2009-11-30 | 本の話
ブラバン (新潮文庫)
津原 泰水
新潮社

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♪「ブラバン」津原泰水著 新潮文庫

高校の弱小ブラスバンドの面々が、卒業以来四半世紀を経て中年になってからメンバーの披露宴で演奏するためにバンドを再結成する。
彼らの瑞々しい高校時代と、ちょっと現実にくたびれた40を過ぎたオジサン・オバサンの現在が、ほろ苦く切なく描かれた話だ。

主人公の他片(たひら)は、今はいつ潰れてもおかしくない場末のバーの経営者。
高校時代の先輩に声を掛けられ、図らずも昔のメンバーを集めてブラパンの再結成に協力することになる。
卒業してから25年。死んだ者、行方不明の者、事故で片腕を失くした者、幸せに結婚したり、家業を継いでいる者、etc、etc・・・。
最初は全くやる気がなかったが、仲間に会うたびに高校の頃の出来事が蘇り、次第にのめり込んでゆく。
高校の頃の、情熱と覚醒と希望と挫折を併せ持つ複雑な青春時代。
中年になって、十代の頃の希望と挫折を、若気の至りと皮肉な微笑で振り返り、でももう一度バンドをやっても良いかなと昔を懐かしむ今の自分・・・。
高校時代と現代を行ったり来たりして、それぞれの時代の自分と友人たちの時々の人生を克明に描く。

中学と高校の1年間をブラバンで過した僕には、読んでいて胸に迫るもがあった。
懐かしさと、途中で止めてしまった後悔。主人公の他片ほどではないが、僕にも忸怩たる思いがある。
また主人公たちが高校生だったのが1980年。多少ずれるものの、出てくる音楽や風俗は僕たちの青春時代と共通する。
そういう意味で、とても面白くかつ感動的に読めた。
ただ、高校時代と現代を行ったり来たりすること、登場人物が多くて、そのキャラと相関関係が良く理解できないこと、そして広島弁?がすんなり頭に入らないことなどにより、せっかくの話の魅力をスポイルしている。


話の中に、主人公が父親にベースギターを買ってもらうシーンが出てくる。
決して裕福な家庭ではなく、父親も若い頃にマンドリンは多少弾いたものの、ブラバンやロックには全く興味も理解も示さなかった。
しかし、いざベースギターを買うとなったら一緒に楽器店に付いて来た。
フェンダーのコピー物の国産品を手に取った主人公に父親が「それはコピーやろ。本物はありますか」と店員に聞く。
「本物を弾かせてやってください」「いい音が出るか?それでええか?」
結局主人公は本物のフェンダー・プレシジョンベーズを買ってもらう。17万円。今で言えば3倍近いだろう。
このシーンはちょっと感動した。
高校の頃に、僕も父親にフルートを買ってもらった。
ヤマハのYFL-31という、入門機種の中では上位の楽器だった。
ウチの父も、あまり安物では飽きてしまうし上達もしないと思ったのだろう。
当時3万円台、今は同等の後継機種が10万円以上する。
あの時、とても父に感謝したことを思い出した。
そのフルートは今も手元にあるが、すっかりシルバーメッキが黒ずんでしまい、リペアに6万円もすると言われてしまった・・・。
なんとかリペアして、また吹きたいと思っている。
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呑む気オヤジの読書感想文・丑の8「天使と悪魔」

2009-10-29 | 本の話
天使と悪魔 (上) (角川文庫)
ダン・ブラウン
角川書店

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♪「天使と悪魔 上・中・下」ダン・ブラウン著 角川文庫

久しぶりの読書感想文。なんと8月以来だ!
まぁ、相変わらず本を読んでいない。結構な読書好きだったのに、この体たらくはどうしちゃったんだろう。
確かに通勤中は音楽を聴いたり(合唱の練習)新聞を読んだりで、本を開くことが余りなくなった。
それに会社から帰る時間になると、目がちらついて本を読むのが面倒になってきた。(要は老眼です・・・)
読みたい本はいっぱいあるんだけどなぁ。
やっぱり本を持って、また積善館に行こう!それも最低2泊、出来れば3泊。
温泉入って、ビール呑んで寝て、また温泉入って・・・?本を読む時間がないじゃないか!

前置きが長くなりました。
本作は、しばらく前に読み終わっておりました。インプレを書こうと思いながら、ついつい後回しになってしまった。
これでこの作者の作品を読むのは「ダヴィンチ・コード」「デセプション・ポイント」についで3作目となる。
相変わらずスピード感があって、壮大でハラハラドキドキで面白い。
ストーリーの詳細には触れない(ネタバレはあります)が、同じキリスト教会ものでも「ダヴィンチ・・・」ほど複雑で話が入り組んでいない分、すんなり読める。
ただし、「反物質」なる驚異的な威力を持つ新エネルギー(?)や、敵の居所を突き止めるための古文書によるパズル解き、主人公のラングトンが高度何万メートルものヘリコプターからスパーマンよろしく飛び降りるところなどは、ちょっと荒唐無稽だ。
それでも、最後の大どんでん返しなどを含めて、エンターテイメントとして楽しめることは確かだ。
ハイ、娯楽小説なんですから、あまりうるさいことを言わず楽しめばいいんです。
もうそろそろDVDのレンタルも始まるようだ。是非観てみたい。


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呑む気オヤジの読書感想文・番外編「のだめカンタービレ#22」

2009-08-22 | 本の話
のだめカンタービレ #22 (講談社コミックスキス)
二ノ宮 知子
講談社

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約1年ぶりの単行本。
最近は隔号連載のようなので、ということは月1回の掲載。それに暫く休載していたから漸く1年ぶりの単行本となった。


《前号まで》

千秋とのコンチェルトを夢見るのだめ。そのためにピアノを続けてきた。
ホントは幼稚園の先生になりたかったのに、コンクルだってやりたくなかったのに、まして留学なんてとんでもなかったのに・・・。
でも千秋とコンチェルトをやるために、一生懸命勉強して練習して、留学までした。
千秋とのコンチェルト、その夢を目の前でRuiに実現されてしまった。それも完璧な演奏で。
もうすっかりやる気をなくしたのだめに、シュトレーゼマンは自分との共演を申し出る・・・。


♪「のだめカンタービレ#22」二ノ宮知子著

さて今号。(以下、ネタバレあり)
まんまとミルヒ(シュトレーゼマン)の策略に乗せられ(?)、ロンドンでショパンのピアノコンチェルトでデビューするのだめ。
その自由奔放さと情熱に溢れる演奏は、聴衆の喝采を浴びる。
しかもコンサートの模様はネットで全世界に配信され、世界中に「のだめ」の名前が広まった。

千秋もその演奏の素晴らしさに目を見張る。
しかし一度出来た二人の感情のズレ、溝はなかなか埋まらない。
千秋はのだめときっちり対峙しようとするが、のだめはミルヒとの渾身の演奏で一夜にして燃えつき、抜け殻状態だ。
そしてのだめは千秋と会わぬまま、傷心のメランコリック・ジャーニーへ・・・。

う~ん、そろそろ千秋とのだめの物語も終結時かなぁ~と思っていたら、次号(#23)の予告に「いよいよクライマックス!」と載っていた。
あれ、まだKissで連載は続いている?もう終わっちゃった?単行本も次号で終わり?
こんなに面白くて笑えて、そして時々ほろっと来る音楽漫画が終わってしまうのは残念だけど、やっぱりそろそろクライマックスにするべきだよね。
最終回が楽しみだ。#23は11月に発刊予定です。


PS)ピアノの森
こっちも単行本が出たそうだ。早速買わないと。
でもこっちのほうは、クライマックスを迎えられずに、あちこちに迷走し、結局連載中止なんてことになりそうで、心配だ。
「のだめ」と並ぶ、クラシック音楽漫画の最高峰の作品だと思っているのに・・・。

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呑む気オヤジの読書感想文・丑の7「背負い富士」

2009-08-06 | 本の話
背負い富士 (文春文庫)
山本 一力
文藝春秋

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やっと1冊読み終えた・・・。なんと約2ヶ月ぶり!
まぁ、サマコンがあったからなぁ~。これからはまた読書に戻ろう。

ところで「ドッカン」ってご存知ですか?今時の女子中高生の言語だそうです。
ドッカン=読書感想文。今朝の「ズームイン」でやっていたけど、中高生は読書が嫌いらしいね。
ドッカンも携帯小説で書くらしい。なんともコメントのしようがない。
素晴らしい本に巡りあえた時の感動、漫画や携帯小説とは較べものにならないのに・・・。

♪「背負い富士」山本一力著 文春文庫

誰でも名前は知っている「清水の次郎長」の生涯を描いた小説だ。
かの清水の次郎長は実際どんな生涯を送ったのか。所詮「ヤクザの親分」が、なんでこんなに日本人の琴線に触れるのか。
僕も次郎長の名前は知っているし、浪花節の「旅ゆけばぁ~、駿河の・・・」の件も聞いた事がある。
でもどんな人物で、どんなことをやって、どんな風に生涯を過ごしたのかは、全く知らない。

山本一力は、これまでの作家がほとんどスポットを当てなかった次郎長の幼年期を克明に書いている。
そしてなぜ米問屋の跡取りとして養子に入ったのに、いつのまに渡世の道に進んだのかも十分に語っている。
次郎長、石松、大政、小政、お蝶、そして筆者の創作人物である音吉の侠気溢れる人生。
江戸末期から明治初期にかけての不安定で不穏な世相の中で、活き々々と目一杯生きた彼らの人生に共感を覚える。
渡世人、侠客、極道・・・、昔と今じゃ全く異なる存在だ。
昔は義理も人情もふんだんにあったんだなぁ。それはそれで良い時代だなぁ。
「清水の次郎長」の素顔に触れることが出来て良かったと思える話だった。

ところで、以前から書いているように、なんでこんなにこの人の書く話は味があるんだろう。
一つ一つのエピソードの区切り(章や段落ごと)で、まるで活動写真(?)の弁士が解説を加えるように、その情景や人物の感情を上手く締めくくっている。

例えば・・・

『晴れた日の九ッ過ぎに、二十四歳の次郎長と十一歳の石松は一本の竿の両端を掴み合った』(次郎長と石松が初めて出会う)

『安政五年の大晦日。お蝶は粉雪のなかを、鈍色の空に向けて飛び立った』(愛妻お蝶の臨終)

『次郎長は長火鉢の前に座り、ひとり酒盛りを始めた。酒に涙がこぼれ落ちた。構わずに飲み干した』(石松の憤死に)

次郎長の想いが僕の胸に迫り、思わず目頭が熱くなった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

次郎長は明治26年まで生き、晩年は明治政府(官軍)の命により、清水湊付近の沿道警護役まで勤めた。
街道一の男、渡世人である。
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久しぶりの立ち読み~「のだめカンタービレ」&「ピアノの森」

2009-06-15 | 本の話

久々に「のだめ」を立ち読みした。
最近は「のだめ」も月一連載?のため、あまり話は進展していない。

シュトレーゼマンとのコンチェルトを成功させたのだめ。
千秋が祝福のためにのだめを訪ねると、行方不明?
のだめは千秋の前から姿を消してしまった。
千秋は奔放なのだめのことが分からなくなってしまう・・・。

相変わらずの二人だが、続けて読んでいないので話が良く分からない。
次の単行本(#22)は8月10日に発売だそうです。
楽しみだ・・・。


「ピアノの森」は、相変わらずの不定期掲載。
毎週、今回は載っているかな?とモーニングを手にとって、あぁ~やっぱりダメか・・・。
いい加減疲れるね。これじゃ、ファンも離れていくだろうに。
前回の掲載が3週間ぐらい前だったか。
ショパンコンクールの1次予選を通過した雨宮と海。
雨宮の体調は大丈夫か?海の自由奔放な演奏は2次予選以降も評価されるのか?
興味は尽きないが、2次予選まで話が進むのは、随分先だろうなぁ・・・。
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オヤジの読書感想文~丑の6「危険な斜面」

2009-06-10 | 本の話
危険な斜面 (文春文庫)
松本 清張
文藝春秋

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♪「危険な斜面」松本清張著 文春文庫

友人から借りた文庫本だ。松本清張の初期のころの短編集。
う~ん、読んでいて懐かしい昭和30年代の匂いがする。

昔付き合っていた女が、今の勤務先の会長の妾となっていた。何とかその伝を利用して出世したい男の転げ落ちる人生。(「危険な斜面」)
療養所を無理して退院してきた夫のために派遣看護婦を雇うが、その夫と優秀な看護婦の態度が怪しく、妻は悶々と悩む。(「二階」)
東京に出稼ぎに来ていて思わず犯した強盗殺人。妻と子供のいる東北の某都市に舞い戻るか?地元のベテラン刑事と若手刑事が犯人の自宅で張り込みを行うが、犯人は地元の海に投身自殺する。その前に張り込みを潜り抜け、妻と会っていた?(「失敗」)
人生の行き詰まりに疲れ、会社の金を横領して心中のために恋人と逃避行する男。旅先で、なに不自由なく旅行する富裕層の中年カップルと出会い、心中を思い止まるが・・・。(拐帯行」)

いずれも人生のどん詰まりに追い込まれた一般庶民の葛藤や思い込み、それとはそ相反する現実などをピックアップした松本清張ならではの短編集。
最終話の「投影」が、せめても主人公の明るい未来を暗示し、少し救われた。
松本清張って、長編ももちろん読み応えがあって面白いんだけど、短編が結構いいんだよね。
清張との出会いは、実家の親父の本棚に並んでいたカッパブックス(懐かしい!?)の「黒の画集」だ。
この短編集を高校生の頃に読んで、すっかり「清張ワールド」に魅了されたものだ。

「黒い画集」は、そのうち読み直して感想を述べようと思います。
(高校生の感動が蘇るか?)
昭和30年代の雰囲気は、僕らぐらいまでの年代の者はちゃんと記憶している。
なんとも懐かしく、かつ良き時代だったような気がする。
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オヤジの読書感想文~丑の5「梅咲きぬ」

2009-05-12 | 本の話
梅咲きぬ (文春文庫)
山本 一力
文藝春秋

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♪「梅咲きぬ」山本一力著 文春文庫

深川の老舗料亭「江戸屋」の四代目女将秀弥の半生記。
先代の女将の一人娘の玉枝は、5歳の頃から将来の料亭女将としての心得、作法、店の営み方などを学ぶ。
先代の秀弥は、母親としての気持ちを胸の奥に仕舞い込み、女将として玉枝を厳しく鍛えてゆく。
その二人を軸に、舞踊の師匠春雅と福松夫妻、門前仲町の商人や深川の材木問屋の主たち、木場界隈の鳶衆などが織り成す人間模様は慈愛に満ちていて、読んでいて心が温かくなる。
山本一力の小説は、登場人物を巡る色彩や音、漂う風や匂いなどが、実にはっきりと読者に伝わってくる。
あたかも自分がその場に一緒にいるような錯覚に陥る。

例えば・・・

『心底から嬉しそうな笑いを浮かべた秀弥の後ろで、柿の実が黄金色に照り輝いていた』

『雲間からこぼれ出た薄い陽が、あじさいの色味を際立たせていた』

『福松はこぼれた涙のわけを問いもせず、黙って秀弥と向かい合っていた。こおろぎの鳴き声だけが、物音だった』

う~ん、やっぱりこの人の文章は凄い!
読んでいてグイグイ惹きこまれ、思わず鼻の奥がツ~ンとなる。
Bravo~です!


*今年5冊目を漸く読み終わった。なんという遅読。音楽と読書の両立は難しい・・・。
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オヤジの読書感想文~丑の4「うそうそ」

2009-04-01 | 本の話
うそうそ (新潮文庫 は 37-5)
畠中 恵
新潮社

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♪「うそうそ」畠中恵著 新潮文庫

「丑の5」になってるけど、実は「氷の華」の前に読んでいた。
ブログにアップするのを忘れていました。

畠中恵の「しゃばけ」シリーズ第5弾。
今回は初めての長編もの。
江戸通町に、廻船問屋と薬種問屋の大店を構える長崎屋の若旦那一太郎は、病弱で寝たり起きたり。
両親や妖(あやかし)の兄やに砂糖のように甘やかされ、鳴家(やなり)、屏風のぞきたちに囲まれて日々を過ごす。
そんな若旦那が、なんと遥々箱根まで湯治に出掛けることになった・・・。

箱根の山では天狗に襲われ、山神様の怒りに触れた大地震に見舞われ、はたまた誘拐され、そして山神様の一人娘お比女には嫌われ、散々な目に遭う。
ひ弱な若旦那はこんな次々に襲い掛かる災難に耐えられるのか!?
若旦那はいつもと変わらず妖たちに囲まれて楽しそうだが、今回はこれまでにない「絶体絶命」状態だ!果たして若旦那の命運は如何に!

初の長編で読み応えがあるのだが、短編と較べるとちょっと冗長で中だるみを感じる。
それにストーリーの展開が、最初のうちはどうも良く理解できなかった。
なんで若旦那と兄やたちが船の中ではぐれてしまうのか、天狗が若旦那を襲うのか、雲助たちはどう関わるのか・・・?
最後に来て全てが繋がって「なるほど、そういうことかぁ!」と納得できたわけでもない。
そういう意味では、折角の長編だがちょっと物足りなかった。
いつもの江戸市井ものの短編の方がすっきり感動できたかなぁ。
期待のシリーズのため、ちょっと残念!
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オヤジの読書感想文~丑の3「永代橋崩落」

2009-03-30 | 本の話

♪「永代橋崩落」杉本苑子著 中央公論文庫

先日門前仲町で呑んだ時、小説の話になった。
このあたり(門仲、深川、木場など)を題材とした時代小説は面白いという話。
この前書いたように、富岡八幡宮や深川不動尊、その仲見世あたりは秋山小兵衛や長谷川平蔵あたりがいかにも闊歩していそうな雰囲気がある。
池波正太郎も面白いし、平岩弓枝、山本一力なども江戸下町情緒溢れる人情話がなんとも良い。
そんな話をしていたら、団長が「杉本苑子の『永代橋崩落』読みましたか?なかなか良いですよ」と仰る。
そうしたらTマネージャー(団長の奥さん)が「今日、持っているから貸そうか?」
元々江戸時代劇好きの僕は「ハイ、読みます!」

文化4年(西暦1807年)旧暦8月に起こった永代橋の崩落事故。
その日は30数年ぶりに富岡八幡宮の祭礼が復活し執り行われた。
江戸日本橋側から深川八幡宮に大川(現隅田川)を渡るのに一番近道の永代橋。
架橋100年来、最低限の普請を重ねて来た永代橋は、殺到する群衆の重みに耐えられなかった。
崩れ折れた橋から後ろから押されて次々に大川に転落する通行人。
2千名以上が溺死または行方不明となる大惨事となった・・・。

その未曾有の惨事に直接に間接に巻き込まれた下級武士、商人、市井の人々の悲喜こもごもを8つの話にまとめた短編集だ。
どの話も胸がぐっと詰まる。
こんなはずではなかったのに、なんでこんなことに、亡くなった方々には申し訳ないがお陰さまで・・・。
藤沢周平の地方下級武士の話もすごく良いが、やっぱり江戸庶民の人情味溢れる話はぐっと心に迫ってくる。

う~~ん、やっぱり小説っていいですね。
合唱練習のための音取りiPodも大切だが、やっぱり本を読もうっと!

PS)
Tマネージャーから文庫本を借りたんだけど、中に挟まってたのが富岡八幡宮のお札入れの和紙の袋?
門前仲町で呑む前に寄ったのでしょうか。
「永代橋崩落」のしおりが富岡八幡宮のお札入れ?
マネージャー、なかなか粋じゃぁありませんかぃ!
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オヤジの読書感想文~丑の2「氷の華」

2009-03-29 | 本の話
氷の華 (幻冬舎文庫)
天野 節子
幻冬舎

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♪「氷の華」天野節子著 幻冬舎文庫

う~~ん、久々に読み応えのある、本格的なミステリーを読んだ気がする。
この緊張感、緻密さ、最後のどんでん返し、そして重厚感・・・。素晴らしい!

資産家の家系に生まれ、なに不自由なく夫と豪邸で過ごす恭子。
唯一の悩みは不妊症で夫との間で子宝に恵まれないこと。
ある日夫の愛人を名乗る女性から電話が入る。
その女性は夫の子供を身篭っていると告げ、分かれて欲しいと迫る。
恭子はその女性に殺意を抱き、突き止めた女性の住まいに向かう・・・。

恭子とベテラン刑事の戸田との応酬で火花が散る。
う~ん、見事だなぁ。
そしてラストには、これまた見事などんでん返しが待っていた・・・!
凄い、面白い!結構分厚い文庫本だが、1週間で一気に読んでしまった。
ウン、普段iPodを聴いている僕が、1週間でこの本を読了することは、凄い。
TVドラマでもやったらしい。ドラマでどのように描くのか、是非見てみたいものだ。
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オヤジの読書感想文~丑の1「狼男だよ」

2009-03-29 | 本の話
狼男だよ―アダルト・ウルフガイシリーズ〈1〉 (ハルキ文庫)
平井 和正
角川春樹事務所

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♪「狼男だよ」平井和正著 角川文庫(上記画像は現在のハル文庫版)

丑年の記念すべき?第一冊目は、先輩から回ってきた「狼男だよ」
実はこの本は昨年末から読み始めたのだが、読了が1月末になってしまった。
普通に読めば2~3日でも読める本だ。
前から書いているように、最近は読書よりも合唱の音取り音源を聴くほうに集中しているため、ほとんど本を読んでいない。
結構の読書好きだったんだけどねぇ・・・。

随分前に読み終わっており、まぁはっきり言って中身の濃い小説ではないので、ほとんど内容を忘れてしまった。
でも前にヤングウルフシリーズのところで書いたように、一昔どころか二つか三つ昔の話だ。
高度成長を続ける昭和30~40年代の元気な日本が舞台。
今とは全然シチュエーションが違う。
狼男はあくまでも不死身で強靭で、敵をばったばったと倒してゆく。
今の時代的には荒唐無稽もいいところだ。
まぁいいか!という感じ。
昔は面白かったんだけどね、今の複雑怪奇な世の中ではあまりにも単純だ。
それも時代、仕方がないことだね。
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「ピアノの森」再開!

2009-02-07 | 本の話

正直、もうダメかと思っていた。
あぁ~、結局カイのショパンコンクールもここで終わってしまうのか。
これからカイどうなるんだろう・・・。
そう思いながらも、気になって気になって時々コンビニでモーニングを立ち読みしていた。
そうしたら、遂に先週復活しましたぁ~~!

開演前は、審査員も聴衆も全くノーマークだった無名の新人、カイ・イチノセ。
カイの演奏は、コンクール参加者80名の中で最長の3分15秒ものスタンディングオベーションで絶賛される。
だが、fff(フォルテシシモ)を拳で弾くなどの「フリースタイル」に審査員の中では賛否両論も・・・。
さあ一次予選の審査結果発表だ。カイは果たして通過できるのか!? 待たれ、次号!

パン・ウェイと阿字野、佐賀とマリア(カイ)、ジャンとカイ。
それぞれの熱い想いが、読んでいる僕の胸にグイグイと迫ってくる。
う~ん、やっぱりこの漫画は傑作だな。
「待たれ、次号!」がまた何週間も、何ヶ月も先にならないことを、定期的に連載されることを、心から祈念いたします。
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呑む気オヤジの読書感想文・子の21~「氷壁」

2008-11-08 | 本の話
氷壁 (新潮文庫)
井上 靖
新潮社

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♪「氷壁」井上靖著 新潮文庫

この秋両親と上高地や穂高に行って、改めて「氷壁」を読み返したくなった。
先日の「ウルフガイ」と同様、昭和30年代初頭を舞台とした物語。

登場する職場や街角の模様、交わされる会話、主人公たちの恋愛観や登山に対する考え方など、はっきり言って相当に古臭い。
でもその情熱とか想いとかは今でも新鮮に感じるし、穂高そのものが活き活きと描かれて、自分も一緒に山を登っている気持ちになる。
また出てくる地名がこの前我々が訪れたばかりのところだ。
主人公の魚津たちが穂高に向う道程は、松本、島々、奈川渡、沢渡、釜トンネル、大正池、河童橋、明神・・・。
50年前の国道158号線の景色は多分今とさほど変わらないのだろう。
でも、親友を山で亡くし、遺体の捜索に向う魚津はどんな気持ちであの道を登ったのか。
穂高の東壁で、果たしてナイロンザイルは切れたのか?誰かが切ったのか?
その疑問に騒然となる世論と魚津を取り巻く人々。
そして魚津に惹かれる美那子やかおるの人間模様。
舞台は古いが、そこに描かれる人々の想いや山々の風景は、現在と変わることはない。
あぁ、穂高に登ってみたいなぁ~。

この本は昔読んだ気がしていたが、今回読んでみてはじめてであることに気がついた。
井上靖は結構好きな作家で「あすなろ物語」「敦煌」「楼蘭」「天平の甍」「おろしや国酔夢譚」など読んだので、てっきりこの話も読んだつもりでいた。
井上靖の文章はとてもきめが細かく写実が見事でかつ壮大。
まるで自分がそこにいるような気になる。
このところ「ウルフガイ」やIWGPシリーズなど軽いものばかりだったので、まさに日本の正統純文学を読んで久しぶりにたっぷりとした満足感に浸れた。
ウン、昭和の作家は偉大だね。素晴らしい!もっと読みたい!!


PS)
井上靖って、芥川賞は取っているけれど直木賞はない。
この「氷壁」なんて直木賞にぴったりだと思うけどね。
ところで、芥川賞が新人賞的で純文学に与えられ、直木賞は大衆文学みたいな分け方があるけれど、僕にはピンと来ない。
芥川賞と直木賞の違いはなんなんだろう?



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