語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
読書
大岡昇平+社会問題・社会保障

【佐藤優】書誌

2016年05月29日 | ●佐藤優
 ※2016年5月29日現在。なお、「●」は所持するもの。

 《追加分》
●『21世紀の戦争論 昭和史から考える』(文春新書、2016)/共著:半藤一利
●『自分を動かす名言』(青春出版社、2016)
●『組織の掟』(新潮新書、2016)
●『佐藤優選  ― 自分を動かす名言』(青春出版社、2016)
●『復権するマルクス 戦争と恐慌の時代に』(角川新書、2016)/共著:的場昭弘
●『動因を探せ 中東発世界危機と日本の分断』(徳間書店、2016)
●『佐藤優さん、神は本当に存在するのですか?』(文藝春秋、2016)/共著:竹内久美子
●『新・地政学 〜「第三次世界大戦」を読み解く』(中公新書ラクレ、2016)/共著:山内昌之
『竹中先生、これからの「世界経済」について本音を話していいですか』(ワニブックス、2016)/共著:竹中平蔵
『右肩下がりの君たちへ』(ぴあ、2016)/共著:津田大介ほか
『いっきに学び直す日本史 近代・現代 実用編』(東洋経済新報社、2016)/共著:山岸良二
『いっきに学び直す日本史 古代・中世・近世 教養編』(東洋経済新報社、2016)/共著:山岸良二
『いま、公明党が考えていること』(潮新書、2016)/共著:山口那津男

(1)著書
●『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社、2005 →増補版:新潮文庫、2007《解説:川上弘美》)
  ※第59回毎日出版文化賞特別賞
●『自壊する帝国』(新潮社、2006 →新潮文庫、2008《解説:恩田陸》)
  ※第5回新潮ドキュメント賞および第38回大宅壮一ノンフィクション賞
●『日米開戦の真実 大川周明著「米英東亜侵略史」を読み解く』(小学館、2006 →小学館文庫、2011)
●『獄中記』(岩波書店、2006年 →改訂版:岩波現代文庫、2009)
●『国家と神とマルクス 「自由主義的保守主義者」かく語りき』(太陽企画出版、2007 →角川文庫 2008)
●『地球を斬る』(角川学芸出版、2007 →角川文庫 2009)
●『国家の謀略』(小学館、2007)
●『野蛮人のテーブルマナー ビジネスを勝ち抜く情報戦術』(講談社、2007 →講談社+α文庫、2009)
●『野蛮人のテーブルマナー 「諜報的生活」の技術』(講談社、2009)
●『私のマルクス』(文藝春秋、2007 →文春文庫 2010)
●『インテリジェンス人間論』(新潮社、2007 →新潮文庫 2010)
●『国家論 日本社会をどう強化するか』(NHKブックス、2007)
●『世界認識のための情報術』(週刊金曜日、2008)
●『交渉術』(文藝春秋、2009 →文春文庫、2011)
●『テロリズムの罠 右巻 忍び寄るファシズムの魅力』(角川ワンテーマ21、2009)
●『テロリズムの罠 左巻 新自由主義社会の行方』(角川ワンテーマ21、2009)
●『外務省ハレンチ物語』(徳間書店、2009 →徳間文庫、2011)
●『神学部とは何か 非キリスト教徒にとっての神学入門』(新教出版社、2009)
●『「諜報的(インテリジェンス)生活」の技術 野蛮人のテーブルマナー』(講談社、2009)
●『甦る怪物 私のマルクス ロシア篇』(文藝春秋、2009)
●『功利主義者の読書術』(新潮社、2009 →新潮文庫、2012)
●『沖縄・久米島から日本国家を読み解く』(小学館、2009)
●『はじめての宗教論 右巻 見えない世界の逆襲』(NHK出版新書、2009)
●『はじめての宗教論 左巻 ナショナリズムと神学』(NHK出版新書、2011)
●『日本国家の神髄 禁書「国体の本義」を読み解く』(扶桑社、2009)
●『この国を動かす者へ』(徳間書店、2010)
『3・11クライシス!』(マガジンハウス、2011)
『予兆とインテリジェンス』(産経新聞出版、2011)
●『人たらしの流儀』(PHP研究所、2011)
●『佐藤優のウチナー評論』(琉球新報社、2011)
●『この国を壊す者へ』(徳間書店、2011)
『世界インテリジェンス事件史 祖国日本よ、新・帝国主義時代を生き残れ!』(双葉社、2011)
●『インテリジェンス人生相談 復興編』(扶桑社、2011)
『共産主義を読みとく いまこそ廣松渉を読み直す『エンゲルス論』ノート 廣松渉エンゲルス論との対座』(世界書院 2011)
●『外務省に告ぐ』(新潮社 2011 →新潮文庫、2014)
●『野蛮人の図書室』(講談社、2011)
●『国家の「罪と罰」』(小学館 2011)
●『新・帝国主義の時代 左巻 情勢分析論篇』(中央公論者、2013)
●『新・帝国主義の時代 右巻 日本の進路篇』(中央公論者、2013)
●『神学の履歴書 〜初学者のための神学書ガイド〜』(新教出版社、2014)
●『紳士協定 私のイギリス物語』(新潮社、2012/新潮文庫、2014)
●『帝国の時代をどう生きるか 知識を教養へ、教養を叡智へ』(角川oneテーマ21、2012)
●『読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門』(東洋経済新報社、2012)
●『人間の叡智』(文春新書、2012)
●『同志社大学神学部』(光文社、2012)
●『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス、2013)
●『知の武装: 救国のインテリジェンス』(新潮新書、2013)
●『国境のインテリジェンス』(徳間書店、2013 →徳間文庫、2015)
●『地球時代の哲学 池田・トインビー対談を読み解く』(潮出版社、2014)
●『元外務省主任分析官・佐田勇の告白: 小説・北方領土交渉』(徳間書店、2014)
●『先生と私』(幻冬舎、2014/後に幻冬舎文庫、2016)
●『佐藤優の沖縄評論』(光文社知恵の森文庫、2014)
●『「知的野蛮人」になるための本棚 (PHP文庫、2014)
『野蛮人のテーブルマナー 完全版』(講談社、2014)
●『宗教改革の物語 近代、民族、国家の起源』(KADOKAWA、2014)
●『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)
●『修羅場の極意』(中公新書ラクレ、2014)
●『逆境を乗り越える技術』(ワニブックス、2014)
●『「知」の読書術 』(集英社(知のトレッキング叢書)、2014)
●『私の「情報分析術」超入門 仕事に効く世界の捉え方』(徳間書店、2014)
●『創価学会と平和主義』(朝日新書、2014)
●『私が最も尊敬する外交官 ナチス・ドイツの崩壊を目撃した吉野文六』(講談社、2014)
●『佐藤優の10分で読む未来 キーワードで即理解 新帝国主義編』(講談社、2014)
●『日本国家の神髄 〜禁書『国体の本義』を読み解く〜』 (扶桑社新書、2014)
●『「ズルさ」のすすめ』(青春新書インテリジェンス、2014)
●『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』(「文藝春秋」2015年2月臨時増刊号)
●『世界史の極意』(NHK出版新書、2015)
●『神学の思考 キリスト教とは何か』(平凡社、2015)
●『危機を克服する教養』(角川書店、2015)
●『人生の極意』(扶桑社新書、2015)
●『プラハの憂鬱』(新潮社、2015)
●『国家の攻防/興亡』(角川新書、2015)
●『希望の資本論』(朝日新聞出版、2015)/共著:池上彰
●『危機を克服する教養 〜知の実践講義「歴史とは何か」〜』(KADOKAWA、2015)
●『超したたか勉強術』(朝日新書、2015)
●『知性とは何か』(祥伝社新書、2015)
『国境のインテリジェンス』(徳間文庫カレッジ、2015)
●『ケンカの流儀 −修羅場の達人に学べ』(中公新書ラクレ、2015)
●『いま生きる階級論』(新潮社、2015)
●『イスラエルとユダヤ人に関するノート』(ミルトス、2015)
●『知の教室 〜教養は最強の武器である〜』(文春文庫、2015)・・・・『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』再構成したもの。
●『お金に強くなる生き方』(青春新書インテリジェンス、201)
●『同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか』(光文社新書、2015)
●『官僚階級論 〜霞が関(リヴァイアサン)といかに闘うか』(モナド新書、2015)
●『この国が戦争に導かれる時 超訳:小説・日米戦争』(徳間文庫、2015) 
『「池田大作 大学講演」を読み解く 世界宗教の条件』(潮出版社、2015)
●『佐藤優の「地政学リスク講座2016」 日本でテロが起きる日』(時事通信出版局、2015)
●『外務省犯罪黒書』(講談社エディトリアル、2015)
●『資本主義の極意 明治維新から世界恐慌へ』(NHK出版新書、2016)
●『危機を覆す情報分析 〜知の実戦講義「インテリジェンスとは何か」〜』(KADOKAWA、2016)
●『組織の掟』(新潮新書、2016)
●『動因を探せ 中東発世界危機と日本の分断』(徳間書店、2016)
●『自分を動かす名言』(青春出版社、2016)

(2)共著(対談)
●『国家の自縛』(産経新聞出版、2005 →扶桑社文庫、2010)/聞き手:斎藤勉(産経新聞元モスクワ支局長)
●『国家の崩壊』(にんげん出版、2006)/聞き手:宮崎学
●『北方領土「特命交渉」』(講談社、2006 →講談社+α文庫、2007)/共著:鈴木宗男
●『インテリジェンス―武器なき戦争』(幻冬舎新書、2006)/共著:手嶋龍一
●『ナショナリズムという迷宮 −ラスプーチンかく語りき』(朝日新聞社、2006 →朝日文庫、2010)/対談:魚住昭
『アメリカの日本改造計画』(イースト・プレス、2006)/共著:関岡英之・小林よしのり・西部邁ら
『反省 私たちはなぜ失敗したのか?』(アスコム、2007)/共著:鈴木宗男
『国家情報戦略』(講談社、2007)/共著:高永哲
『中国の黒いワナ』(宝島社、2007)/共著:青木直人・西尾幹二
『佐藤優 国家を斬る』(同時代社、2007)/コーディネーター:宮崎学、連帯運動・編
●『国家と人生 寛容と多元主義が世界を変える』(太陽企画出版、2007 →角川文庫、2008)/対談:竹村健一
●『正義の正体』(集英社インターナショナル、2008)/共著:田中森一
●『大和ごころ入門』(扶桑社、2008)/共著:村上正邦
●『ロシア闇と魂の国家』( 文春新書、2008)/対談:亀山郁夫
『情報力―情報戦を勝ち抜く“知の技法”』(イースト・プレス、2008)/共著:鈴木琢磨
『政治を語る言葉』(七つ森書館、2008)/山口二郎・編
●『暴走する国家 恐慌化する世界―迫り来る新統制経済体制(ネオ・コーポラティズム)の罠』(日本文芸社、2008)/共著:副島隆彦、
『第三次世界大戦 左巻 新・帝国主義でこうなる!』(アスコム、2008)/共著:田原総一朗
『第三次世界大戦 右巻 新・世界恐慌でこうなる!』(アスコム、2008)/共著:田原総一朗
●『テロルとクーデターの予感−ラスプーチンかく語りき2』(朝日新聞出版、2009)/対談:魚住昭
●『インテリジェンス人生相談 社会編』、『同 個人編』(扶桑社、2009)
●『知の超人対談 岡本行夫・佐藤優の「世界を斬る」』(産経新聞出版、2009)/ 共著:岡本行夫
●『ぼくらの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊』(文春新書、2009)/共著:立花隆
『徹底討論沖縄の未来』(芙蓉書房出版、2010)/共著:大田昌秀、沖縄大学地域研究所・編
●『猛毒国家に囲まれた日本 ロシア・中国・北朝鮮』(海竜社、2010)/共著:宮崎正弘
『小沢革命政権で日本を救え 国家の主人は官僚ではない』(日本文芸社、2010)/共著:副島隆彦
『週刊とりあたまニュース 最強コンビ結成!編』(新潮社、2011)/共著:西原理恵子
『国家の危機』(KKベストセラーズ、2011)/共著:的場昭弘
●『聖書を語る 宗教は震災後の日本を救えるか』(文藝春秋、2011 →文春文庫、2013)/共著:中村うさぎ
『沈黙より軽い言葉を発するなかれ』(創出版、2012)/対談:柳美里
●『はじめてのマルクス』(週刊金曜日、2013)/共著:鎌倉孝夫
●『世界と闘う「読書術」 思想を鍛える1000冊』 (集英社新書、2013)/共著:佐高信
●『知の武装 救国のインテリジェンス』(新潮新書、2013)/共著:手嶋龍一
『新・帝国主義時代を生き抜くインテリジェンス勉強法』(講談社、2014)/共著:荒井和夫
●『聖書を読む』(文藝春秋、2013)/共著:中村うさぎ
●『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方』(文春新書、2014)/共著:池上彰
●『喧嘩の勝ち方 喧嘩に負けないための5つのルール 』(光文社、2014)/共著:佐高信
●『賢者の戦略』(新潮新書、2014)/共著:手嶋龍一
●『死を笑う うさぎとまさると生と死と』(毎日新聞社、2015)/共著:中村うさぎ
●『希望の資本論』(朝日新聞出版、2015)/共著:池上彰
●『反知性主義とファシズム』(金曜日、2015)/共著:斎藤環
●『崩れゆく世界 生き延びる知恵』(キャップス、2015)/共著:副島隆彦
●『「殺しあう」世界の読み方 (田原総一朗責任編集 オフレコ!BOOKS)』(アスコム、2015)/共著:田原総一朗・宮崎学
●『とりあたま大学: 世界一ブラックな授業!編』(新潮社、2015)/共著:西原理恵子
●『イスラエルとユダヤ人に関するノート』(ミルトス、2015)
●『国家のエゴ』(朝日新書、2015)/共著:姜尚中
●『異端の人間学』(幻冬舎新書、2015)/共著:五木寛之
●『インテリジェンスの最強テキスト』(東京堂出版、2015)/共著:手嶋龍一
●ニッポン放送「高嶋ひでたけのあさラジ!」編『90分でわかる日本の危機』(扶桑社新書、2015)
●『政治って何だ!? − いまこそ、マックス・ウェーバー『職業としての政治』に学ぶ−』(ワニブックスPLUS新書、2015)/共著:石川知裕
●『大世界史 現代を生きぬく最強の教科書』(文春新書、2015)/共著:池上彰
●『あぶない一神教』(小学館新書、2015)/共著:橋爪大三郎
●『インテリジェンスの最強テキスト』(東京堂出版、2015)/共著:手嶋龍一
●『第3次世界大戦の罠 −新たな国際秩序と地政学を読み解く』(徳間書店、2015)/共著:山内昌之
●『平和なき時代の世界地図 戦争と革命と暴力 単行本』(祥伝社、2015)/共著:宮崎学
●田原総一朗・責任編集『「殺し合う」世界の読み方』(文化放送、2015)/共著:宮崎学
●『マルクスと日本人 社会運動からみた戦後日本論』(明石書店、2015)/共著:山崎耕一郎
●『創価学会を語る』(第三文明社、2015)/共著:松岡幹夫
●『小学校社会科の教科書で、政治の知識をいっきに身につける』(東洋経済新報、2015)/共著:井戸まさえ
●『新・地政学 〜「第三次世界大戦」を読み解く』(中公新書ラクレ、2016)/共著:山内昌之
●『佐藤優さん、神は本当に存在するのですか?』(文藝春秋、2016)/共著:竹内久美子
●『復権するマルクス 戦争と恐慌の時代に』(角川新書、2016)/共著:的場昭弘
『竹中先生、これからの「世界経済」について本音を話していいですか』(ワニブックス、2016)/共著:竹中平蔵
『右肩下がりの君たちへ』(ぴあ、2016)/共著:津田大介ほか
『いっきに学び直す日本史 近代・現代 実用編』(東洋経済新報社、2016)/共著:山岸良二
『いっきに学び直す日本史 古代・中世・近世 教養編』(東洋経済新報社、2016)/共著:山岸良二
『いま、公明党が考えていること』(潮新書、2016)/共著:山口那津男
●『21世紀の戦争論 昭和史から考える』(文春新書、2016)/共著:半藤一利

(3)訳書
 ゲンナジー・ジュガーノフ(佐藤優/黒岩幸子・共訳)『ロシアと現代世界 汎ユーラシア主義の戦略』(自由国民社、1996)
●J.L.フロマートカ(Josef Lukl Hromadka、日本ではロマドカの名称でも知られる)『なぜ私は生きているか J.L.フロマートカ自伝』(新教出版社、1997)
 アレクサンドル・レベジ(工藤精一郎/工藤正広/黒岩幸子・共訳)『憂国』(徳間書店、1997)
●ヨゼフ・ルクル・フロマートカ (平野 清美・訳/佐藤優・監訳・解説)『神学入門 〜プロテスタント神学の転換点』(新教出版社、2012)
 ヨゼフ・ルクル・フロマートカ (平野 清美・訳/佐藤優・監訳)『人間への途上にある福音 キリスト教信仰論』(新教出版社、2014)
●アモス・ギルボア/エフライム・ラピッド・編(佐藤優・監訳/河合洋一郎・訳)『イスラエル情報戦史』(並木書房、2015)
●『この国が戦争に導かれる時 超訳:小説・日米戦争』(徳間文庫、2015) 
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 【参考】
【佐藤優】の仕事早わかり 〜略歴と書誌〜
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【保健】長寿の要因 〜長寿県と短命県とは何が違うのか(2)〜

2016年05月29日 | 医療・保健・福祉・介護
 (承前)

 (8)いま男女とも長寿日本一の長野県も、以前は長寿県ではなかった。長寿日本一となった要因は大きく二つ挙げることができる。(a)「巡回健診」と、(b)「保健補導員」だ。
 (a)は、昭和30年代に県東部の佐久市で、全国に先駆けて導入した「巡回健診」だ。健康に関心を払おうとしなかった農村部に健診車を走らせることで、病気予防と早期発見への意識を持たせることに成功した。その成果は、全国に知られる。
 (b)は、市町村の委嘱を受けて、健康情報の広報活動にあたる住民組織だ。地域によって異なるが、多くは任期2年、医療者ではなく、主婦を中心とした一般市民が担う。
  (欸鯤籠外を対象とした勉強会に参加したり、専用のテキストブックなどで学んだ健康に関する知識を、各自の担当エリアを個別にまわり、あるいはPTAや婦人科医などの集まりを利用して伝えていく。地道だが、確実性の高い啓蒙活動だ。そこで伝える情報は、「栄養と食生活」「身体活動と運動」「禁煙への取り組み」「心の健康」「口腔衛生」「がんを含む生活習慣病の予防」など。小規模な集まりでの“伝道”なので、一人ひとりの住民に合わせた助言ができる。
  ∧欸鯤籠外の発祥の地は、長野県須坂市だ。そこでは今も活発な保健活動が展開されている。各区の役員という位置づけなので役職に対する責任感が後押しするし、町のお付き合いや回り持ちで引き受けても、実際に活動を始めれば地域住民に喜ばれ、頼りにされる機会も多いので、次第にやりがいを感じるようになっていくらしい。
  3いら遠く、冷蔵庫の普及前は「塩漬け」が基本だった長野県。名産の野沢菜漬けなどからの塩分摂取量も多く、脳卒中による死亡率が高かった。その名残りで今でも長野県の脳卒中死亡者は全国平均を上回っている。中でも(a)の佐久市はその傾向が顕著で、1961年に「日本一脳卒中による死亡率の高い市」という不名誉な記録を樹立した。
  きの状況を改善すべく立ち上がったのも保健補導員だった。それまでどんぶりから各自が“直箸”で食べていた野沢菜漬けを最初から小鉢に分けるだけでも塩分摂取量は押さえられる。・・・・そんな具体的な工夫を伝えていくことで、住民の意識に変化が生まれた。変なkは着実に市民の寿命を伸ばし、約30年後の1990年、佐久市は「長寿日本一」に輝いた。
  キい里茲Δ兵茲蠢箸澆、県内の各市町村で行われている。長野県の長寿日本一は、市町村単位の地道な活動の成果だ。そして、それを支えるのは保健補導員だ。現在でも、長野県内には10,600人の保健補導員が活動している。また数多くのOBがその活動をサポートしている。

 (9)青森はいかなる対策をとっているのか。
  (a)男性の喫煙者率が全国1位だ。そこで、禁煙外来の受診者のうち、健康保険の適用を外れる人に、禁煙モニターになってもらうことで自己負担額が保険診療と同程度になる補助制度を敷いた。
  (b)癌検診の受診率を高める目的で、前年より受診率が上がった市町村には、“ご褒美”として上昇分にかかる費用の半額を県が負担する制度も行っている。
  (c)次世代に向けた取り組みも始まっている。2005年から弘前大学など産官学が一体となって進めている「岩木健康増進プロジェクト」。弘前市岩木地区の延べ11,000人を対象とした、10年にわたる生活習慣病の大規模疫学調査を行い、ここで得られたビッグデータ(1人の調査対象から600項目の健康情報)を疾患予防法や治療法確立に役立てようというプロジェクトだ。
  (d)教育現場でも、「子や孫の世代が長生きできるように努力する」試みが始まっている。青森県南部の穀倉地帯にある平川市、人口33,000人。基幹産業は稲作やリンゴ栽培を中心とした農業だ。同市猿賀小学校は、全校児童200人。ここでは昨年度、弘前大学の協力を得て、5、6年生を対象とした「健康教育授業」を行った。
   ー業は、「生活習慣病ってどんな病気?」「運動プログラムをつくろう」「短命県を返上しよう」など、全6回。授業の中で自分たちの血圧を測り、その数値を友だちと比較することで、生活習慣病がどんなものなのかを体験を通して学んでいく。
   △修Δ靴紳慮海蓮⊃討侶鮃にも目を向けさせる。
   B膺佑集まっても知識がなければ与太話しかできない。しかし、知識があれば中学生でも天下国家を論じられる。行動変容には、知識が必要。日本人なら誰でも九九を諳んじて言えるように、子どものうちから健康に関する最低限の知識を常識として身につけさせることが不可欠だ。

 (10)沖縄はいかなる対策をとっているのか。
  (a)沖縄でも、子どもを対象とした取り組みを行い、医師会や栄養士会が小学校の教員と一緒になって作った小学生向けの副読本を県内すべての小学校に配布している。内容は、食育、タバコの害、生活習慣病の予防や対策などで、学校で学ぶだけでなく、家族との話題にさせることも狙っている。
  (b)沖縄の子どもたちにとって、喫緊の課題は運動不足だ。沖縄県の小中学生の通学は、マイカーでの送迎が多い。学校の近くは朝の渋滞が日常茶飯事。交通事故も多いので、ある小学校が事故防止のため徒歩通学を推奨したら、子どもたちの肥満が解消し、体力がつき、給食を残さなくなり、集中力も高まって学力が向上するなど、いいことだらけの結果だった。本来子どもや生徒は歩いて通学するのが当たり前だった。その当たり前のことをやらないから、不健康になり、大人になると短命のリスクを背負い込むのだ。
  (c)実は、青森県でもマイカー通学の子どもは多い。こちらの背景には冬の大雪や、過疎化による学校の統廃合で学区が広がったことがある。子どもの運動不足解消が、短命県最大の課題の一つであることは確かだ。

 (11)首都圏にも意外な長寿地域がある。2010年の市町村別の平均寿命(男性)を見ると、
   1位 長野県北安曇郡松川村 82.2歳
   2位 神奈川県川崎市宮前区 82.1歳
   3位 神奈川県横浜市都筑区 82.1歳
 いずれも東京のベッドタウンとして開発された新興の街で、経済的にもゆとりのある層が多く住むことで知られている。しかし、他の市区と比べて医療提供体制が充実しているというわけではない。渋谷駅から東急田園都市線で20分ほどのこのエリアの平均寿命が、なぜ高いのか。
  (a)地域で“公園体操”が盛んだったり、比較的坂道が多いという環境が足腰の強化に役立っているのかもしれない(一説)。
  (b)マスコミの情報に敏感な患者が多い。外来でも、テレビや雑誌で見た健康法などについて質問が医師に対して頻繁にある。経済的に余裕があっても、ジェネリックと先発品の違いについてはきちんと確認した上で選ぶなど、健康に対する興味の大きさ、理解の深さが住民にある。
  
 (12)健康問題への意識の高さが関係してくる。
 医療提供体制が整備された現代日本で、長寿を全うするか、短命で終わるかを左右する最大の要因は、ヘルスリテラシー、つまり健康に関する確かな情報を得て、それを利用して自らの健康に役立てる行動力の有無だ。

□長田昭二「ルポ長寿県と短命県は何が違うのか」(「文藝春秋」、2016年6月号)
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 【参考】
【保健】短命の要因 〜長寿県と短命県とは何が違うのか(1)〜

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【保健】短命の要因 〜長寿県と短命県とは何が違うのか(1)〜

2016年05月29日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)長寿県の代表は長野県であり、短命県の代表は青森県だ。都道府県別の平均寿命(男性)の
   長野県:80.9歳(長寿日本一)
   青森県:77.3歳(短命日本一)
 その差は3.6歳。
 阪神・淡路大震災で約6,500人が亡くなり、その大半が兵庫県の住民だったので、同県の平均寿命は大きく落ち込んだ。それでもその影響は男性0.5歳、女性1歳の短縮だった。要するに、不慮の大震災で多数の死者が出たときの何倍もの差が、長野と青森の間で最初から付いてしまっているのだ。

 (2)青森県民が短命日本一である大きな原因は食生活だ。
  (a)塩分摂取量・・・・1日当たり食塩摂取量は【2012年国民健康・栄養調査結果】、
     青森県 :男性11.7g、女性 9.8g
     全国平均:男性11.3g、女性 9.6g    
で、男女とも全国平均をやや上回っている。そのせいか、脳血管疾患による死亡順位は全国8位だ【2013年人口動態統計】。 
  (b)味噌汁・・・・青森県では三食とも味噌汁を飲む人が多い。さらにそれにたくあんが添えられることが多い。農村部を中心に、「味噌汁とたくあん」を基本とした献立づくりを続ける家庭が多い。
  (c)郷土料理・・・・塩分過多の傾向がある。
   …天效亙で代表的な「けの汁」は味噌を使うことが多くて、体が温まる半面、塩分の摂取量もしっかり稼ぐことになる。
   ◆屬犬磴辰兔繊廚睫捷發て、塩で味つけする。これも塩分が豊富なのだ。
  (d)酒・・・・青森県民の寿命を短くさせている。実は、青森県は飲酒率でも首位なのだ。銘酒「田酒」があるとはいえ酒づくりでは隣の秋田県の後塵を拝する。ところが、生産量では敵わなくても、飲酒率ではトップなのだ。
  (e)サイダー・・・・消費量日本一。糖分を溜め込んでいる。
  (f)喫煙・・・・男性の喫煙率が全国一(女性は2位)。 

 (3)青森県民が短命な理由として、食事、酒、たばこ、さらに雪国特有の運動不足とそこから来る肥満なども指摘されて、複合的に作用し合うことで不名誉な記録を後押ししている。例えば、青森県は【2014年の都道府県別データ】、
   ヾ發砲茲觧猖肝┌屋
   ⊃嬋堊苅碓
   E尿病1位
   ご亮栖毅軌
   タ桓栖気砲茲觧猖肝┌隠外
 何か一つの要因で短命県になっているなら対策も簡単だ。しかし、青森県のそれは、いろいろな要因が複雑に絡み合っての結果だから始末に悪い。

 (4)沖縄県は、日本一の長寿県だったが、急速に順位を落としている。
   1985年、男女ともに長寿日本一。
 長寿日本一は、世界一を兼ねた。そのため、世界中の長寿研究者の間で沖縄県の知名度は高かった。
   1990年、男性の平均寿命が5位に落ちた。
   1995年、4位まで持ち直した。
   2000年、一気に26位まで低下した。
 それでも女性は何とか首位を守り続けてきたが、
   2010年には女性もついに3位に転落(同年、男性は30位にまで落ち込み)。 
 この凋落ぶりは「沖縄クライシス」と呼ばれ、世界の研究者から注目されている。

 (5)「沖縄クライシス」の大きな原因も食生活だ。
  (a)歴史的に白米はほとんど食べず、芋と野菜が中心の食生活が沖縄の長寿を支えてきた。沖縄料理といえば豚肉主体の肉料理というイメージを持つ人が多いが、沖縄の長寿を支えてきた世代にとって、豚肉は決して身近な存在ではなかった。昔の豚肉は貴重品で、正月などのお祭りごとの時に食べる程度だった。かつての沖縄の長寿は「粗食」に支えられる部分が大きかった。
  (b)そこに米軍とともにハンバーガーやステーキ、スパムなどの“動物脂肪・獣肉文化”が一気に流入してきた。食生活の激変が短命化の一因だ。戦後の米国との密接な関係が県民の寿命に大きな影を落とした。
  (c)“主犯”は戦後に米やパンなど「糖質」の摂取量が増えたからだ、という主張もある。近年話題の
糖質制限」こそ、沖縄県を救う最良の策だというわけだ。
  (d)酒も「沖縄クライシス」の原因だ。米を原料とする「泡盛」が知られている。「県民ビール」ともいえるオリオンビールもある。
   ,海譴蕾縄の酒が他の銘柄と比べて健康に悪いわけではない。摂取量も青森県のように上位ではない。
   ¬簑蠅覆里蓮岼み方」だ。沖縄では、深夜営業の居酒屋が多い。どの店も夜通し酒を酌み交わす地元客で連日賑わっている。沖縄には古くから地域のつながりを大事にする風習があり、離婚後に子育てしながら働く母親や、配偶者を亡くした高齢者を地域のみんなで支えていく“やさしいコミュニティ”が確立している。地域の連携が強い半面、コミュニティのベースに常に酒が介在するのが問題だ。そのため若年者のアルコール依存も他県より多い。
   F本では現在、肝癌といえばウイルス性肝炎から進展するケースが多数を占めるが、沖縄県はアルコール性肝炎に由来する肝癌のほうが多い。そのため血管がもろく、また血小板や凝固系因子が減っているため、手術中に大出血を招くリスクが高いことが外科医の間では知られている。
   げ縄県のアルコール性肝疾患の死亡率は、全国平均の2倍に上る。

 (6)青森県と沖縄県に共通する要因が見て取れる統計がある。年代別死亡ランキング(男性)だ。数字が大きいほど各年代の死亡率が高いのだ。
  (a)青森県は、「5〜9歳」と「40歳以降」のすべての年代で死亡率が日本一高い。
  (b)長野県は、44歳以下の年代は二桁順位ながら、そこから上の世代は常に4位以内に入っている。長寿日本一の面目躍如だ。

 (7)沖縄県は、(6)の統計において特徴的な数字を叩き出している。80歳以上の高齢者は首位(つまり「日本で最も死亡率の低い県」)なのに、30〜60歳代は軒並み30位如何に低迷。特に35〜59歳は40位台で、最下位の青森県と肩を並べている。働き盛りの若い世代が多く早逝している。これが平均寿命の順位を急落させている最大の理由だ。
 年寄りは元気なのに、その息子世代が先に死んでしまう。残された孫の面倒をおじいちゃんとおばあちゃんが見ることも珍しくなくなっている。
 いまの働き盛りの世代は、子どもの頃には肉食中心の食生活がベースにあり、並行してモータリゼーションの台頭という環境変化を大きく受けた。栄養過多と運動不足の相乗作用により生活習慣病のリスクを上げたことが、死亡率を高める最大の要因といえる。
 沖縄県は、40代50代の若い世代が数多く命を落としていることで、いびつな人口ピラミッドになりつつある。「歳の順に死んでいかない」という現実がそこにある。

□長田昭二「ルポ長寿県と短命県は何が違うのか」(「文藝春秋」、2016年6月号)
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 【参考】
【詩歌】西脇順三郎「菫」
【詩歌】西脇順三郎「皿」
太陽
【詩歌】西脇順三郎「雨」
【詩歌】西脇順三郎「天気」
【詩歌】西脇順三郎「カプリの牧人」 〜シシリアの伝説〜
書評:『後方見聞録』
【T・S・エリオット】荒地 〜5 雷神の言葉〜
【T・S・エリオット】荒地 〜4 水死〜
【T・S・エリオット】荒地 〜3 火の説教〜
【T・S・エリオット】荒地 〜2 将棋〜
【T・S・エリオット】「荒地」 〜1 埋葬〜

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【佐藤優】何が個性で何が障害か、姉・米原万里の思い出、琉球独立への経済学

2016年05月28日 | ●佐藤優
   
 ‖膓典子『脳からみた自閉症 「障害」と「個性」のあいだ』(講談社ブルーバックス 900円)
 井上ユリ『姉・米原万里 思い出は食欲と共に』(文藝春秋 1,500円)
 松島泰勝『琉球独立への経済学 内発的発展と自己決定権による独立』(法律文化社 2,500円)

 (1),蓮脳の発達障害という観点から、自閉症について解説している。
 <そもそも、身体であれ精神であれ、何をもって「障害」や「疾患」とするかは一般的にも難しい問題でしょう。人間の健康状態が正常なのか異常なのかは、そう簡単に線を引けることではありません。身体の異常も外傷や骨折であれば正常な状態とのあいだに明確な違いがありますが、多くの場合、「正常」とのあいだに連続性があります>
 著者が指摘するように、自閉症的なスペクトラムの何をもって「個性」とし、何をもって「障害」とするかは、実に難しい問題だ。

 (2)△蓮■隠闇前に死去した米原万里・作家に係る妹ユリ氏の回想録だ。特に注目すべきは、鎖国状態にあったアルバニアへの訪問だ。
 <翌64年の8月、わたしたちはアルバニアに行った。中ソ論争でアルバニアも中国の側についたため、父は招待を受けたのだ。
 (中略)ローマに三泊してから、列車で南イタリアのバーリに行き、そこからアルバニアの首都ティラーナに飛んだ。
 滞在したのは、さらに車で小一時間のアドリア海に面したリゾートだった。
 アルバニアの風景は、それまでどこでも見たことのないものだった。乾燥しているから、木がまばらに生えている。したがって緑が少ない。土が多く、おくほこりが舞っていた。歩いている女性の多くがターバンを巻いている。ロバもよく見かけた。建物は低層で、白い。
 食べものもずいぶん違った>
 ここで万里氏、ユリ氏らがどのような食体験をしたかは、本書をご覧いただきたい。

 (3)は、真面目かつ挑発的な作品だ。
 <琉球の新興開発も日本政府の官僚という専門家集団によって策定され、総理大臣という「総指揮官」の命令下にある。基地に反対する琉球の民意を無視して独裁的に琉球統治が実施されてきた。琉球において、日米両政府による「政府の失敗」、民意を無視する「独裁体制」から脱却するために琉球人が独立運動を展開するようになったのである>
 独立運動とは距離を置く沖縄県民でも、中央政府の官僚集団によって沖縄の民意が無視された形で行政と経済が運営されたという基本認識を共有している。
 著者は、独立した「琉球国」の統治形態については、地域の独自性を生かした連邦制を主張する。
 本土では、「沖縄独立論の背後には中国がいる」という陰謀論まがいの言説が流通しているが、本書を読めば琉球独立論が沖縄の内発的な思想であり、運動であることが明らかだ。

□佐藤優「何が個性で、何が障害か 〜知を磨く読書 第150回〜」(「週刊ダイヤモンド」2016年5月28日号)
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 【参考】
【佐藤優】急進展する日露関係 〜安倍首相が取り組むべき宿題〜
【佐藤優】英才教育という神話
【佐藤優】資本主義の内在的論理
【佐藤優】米国の戦略策定、『資本論』をめぐる知的格闘、格差・貧困問題の起源
【佐藤優】偉くない「私」が一番自由、備中高梁の新島襄、コーヒーの科学
【佐藤優】日露首脳会談をめぐる外務省内の暗闘 〜北方領土返還の可能性〜
【佐藤優】フードバンク活動、内外情勢分析、正真正銘の「地方創生」
佐藤優】日本の政治エリートと「天佑」、宇宙の生命体、10代が読むべき本
【佐藤優】殺しあいを生む「格差」と「貧困」 〜「殺しあう」世界の読み方〜
【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論
【佐藤優】第三次世界大戦の可能性、現代東欧文学、世界連鎖暴落
【佐藤優】司馬遼太郎の語られざる本音、深層対話、米政府による暗殺
【佐藤優】一時中止は沖縄側の勝利だが 〜辺野古新基地建設〜
【佐藤優】著名神学者のもう一つの顔 〜パウル・ティリヒ〜
【佐藤優】総理が靖国参拝する理由、NPO活動の哲学やノウハウ、テロ対策の必読書
【佐藤優】情報のプロならどうするか 〜「私用メール」問題〜
【佐藤優】今後、起こりうる財政破綻 〜対応策を学ぶ〜
【佐藤優】テロリズムに対する統一戦線構築 〜カトリックとロシア正教〜
【佐藤優】北方領土「出口論」を安倍首相は訪露で訴えよ
【佐藤優】社会の価値観、退行する社会
【佐藤優】夫婦の微妙な関係、安倍政権の内在的論理、警察捜査の正体
【佐藤優】ラブロフ露外相の真意 〜日本政府が怒った「強硬発言」〜
【佐藤優】プーチンが彼を「殺した」のか? 〜英報告書の波紋〜
【佐藤優】情緒ではなく合理と実証で 〜社会の再構築〜
【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】北朝鮮による核実験と辺野古基地問題
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
【佐藤優】サウジとイランと「国交断絶」の引き金になった男 〜ニムル師〜
【佐藤優】中国株式市場の怪しさ、イノベーションの障害、ホラー映画の心理学
【佐藤優】矛盾したことを平気で言う「植民地担当相」 〜島尻安伊子〜
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【佐藤優】日本でもテロが起きる可能性 〜日本でテロ(2)〜
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【佐藤優】小泉劇場と「戦後保守」・北方領土、反知性主義を脱構築
【佐藤優】【中東】「スリーパー」はテロの指令を待っている
【佐藤優】東京オリンピックに係るインテリジェンス 〜知の武装・抄〜
【佐藤優】分析力の鍛錬、事例、実践例 〜知の教室・抄(3)〜
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【佐藤優】知的技術、情報を拾う・使う、知をビジネスに 〜知の教室・抄(1)〜
【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 〜情報収集術(2)〜
【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 〜情報収集術(1)〜
【佐藤優】日本のインテリジェンス機能、必要な貯金額、副業の是非 〜知の教室〜
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 〜知の教室〜
【佐藤優】『知の教室 〜教養は最強の武器である〜』目次
【佐藤優】『佐藤優の実践ゼミ』目次
『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』
 ★『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』目次はこちら
【佐藤優】サハリン・樺太史、酸素魚雷と潜水艦・伊400型、飼い猫の数
【佐藤優】第2次世界大戦、日ソ戦の悲惨 〜知を磨く読書〜
【佐藤優】すべては国益のため−−冷徹な「計算」 〜プーチン〜
【佐藤優】安倍政権、沖縄へ警視庁機動隊投入 〜ソ連の手口と酷似〜
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 〜知の教室〜
【佐藤優】冷静な分析と憂国の情、ドストエフスキーの闇、最良のネコ入門書
【佐藤優】「クルド人」がトルコに怒る理由 〜日本でも衝突〜
【佐藤優】異なるパラダイムが同時進行 〜激変する国際秩序〜
【佐藤優】被虐待児の自立、ほんとうの法華経、外務官僚の反知性主義
【佐藤優】日本人が苦手な類比的思考 〜昭和史(10)〜
【佐藤優】地政学の目で中国を読む 〜昭和史(9)〜
【佐藤優】これから重要なのは地政学と未来学 〜昭和史(8)〜
【佐藤優】近代戦は個人の能力よりチーム力 〜昭和史(7)〜
【佐藤優】戦略なき組織は敗北も自覚できない 〜昭和史(6)〜
【佐藤優】人材の枠を狭めると組織は滅ぶ 〜昭和史(5)〜
【佐藤優】企画、実行、評価を分けろ 〜昭和史(4)〜
【佐藤優】いざという時ほど基礎的学習が役に立つ 〜昭和史(3)〜
【佐藤優】現場にツケを回す上司のキーワードは「工夫しろ」 〜昭和史(2)〜
【佐藤優】実戦なき組織は官僚化する 〜昭和史(1)〜
【佐藤優】バチカン教理省神父の告白 〜同性愛〜
【佐藤優】進むEUの政治統合、七三一部隊、政治家のお遍路
【佐藤優】【米国】がこれから進むべき道 〜公約撤回〜
【佐藤優】同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか」「【佐藤優】プーチンのメッセージ
【佐藤優】ロシア人の受け止め方 〜ノーベル文学賞〜
【佐藤優】×池上彰「新・教育論」
【佐藤優】沖縄・日本から分離か、安倍「改憲」を撃つ、親日派のいた英国となぜ開戦
【佐藤優】シリアで始まったグレート・ゲーム 〜「疑わしきは殺す」〜
【佐藤優】沖縄の自己決定権確立に大貢献 〜翁長国連演説〜
【佐藤優】現実の問題を解決する能力 〜知を磨く読書〜
【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記
【佐藤優】『知の教室 〜教養は最強の武器である〜』目次
【佐藤優】ネット右翼の終わり、解釈改憲のからくり、ナチスの戦争
【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考
【佐藤優】聖地で起きた「大事故」 〜イランが怒る理由〜
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【佐藤優】フランスにイスラム教の政権が生まれたら恐怖 〜『服従』〜
【佐藤優】ロシアを怒らせた安倍政権の「外交スタンス」
【佐藤優】コネ社会ロシアに関する備忘録 〜知を磨く読書〜
【佐藤優】ロシア、日本との約束を反故 〜対日関係悪化〜
【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った
【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本
【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 〜ロシア首相の北方領土訪問〜
【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 〜北方領土問題〜
【佐藤優】基地への見解違いすぎる 〜沖縄と政府の集中協議〜
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【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 〜安倍“暴走”内閣(8)〜
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【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 〜安倍“暴走”内閣(6)〜
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【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 〜安倍“暴走”内閣(4)〜
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 〜安倍“暴走”内閣(3)〜
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【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 〜国家の新しいあり方〜
【佐藤優】スンニー派とシーア派 〜「イスラム国」で中東が大混乱(4)〜
【佐藤優】サウジアラビア 〜「イスラム国」で中東が大混乱(3)〜
【佐藤優】米国とイランの接近  〜「イスラム国」で中東が大混乱(2)〜
【佐藤優】シリア問題 〜「イスラム国」で中東が大混乱(1)〜
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【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな 〜英諜報機関トップによる警告〜
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 〜ペーテル・フルトクビスト〜
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない 〜CIA尋問官のリンチ〜
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない 〜白人至上主義〜
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア 〜セルゲイ・キリエンコ〜
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 〜民族問題〜
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 〜アブバクル・バグダディ〜
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 〜アレクサンドル・ザハルチェンコ〜
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 〜冷戦時代も今も〜
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 〜アナートリー・コーシキン〜
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 〜中国政府が示した「条件」〜
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 〜ギオルギ・マルグベラシビリ〜
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 〜米国は中東の泥沼へ再び〜
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 〜プーチンの勝利〜
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか 〜セルゲイ・ラブロフ〜
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 〜揺らぐ国民国家〜
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 〜サレフ・アル=アールーリ〜
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 〜日本が対象から外された理由〜
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 〜ビタリー・クリチコ〜
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 〜シェワルナゼ〜
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか 〜閣議決定の限界〜
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 〜CIA〜
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 〜イラクの過激派〜
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 〜ハサン・ロウハニ〜
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 〜ウクライナから沖縄へ(4)〜 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 〜ウクライナから沖縄へ(3)〜 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム 〜ウクライナから沖縄へ(2)〜
【佐藤優】ユニエイト教会 〜ウクライナから沖縄へ(1)〜 

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【米国】トランポノミクス 〜ドナルド・トランプの経済政策〜

2016年05月27日 | 社会
 (1)大統領選の共和党候補になることが確実になった不動産王ドナルド・トランプ。
 5月5日、トランプの経済政策「トランポノミクス(Trumponomics)」が「正気の沙汰じゃない(insane)」などと集中砲火を浴びた。
 この日、トランプは米経済テレビ局CNBCの電話インタビューで、次のように語った。
 <自分の不動産事業で借金を重ねてこられたのは、借金を棒引きしてもらえると分かっていたから。このやり方はとてもうまくいった。もちろん債権者に対しては強気に出ないと駄目だけれども>

 (2)トランプは、ホテルやカジノ事業で財をなした。多額の債務を抱えて経営破綻しても、債務免除(debt haircut)で復活してきたから「借金王」だ。米国も史上最大の19兆ドル(2,000兆円)まで借金(国債発行残高)を膨らませた現状に言及し、同じ手法で借金を減らせばいい、と主張している。
 <国家は企業と違うとはいえ、借金できる点では同じ。経済が危機にあれば債権者と交渉して借金を棒引きさせればいい。経済が好調ならばそれで良し。どちらに転んでも問題はない>
 最悪の場合には米国はデフォルト(債務不履行)すればいい、と言っているのだ。
 この発言は、市場関係者の間でとりわけ大きな波紋を呼んだ。米国債は、歴史的に世界で最も安全な資産と見なされ、国際金融システムの要として機能してきた。
 デフォルトとなったら?
 米国は、ギリシャやアルゼンチンと同類と見なされ、国際の投げ売りに見舞われて、金利高騰を招くのは必至だ。

 (3)米証券会社CRTキャピタル・グループの国際戦略責任者デビッド・エイダーは、米通信社ブルームバーグの取材に応じ、デフォルトについて「滑稽で話にならない」と一刀両断しながらも、トランポノミクスから目が離せなくなった、と指摘している。
 <トランプが語っているのはばかげていて実現不可能に見える政策ばかり。でも、彼が実際に大統領になり、いわば「核のボタン」を握る可能性も出てきた。こうなるともはや無視するわけにはいかない>

 (4)トランプは、5月9日、米テレビ局CNNに出演し、
   <デフォルトする必要なんてない。紙幣を増刷すれば済む>
と発言を修正した。
 米連邦準備制度理事会(FRB)が紙幣を増刷して債務者から国債を買い戻せばいい、と言うのだ。話題の「ヘリコプターマネー」の利用の提案ともいえるが、これは中央銀行による国債の直接引き受けと実質的に同じで、ハイパーインフレを引き起こす危険を伴う。

□牧野洋(ジャーナリスト兼翻訳家)「Trumponomics 〜Key Wordで世界を読む No.94〜」(「週刊ダイヤモンド」2016年5月28日号)
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 【参考】
【IT】米IBMはもはや「コンピューターの巨人」ではない 〜Medium Blue〜

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【佐藤優】社会人のための「役立つ教養講座」一覧

2016年05月26日 | ●佐藤優
【佐藤優】Q&A(実践的な教養の身につけ方) 〜役立つ教養〜
【佐藤優】本物のエリートはどこに?/社会人が哲学を学ぶ意義 〜役立つ教養〜
【佐藤優】人生に結論はない、教養がビジネスチャンスに 〜役立つ教養〜
【佐藤優】算数のできない人に仕事を任せるな 〜役立つ教養─
【佐藤優】屁理屈を見抜き、かつ、屁理屈を使いこなす 〜役立つ教養А
【佐藤優】「夢」を知ることは自分を知ることだ 〜役立つ教養Α
【佐藤優】欧米のエリートと「イスラム国」の共通点 〜役立つ教養ァ
【佐藤優】「独断専行」のすすめ/中間管理職心得 〜役立つ教養ぁ
【佐藤優】アレゴリーなど、インテリジェンスの技術 〜役立つ教養〜
【佐藤優】20世紀はドイツの時代、フランスにないもの 〜役立つ教養◆繊
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【メディア】オバマの広島訪問に大賛辞の朝日紙、立ち直りは疑問

2016年05月26日 | 社会
 (1)「国境なき記者団」による「世界報道自由度ランキング」で日本は2010年の11位から2016年には72位に下落した。
 その最大の要因が第二次安倍政権のメディア支配にある、という点で衆目は一致している。特定秘密保護法による萎縮が広がり、黒塗りのTPP関連資料を打破できていない状況だ。
 海外メディアが幻滅して当然だろう。

 (2)マーティン・ファクラー・「ニューヨーク・タイムズ」前東京支局長は、近著『安倍政権にひれ伏す日本のメディア』(双葉社)で、日本の状況を厳しく批判している。
 「従軍慰安婦」の「吉田証言」と原発事故の「吉田調書」の報道に係る「朝日新聞」の訂正と謝罪は過剰だった、という。しかも、それに勢いづいた安倍政権の「朝日」叩きに他紙も便乗した。結果として新聞全体が信頼を失い、読者離れが加速した。
 信頼と読者を取り戻す活路は、権力者が嫌う「調査報道」だ。「朝日」には「調査報道」の実績が数々ある。最近では同紙に復活の気配がある、とファクラー氏はいう。

 (3)「朝日」は過去29年間、4月末頃に
   「『みる・きく・はなす』はいま」
と題した連載を繰り返している。阪神支局が「赤報隊」に襲撃され、2人の死傷者を出した事件を契機としたものだ。去年まではほとんど毎年、人びとを不安にさせる内容に終始していた。それが今年は、脅しに屈しない動きの紹介に変わった。
 この変化は評価できる。
 けれども、あまりに遅い。「朝日」はほんとうに立ち直ったのか。

 (4)5月11日朝刊をみると、心許ない。
 全国紙の1面トップはどこも、オバマ大統領の広島訪問の話題だ。だが、「朝日」はさらに2、3面、第1、2社会面に社説までつけたはしゃぎぶり。内容は「訪問大歓迎」一色で、広島の地元紙のようだ。
 これでは自民党筋の期待どおりに、安倍晋三・首相の外交的成果づくりに手を貸すことになる。
 「産経新聞」は、第1面で「日米『歴史問題』解消を図る」と、早くも外交的成果に位置づけている。
 「日本経済新聞」も、安倍首相がお返しに真珠湾訪問をする案が浮上した、と伝えた。「日米首脳が過去の戦争の象徴的な場所を訪れ合い、敵対関係から強固な同盟を築いた」とアピールするのが狙いだ。
 こうした“掘り下げ”が「朝日」には見られない。

 (5)一方で「産経」が、「日本国内では、左翼勢力が訪問を政治的に利用しようとするかもしれない」と危惧している。
 いいヒントだ。
 大統領の広島訪問のネックになっていたのは、「原爆が終戦を早めた」という、米国内の俗説だった。
 「本当にそうなのか?」という議論の機会が生まれたことになる。すでに歴史学では、「原爆がなくても日本の敗北は明白だった」が定説だ。
 それに、8月まで降伏を遅らせたのは、天皇制存続の了解を連合国から得るのに固執したためだった。中学の歴史教科書にも明記されている。
 「遅すぎた聖断」の話題こそ、安倍政権や「産経」の嫌うところだろう。

□高嶋伸欣(琉球大学名誉教授)「オバマの広島訪問に大賛辞の『朝日新聞』 立ち直りは疑わしい」(「週刊金曜日」2016年5月20日号)
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 【参考】
【メディア】への政治家による圧力は犯罪とならないのか 〜停波問題〜
【メディア】放送の「自由」と「公平・公正」とは 〜停波問題〜
【メディア】安倍首相のメディア対策に高まる国際的批判 〜停波問題〜
【メディア】自民党のテレ朝への圧力が契機に 〜停波問題〜
【メディア】安倍政権による行政指導の誤り 〜放送電波停止発言〜
【メディア】高市総務相は「脅し」の政治家、報道は「健忘症」
【メディア】総務大臣には、停波命じる資格はない 〜放送電波停止発言〜 
【メディア】や高市発言にみる安倍政権の「表現の自由」軽視
【古賀茂明】一線を越えた高市早苗総務相の発言
【メディア】政治的公平とは何か 〜「NEWS23」への的外れな攻撃〜
【NHK】をまたもや呼びつけた自民党 〜メディア規制〜
【テレビ】に対する政権の圧力(2) 〜テレ朝問題(9)〜
【テレビ】に対する政権の圧力(1) 〜テレ朝問題(8)〜

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【佐藤優】Q&A(実践的な教養の身につけ方) 〜役立つ教養〜

2016年05月25日 | ●佐藤優
 第1回から第10回まで、ニュースの読み解きに始まり、宗教、論理力・数学力、哲学など、社会人が身につけるべきさまざまな教養について話した。最終回は、読者の質問に対する答えの形で、実践的な教養の身につけ方をおさらいする。

 *

Q:ニュースを読む・見るときのポイントは?
A:日本語の報道を読むだけでも大丈夫。英語のメディアは、無理をすることはない。英語が母語でない人が英文を読むのはものすごく疲れるからだ。最初の30分は大丈夫でも、そこからガクンと能率が落ちる。長続きしない。それに、日本語で情報収集・分析するだけでも、かなりのことが分かる。
 では、どの情報をチェックすればいいか。
 .Εール・ストリート・ジャーナル日本版。日本の新聞とはまったく違う記事が載っているし、CNNの最新記事も数時間で日本語に訳される。日頃からこれに目を通しておくと、国際ニュース、特に日本のマスコミの弱点である中東のニュースなどは、かなり早く手に入る。
 海外大手メディアにも報道されないような深い情報は、イラン国営放送「Pars Today」や、ロシア国営「スプトーニク」のウェブサイトをチェックするとよい。これらはいわゆる「国策女ディ」だから、編集方針が国家の利害を反映していて、とても興味深い。「ハメネイ最高指導者の言葉」とか「今日のコーラン」とかいったコーナーにまじって、重要なニュースが載っている。

 *

Q:数学がとても苦手なのだが、どうやって復習すればいいですか?
A:もし「あまりにも苦手で、数学検定を受けるのも怖い」という場合は、抵抗があるかもしれないが、公文式がおすすめだ。実は公文式では、大人向けの講座も充実している。どれだけ問題を解いても月謝は変わらない。何より公文式は、「ほめて伸ばす」というシステムをとっているので、無理なく続けられる。数学は積み重ねだ。理解の穴を見つけ出し、埋めるためにも、面倒がらずに基本からやり直すことが大切だ。
 教室に通える余裕のある人は、週2回を目安にすれば、半年もかからず中学の数学までは完璧にできる。その後は、高校1年生の過程が3ヵ月くらい、高校2年と3年が合わせて1年ぐらいだろう。とりあえず中学まで終わったところで数検3級を受けてみると、身についたかどうか分かる。全体で1年半くらいかければ、数学は怖くなくなるはずだ。

 *

Q:英語の場合は?
A:まずは、今の英語力を測るためにも、英検2級を受けてみる。これはだいたい高校2年生と同じくらいのレベルだ。歯が立たないようなら3級に戻るとよい。英検の関連教材はすごくよくできているから、それを使って勉強するのがおすすめだ。英検準1級に合格できれば、TOEFL換算でだいたいスコア100になる。これは外務省が入省時に「即戦力になる」と判断する基準と同じだ。
 現在の新人キャリア外交官のうち、何割がこの基準をクリアしているか? 実は、わずかに3割だそうだ。佐藤優が外務省に入った頃は、専門職を含め、TOEFL100は全員が持っていたのだが。
 ちなみに、昔の外務省の入省試験は、「和文外国語訳」と「外国語和訳」しかなかった。これは明治時代からずっと変わっていなくて、採点者さえしっかりしていれば、語学の能力が最もよく分かる方法だ。しかし、現在では、この試験は専門職にしか課されない。現代日本外交の停滞は、外務省職員の英語力低下とも関係している。

 *

Q:論理的に話す力は、どうすれば鍛えられますか?
A:文章を朗読するとよい。最近は朗読のための教材も出ているから、きちんと論理的に整合性がとれている文章を、気持を込めて朗読するのが効果的だ。超えに出して読んで見ると、文章の崩れもよく分かるから。
 朗読すると、ディベート力、議論の力もつく。短めの戯曲など、セリフのやり取りがある文章を、声に出して読んで見るのがよい。

 *

Q:「日本の組織では『独断専行』が評価される」という話が第4回であった。しかし、「独断専行」と「自分勝手」の違いが分かりません。
A:実は、両者に違いはない。ある人の勝手な行動が、組織に利益をもたらした場合は「臨機応変によくやった」と評価されるが、失敗したら「自分勝手だ」と非難される。それが日本の企業文化・組織文化だ。
 では、どうやって自らの行動の成否を確かめればいいのか。自分で「失敗したかもしれない」という認識があるなら、手の打ちようがある。しかし、問題は、本人が「うまくいっている」と思っていても、上司から見ると全然うまくいっていないケースがしばしばあることだ。
 だから、まずは自分がしていることにミスがないかどうか、点検する習慣をつける。もしミスが見つかったら、上司や同僚に責任をうまく分散するようにする。自分の力ではどうしようもない場合は、マイナスを最小限に抑えるために、なるべく早く上司に報告する。組織の中で生き残っている人は、大抵そういったスキルに長けているものだ。
 組織文化というものは、一朝一夕には変わらない。大事なのは、どんな「独断専行」が評価されるのか、逆にどんな「独断専行」がNGなのか、普段からよく観察しておくこと。また、「これはまずい」と思った場合は身を引き、「いける」と思ったら乗っかるといった「ズルさ」も時には必要だ。

□佐藤優「 〜社会人のための「役立つ教養講座」 第11回(最終回)〜」(「週刊現代」2016年6月4日号)
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 【参考】
【佐藤優】本物のエリートはどこに?/社会人が哲学を学ぶ意義 〜役立つ教養〜
【佐藤優】人生に結論はない、教養がビジネスチャンスに 〜役立つ教養〜
【佐藤優】算数のできない人に仕事を任せるな 〜役立つ教養─
【佐藤優】屁理屈を見抜き、かつ、屁理屈を使いこなす 〜役立つ教養А
【佐藤優】「夢」を知ることは自分を知ることだ 〜役立つ教養Α
【佐藤優】欧米のエリートと「イスラム国」の共通点 〜役立つ教養ァ
【佐藤優】「独断専行」のすすめ/中間管理職心得 〜役立つ教養ぁ
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【佐藤優】トランプ現象・日本型独裁者・ネットが生む独裁者 〜世界の独裁者(2)〜

2016年05月24日 | ●佐藤優
 保阪正康、佐藤優、片山杜秀の鼎談「独裁者が世界を徘徊している」の後半部を主として佐藤優の発言を以下、抽出・要約(関連する発言には行末に【保阪】【片山】と注記)。

 (8)トランプ現象は、議会制の機能不全と、一般国民の許容範囲を超えた貧富の差に原因があると思える。【片山】
 トランプが民主党のヒラリー・クリントン候補を批判すると演説会場はワーッと盛り上がるが、貧困層の支持が高いバーニー・サンダース候補を批判しても受けない。サンダースは社会民主主義者を自称し、福祉政策や貧困対策に力を入れると主張する人物だ。つまり、トランプとサンダースの支持者は非常に親和性が高い。【保阪】
 トランプの主張は本来の共和党の政策にも適う部分が多い。「モンロー主義」に近い考え。「見返りがない。だから止める」と考えている。米国は米国を守ることしか興味がなくなってきている。同じ共和党でも、ネオコン的なブッシュ政権のように、中東やアジアの問題に介入しても、結局、米国にはいいことがないと思い始めた。【片山】
 白人が支配する米国を回復しようとするトランプの主張は、差別意識の現れだ。初期に米国へ来た白人の移民は天命があるので平等だけれど、後から来たユダヤ系、アジア系、イスラム系は金儲けのために来ただけの人間で同列にできないと考えている。
 米国は経済的に上手くいっていれば、トランプの主張は相手にされなかった。しかし、経済が苦しくなり限られたパイを争うようになって、排除の論理が表面に出てきた。そこでは人種という物差しを使って、自分たちとは違うものを攻撃している。これは独裁者の論理そのものだ。【片山】

 (9)その人種政策で、大きな失敗をしつつあるのが、中国共産党だ。毛沢東は文化大革命などで多くの人を死に追いやった。一方で少数民族には寛大だった。事実上発禁になっていた『毛沢東選集5巻』に収録されている論文「十大関係論」の中で、漢民族は人数が多いが、資源の少ない地域に住んでいる。一方で、少数民族は資源の多い地域に住む。民族主義はいけないけれども、彼らを優遇する政策がちょうどよい、と書いている。
 習近平による共産党独裁体制の方が、荒っぽくなっているともいえる。彼らがイスラムの脅威を理解しているとは思えない。ウイグルの独立運動は、単なる民族運動ではなくイスラム主義運動と連動している。ウイグル自治区と隣接するキルギスなどに「イスラム国」が入り込み、ウイグル人と連帯すると手がつけられなくなる。
 共産党の独裁体制が変質したのは、小平の時代だ。【片山】
 小平は、社会主義と資本主義を同時に行うという、新しい独裁の形を考え出し、共産党を延命させることに成功した。しかし、アイデンティティの軽視という大きな問題を抱えてしまった。いま多くの中国人富裕層が、米国やヨーロッパなどの外国に資産を移して住みついている。自分がよって立つものがないから、他民族への無知無策が露わになるのだ。中国では、民族問題が原因の大混乱が起こる可能性もある。

 (10)独裁の本質はきわめて単純ではないか。独裁が生じるのは、既存の法体系では間に合わない「例外状態」で、緊急性があって、みんなで議論していたら間に合わないとき。恐慌、戦争、革命のとき。しかも「例外状態」を長引かせれば、独裁の期間も延長しうる。【外山】
 ヨーロッパの絶対王政時代は、「王権神授説」つまり王様は神の化身として、その能力を与えられて政治をしているという考え方をした。フランス革命などで王政が壊されてしまうと、神様が持っていた能力は、市民が持っていることになった。そして、「例外状態」に対応するのは、独裁者ということになったのだ。
 一方で、日本には天皇の存在が常にあるから、西欧型の独裁者が存在するのは難しかった。そこで、日本型の独裁者として「征夷大将軍」が生まれた。
 「征夷大将軍」は、危機の対応のために選ばれる臨時職だ。ところが、征夷大将軍は、後世「幕府」と呼ばれる政治体制を構築した。【片山】
 それが、鎌倉時代から江戸時代まで武家政権として続いてしまう。つまり、日本では700年にわたって「例外状態」が続いていた。【保阪】
 近代になるとそれが激変した。大日本帝国憲法で天皇の独裁が可能になった。ところが、実際には独裁政権は棚上げにされて、天皇は政治もしないし、責任もとらないようになていた。かといって新しく作られた「総理大臣」は、独裁者にはなれないようなシステムだった。【片山】
 昭和初期の軍部主導体制を独裁体制という人もいるが、そんな単純なものではない。【保阪】
 片山さんは、日本軍の思想を分析した『未完のファシズム』を書いている。日本は西洋のような全体主義=ファシズム体制を構築することすらできなかったことが、手に取るようにわかる。
  
 (11)これだけ複雑化した現代社会においては、自然災害や他国の脅威、大恐慌などいくらでも「例外状態」の要素が存在する。【片山】
 少し突飛に聞こえるかもしれないが、現在の日本でも新しい形の「独裁」が行われている可能性がある。それは中国共産党とは違った意味での集団指導体制、もしくはエリート独裁体制だ。TPP参加、消費増税、普天間基地の代替となる辺野古のV字滑走路などは、現政権が決めたことではなく、当時の民主党政権で決まった政策だ。それが政権交代したはずの自民党でも継続して行われている。

 (12)インターネットは、実は独裁者を生むために一役買うのではないか。「アラブの春」でSNSが利用され、民主主義のために有効な道具だという認識が広まった。しかし、橋下徹・前大阪市長がツイッターで自分と違う意見を罵倒するのに利用した。そして、大衆の人気を獲得した。インターネットは、人びとを極端な意見に誘導しやすい装置でもある。【保阪】
 ツイッターやLINEなどのSNSの時代になり、語彙数がどんどん減っていく。肌感覚では、小学校低学年のレベルだ。
 新聞も雑誌も読まないし、テレビも見ない人が増えている。その代わりにSNSやネットで自分に都合のいい情報にだけ接しているのだ。結局、世の中が難しくなりすぎて、真面目に考えても付いていけなくなっているから、よほど差し迫ったこと以外は最初から判断を放棄しているのではないか。そうなると、余計に単純なスローガンや耳当たりのよい言葉が受け入れられやすい社会になる。独裁者たちにしてみれば、これほど活動しやすい場所はない。【片山】
 実質的な独裁が生まれる仕組みが、自然と整ってきているのかもしれない。 
 ひとりで勝手に赤裸々に暴力的にやるのが独裁だ・・・・という思い込みが日本人にはある。独裁はもっと多様だ。社会から意見の多様性が失われたり、行政が法の通例に外れた行動を増やせば、それは独裁の萌芽だ。21世紀の独裁は、雰囲気とか言語とかでやんわりと包み込むような形で忍び寄ってくるだろう。同調していないと、いつのまにかムラ八分のように弾かれてしまう。【片山】
 独裁者の原理は、うまい具合にシステム化され、一般生活に入り込んでいる。<例>着色バターは体に悪いとか、健康診断を受けなさいと言われれば、国民のことを考えているように聞こえる。しかし、一夜にして「国民は健康でいなければならない。なぜなら、その体は国家のものだからだ」と変化していく可能性もある。 
 偏狭なナショナリズムは福祉の仮面を被ってくる可能性もある。こうした時代だからこそ、静かに忍び寄る独裁への誘惑について、考えておく必要がありそうだ。【保阪】

□佐藤優「独裁者が世界を徘徊している」(「文藝春秋」2016年6月号)/鼎談者;保阪正康(昭和史研究家)、片山杜秀(政治学者/慶應義塾大学教授)
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 【参考】
【佐藤優】ナチスドイツ・ロシア・中国・北朝鮮 〜世界の独裁者〜

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【佐藤優】ナチスドイツ・ロシア・中国・北朝鮮 〜世界の独裁者〜

2016年05月23日 | ●佐藤優
 保阪正康、佐藤優、片山杜秀の鼎談「独裁者が世界を徘徊している」の前半部を主として佐藤優の発言を以下、抽出・要約(関連する発言には行末に【保阪】【片山】と注記)。

 (1)昨今の世界情勢は、プーチン大統領、習近平国家主席など「独裁者」のような強権的政治家が目立つ。米国ではドナルド・トランプ候補が人気を集めている。「独裁者」が世界の命運を握る時代が、また来るのではないかと危惧される。【保阪】
 非常に重要な問題提起だ。独裁者とは一体何者なのか、そしてどういった背景で登場するのかをきちんと分析することは、今日、大きな意義がある。

 (2)ヒトラーへの関心は明らかに高まっている。【片山】
 ドイツでは昨年、ヒトラーの著作権が切れて、それまで版権を持っていたバイエルン州にある、現代史研究所が『我が闘争』を刊行した。現物は大辞典2冊分くらいのサイズがある。
 ドイツ語版は、日本語版とは底本が別だ。本文批評のついた分厚いもので、わざと判型を大きくして、携帯できないようにしているのだろう。
 1万5千部くらいで刷るのを止めているようだ。
 そんな発売形態を見れば、ドイツ人はいまだにヒトラーへの危機感を持っていることがわかる。足枷を付けないとヒトラーが再び神格化されてしまうと考えているのだ。
 ヒトラーは、ワイマール憲法の中の「非常事態においては、大統領が個人の自由の不可侵権等を一時的に停止できる」という部分を使って政権の基盤を固めた。この「非常事態」「例外状態」とは何か。戦争、内乱、経済恐慌、対外危機などをヒトラーは過剰に言い立てて恐怖心を煽った。その「例外状態」を解決できる唯一の人物として独裁者の存在を正当化した。民主主義の健全な運用のためには、経済の安定が不可欠だ。第二次世界大戦前のドイツや日本は、議会制民主主義が経済問題に対応できなくなったことから混乱が始まった。世界的な不況が叫ばれる今、新たなる独裁が生まれる土壌は、確かにある。【片山】

 (3)21世紀の、我々の身近なところにいる独裁者は金正恩だ。【保阪】
 北朝鮮は、世襲制の古くさい独裁国家だったのが、金正恩体制になって、新しい独裁国家に移行しつつある。まず大きく変化したのは、イデオロギーが、それまでの金日成主義から金日成・金正日主義に変わったことだ。
 金正日体制までは、金日成の遺訓によって政治を動かしていた。新しい政策を行うたびに、どこからか金日成の原稿が“発見”される。それが『金日成全集』として刊行され、正当性を担保していた。ところが、金正恩体制になり、それがストップした。
 もはや金日成の著作物だけに頼ることはなくなったのだと。【片山】
 独裁者が自分の権力を見せつけるには、それまであったイデオロギーに「俺はこう思う」と新たなる解釈を与えることが手っ取り早い。金正恩はそれを実行に移しているのだろう。
 もう一つ、北朝鮮の首領は、血統だけでなく正しい思想を持っていることが必要だと言い出した。金日成以来の「白頭の血筋」だけでは不十分であるというのだ。これは、「金正日の長男である金正男は、北朝鮮の正統な後継者ではない」ことをアピールするために行われているのだろう。

 (4)北朝鮮は、以前に比べて近隣諸国への挑発の度合いが増してきている。庇護者であった中国すら、もてあましているように見える。【保阪】
 北朝鮮は、以前よりも暴発の危機は増している。案外重要なのは、金正恩の健康状態だ。彼は佐藤より数十キロは肥っているだろう(笑)。心臓病と痛風が心配だ。肉体の痛みは、時に正常な判断を妨げるから。偶発的な衝突がおこらないとも限らないのだ。
 (フィデル・カストロ前議長は)表舞台にこそ出ないが、裏では国家を指導している可能性が高い。2月にカトリックのフランシスコ教皇とロシア正教のキリル1世が、1054年の東西分裂以来、初めて会談を行った。その場所が、無神論国家のキューバだった。ラウル・カストロ現議長の立ち会いの下で行われているが、兄のフィデルの許可なしにできることではない。また、オバマ米国大統領をキューバ訪問“させている”ところを見ても、フィデル・カストロがまだ実験を握っている可能性は高いのではないか。

 (5)ヨアヒム・フェスト『ヒトラー 最後の12日間』では、最晩年のヒトラーはパーキンソン病のような状態になった姿で描かれている。妄想に取り憑かれ、正常な判断ができなくなっていた。
 日本でも指導者の健康が国運を左右したことがある。近衛文麿の秘書だった細川護貞によれば、昭和16年10月16日に近衛が内閣を投げ出した前後、近衛は痔だった。東條英機と激論を交わしながら、腰を浮かせていた。その結果、強硬派の東條を抑え込めないまま、近衛が逃げ出した。そして東條内閣が誕生し、ついには太平洋戦争に突入していくのだ。【保阪】

 (6)かつて元島民の北方領土へのビザなし渡航交渉を担当したとき、小渕恵三首相が直接エリツィン大統領に話しても反応しなかった。二度目の交渉で小渕首相が「元島民は80歳、90歳になって先が短いんだ」と訴えたら、エリツィン大統領が目に涙をためて、「やろう」と言った。後でロシア側から、「うちの大統領は健康状態が悪く弱気になった。そんな時につけこむな」とずいぶん嫌味を言われた。
 独裁者ではないが、ヤルタ会談でのルーズベルト大統領は体調が悪く根気がなかったというし、日本陸軍の石原完爾も肝腎なときに中耳炎になった。満州事変の際も石原は体調を崩している。【片山】

 (7)ロシア型の独裁について知るには、ロシア人の選挙観を知るのが手っ取り早い。彼らは自分たちの代表を国政に送り出している認識が、きわめて稀薄だ。まず「悪い候補」と「うんと悪い候補」と「とんでもない候補」の三種類が空から降ってくる。そこから、「うんと悪い」と「とんでもない」のを排除するのが選挙の役割だと考えているのだ。
 ロシアのインテリたちに言わせると、古代ギリシャで、国家に害をなすと思った人間の名を投票し、一定数を超えると国外追放にした陶片追放(オストラキスモス)と同じだという。だから、ロシアの民主主義は間違っていない、と。
 ロシアの大統領府には、軍や警察とは違う暴力装置も存在している。エリツィン大統領時代にできたスポーツ観光国家委員会だ。この役所が、タバコの無税輸入権や天然ガス、石油、漁業権などの各種ライセンスを持ち、強大な権限を振るっている。ここにいる腕っぷしの強い連中が、警察が出ていくことに馴染まない案件が起こると出動して、迅速に処理する。プーチン大統領は当初、自分の柔道の師匠をこの委員会のトップに据えて、自分の権力基盤として利用していた。
 なぜここまで、ロシアで独裁体制が支持されるかというと、第二次世界大戦のトラウマに原因がある。独ソ不可侵条約を破ってヒトラーがソ連に侵攻してきた結果、2千万人が犠牲になった。その経験があるので、国民はバターよりも大砲を望んだ。逆にいうと、独裁制であった方が、軍事力が強く平和が維持できると考えられたから共産党独裁は、支持され続けたのだ。現在もそれは同じだろう。プーチン大統領が高い支持を得ているのは、国民が、強い指導者のほうが平和が続くと考えているからにほかならない。

□佐藤優「独裁者が世界を徘徊している」(「文藝春秋」2016年6月号)/鼎談者;保阪正康(昭和史研究家)、片山杜秀(政治学者/慶應義塾大学教授)
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【佐藤優】日本のインテリジェンス機能、必要な貯金額、副業の是非 〜知の教室〜
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 〜知の教室〜
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【佐藤優】サハリン・樺太史、酸素魚雷と潜水艦・伊400型、飼い猫の数
【佐藤優】第2次世界大戦、日ソ戦の悲惨 〜知を磨く読書〜
【佐藤優】すべては国益のため−−冷徹な「計算」 〜プーチン〜
【佐藤優】安倍政権、沖縄へ警視庁機動隊投入 〜ソ連の手口と酷似〜
【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 〜知の教室〜
【佐藤優】冷静な分析と憂国の情、ドストエフスキーの闇、最良のネコ入門書
【佐藤優】「クルド人」がトルコに怒る理由 〜日本でも衝突〜
【佐藤優】異なるパラダイムが同時進行 〜激変する国際秩序〜
【佐藤優】被虐待児の自立、ほんとうの法華経、外務官僚の反知性主義
【佐藤優】日本人が苦手な類比的思考 〜昭和史(10)〜
【佐藤優】地政学の目で中国を読む 〜昭和史(9)〜
【佐藤優】これから重要なのは地政学と未来学 〜昭和史(8)〜
【佐藤優】近代戦は個人の能力よりチーム力 〜昭和史(7)〜
【佐藤優】戦略なき組織は敗北も自覚できない 〜昭和史(6)〜
【佐藤優】人材の枠を狭めると組織は滅ぶ 〜昭和史(5)〜
【佐藤優】企画、実行、評価を分けろ 〜昭和史(4)〜
【佐藤優】いざという時ほど基礎的学習が役に立つ 〜昭和史(3)〜
【佐藤優】現場にツケを回す上司のキーワードは「工夫しろ」 〜昭和史(2)〜
【佐藤優】実戦なき組織は官僚化する 〜昭和史(1)〜
【佐藤優】バチカン教理省神父の告白 〜同性愛〜
【佐藤優】進むEUの政治統合、七三一部隊、政治家のお遍路
【佐藤優】【米国】がこれから進むべき道 〜公約撤回〜
【佐藤優】同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか」「【佐藤優】プーチンのメッセージ
【佐藤優】ロシア人の受け止め方 〜ノーベル文学賞〜
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【佐藤優】沖縄・日本から分離か、安倍「改憲」を撃つ、親日派のいた英国となぜ開戦
【佐藤優】シリアで始まったグレート・ゲーム 〜「疑わしきは殺す」〜
【佐藤優】沖縄の自己決定権確立に大貢献 〜翁長国連演説〜
【佐藤優】現実の問題を解決する能力 〜知を磨く読書〜
【佐藤優】琉球独立宣言、よみがえる民族主義に備えよ、ウクライナ日記
【佐藤優】『知の教室 〜教養は最強の武器である〜』目次
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【佐藤優】「学力」の経済学、統計と予言、数学と戦略思考
【佐藤優】聖地で起きた「大事故」 〜イランが怒る理由〜
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【佐藤優】フランスにイスラム教の政権が生まれたら恐怖 〜『服従』〜
【佐藤優】ロシアを怒らせた安倍政権の「外交スタンス」
【佐藤優】コネ社会ロシアに関する備忘録 〜知を磨く読書〜
【佐藤優】ロシア、日本との約束を反故 〜対日関係悪化〜
【佐藤優】ロシアと提携して中国を索制するカードを失った
【佐藤優】中国政府の「神話」に敗れた日本
【佐藤優】日本外交の無力さが露呈 〜ロシア首相の北方領土訪問〜
【佐藤優】「アンテナ」が壊れた官邸と外務省 〜北方領土問題〜
【佐藤優】基地への見解違いすぎる 〜沖縄と政府の集中協議〜
【佐藤優】慌てる政府の稚拙な手法には動じない 〜翁長雄志〜
【佐藤優】安倍外交に立ちはだかる壁 〜ロシア〜
【佐藤優】正しいのはオバマか、ネタニヤフか 〜イランの核問題〜
【佐藤優】日中を衝突させたい米国の思惑 〜安倍“暴走”内閣(10)〜
【佐藤優】国際法を無視する安倍政権 〜安倍“暴走”内閣(9)〜
【佐藤優】日本に安保法制改正をやらせる米国 〜安倍“暴走”内閣(8)〜
【佐藤優】民主主義と相性のよくない安倍政権 〜安倍“暴走”内閣(7)〜
【佐藤優】官僚の首根っこを押さえる内閣人事局 〜安倍“暴走”内閣(6)〜
【佐藤優】円安を喜び、ルーブル安を危惧する日本人の愚劣 〜安倍“暴走”内閣(5)〜
【佐藤優】中小企業100万社を潰す竹中平蔵 〜安倍“暴走”内閣(4)〜
【佐藤優】自民党を操る米国の策謀 〜安倍“暴走”内閣(3)〜
【佐藤優】自民党の全体主義的スローガン 〜安倍“暴走”内閣(2)〜
【佐藤優】安倍“暴走”内閣で窮地に立つ日本 〜安倍“暴走”内閣(1)〜
【佐藤優】ある外務官僚の「嘘」 〜藤崎一郎・元駐米大使〜
【佐藤優】自民党の沖縄差別 〜安倍政権の言論弾圧〜
【書評】佐藤優『超したたか勉強術』
【佐藤優】脳の記憶容量を大きく変える技術 〜超したたか勉強術(2)〜
【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 〜超したたか勉強術〜
【佐藤優】恐ろしい本 〜元少年Aの手記『絶歌』〜
【佐藤優】集団的自衛権にオーストラリアが出てくる理由 〜日本経済の軍事化〜
【佐藤優】ロシアが警戒する日本とウクライナの「接近」 〜あれかこれか〜
【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」
【佐藤優】ハワイ州知事の「消極的対応」は本当か? 〜沖縄〜
【佐藤優】米国をとるかロシアをとるか 〜日本の「曖昧戦術」〜
【佐藤優】エジプトで「死刑の嵐」が吹き荒れている
【佐藤優】エリートには貧困が見えない 〜貧困対策は教育〜
【佐藤優】バチカンの果たす「役割」 〜米国・キューバ関係〜
【佐藤優】日米安保(2) 〜改訂のない適用範囲拡大は無理筋〜
【佐藤優】日米安保(1) 〜安倍首相の米国議会演説〜
【佐藤優】日米安保(1) 〜安倍首相の米国議会演説〜
【佐藤優】外相の認識を問う 〜プーチンからの「シグナル」〜
【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる 〜ドイツ機墜落〜
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 〜「自治は神話」〜
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 〜帝国主義の復活〜
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 〜ミハイル・ワニン〜
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか 〜鳩山元首相のクリミア訪問〜
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 〜山城議長への私人逮捕〜
【佐藤優】米大使襲撃の背景 〜韓国の空気〜
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 〜ボリス・ネムツォフ〜
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み 〜独・仏・露と怒れる米国〜
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 〜ウクライナ〜
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) 〜佐藤優によるインタビュー〜
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか 〜ドイツの判断〜
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 〜「イスラム国」〜
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 〜戦後70年〜
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 〜モサドとロシア対外諜報庁(SVR)〜
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 〜国家の新しいあり方〜
【佐藤優】スンニー派とシーア派 〜「イスラム国」で中東が大混乱(4)〜
【佐藤優】サウジアラビア 〜「イスラム国」で中東が大混乱(3)〜
【佐藤優】米国とイランの接近  〜「イスラム国」で中東が大混乱(2)〜
【佐藤優】シリア問題 〜「イスラム国」で中東が大混乱(1)〜
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか 〜『邪宗門』〜
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな 〜英諜報機関トップによる警告〜
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 〜ペーテル・フルトクビスト〜
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない 〜CIA尋問官のリンチ〜
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない 〜白人至上主義〜
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア 〜セルゲイ・キリエンコ〜
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 〜民族問題〜
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 〜アブバクル・バグダディ〜
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 〜アレクサンドル・ザハルチェンコ〜
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 〜冷戦時代も今も〜
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 〜アナートリー・コーシキン〜
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 〜中国政府が示した「条件」〜
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 〜ギオルギ・マルグベラシビリ〜
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 〜米国は中東の泥沼へ再び〜
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 〜プーチンの勝利〜
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか 〜セルゲイ・ラブロフ〜
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 〜揺らぐ国民国家〜
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 〜サレフ・アル=アールーリ〜
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 〜日本が対象から外された理由〜
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 〜ビタリー・クリチコ〜
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 〜シェワルナゼ〜
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか 〜閣議決定の限界〜
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 〜CIA〜
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 〜イラクの過激派〜
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 〜ハサン・ロウハニ〜
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 〜ウクライナから沖縄へ(4)〜 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 〜ウクライナから沖縄へ(3)〜 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム 〜ウクライナから沖縄へ(2)〜
【佐藤優】ユニエイト教会 〜ウクライナから沖縄へ(1)〜 

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【佐藤優】大宅壮一ノンフィクション賞選評 〜『原爆供養塔』ほか〜

2016年05月22日 | ●片山善博
 小野一光『殺人犯との対話』(文藝春秋)は、雑誌連載の作品としては秀逸だ。ただし、単行本になったとき、これらの殺人事件の報道を通じて著者が読者に伝えたいメッセージが鮮明でない。

 清武英利『切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか』(講談社)は、文体、構成において候補作のうち最も優れていた。ただし、ここで紹介された技術者をリストラ部屋に送るという決定をした会社側の論理がまったく見えてこない。視座が一方的になってしまっていることに違和感を覚えた。

 井上卓弥『満州難民 三八度線に阻まれた命』(幻冬舎)は、一次資料の発掘、詳細なインタビューによる優れた作品だ。しかし、2015年の時点の難民概念で、戦後の満州からの引き揚げ者をとらえるという方法は、乱暴であり、ついていけない。

 堀川惠子『原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年』(文藝春秋)【注】は、丹念な取材と資料の読み込み、さらに優れた表現方法を駆使した完成度が高い作品だ。細部においては、<全国の農村漁村から根こそぎ動員で集められた少年たち。(中略)死への待合室に待機していた少年特攻兵>という、志願と動員を同一視し、当時存在しなかった少年特攻兵というような言葉を用いているなど気になる点もある。また、ロシアの核政策で<日本だけが世界の紛争と無縁でいられる時代では、もはやない>という現状認識が、いかにして導かれるのか、その理路が理解しがたい。しかし、これらの欠点があるにしても、それをはるかに上回る説得力が作品全体にある。丹念な取材、優れた文章、著者の熱い想いが、総合され、傑出したノンフィクションに仕上がっている。堀川惠子氏には、21世紀のノンフィクション界を牽引する力が内在している。

 【注】受賞作。

□佐藤優「第47回大宅壮一ノンフィクション賞選評 〜書籍部門〜」(「文藝春秋」2016年6月号)
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【社会】防災体制の点検、真剣に 〜平素の備えが大切〜

2016年05月22日 | 社会
 (1)熊本県を中心に発生した大地震は、甚大な被害をもたらし、いまだに続く余震で被災地の不安は収まらない。
 片山善博・慶大教授は若い頃、熊本県庁で勤務した経験があり、当時を振り返ると、熊本では地震の心配はあまりしていなかった。県庁が防災面で力を入れていたのは、もっぱら風水害と阿蘇山の噴火だった。個人的にも、アパートの大家が「熊本には地震はなかけん」と教えてくれたのをよく覚えている。
 現に3年近くの熊本生活で地震の記憶はないし、その後もついせんだってまで、熊本で大きな地震があったとの報道に接したことはなかった。

 (2)その熊本で大地震が発生した。そのことは他の地域にとって貴重な教訓だ。これまで大きな地震を経験したことのない、いわゆる地震空白地域であっても、いつなんどき大地震に襲われるか分からない。
 全国の自治体は、あらためて防災体制を真剣に点検しておくにこしたことはない。
 
 (3)片山教授が鳥取県知事を務めていた2000年10月、鳥取県西部地震という大地震に見舞われた。マグニチュード7.3、最大震度が6強だから、阪神・淡路大震災や、このたびの熊本地震とほぼ同程度の規模だった。
 初動とその後の復旧・復興を通じて大いに助けられたと思ったのは、事前の準備と、それに沿った関係者の協力だった。もしそれを欠いていれば、大混乱の中で的確な対応は難しかったのではないか。

 (4)鳥取県で事前に準備していたことで、おそらく他地域でも参考になると思われることは次のとおり。
 まず、防災計画や災害発生時の対応マニュアルの点検と見直しだ。
 県庁の幹部と共にこれらを点検していたところ、これではいざというときとても役立ちそうもない箇所が随所に見つかった。
 <例>食糧の供給。避難所を設けるのは市町村の役割だが、そこに食料を供給するのは、もっぱら県の責任だ。
 そのことについて当時の地域防災計画(震災対策編)にどう書いてあったかといえば、県は農林水産省の出先機関を通じて精米を調達するとある。はてさて、大地震の被災地では当座は電機もガスも水道も止まっているが、そこに精米を送ってどうしろというのか。
 そこで早速、弁当・仕出業の組合と協議し、大災害のときには、県内の被災していない地域の事業者から優先的に弁当を供給してもらう胸の協定を結ぶこととした。

 (5)食料以外の物資についても、同様に。
 <例>建設業協会との間で、災害時には建設資材や仮設トイレなどを優先的に被災地に回してもらうことも取り決めた。これらが被災直後に大きく役立った。 

 (6)地元の専門家の知見を借りることも重要だ。
 鳥取県では、1943年に鳥取市を中心に発生した鳥取大地震の経験に鑑み、それまでの震災訓練はいつも鳥取市で行っていた。
 ところが、鳥取大学の研究者の話によれば、鳥取市のある県東部よりも、それまで地震空白域とされていた県西部の方が地震発生の可能性が断然高いという。

 (7)そんなこともあって、2000年7月の震災訓練は県西部の米子市で行った。訓練の内容も、ひたすらシナリオを読み合う年中行事的なやり方から、市町村長や県庁幹部が状況に応じて的確な判断と行動ができるよう大幅に刷新していた。

 (8)訓練の想定では、地震の規模はM7.2、最大震度6強、震源地は米子市の南方に置いていたが、3カ月後後に発生した地震は規模も震源地も想定したものとほぼ同じだった。
 地震発生直後、この研究者には余震の動向なども予測してもらったが、その後の展開はほぼ予測どおりだった。地域のことに精通した専門家の存在が、県民にとっても、行政にとっても、どれほど心強かったかは言うをまたない。
 全国の各地で、自分たちの防災体制を、いま一度具体的かつ真剣に点検してみるとよい。

□片山善博「防災体制の点検、真剣に 〜平素の備えが大切〜」(日本海新聞 2016年5月22日)
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 【参考】
【片山善博】口利き政治の弊害と政治家本来の役割
【片山善博】選挙権年齢引下げと主権者教育のあり方
【片山善博】TPPから見える日本政治の悪弊 〜説明責任の欠如〜
【片山善博】政権与党内の議論のまやかし 〜消費税軽減税率論議〜
【経済】今導入すると格差が拡大する 〜外形課税=赤字法人課税〜
【片山善博】【沖縄】辺野古審査請求から見えてくる国のモラルハザード
【片山善博】川内原発再稼働への知事の「同意」を診る
【片山善博】違憲と不信で立ち枯れ 〜安保法案〜
【片山善博】【五輪】新国立競技場をめぐるドタバタ 〜舛添知事にも落とし穴〜
【片山善博】「ベトナム反中国暴動」報道への違和感
【片山善博】文部科学省の愚と憲法違反 〜竹富町教科書問題〜
【片山善博】都知事選に見る政党の無責任 〜候補者の「品質管理」〜
【片山善博】JR北海道の安全管理と道州制特区
【政治】地方議会における口利き政治の弊害 〜民主主義の空洞化(3)〜
【政治】住民の声を聞こうとしない地方議会 〜民主主義の空洞化(2)〜
【政治】福島県民を愚弄する国会 〜民主主義の空洞化(1)〜
【社会】教育委員は何をなすべきか 〜民意を汲みとる〜
【社会】教育委員会は壊すより立て直す方が賢明
【社会】「教員駆け込み退職」と地方自治の不具合
【政治】何事も学ばず、何事も忘れない自民党 〜公共事業〜

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【本】シンプル・ライフ、自立、読書 〜『波止場日記』〜

2016年05月21日 | ●エリック・ホッファー
 (1)エリック・ホッファーは、7歳にして母を失い、同年、不明の原因により盲目となった。15歳の時、失明したときと同じく突然に視力を回復した。18歳で父と死別。レストランの皿洗いをふりだしに職を転々としながら図書館で独学した。
 34歳の冬、転機がおとずれる。一冊の本とともに一人鉱山にこもり、『エセー』を三度読みかえした。モンテーニュとの出会いに必然性はなかったが、出会いの結果は運命的であった。「生まれて初めて、私にもこういったものが書けるかもしれないと考えた」
 読む人から書く人へと立場をかえたのである。

 (2)1969年に刊行された本書は、二つの著書を刊行したあと、思索の危機を感じて書きはじめた日記である。ホッファー、ときに56歳、沖仲仕。
 日記は、1958年6月1日にはじまって翌年5月21日に終わる。事の性質上、前後の脈絡はとくにない。日々の出来事、観察、想念が断片的に綴られる。断片的ではあるが、繰り返し書きこまれる話題があって、おのずから関心の所在を示す。
 関心は、おおきく二つに分けることができる。

  (a)波止場ではたらく人々である。組んで作業するパートナーの人となりは、頻繁にスケッチされている。そして組合、組合活動家。ホッファーが好んでとりあげるのは、普通のアメリカ人である。つまり同僚であり自分のことであり、大衆のことだ。大衆の対極にたつのが、知識人である。ホッファーにとって、知識人は労働に従事しないばかりか、労働する人を言葉によって操作、管理、支配しようとする胡乱な存在にすぎない。
   <午前10時。組合の集会に行った。抽象的な問題についての議論の浅薄さと実際的な問題の処理の独創性とが、今日も対照的であった。集会の前半ははまったく退屈。ソーベル事件が主題。後半の議題は組合本部の貸借およびくず鉄仕事のぺてん師の処分方法について。提案された解決法は独創的で簡潔なものであった。簡潔さは頭の切れを感じさせる>
   <たびたび感銘を受けるのだが、すぐれた人々、性格がやさしく内面的な優雅さをもった人々が、波止場にたくさんいる。この前の仕事でアーニーとマック−−あまり面識のないかなり年輩の連中−−としばらく一緒になったが、ふと気づくと、この二人はなんと立派な−−寛大で、有能で、聡明な−−人間なんだろう、と考えていた。じっと見ていると、彼らは賢明なばかりでなく驚くほど独創的なやり方で仕事にとりくんでいた。しかも、いつも遊んでいるかのように仕事をするのである>

  (b)読書と思索である。読書は、随時、仕事の休憩時間にもおこなわれる。亡命作家の回想録からアラブ現代史まで、手にする本のジャンルは幅広いが、ことに現代史に対する関心が強い。常にノートをたずさえて書きこみ、いっぱいになると検討する。保存する価値のある引用文や思想は、別のノートへ写しとる。こうした作業のうちに、次の著作の主題が煮つまってくる。変化である。洞察は、日記にも記される。<もし南部のニグロが真の平等を得たいのなら、ニグロは自分の力で闘いとらなければならない>

  (c)(b)の自分の力で闘いとるとは、ホッファーによれば、たとえば優秀な職業学校、あるいはモデル相互扶助組織である。独立と自由。生活はごく簡素である。
   <私が満足するのに必要なものはごくわずかである。一日二回のおいしい食事、タバコ、私の関心をひく本、少々の著述を毎日。これが、私にとっては生活のすべてである>
   <自分のいだいている観念を考え抜くためには知的孤立が必要である>
   <私は緊張するのだが大嫌いなので、野心をおさえてきた。また、自己を重視しないよう、できるだけのことをしてきた>

 (3)本書が閃光のように照らし出すのは、米国の開拓時代以来脈々たる伝統のうち最良の部分である。労働のなかで読み、かつ、思索するシンプル・ライフである。

□エリック・ホッファー(田中淳・訳)『波止場日記』(みすず書房、1971)
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【保健】眼底検査で何がわかるか 〜眼疾患だけではない〜

2016年05月21日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)検診でなんとなく受けている「眼底検査」。
 実は血管の障害を外からじかに確かめられる唯一の検査法だ。

 (2)眼底は、文字どおり「眼の底」。透明な組織である角膜の窓から光を当てて透かして見ると、底を走る網膜血管や視神経の末端がはっきり見える。
 網膜血管が詰まっていたり、微細な出血がある場合は、
   糖尿病 
   動脈硬化症
   腎臓疾患
など身体の病気が疑われる。

 (3)先日、秋田、大阪など5地域で、1960年代から続く日本の循環器疾患の疫学的研究「CIRCS研究」から、眼底出血と糖尿病との関連について、新しい知見が報告された。
 その報告は、2001〜11年に、地域の住民検診と大阪の職場検診で眼底検査を受けた人30〜78歳の男女、12,000人を追跡した結果だ。追跡期間の中央値は4.6年だった。
 調査では、
  (a)開始時点に糖尿病治療薬を服用していたか否かで2グループに分け、
  (b)過去1〜2ヶ月間の血糖値を反映する「ヘモグロビンA1c(HbA1c)」値で5グループに分類し、
追跡している。ちなみに、HbA1c値が6.5%以上なら糖尿病の疑いが極めて濃い。

 (4)追跡期間中、
   509人に眼底出血が見つかり、
   そのうち96人は糖尿病が原因の網膜症だった。
 糖尿病網膜症は、網膜の血管が詰まり、ジワジワ出血する病気だ。出血による酸欠状態を補うために、
脆い異常な血管が増殖し、さらに出血が酷くなり、網膜が破壊される。

 (5)調査時点でHbA1c値が糖尿病と診断される値にもかかわらず、治療薬を服用していなかった人は、HbA1c値が5.8%未満と良好な人に比べ、HbA1c値が上昇するにつれて眼底出血リスクが有意に上昇した。
 一方、治療薬を飲んでいた人の出血リスクも増えたが、その幅は小さかった。

 (6)一昔前まで糖尿病網膜症は、日本人の失明原因第1位だった。
 治療法が進化した現在、その座を緑内障に譲っている。
 ただし、それも早期発見・治療があってのこと。
 検査結果が戻ったら、眼底検査の結果と血糖値をよく確認しよう。

□井出ゆきえ(医学ライター)「眼底検査で何がわかるの?/眼疾患、だけではありません 〜カラダご医見番・ライフスタイル編 No.299〜」(「週刊ダイヤモンド」2016年5月14日号)
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 【参考】
【保健】弾性ストッキングが効果的 〜エコノミークラス症候群対策〜
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 〜認知行動療法と同じ効果〜
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 〜毎食後で発症リスクを軽減〜
【保健】ガン=生存時代の就労支援 〜治療と仕事の両立に指針〜
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 〜140mmHgでよい?〜
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 〜大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ 〜抗癌剤の薬効〜
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 〜「先に寝ていて」〜
【保健】先進国では認知症が減少? 〜予防の鍵は生活習慣の改善〜
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か 〜癌の臓器別・病期別生存率〜
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く 〜米国の研究報告〜
【保健】高齢者の服薬適正化にGL 〜容易な多剤併用に警鐘〜
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> 〜背景にストレスや運動不足〜
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? 〜動物実験〜
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 〜ポテトは煮物で〜
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 〜食習慣と飲酒習慣〜
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 〜WHOの調査〜
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 〜脳・心疾患のリスク増〜
【保健】初日の出の心身的効果 〜鬱対策は光を浴びて〜
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 〜糖尿病予防〜
【保健】適性な「降圧目標値」 〜120未満で関連疾患が3割低下〜
【保健】自由な裁量権でスリムに 〜ストレスでメタボ〜
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 〜加齢黄斑変性症の予防〜
【保健】早期発見のためにエコーと併用 〜乳がん検診〜
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を 〜全国糖尿病週間〜
【保健】糖質制限より脂質制限? 〜体脂肪を減らす〜
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに 〜ただし男性のみ〜
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? 〜マナーより健康〜
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? 〜50歳以上の有害な飲酒〜
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー 〜緑内障による失明を予防〜
【保健】長時間労働は脳卒中リスク 〜週41〜48時間でも上昇〜
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【IT】米IBMはもはや「コンピューターの巨人」ではない 〜Medium Blue〜

2016年05月20日 | 社会
 (1)「コンピューターの巨人」として1世紀にわたって米IT(情報技術)業界に君臨してきたIBM。もう「ビッグブルー(Big Blue)の愛称はそぐわないかもしれない。売上げの減少傾向に歯止めがかからないからだ。
 1〜3月期決算(4月18日発表)では実に1616四半期連続の減収となった。同期の売上高は187億ドル(2兆円)で、四半期ベースでは14年ぶりの低水準。3月末までの年間売り上げで見ると18年前の水準に戻った。

 (2)米経済メディア上では「縮むIBM」といった表現が躍った。ニュースサイト「CNNマネー」の記事には「もうビッグブルーと呼んではいけない? 信じられないぐらい縮んだIBM」という見出しが付けられた。
 IBMが「ビッグブルー」と呼ばれてきたのは、米IT業界では圧倒的に巨大(ビッグ)であるとともに、製品やロゴに青色(ブルー)が使われてきたためだ。
 これからは何と呼ばれるべきなのか。
 アーロン・プレスマン記者(米ニュースサイト「ヤフー・ファイナンス」)は新しい愛称を作り出した。「ミディアムブルー(Medium Blue)」だ。2015年7〜9月期の決算を受けて同記者はその記事にこう書いた。
 <今回の決算で浮かび上がったのは、従来の「ビッグブルー」よりも格段に小さい企業の姿だ。これからは「ミディアムブルー」の愛称がふさわしい>
 
 (3)現在の米IT業界覇者のアップルと比べると分かりやすい。2015年1年間の売上げでみると、IBM(817億ドル)はアップル(2,350億ドル)の3分の1にすぎない。長らく巨大企業の代名詞として言及されることの多かった時代の面影はすっかりなくなった。

 (4)IBMは、手をこまねいてきたわけではない。成長分野のクラウドサービス、データ分析、モバイルコンピューティング、セキュリティソフトなど「戦略的必須事業」に積極投資し、成果も出しつつある。1〜3月期に同事業の売上高は前年同期比14%増の70億ドルを記録し、売上高全体の37%を占めるようになった。
 にもかかわらず「ミディアムブルー」なのは何故か。
 コモディティー化したハードウェアなど従来型IT事業の落ち込みがあまりにも激しいからだ。ハードウェアを含むシステム部門の売上高は前年同期比22%減の17億ドルだ。伝統のパソコン部門は、2005年にレノボ(中国)へ売却するなど、同社が従来型IT事業を意識的に縮小してきた結果でもある。

 (5)IBMは再び成長企業に脱皮できるのか。ジニー・ロメッティ氏が最高経営責任者(CEO)に就任した2012年1月から今回の決算発表までの期間に、株価は17%下落。同じ期間に米株価指数S&P500種が6割以上も上昇しているだけに、投資家は「ミディアムブルー」どころか「スモールブルー」さえ視野に入れているかもしれない。
 だが、ロメッティCEOには強い味方がいる。米著名投資家ウォーレン・バフェット氏だ。同氏率いる投資会社バークシャー・ハザウェイはIBM株の8.4%を持つ筆頭株主だ。2016年2月末、バフェット氏は米経済テレビ局CNBCに出演し、語った。
 <重要なのは5〜10年先。IBM株は今以上に価値があることでしょう>

□牧野洋(ジャーナリスト兼翻訳家)「Medium Blue 〜Key Wordで世界を読む No.92〜」(「週刊ダイヤモンド」2016年5月14日号)
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