僕は屋久島の宮之浦に生まれた
僕の最初の小学校は
はるか昔に廃校になった
屋久杉の原生林の中にあった
小杉谷小学校だ
父が初めて赴任した小学校だ
ここで小学校3年までの時を過ごした
父が53才で他界したこともあり
思い出の場所に実家をと
母は
父と艱難辛苦を共にした新婚の島
屋久島に家を建てた
安房は松ヶ峰だ
だが
年月は流れ
老年になった母は
1人で暮らすには大変だと
鹿児島に移り住むことになった
当然のこととして
屋久島の実家は空き家のようになってしまった
でも一ヶ月に一回はと
帰家を願う母の思いに答えるため
一緒に屋久島に帰ることにしている
我が家の入り口にはシナモンの木と
ゲットウが生い茂っている
庭には手を一杯に広げたソテツと
盆栽のような五葉松と
裸の人物が立っているようなヒメシャラの木が迎えてくれる
畑にはブロッコリが花を咲かせ
時計草の葛がジャングルのように覆いかぶさっていた
裏庭に自生しているのバナナの木は
冬の寒さに耐えてきた
冬越をしたバナナの花が惨めな姿をさらしていた
椿の蜜と甘い金柑の実には
ヒヨドリとメジロが戯れていた
家の周りのアチラコチラで
春の訪れを待っていたかのように
花々が咲き始めた
お部屋の中では
母がツワブキの皮を剥き
僕は囲炉裏に炭を熾した
田舎の我が家の素朴な風景だ
人は時折
日頃の喧騒から離れ
静寂の一時が必要だ
古里とは
そんな場所かもしれない
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