生き生き箕面通信

大阪の箕面から政治、経済、環境など「慎ましやかな地球の暮らし」をテーマに、なんとかしましょうと、発信しています。

生き生き箕面通信982 ・「犬と鬼」

2011-08-16 07:14:08 | 日記

 おはようございます。「節電の夏の宝の微風かな」(本日の読売俳壇より)。緑陰の涼風もすばらしいですね。
 生き生き箕面通信982(110816)をお届けします。

・「犬と鬼」

 日本をこよなく愛するアメリカ人、アレックス・カーさんは、10年前に発刊した「犬と鬼」の序文で、日本の根深い問題として「深刻な文化危機」を指摘しています。日本の病は、「国家の魂を蝕んでしまっている病なのだ」と見ています。

 カーさんは日本が好きで住みつき、かれこれ40年前に四国の東祖谷山村(ひがしいややまそん)に古民家を購入して、「日本の生活」を自分のものにしています。

 戦後の日本を大きく振り返って、「なぜ京都や奈良が無機質ジャングルに変えられてしまったのか」と、問うています。「瑞々しく青々とした山々、エメラルド色をした岩の上を流れる清流など、世界でも有数の美しい自然環境。東アジアのあらゆる芸術的財産を受け入れ、何世紀もの間日本特有の感性でさらに練り磨いた、アジアで最も豊かな文化遺産。先進国でも屈指の優秀な教育制度や、高度なテクノロジーを誇る日本。工業分野の成長は各国の称賛を浴び、その過程で得た利益で、ひょっとすれば世界で最も裕福な国となったかもしれない」。その日本が、何をどこで間違えたのか、という問いです。

 日本が抱える問題の発端は、明治維新にさかのぼり、この時代に植民地にされることに抵抗して西洋列国より強くなろうとした。だから、産業社会の発展成長のためには何を犠牲にしてでもやり遂げるという政策が取られ、それはその後も一貫して継続されてきた。その間に、本当に大事なものとの間に大きな溝ができてしまった。

 日本は身近な大事なものを粗末に扱い、はではでしいコンクリート造りにのめり込んだ。著書名の「犬と鬼」は、中国の古典(韓非子)の中にある話からとった。皇帝に問われた宮廷画家が「犬のようなおとなしく控えめな存在は正確にとらえることが難しい。しかし、派手で大げさな想像物である鬼は、誰にだって描けるものです」と答えた話からです。

 節電をして自然の風を感じると、改めて自然の恩恵、自然のありがたさが感じられます。私たちは、時代が大きく変わる分岐点に立っています。2000年来、日本人の中にはぐくまれてきた「自然(じねん)のままに生きる」という考え方を見つめ直したいものです。