10月30日(木)晴時々曇
先週、今週と何とは無しに忙しく過ごしています。別に大した仕事をしている訳ではありませんが予定だけは詰まっている感じです。今週は今日で3日目の飲み会で体重を上げてばかりで減量が追いつきません。
ところで延び延びの日本の原風景ですが今日は久しぶりに続編を書いて見ます。前回この島の住民で一番長く生き残っているサクの知恵を二人の孫娘たちに話して聞かせているところでした。
サクはこの島の一年は梅の蕾が膨らみかけたころの新月の日を一年の初めとして次の新月までの間を1ヶ月と教えていました。そして1年の間にだいたい12回の月の満ち欠けがあること、3年一度1ヶ月余分な月があることを教えていました。そして1ヶ月ごとに変わっていく自然の現象を一つ一つ教えたのでした。これによって1ヶ月先、2ヶ月先に起こることを予測でき、生きていく為の基本となる暦の概念が出来上がっていきました。サクがこのことを発見するまでは毎年やってくる集中豪雨や台風の時期もわからず大勢の人たちが犠牲になったり、またフユの木枯らしが吹く時期には飢えに苦しむのが常でした。この暦の概念を使うことによりアキの実りはフユの食料を蓄えることになったのです。それでも貯蔵の方法がわからず結局食べられなかった物もたくさんありました。こんな経験を積むことによりだんだん長いフユも快適に過ごせるようになっていきました。ナギは海で魚を取ることを覚え、干物を作ることが得意になったし、ナオは森の胡桃を地面に埋めてフユに取り出すことや柿の皮をむいて干し柿を作ることが得意になっていました。
ある年の春の終わりの頃でした。海辺の波打ち際に二人の若者が打ち上げられているのを朝の海に出てきたナギが見つけました。二人ともぐったりとしていましたがまだ息がありました。ナギは急いで住処に戻りサクとナオを連れて波打ち際までやってきました。今までも何人か島に流れついた人はいましたがみんな死んでいました。その度にサクに言われたように浜辺の奥に穴を掘っては埋葬していました。でも今回はまだ息をしていたのでどうしたらよいのかわからなかったのでした。サクはいつものように穴に埋めてしまうように言いましたが、ナギはこの若者達を介抱すると言ってサクの言うことを聞きませんでした。しかたなくサクはしぶしぶ住処に運ぶことを承諾し、二人の若者を引きずるように住処まで運びました。ナギとナオはサクが二人を運んでいる間に若草をいっぱい摘んできて柔らかなベッドを作っていました。サクは二人の娘の作った若草のベッドに二人を寝かせると、裏の小川の水を木をくり抜いた椀に入れ二人の口にもっていき飲ませました。一人の若者はむせるような咳をして意識を取り戻しびっくりしたような顔をして三人の顔を見つめていましたが危害を加えられる心配がないと思ったようで安心した顔で眠ってしまいました。もう一人の若者はまだ意識がないようにぐったりしていました。
ナオが木苺を取りに行くと言ってナギの手を引きました。山のことは小さなナオの方がよく知っていたのでナギはナオについて森に入って行きました。ナオの秘密の場所には木苺がいっぱいありました。1時間ほどでそれぞれ蕗の葉にいっぱいの木苺を入れて戻ってきました。
今日はここまでです。この続きはまたいつか。