出雲をめぐる神話には2つの流れがある。
(1)「記紀」(『古事記』と『日本書紀』)の出雲系神話
(2)『出雲国風土記』や「出雲国造神賀詞」の地元の出雲神話
両者には、例えば次のような違いがある。
(1)では、高天原から使者として地上へ降りたアメノホヒは3年間高天原へ奏上しなかった。しかし、(2)では、アメノホヒはしっかり任務を果たしている。
(1)では、スサノオは八岐大蛇を退治するが、この話は(2)にはまったく登場しない。
他方、(2)には八束水臣津野命による雄渾な出雲創成譚(国引き神話)が展開されるが、(1)にはこれは載っていない。
余談ながら、パンタグリュエル的巨人、八束水臣津野(ヤツカミズオミツヌ)命が国引きを終えたとき「おゑ」と言ったが、これが意宇郡の地名の起源だ。
もう一つ余談ながら、(1)の国生み神話は、垂直型だ。これに対し、(2)の国引き神話は水平型だ。(2)こそ、地方分権の時代にふさわしい神話ではないか。
さて、スサノオだが、(1)では荒ぶる神だ。父親のイザナギから海の支配を命じられても従わず、姉のアマテラスがまします高天原では乱暴狼藉を尽くし、追放される途中でオオゲツヒメを殺害したりもする悪神だ。地上に降り立ってから、不思議なことに善神に変貌するのだが、八岐大蛇を殺したり、荒ぶる性格は変わっていない。
他方、(2)では荒ぶる性格は見られない。逆に、木の葉を頭に刺して舞い踊ったり、妙に愛嬌のある神だ。
『出雲国風土記』にスサノオが登場するのは4ヵ所で、ごく簡単な記述だ。そのうち最も詳しいのが飯石郡の須佐郷【注1】のくだりだ。郷名に神名が使われていることもあって、須佐郷がスサノオの本貫地だろう。他の3ヵ所は、大原郡佐世郷【注2】、同御室山、意宇郡安来郷だ。飯石郡をはじめ、奥出雲のたたら製鉄集団(「もののけ姫」のたたら場は奥出雲がモデルの一つ)が、須佐郷→佐世郷→御室山→安来郷へと地図上は直線的に、山間部から海浜部へ進出していった、とも読める。
須佐郷の西北部のほうが近いことは近いのだが、こちら神門郡にはオオナモチを奉じる集団が盤踞していて、抵抗が激しかったらしい。
スサノオの御子神7神のうち、2神は女神だ。いずれも神門郡に登場している。八野郷にはヤノノワカヒメがオオナモチと婚姻しようとして神殿を造った、という伝承がある。滑狭郷にはワカスセリヒメがいて、この神に対してもオオナモチは婚姻しようとしている。スサノオを奉じるたたら製鉄集団が、オオナモチを奉じる集団に対して懐柔策をとったのだろう。
ちなみに、オオナモチは、「天の下造らしし大神」大穴持命/大己貴命。(1)の大国主だ。
【注1】今の出雲市佐田町須佐、反辺、原田、大呂、大川、雲南市掛合町穴見のあたり。
【注2】今の雲南市大東町飯田、養賀、上佐世、下佐世、大ヶ谷のあたり。
【参考】瀧音能之『「出雲」からたどる古代日本の謎』(青春出版社、2003)
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(1)「記紀」(『古事記』と『日本書紀』)の出雲系神話
(2)『出雲国風土記』や「出雲国造神賀詞」の地元の出雲神話
両者には、例えば次のような違いがある。
(1)では、高天原から使者として地上へ降りたアメノホヒは3年間高天原へ奏上しなかった。しかし、(2)では、アメノホヒはしっかり任務を果たしている。
(1)では、スサノオは八岐大蛇を退治するが、この話は(2)にはまったく登場しない。
他方、(2)には八束水臣津野命による雄渾な出雲創成譚(国引き神話)が展開されるが、(1)にはこれは載っていない。
余談ながら、パンタグリュエル的巨人、八束水臣津野(ヤツカミズオミツヌ)命が国引きを終えたとき「おゑ」と言ったが、これが意宇郡の地名の起源だ。
もう一つ余談ながら、(1)の国生み神話は、垂直型だ。これに対し、(2)の国引き神話は水平型だ。(2)こそ、地方分権の時代にふさわしい神話ではないか。
さて、スサノオだが、(1)では荒ぶる神だ。父親のイザナギから海の支配を命じられても従わず、姉のアマテラスがまします高天原では乱暴狼藉を尽くし、追放される途中でオオゲツヒメを殺害したりもする悪神だ。地上に降り立ってから、不思議なことに善神に変貌するのだが、八岐大蛇を殺したり、荒ぶる性格は変わっていない。
他方、(2)では荒ぶる性格は見られない。逆に、木の葉を頭に刺して舞い踊ったり、妙に愛嬌のある神だ。
『出雲国風土記』にスサノオが登場するのは4ヵ所で、ごく簡単な記述だ。そのうち最も詳しいのが飯石郡の須佐郷【注1】のくだりだ。郷名に神名が使われていることもあって、須佐郷がスサノオの本貫地だろう。他の3ヵ所は、大原郡佐世郷【注2】、同御室山、意宇郡安来郷だ。飯石郡をはじめ、奥出雲のたたら製鉄集団(「もののけ姫」のたたら場は奥出雲がモデルの一つ)が、須佐郷→佐世郷→御室山→安来郷へと地図上は直線的に、山間部から海浜部へ進出していった、とも読める。
須佐郷の西北部のほうが近いことは近いのだが、こちら神門郡にはオオナモチを奉じる集団が盤踞していて、抵抗が激しかったらしい。
スサノオの御子神7神のうち、2神は女神だ。いずれも神門郡に登場している。八野郷にはヤノノワカヒメがオオナモチと婚姻しようとして神殿を造った、という伝承がある。滑狭郷にはワカスセリヒメがいて、この神に対してもオオナモチは婚姻しようとしている。スサノオを奉じるたたら製鉄集団が、オオナモチを奉じる集団に対して懐柔策をとったのだろう。
ちなみに、オオナモチは、「天の下造らしし大神」大穴持命/大己貴命。(1)の大国主だ。
【注1】今の出雲市佐田町須佐、反辺、原田、大呂、大川、雲南市掛合町穴見のあたり。
【注2】今の雲南市大東町飯田、養賀、上佐世、下佐世、大ヶ谷のあたり。
【参考】瀧音能之『「出雲」からたどる古代日本の謎』(青春出版社、2003)
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著作権を主張しないでくださいませ。
入眠前なので詳しくコメントできませんが、例えば和鋼博物館は、たたら製鋼法のミニチュアと用具が展示されていて、関心のある方にはとても充実した時間を過ごせます。同じ館には、八雲塗りほか、地元の工芸品も展示されていて、小品ですが、私好みのいい作品がたくさんあります。
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入眠前なので詳しくコメントできませんが、例えば和鋼博物館は、たたら製鋼法のミニチュアと用具が展示されていて、関心のある方にはとても充実した時間を過ごせます。同じ館には、八雲塗りほか、地元の工芸品も展示されていて、小品ですが、私好みのいい作品がたくさんあります。
このタイトルは実に詩的です。
谷山浩子さんの曲をBGMに、一編の詩が紡ぎ出されそうです。
その大刀は1911年に発見されたらしい。ちょうどそのころ(1913)、安来鉄鋼合資会社
(現;日立金属安来工場)の伊部喜作という人物が、玉鋼に合金元素を添加して東洋で初の高速度工具鋼(ハイス)を開発したらしい。それ以来、日立金属になってまでずっと工具鋼の国内トップシェアーを守ってきた。
つまり、ハイス国産100周年というのが来年にあたる。凄すぎですよね。なにか匂いませんかね~。