語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
読書
大岡昇平+社会問題・社会保障

【櫻井よしこ】中国、裁定直後フィリピンを恫喝 ~強める軍事的色彩~

2016年07月25日 | ●大岡昇平ノート
 (1)ロドリゴ・ドゥテルテ・フィリピン大統領が、7月19日、「南シナ海問題で中国とは交渉しない」と、マニラを訪れた米国議員団に語った。
 南シナ海のほぼ全域が自国の領有だとする中国に対して、ドゥテルテ大統領は、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所がどのような裁定を下しても話し合いで臨む、と明言してきた。氏は、大統領選挙のキャンペーンで、「中国が貧しいフィリピンの鉄道建設に資金提供するなら、南シナ海問題について口を閉ざしてもよい」とまで語った人物だ。
 7月12日に、中国の主張を全面否定する画期的な裁定が示されたときも、フィリピン政府は抑制されたコメントを発表しただけだ。これはドゥテルテ大統領が話し合いを進めようと考えていたことを示すものだろう。

 (2)歴史を振り返れば、フィリピンは融通無碍な国だ。
 2004年、アロヨ政権は、中国と秘密協定を結んで多額の資金を受け入れ、その代わりに、スプラトリー礁を含むカラヤン諸島のほぼ全域を中国企業が中国の法律に基づいて開発する権利を認めるという驚くべき決断をした。
 ドゥテルテ大統領も同様の道を選ぶのかと懸念されていたところに、中国とは交渉せず、という話が流れてきた。
 一体何が起きたのか。見えてくるのは、中国外交の非常識だ。

 (3)フィリピンと中国は裁定直後に外相会議を開いたが、王毅・中国外相はペルフェクト・ヤサイ・フィリピン外相に対して次のように語った。裁定に関して一切のコメントを発表すべきでない、裁定とは無関係に二国間協議に入るべし、うんぬん。
 ヤサイ氏、答えていわく、そのようなことはフィリピンの国益にもフィリピン憲法にも合致しない。
 王氏、返していわく、
 「もしフィリピンが裁定に拘り、その線上で議論しようとするなら、われわれは対立(confrontation)に向かうだろう」
 これは恫喝というものだ。
 スプラトリー諸島問題からいったん離れて、ヤサイ氏は次にスカボロー礁に言及した。同礁は3年前から中国が実効支配しており、今年中に埋め立て作業に着手するのではないかと懸念される注目の岩礁だ。中国がこれを埋め立てて軍事基地化すれば、南シナ海全体を中国にとられる。
 「フィリピン漁民の同礁周辺での漁業を認めてほしい」
 ヤサイ氏のこの要請に対して、王氏は突き放した。
 「話し合いには応ずるが、話し合いは裁定の枠外でのみ可能だ」
 そして裁定から2日後、中国はスカボロー礁海域をブロックした。報告を受けたドゥテルテ大統領は明らかに態度を硬化させ、中国との話し合いを拒絶したと推定される。
 中国の発言はフィリピンを見下したものだ。フィリピンは中国の指示に従え、と支配者然として告げたのだ。

 (4)なぜ中国はここまで尊大なのか。彼らはまず、フィリピンを含むASEAN諸国の対中非難の背後に米国と日本の存在を見てとりながらもオバマ政権が続く間、米国は軍事行動には出られないと読み切っている。他のアジア諸国と同様、日本も米国なしには中国抑止などできないと、これも読み切っている。
 国際法や国際世論では中国の四面楚歌は明らかだが、それを突破する軍事力が中国にはあると考えているのだ。裁定から1週間後、中国人民解放軍は戦闘爆撃機を南シナ海に展開し、以降、戦闘爆撃機の監視飛行を常態化すると発表した。
 国際法と国際社会を理解できない中国が、軍事的色彩を強めながらASEAN諸国その他の国々の前に立ちふさがる。

□櫻井よしこ「裁定直後はフィリピンをどう喝 軍事的色彩強め立ちふさがる中国 ~オピニオン縦横無尽~」(「週刊ダイヤモンド」2016年7月30日号)
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 【参考】
【櫻井よしこ】南シナ海問題で完敗でも拒否する中国 常軌を逸した習近平体制の暴走
【櫻井よしこ】米でも絶賛の中国の要人が豹変 ~永遠なのは国益~
【櫻井よしこ】西側は自国第一主義を深め、中国は民主主義の限界に自信を深める ~英国のEU離脱~
【読書余滴】櫻井よしこ『異形の大国 中国』(2) ~商売上手な中国、政治主導の経済~
【読書余滴】櫻井よしこ『異形の大国 中国』(1) ~踏んだり蹴ったり~
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【佐藤優】未来の選択肢二つ、優れた文章作法の指南書、人間が変化させた生態系

2016年07月24日 | ●佐藤優

 ①堤未果『政府はもう嘘をつけない』(角川新書 800円)
 ②成清弘和『理系のための論理が伝わる文章術 実例で学ぶ読解・作成の手順』(講談社ブルーバックス 800円)
 ③フレッド・ピアス(藤井留実・訳)『外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD』(草思社 1,800円)

 (1)①の結論部で、堤氏はわれわれの将来について二つの選択肢があると強調する。
 <人間を安価な労働力としてしか見ず、限界までコストを下げることで手にした巨額なカネで政治を買い、民主主義を根底から破壊してゆく手法。
 違法でない限り何をしてもいいと開き直り、納税という企業義務を果たさずに公共サービスを使いながら、出した利益をタックスヘイブンにせっせと貯めこみ私腹を肥やす、〈不道徳〉な超富裕層たち。そして〈今だけカネだけ自分だけ〉の対極にある、人間の暮らしや文化や伝統、顔が見えるものづくりや、数字で測れない価値を持つ教育、困った時に助け合う共同体が象徴する〈お互いさま〉の価値観。
 目に見えないこの2つの渦の、どちらを選択するのかは、私たちの手に委ねられている>
 後者の選択肢の方向にどう政治と社会を動かしていくかが焦眉の課題だ。

 (2)②は、タイトルに「理系のための」とうたっているが、文系の人にも役立つ。優れた文章作成技法の指南書だ。
 <演繹的な方法はどちらかといえば数学的な思考などに用いられることが多いようです。1つの定理をもとに新たな公式を導くようなことです。ですから、主に法則・理論の作成、検討などに用います。
 一方、帰納的な方法は、厳密さを重んじる論理学ではあまり評価されません。具体から抽象へ進める時に必ず飛躍をともなうからです。しかし、論理的思考(科学の実証的思考)の多くはこの方法に依ります。現実世界のことがらとの関わりを扱わねばならないからです>
 このように著者は指摘するが、効能的論理の文章訓練が本書の特長だ。

 (3)<人間が気候変動、環境汚染、集約農業、プランテーションなどで自然を痛めつければつけるほど、外来種や新しい生態系が重要になってくる。問題視されてきた外来種の存在は、問題の解決策へと立場が入れかわりつつある。手つかずとされる環境を保つのに細部まで管理が必要なのであれば、それはもうテーマパークと変わらない。ほんとうの自然はもっと別のところ、すなわち放置された荒廃地や新しい生態系にあるはずだ。人間に甘やかされていない自然が、ニュー・ワイルドなのである>
 以上のような③における主張には、賛否両論があるだろう。しかし、真面目に検討しなければならない。なぜなら、人間が変化させた自然も、生態系の与件となるからだ。この現実から目をそらしている空想的環境保護論では、一番うまくいってもテーマパークしか生まれないことが、もはや明確になっている。

□佐藤優「優れた文章作法の指南書 ~知を磨く読書 第159回~」(「週刊ダイヤモンド」2016年7月30日号)
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 【参考】
【佐藤優】+宮家邦彦 世界史の大転換/常識が通じない時代の読み方
【佐藤優】人びとの認識を操作する法 ~ゴルバチョフに会いに行く~
【佐藤優】ハイブリッド外交官の仕事術、トランプ現象は大衆の反逆、戦争を選んだ日本人
【佐藤優】ペリー来航で草の根レベルの交流、沖縄差別の横行、美味なソースの秘密
【佐藤優】原油暴落の謎解き、沖縄を代表する詩人、安倍晋三のリアリズム
【佐藤優】18歳からの格差論、大川周明の洞察、米国の影響力低下
【佐藤優】天皇制を作った後醍醐、天皇制と無縁な沖縄 ~網野善彦『異形の王権』~
【佐藤優】新しい帝国主義時代、地図の「四色問題」、ベストセラー候補の研究書
【佐藤優】ねこはすごい、アゼルバイジャン、クンデラの官僚を描く小説
【佐藤優】外交官の論理力、安倍政権と共産党、研究不正が起きるシステム
【佐藤優】遅読家のための読書術、電気の構造、本屋大賞
【佐藤優】外山滋比古/思考の整理学
【佐藤優】何が個性で、何が障害か
【佐藤優】大宅壮一ノンフィクション賞選評 ~『原爆供養塔』ほか~
【佐藤優】英才教育という神話
【佐藤優】資本主義の内在的論理
【佐藤優】米国の戦略策定、『資本論』をめぐる知的格闘、格差・貧困問題の起源
【佐藤優】偉くない「私」が一番自由、備中高梁の新島襄、コーヒーの科学
【佐藤優】フードバンク活動、内外情勢分析、正真正銘の「地方創生」
佐藤優】日本の政治エリートと「天佑」、宇宙の生命体、10代が読むべき本
【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論
【佐藤優】第三次世界大戦の可能性、現代東欧文学、世界連鎖暴落
【佐藤優】司馬遼太郎の語られざる本音、深層対話、米政府による暗殺
【佐藤優】著名神学者のもう一つの顔 ~パウル・ティリヒ~
【佐藤優】総理が靖国参拝する理由、NPO活動の哲学やノウハウ、テロ対策の必読書
【佐藤優】今後、起こりうる財政破綻 ~対応策を学ぶ~
【佐藤優】社会の価値観、退行する社会
【佐藤優】夫婦の微妙な関係、安倍政権の内在的論理、警察捜査の正体
【佐藤優】情緒ではなく合理と実証で ~社会の再構築~
【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
【佐藤優】中国株式市場の怪しさ、イノベーションの障害、ホラー映画の心理学
【佐藤優】普天間基地移設問題の本質、外務省犯罪黒書、老後に快走!
【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~
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【保健】高血圧にはモーツァルト ~安静に寝ているより効果的~

2016年07月23日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)音楽は昔から私たちの心身を癒してきた。近年は、手術前後の痛みを大幅に緩和することが明らかとなり、手術室に音楽が響きわたる病院もある。

 (2)先日、ドイツ医師会誌に「循環器領域では、どんなジャンルの音楽が効くか?」という研究報告が掲載された。
 研究者は、心血管系疾患の既往がない120人(男性60人、女性60人)の参加者を、次の二つに分けた。
  (a)音楽を聴く(音楽群)
  (b)静けさのなかで横たわる(安静群)
 (a)はさらに、次のそれぞれを聴く3群に分け、各群とも25分間音楽に耳を傾けた。
   ア)モーツァルト
   イ)ヨハン・シュトラウス2世(美しき青きドナウ)
   ウ)北欧のポップグループABBA
 なお、全参加者は、(a)、(b)を味わう前後で次の数値を測定している。
   ①血圧
   ②心拍数
   ③ストレス・ホルモンのコルチゾールの血中濃度

 (3)結果は、
  (a)音楽を聴く(音楽群)・・・・音楽を聴いた後の上の①血圧、②心拍数が
   ア)モーツァルト→①平均4.7mmhg低下、②有意に低下
   イ)ヨハン・シュトラウス2世→①平均3.7mmhg低下、②有意に低下
   ウ)ABBA→①平均1.7mmhg低下、②効果が認められなかった
  (b)安静群→①平均2.1mmhg低下、②有意に低下

 (4)とはいえ、③ストレスホルモンの血中濃度は、(b)よりも(a)全体において著しい低下が認められている。また、この効果は女性よりも男性で顕著だった。

 (5)研究者は、「ABBAの音楽の何が違ったか?」を考察。ネガティブな歌詞の影響を指摘している。歌詞のない「インストゥルメンタル」に歌詞が加わると、脳の活動領域が変化して、歌詞のない場合とは異なる感覚や感情が湧き起こり、心身が反応するというのだ。
 また、循環器領域の疾患リスクを抑制する音楽の条件は、
   ①周期的なリズム
   ②印象的なメロディライン
   ③歌詞がないこと
   ④ボリュームやリズムの大きな変化が少ない
などを挙げている。
 日本の雅楽はこの条件に当てはまりそうだ。おまけに睡眠導入効果も期待できそうだし。

□井出ゆきえ(医学ライター)「高血圧にはモーツァルトを/安静に寝ているより効果的 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.309(「週刊ダイヤモンド」2016年7月23日号)
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 【参考】
【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

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【佐藤優】+宮家邦彦 世界史の大転換/常識が通じない時代の読み方

2016年07月22日 | ●佐藤優
   

 (1)目次
   はじめに--世界を一周しながら変化の本質を読む(宮家邦彦)
   第1章 ポスト冷戦の終わり、甦るナショナリズム
   第2章 ISを排除しても中東情勢は安定しない
   第3章 中央アジアは「第四グレートゲーム」の主戦場
   第4章 「国境のない欧州」という理想はテロで崩れるか
   第5章 トランプ現象に襲われたアメリカの光と闇
   第6章 中国こそが「戦後レジームへの挑戦者」だ
   終章  「ダークサイド」に墜ちるなかれ、日本 
   おわりに--第一級の分析家との仕事に感謝する(佐藤優)

 (2)はじめに
 <彼と定期的に会うようになって気づいたことがある。われわれ二人の知的関心対象が重なる一方で、お互いの得意分野があまり重複していないらしいということだ。私の専門は中東と日米安保、中国のことも少しはわかる。一方、彼の得意手は欧州・ロシアと歴史、哲学、思想史・・・・。要するに、残りすべてだ>

 <折しも世界はいま、何十年に一度かの巨大な地殻変動を迎えつつある。そして、こうした構造的変化の本質を知るには、報道される日々の現象を追うだけでは到底、不十分であり、どうしても歴史的大局観が必要になる。
 この対談でわれわれは、そうした歴史的大局観を意識しつつ、現在の国際情勢に関するいくつかの仮説を語り尽くしている>

 (3)第1章 ポスト冷戦の終わり、甦るナショナリズム
 <宮家: ポスト冷戦の時代、欧州はロシアという「大きな熊」のナショナリズム復活を押しとどめ、どうすれば国際秩序の檻に閉じ込めておけるか、ということにあらゆる知恵を絞ってきました。その結果が、NATO(北大西洋条約機構)とEU(欧州連合)の拡大、通貨ユーロの導入です。しかし、これらの努力は水泡に帰し、復活したロシアの帝国主義的なナショナリズムに対する反作用として、欧州各国でナショナリズム的な動きが急速に台頭しています。
 一方で、2014年あたりから欧州では、反EU・反移民を唱える偏狭な民族主義政党が躍進している。同年の欧州議会(EUの議会)選挙では、イギリスで英国独立党が、フランスで国民戦線(フロン・ナショナル)が、いずれも第一党に躍り出ました。スウェーデン、オランダ、ポルトガルでも極右・極左政党が存在感を増しつつあり、ハンガリーやポーランドなどでは政権を担っています。移民に寛容なドイツですら、「ペギータ(西洋のイスラム化に反対する愛国的欧州人)」という極右団体が活動を本格化させ、すでに欧州のほぼ全土に関連団体が結成されつつある状況です。
 佐藤: 私には、新しい運動が起こったというよりも、眠っていたものが起き上がった、という感じがしますね。排外主義と結びつくナショナリズム、人種主義は、第二次世界大戦後に克服された、と教科書的にはいわれていますが、欧州、とりわけイギリスを除く欧州大陸諸国の「地金」は、自由主義でも、民主主義でもないことを忘れてはならない。イタリアのベルルスコーニ元首相は、大統領選挙運動中のオバマ上院議員(当時)について、「若く、ハンサムでよく日焼けしている」とコメントしました。アメリカの政治家が同じ発言をしたら、その時点で政治声明は終わりでしょう。
 (中略)
 佐藤: ここで「ナショナリズム」という言葉について、もう少し正確な定義をしておきましょう。私が政治的に民族を論じる場合、アーネスト・ゲルナーの『民族とナショナリズム』(岩波書店)やベネディクト・アンダーソンの『想像の共同体』(リブロポート)で展開されているように、民族を近代以後の現象として理解することを大前提としています。もちろんナショナリズムの核になるような、エトニやエトノスと呼ばれる「共通の祖先・歴史・文化をもち、ある特定の領域と結びつきをもち、内部での連帯感をもつ、名前をもった人間集団」は、それ以前からありました。ただ、エトニが必ずしも近代的な民族になるわけではない。この集団はある状況によって、一つの民族になったり、ならなかったりする。歴史のさまざまな要因によって左右され、結びつきを変えていくわけです。
 たしかにポスト冷戦後の世界はナショナリズムの時代と呼べるでしょう。グローバリゼーションの進展によって近代国民国家(ネーションステート)の枠組みが揺らぐ一方、そのなかで入れ子構造になっていた小さいエスニック集団がネーションに変容しつつある。沖縄(琉球)人はエトニから「国民国家化」の初期段階であるネーションへの移行過程に入っているとみるべきだし、イギリスではスコットランドが独立志向を強めています。一方で宮家さんがいわれるナショナリズムの意味は、ロシアの帝国主義的対応、中国の膨張主義などを指しているわけですね。
 宮家: ナショナリズムをマクロ的にみるか、ミクロ的にみるかということでしょうか。私は両方考えうると思っています。エトニから直接、ネーションに移行するといった動きは中東でもクルド人などにみられる現象です。ナショナリズムが近代の産物というのはご指摘のとおりですね。私もとくに欧州諸国のナショナリズムを論じる際には、それを念頭に置いた議論をしています。欧州の政治的統合を進めるためには、EU諸国のナショナリズムを制限しなければならなかった。ところが加盟各国の政治家も、EUのエリート層も、偏狭な民族主義をコントロールできず、欧州の力の凋落を食い止められない。現在は、反EUの不健全なナショナリズムが表出している状態でしょう>

 (4)第2章 ISを排除しても中東情勢は安定しない
 <宮家: 本格的な民主化運動がチェニジアで始まったのは偶然ではありません。チェニジア、モロッコは地中海文明に属し、南欧との地理的、文化的共通性が顕著なアラブ国家です。少なくとも欧州型の世俗主義的民主政治と親和性がある。(中略)
 そのチェニジアですら、民主化の道は平坦ではありませんでした。ジャスミン革命から3年経った、2014年1月に制憲国民議会で新憲法を可決し、同年11~12月、革命後初となる直接大統領選挙の実施にこぎつけ、テロに悩まされながらも現在に至ります。
 佐藤: これはラインホルト・ゼーベルグという神学者の説ですが、純粋なキリスト教は存在しない。土着の伝統文化と接触・融合しながら、「ヘブライ類型」「ギリシャ類型」「ラテン類型」「アングロサクソ類型」などの文化圏に分かれていく。そう考えるとイスラムの世界でも、ペルシャ帝国の遺産・記憶を受け継ぐイラン、トルコの部族社会や、自治権を広く認めるモンゴル帝国の影響が強いかつてのオスマン帝国領地域、そしてアラブの場合は、メソポタミアとアラビア半島、北アフリカの各地域に独自の文化圏が形成されている、とみるべきでしょうか>

 (5)第4章 「国境のない欧州」という理想はテロで崩れるか
 <佐藤: たとえばフランスが二度にわたって狙われたのは、フランスがもつ「弱み」に原因があります。フランスの人口学者・歴史学者であるエマニュエル・トッドが『移民の運命』(藤原書店)で指摘していますが、フランスは基本的に同化主義を国家原理に据えています。出自がどこであろうとフランスの言語と文化を受け入れるなら、国家のフルメンバーとして認める。「自由・平等・友愛」のもと、どこの出身だろうが、どんな宗教を信じていようが、拒絶しないというのがフランス共和国の理念です。
 宮家 フランスの「ブルカ」をめぐる問題も根本はそこですね。第3章でも触れましたが、ブルカ禁止法の起源は1905年に遡ります。「自由・平等」とは、もともとアンシャン・レジーム(旧体制)の第一身分「カトリック聖職者」からの自由と平等を意味している。革命の精神に基づいて、カトリック聖職者が支配していた学校を世俗化するため、学生と教師が宗教的シンボルを身につけることを法律で禁止したのが始まりです。さらに、2004年にはフランス公立学校でのブルカ着用を禁ずる「ヴェール禁止法」が、2010年には新たに「公共の場で人の顔を隠すこと禁ずる法律」が制定されました。
 フランスの「禁止法」は、「人間の理性」が「宗教的権威」に勝利した結果を維持するためのものであり、先に述べた中国の「禁止法」と同列に論じることはできません>

 <宮家: (前略)それにしても、ドイツ人にグルメはいないのですか?
 佐藤 ドイツでもカトリックのバイエルン地方には食事を楽しむ習慣があります。私の仮説ですが、フォルクスワーゲンの排ガス偽装は、バイエルンが本社のBMWなら起きなかったのではないか。フォルクスワーゲンの風土は、ナチスを生み出したプロイセンそのものです。偽装装置を開発する計画性をもち、巧みな偽装隠しをして販路拡大という至上命題を合理的に実現する。
 さらに「アメリカ人におれたちのしていることが見抜けるはずはない」という悪質さも同居しています。偽装計画の指令書すら出てこず、悪事は口頭の指示で行い、決して痕跡は残さない。ナチスとやり方が一緒です。こういうドイツ人の体質は変わらない。
 宮家: 南欧のカトリック国のほうこそ、そうとういい加減ではないですか。
 佐藤: いい加減だからこそ、生真面目に悪事をしないのです(笑)。ヒトラーはオーストリアという南方出身ですが、ナチスドイツの中枢はプロイセン出身者が固めていました。彼らは悪事にも真面目に取り組む。東ドイツはプロイセン国家ですよ。だから東西ドイツ統一の結果、プロイセン的な文化が西ドイツに入ってきて、全国に広がった。
 宮家: プロイセン的な美徳は、勤勉、潔癖、服従、そして祖国への愛、とされています。たしかにラテンの南欧にあのような不正はできないですね。
 佐藤: たとえばドイツに駐在する商社員の奥さんたちが何に困っているかといえば、ゴミの分別です。ゴミを17種類に分別して捨てないといけないし、分別法を間違えてゴミ出しすると、近所の人から文句が出る。同じビンのゴミでも、利用度に応じて適宜分別する。再利用できる状態のビンと焼却するビンに分ける。
 いまはそれが「ゴミ」に向かっているからいいのですが、いつまた「人間」の分別に向かわないとも限りません>

 (6)第6章 中国こそが「戦後レジームへの挑戦者」だ
 <佐藤: 中国共産党は革命後に簡体字を採用しますね。中央アジアの「民族境界線画定」でも明らかなように、表記法は国民国家形成において非常に重要な問題です。
 中国共産党がなぜ画数が少ない簡体字にしたのか。表向きは識字率を上げるためですが、その本質は、国民からそれ以前の知識を遠ざけるためでした。簡体字教育が普及すると、それ以前に使われていた繁体字が読めなくなり、共産党支配以降に認められた言説だけが流通するようになる。歴史を断絶するための情報統制を行ったのです。
 ロシアも同じことをしました。たとえばロシア語では、1917年のロシア革命後、三つの文字表記を排除した。そのため特殊な訓練を受けないと革命前のロシア語が読めなくなってしまった。ボルシェヴィキ政権、ソ連政権は、革命前の知的遺産のうち、国民に知らしめたほうがいいと思うものだけを選んで、新しい文字表記で出すことにしたわけです。
 中国の簡体字改革にも同じ意味があります。敗戦後の日本でも、それと似たようなこと(当用漢字の導入、新漢字・新かなづかいの制定)が起きました>

□『世界史の大転換 常識が通じない時代の読み方』(PHP新書、2016)/共著:宮家邦彦
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 【参考】
【佐藤優】沖縄の全基地閉鎖要求・・・・を待ち望む中央官僚の策謀
【佐藤優】ナチスドイツ・ロシア・中国・北朝鮮 ~世界の独裁者~
【佐藤優】急進展する日露関係 ~安倍首相が取り組むべき宿題~
【佐藤優】日露首脳会談をめぐる外務省内の暗闘 ~北方領土返還の可能性~
【佐藤優】殺しあいを生む「格差」と「貧困」 ~「殺しあう」世界の読み方~
【佐藤優】一時中止は沖縄側の勝利だが ~辺野古新基地建設~
【佐藤優】情報のプロならどうするか ~「私用メール」問題~
【佐藤優】テロリズムに対する統一戦線構築 ~カトリックとロシア正教~
【佐藤優】北方領土「出口論」を安倍首相は訪露で訴えよ
【佐藤優】ラブロフ露外相の真意 ~日本政府が怒った「強硬発言」~
【佐藤優】プーチンが彼を「殺した」のか? ~英報告書の波紋~
【佐藤優】北朝鮮による核実験と辺野古基地問題
【佐藤優】サウジとイランと「国交断絶」の引き金になった男 ~ニムル師~
【佐藤優】矛盾したことを平気で言う「植民地担当相」 ~島尻安伊子~
【佐藤優】陰険で根暗な前任、人柄が悪くて能力のある新任 ~駐露大使~
【佐藤優】世界史の基礎を身につける法、決断力の磨き方
【佐藤優】国内で育ったテロリストは潰せない ~米国の排外主義的気運~
【佐藤優】沖縄が敗訴したら起きること ~辺野古代執行訴訟~
【佐藤優】知を身につける ~行為から思考へ~
【佐藤優】プーチンの「外交ゲーム」に呑まれて
【佐藤優】世界イスラム革命の無差別攻撃 ~日本でテロ(3)~
【佐藤優】日本でもテロが起きる可能性 ~日本でテロ(2)~
【佐藤優】『日本でテロが起きる日』まえがきと目次 ~日本でテロ(1)~
【佐藤優】小泉劇場と「戦後保守」・北方領土、反知性主義を脱構築
【佐藤優】【中東】「スリーパー」はテロの指令を待っている
【佐藤優】東京オリンピックに係るインテリジェンス ~知の武装・抄~
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【佐藤優】自民党の沖縄差別 ~安倍政権の言論弾圧~
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【佐藤優】集団的自衛権にオーストラリアが出てくる理由 ~日本経済の軍事化~
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【佐藤優】エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】バチカンの果たす「役割」 ~米国・キューバ関係~
【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】外相の認識を問う ~プーチンからの「シグナル」~
【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
【佐藤優】守られなかった「停戦合意」 ~ウクライナ~
【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
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【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 
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【野口悠起雄】危機に直面するのは英国よりEU ~英国のEU離脱~

2016年07月21日 | ●野口悠紀雄
 (1)英国のEU離脱は、欧州にも影響を及ぼしている。EU離脱のドミノ効果を引き起こす可能性が高い。オランダ、チェコ、フランスでもEU離脱を支持する世論が高まっている。
  (a)オランダで2月に行われた世論調査では、残留が離脱を1%しか上回らなかった。
  (b)チェコで2015年10月に行われた世論調査では、EU離脱の支持率は62%だった。
  (c)フランスでは、2017年の大統領候補として、反EUと移民排斥を掲げる国民戦線党首マリーヌ・ルペンの支持率が最も高く、フランソワ・オーランド大統領の支持は低迷が続いている。最近自死された世論調査では、48%が国民投票(EU残留・離脱を問う)を望んだ。

 (2)EU離脱を求める理由は、国により人によってさまざまだ。
  (a)移民拒否。オランダ、チェコ。
  (b)欧州委員会という巨大官僚機構に対する嫌悪。同委が加盟国に課す経済政策に対する不満が高まっている。余計な規則が経済活力を削いでいるという批判だ。EU官僚は、契約職員や加盟国からの出向職員などを加えると3万人を超す(ちなみに、ローマ帝国の中央官僚はわずか300人程度だった)。
  (c)金融取引税のように金融活動を阻害する政策をEUが導入することへの反対。
  (d)ドイツの「独り勝ち」に対する反感。特にフランスにおいて根強い。【注】
 
 (3)一方、EUを離脱しないのは南欧諸国だ。EUの強い規制によって経済活動を制限されているのに。
 典型例、「ベイルイン」制度。金融機関の再生・破綻処理に際して、公的資金ではなく、銀行の債権保有者が救済資金を負担する制度。2015年12月末に全加盟国で導入が終了し、2016年1月1日に発動された。
 これがまず問題となったのはイタリア。4つの地方銀行が救済資金を受けることになっていたが、その前にベイルイン制度で株主や劣後債の保有者が損失を被ることになった。
 イタリアでは、劣後債を購入する年金生活者が多いため、多くの年金生活者が犠牲となった。預金のすべてを失った年金生活者の首つり自殺が報道され、問題となった。
 2016年からは、株主や劣後債の保有者に限らず、10万ユーロ以上の預金を持つ一般の預金者も対象となった。それが実施されると大問題なので、イタリア政府はこの制度の適用を何とか回避したい。それならばEUを離脱してしまえばよさそうなものだが、イタリアは離脱しないのだ。
 なぜか? それはイタリア経済の現状がヨーロッパ中央銀行(ECB)の政策によって支えられているからだ。
 マリオ・ドラギECB総裁は、「ユーロを守るためには何でもやる」べく、無制限の国債買い入れプログラム(OMT)を導入した。現在のイタリアの金利が抑えられているのはECBが買い支えているからだ。
 もしイタリアがユーロを離脱すれば、この支えがなくなり、たちまち国債の金利が暴騰する。そしてリラは暴落し、イタリア経済が崩壊してしまう。

 (4)ギリシャも似た事情だ。厳しい財政再建条件を課されても離脱しない。なぜならEUやユーロが支えているからだ。
 ところで、南欧諸国の支援のための負担は、主としてドイツが負っている。貿易赤字国に対するファイナンスは、「ターゲット2」と呼ばれる決済システムを通じて移動的に行われる。
 結局、EUやユーロは、イタリア、ギリシャなど支援を求める国と、ドイツなど支援を支える国に分離してしまっているのだ。

 (5)ベイルインに見られるような厳しい政策をEUが打ち出すのは、これまで破綻銀行の処理のために想い負担を余儀なくされてきたドイツの意向があるからだろう。また、ドイツはOMTに対していまだに批判的だ。そして、金融取引税は、投機を嫌うドイツ人の考えから正当化される。  
 これらの政策の背後には、「モノ作りこそ健全な経済活動であり、金融は虚業だ」という考え、そして「財政規律が最優先だ」という考えがある。
 ドイツの不満は、OMTに対して、欧州司法裁判所がすでに合法との判断を下していたにもかかわらず、ドイツ国内で憲法裁判が行われていたことに表れている(6月21日にドイツ憲法裁判所は懸念を示しながらもEU司法裁の判断に従う決定を下した)。
 さらに、ECBのマイナス金利政策に対して、ドイツ国民、金融機関、経済界の不満は高まっている。
 こうして、南欧諸国が支援され続け、それを支えるドイツが厳しい要求を出すという悪循環に陥っている。
 支える側も支えられる側も、EUやユーロのシステムをどこまで維持することができるか?

 【注】例、エマニュエル・トッド『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる 日本人への警告』(文春新書、2015)

□野口悠紀雄「危機に直面するのはイギリスではなくてEU ~「超」整理日記No.816~」(「週刊ダイヤモンド」2016年7月23日号)
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 【参考】
【野口悠起雄】世界経済の不確実性は長期 ~英国のEU離脱~
【野口悠起雄】日米で経済情勢や政策に著しい違い ~アベノミクスの本質(3)~
【野口悠起雄】期待への働きかけは効果なし ~アベノミクスの本質(2)~
【野口悠起雄】為替と株の投機ゲーム ~アベノミクスの本質(1)~
【野口悠起雄】誰が負担するのか? ~マイナス金利のコスト~
【野口悠起雄】物価下落は実質賃金を上昇させる ~経済成長~
【経済】外国人投資家は株式から国債へ ~世界金融市場混乱(2)~
【経済】新年からの世界金融市場混乱の原因 ~「リスクオフ」~
【経済】軽減税率が突きつける諸問題(2) ~現存特例措置の見直し~
【経済】軽減税率が突きつける諸問題(1) ~現存特例措置~
【経済】企業の利益増加で賃金が減る ~理由と対策~
【経済】政策にみる安倍政権の思慮不足 ~「新しい3本の矢」~
【年金機構】の情報漏洩から学ぶこと(2) ~3つの疑問~
【年金機構】の情報漏洩から学ぶこと(1) ~経緯~
【経済】日本経済をドルの立場から再評価すると
【野口悠紀雄】マイナス成長から抜け出す手段 ~実質消費増大の方法~
【経済】今後、狙いと反対のことが起きる ~異次元緩和(2)~
【経済】期待を煽り資産価格のみを変化させた ~異次元緩和~
【ピケティ】の格差理論は日本でも当てはまるか(2) ~法人企業統計~
【ピケティ】の格差理論は日本でも当てはまるか ~GDP統計~
【経済】小企業や家計の赤字=大企業の利益 ~トリクルダウン(2)~
【経済】円安で小企業や家計は赤字 ~トリクルダウンはなぜ生じない?~
【経済】円安で貧乏になりゆく日本 ~スタグフレーション~
【政治】先の見通しを持たない新成長戦略 ~鎖国的政策~
【野口悠紀雄】仮想通貨が財政ファイナンスを阻止 ~経済政策と金融政策~
【野口悠紀雄】ビットコインが持つ経済価値はどの程度か?
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【野口悠起雄】世界経済の不確実性は長期 ~英国のEU離脱~

2016年07月21日 | ●野口悠紀雄
 (1)円高の原因となった英国EU離脱【注1】による世界経済の不確実性は、長期にわたって続く可能性がある。なぜなら、
  (a)英国は他国と新しい通商協定を結ぶ必要があるからだ。①EUとの協定、②EU以外の国との協定。以上の交渉にはかなりの時間を要する(一説によれば2020年まで)。よって、世界経済はかなりの長期にわたって大きな不確実性に直面することになる。
  (b)金融分野においても、新しい取り決めを作る必要がある。特に「パスポート協定」について。これはEU加盟国で免許を有している金融機関は、新たな免許を必要とせずに加盟地域で金融商品やサービスを提供できる協定だ。日本の金融機関はEU加盟国で新たに免許を取らなければならなくなる。
  (c)同様の問題が、さまざまの分野で発生する。こうした問題がどうなるか、何もわからないから、世界経済は大きな不確実性に直面している。
  (d)他の諸国もEUから離脱するかもしれない。スウェーデン、ベルギー、デンマークなど。フランス、イタリアでも国民投票を提起する声が上がっている。
  (e)6月24日の株価の動向は、大陸諸国の株価下落幅は英国のそれを上回った(<例>フランスは8.0%)。これは英国の負担において他国が利益を得るような要素がEUの仕組みに含まれており、そのため英国離脱による問題が、英国においてより大陸諸国において大きいことを意味する。

 (2)世界経済のリスク増大によって円高がさらに進めば、企業の利益も外国人旅行客も2012年頃に戻ってしまう可能性が高い。これに対して、政府・日銀はいかなる政策をとり得るか?
  (a)為替介入・・・・為替レートは自由に操作できる変数ではない。2004年頃の大規模介入を行うことは不可能ではないが、為替操作について米国が牽制球を投げていることを考慮すると難しい。それに、実質実効為替レートで見ると、最近の指数は78.8だが、これは2001年から04年頃の指数が111程度だったのと比べてかなりの円安だ(指数が小さいほど円安)。この水準で介入を行うことに国際的な理解を得ることは難しい。
  (b)マクロ経済・・・・安倍晋三内閣は既にこの方針を表明している。しかし、
   ①財政拡大はGDPを拡大する効果と同時に、為替レートを円高にする効果もある(要注意)。政府の目的が円安誘導であることを考えると、財政拡大はむしろ逆の効果をもたらす。
   ②公共事業の増加によって利益を受けるのは建設業だ。これに対して円高で利益が減少するのは製造業であり、観光業だ。これらの分野には財政拡大は助けにならない。
   ③公共事業の増加は、建設労働者の受給を逼迫させる。
   ④財源の問題もある。これまで企業利益の増大によって法人税収入が伸びていたが、円高に伴う法人税収の低迷によって、2015年度の国の税収は、2016年1月時点の予測56.4兆円から減少して56.3兆円となる見通しだ。
  (c)金融政策・・・・しかし、国債購入額を拡大することは難しい。民間の金融機関は国債を購入して保有額を増やすことに慎重な態度を取っている。マイナス金利幅を拡大することも考えられるが、金融機関からの反発もあり、難しいだろう。

 (3)マクロ経済政策は手詰まりに陥っている。問題は構造改革を進めず、円安に容易に依存した企業利益拡大に満足してしまったことだ。日本経済にとって最も必要とされたのは、円安に依存しないで利益を上げられるような産業構造を作りあげていくことだった。
 リーマンショックのときも、日本経済は大きな影響を受けた。それは米国経済の落ち込みよりも大きかった。日本経済が為替レートに強く依存する構造になっていたからだ。このときから8年近くたっているが、事態は全く改善されていない。日本経済は、金融緩和と円安に目をくらまされて、貴重な時間を浪費してしまった。【注2】 

 【注1】
【アベノミクス】よ、さらば ~数字が示す日本経済の悪化~
【古賀茂明】有権者の騙し方 ~英国のEU離脱派政治家、日本の自民党政治家~
【後藤謙次】日本が直面する「ABCリスク」 ~英EU離脱で顕在化~
【EU離脱】嘘の「公約」で多数派を勝ち取った政治家たち
【英国】EU離脱がもたらす世界危機 ~困る米国、喜ぶロシア~

 【注2】記事「(教えて!政策チェック:1)アベノミクス 野口悠紀雄さん」(朝日新聞デジタル 2016年7月13日)は、野口悠紀雄のアベノミクス批判を要約している。
 <(前略)アベノミクスを進めた3年余りで、株価と企業の営業利益、税収は大きく伸びました。一方で、物価上昇による影響をのぞく実質GDP(国内総生産)や企業の売上高はほとんど伸びていません。実質賃金指数や実質家計最終消費支出など、賃金や消費の実態を示す経済指標の伸びはマイナスです。
 結局、株を持つ人たちは利益を得たが、日本の経済の実態はほとんど変わっていない。これがアベノミクスの本質です。安倍首相は「アベノミクスを加速させる」と言っていますが、実態に大きな変化がないので、時間が経っても賃上げや設備投資などへは波及しません。
 今後、大規模な経済対策を実施しても、(公共事業を中心とした)財政支出の拡大で恩恵を受けるのは建設業ぐらいです。(すそ野が広い)製造業や観光業に効果は乏しいでしょう。
 そもそも、「デフレから脱却する」「物価上昇率を2%にする」という目標が間違っています。物価上昇や、それによって増える名目GDPではなく、1人あたりの実質GDPを引き上げること、国民1人1人が豊かになることを目指すべきです。
 そのためには経済構造を変えなければなりません。日本経済は1990年代の中ごろがピークで、その後、どんどん貧しくなっています。1人当たりの実質GDPは米国との差が広がり、中国との差が縮まりつつあります。
 重要なのは新技術を導入するための規制緩和です。(中略)
 日本銀行はマイナス金利政策で、設備投資を活性化させようとしていますが、機能していません。円安が進んで利益が増え、もうけをため込む内部留保が膨らんでも、企業は設備投資をそれほど増やしていません。新しいビジネスモデルを見つけられず、お金を使いようがないのです。
 これ以上マイナス幅を大きくしたら、収益率が低いムダな設備投資を正当化することにしかならず、生産性を低下させます。企業が利益を活用できないというのなら、法人税率を下げるのではなく、逆に引き上げ、増えた分の税収を貧しい人に再分配することを考えるべきです。(後略)>

□野口悠紀雄「イギリスのEU離脱で不確実性が長期に続く ~「超」整理日記No.815~」(「週刊ダイヤモンド」2016年7月16日号)
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 【参考】
【野口悠起雄】日米で経済情勢や政策に著しい違い ~アベノミクスの本質(3)~
【野口悠起雄】期待への働きかけは効果なし ~アベノミクスの本質(2)~
【野口悠起雄】為替と株の投機ゲーム ~アベノミクスの本質(1)~
【野口悠起雄】誰が負担するのか? ~マイナス金利のコスト~
【野口悠起雄】物価下落は実質賃金を上昇させる ~経済成長~
【経済】外国人投資家は株式から国債へ ~世界金融市場混乱(2)~
【経済】新年からの世界金融市場混乱の原因 ~「リスクオフ」~
【経済】軽減税率が突きつける諸問題(2) ~現存特例措置の見直し~
【経済】軽減税率が突きつける諸問題(1) ~現存特例措置~
【経済】企業の利益増加で賃金が減る ~理由と対策~
【経済】政策にみる安倍政権の思慮不足 ~「新しい3本の矢」~
【年金機構】の情報漏洩から学ぶこと(2) ~3つの疑問~
【年金機構】の情報漏洩から学ぶこと(1) ~経緯~
【経済】日本経済をドルの立場から再評価すると
【野口悠紀雄】マイナス成長から抜け出す手段 ~実質消費増大の方法~
【経済】今後、狙いと反対のことが起きる ~異次元緩和(2)~
【経済】期待を煽り資産価格のみを変化させた ~異次元緩和~
【ピケティ】の格差理論は日本でも当てはまるか(2) ~法人企業統計~
【ピケティ】の格差理論は日本でも当てはまるか ~GDP統計~
【経済】小企業や家計の赤字=大企業の利益 ~トリクルダウン(2)~
【経済】円安で小企業や家計は赤字 ~トリクルダウンはなぜ生じない?~
【経済】円安で貧乏になりゆく日本 ~スタグフレーション~
【政治】先の見通しを持たない新成長戦略 ~鎖国的政策~
【野口悠紀雄】仮想通貨が財政ファイナンスを阻止 ~経済政策と金融政策~
【野口悠紀雄】ビットコインが持つ経済価値はどの程度か?

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【後藤謙次】参院選大勝も激戦12県で大敗 ~劣る「勝利の質」~

2016年07月20日 | 社会
 (1)2016年7月10日の参院選の結果、与党の議席は146議席(自民121、公明25)となり、3分の2(162議席)が視野に入ってきた。
 ところが、自民党選対の責任者は、反省の弁を口にする。その背景には、「勝負の分かれ目」といわれた32ある「1人区」の結果がある。全体では自民党の21勝11敗。しかし、「勝利の質」に目をこらすと、自民党が抱える根深い問題が浮かび上がる。
 1人区の中で特に激戦といわれた12県では、自民党候補が勝ったのは愛媛の1県だけに終わった。残る青森、岩手、宮城、山形、福島、新潟、山梨、長野、三重、大分、沖縄の各県では全て野党系候補が競り勝った。このうち、福島では岩城光英・法務大臣、沖縄では島尻安伊子・沖縄北方担当大臣の現職閣僚が落選している。
  (a)自民候補が東北で勝ったのは秋田だけ。伝統的に自民党の支持母体と位置づけられてきたJAの政治団体、農協政治連盟は福島を除いて自民候補の推薦を見送った。TPPに対する不満が底流にあるとされる。
  (b)福島では農業問題に加えて、東電福島第一原発事故による住民避難が続く。
 沖縄では、米軍普天間飛行場の移設問題など在日米軍基地をめぐる、政府と沖縄県の間の抜き難い相互不信が選挙の結果にそのまま反映された。

 (2)(1)の(a)も(b)も安倍内閣が直面する重要課題ばかりだ。そこで敗退した意味は決して小さくない。
 むろん、政策だけが敗因ではない。
 「参院議員の多くは汗をかかない。選挙運動も衆院頼みの人があまりに多すぎる。3年後の参院選を考えるとぞっとする」(選対幹部)
 こうした選挙結果は、衆議院の議員心理に多大な影響を与える。
 安倍は危惧する。
 「今の1、2年生の多くは後援会をつくろうともしない。逆風でも生き残れると思っているのがおかしい」
 この危惧が、このたびの激戦区で表れたわけだ。

 (3)安倍は同日選を見送ったことで、解散権という「首相の大権」を手放すことなく温存した。
 「解散については『かの字』も考えていない」
と安倍は言うが、最高権力者が解散権の行使について考えていないはずがない。むしろ毎日、解散を考えているとみた方がいい。それが解散権を握る権力者の本質といっていい。
 ただし、その解散権はいつまでも安倍の手中にあるわけではない。安倍には、2018年9月の自民党総裁としての任期切れの壁が立ちはだかる。終着点が近づけば近づくほど、必然的に安倍の自由度が小さくなる。

 (4)参院選を終えて、早くも政局最大の焦点は残された2年余のどのタイミングで、安倍が解散権を行使するかに移った。
 むろん、安倍が解散権をせずに、任期満了とともに首相の座を降りる選択肢もあるが、安倍の言動からはその片鱗も見えてこない。むしろ、任期延長の可能性を探りながら、解散時期を決めると見るべきだ。
 安倍は8月3日に自民党役員人事と内閣改造を断行する意向を固めている。この人事で、安倍が谷垣禎一に代えて新しい自民党幹事長起用に踏み切れば、間違いなく「解散シフト」だ。その場合、菅義偉が最有力候補として浮上してくる。解散先送りなら谷垣続投。

□後藤謙次「参院選大勝も激戦12県で大敗 「勝利の質」に表れた首相の危惧 ~永田町ライブ!No.300特別版~」(「週刊ダイヤモンド」2016年7月23日号)
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 【参考】
【後藤謙次】都知事選で与党分裂の理由 ~自民党内の反安倍勢力~
【後藤謙次】日本が直面する「ABCリスク」 ~英EU離脱で顕在化~
【後藤謙次】甘利大臣辞任をめぐる二つのなぜ ~後任人事と直後のマイナス金利~
【政治】不可解な時期に石破派が発足 ~その行方は内閣改造で~
【政治】震災後2度目の統一地方選 ~異例なほど注力する自民党本部~
【政治】安倍が描いた解散戦略の全内幕 ~周到な準備~
【政治】安部政権の危機管理能力の低さ ~土砂災害・火山噴火~
【政治】「地方創生」が実現する条件 ~石破-河村ラインの役割分担~
【政治】露骨な安倍政権へのすり寄り ~経団連が献金再開~
【政治】石原発言から透ける政権の慢心 ~制止役不在の危うさ~
【原発】政権の最優先課題 ~汚染水と廃炉作業~
【政治】「新党」結成目前の小沢一郎の前にたちはだかる難問
【政治】小沢一郎、妻からの「離縁状」の波紋 ~古い自民党の復活~
【政治】国会議員はヤジの質も落ちた

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【櫻井よしこ】南シナ海問題で完敗でも拒否する中国 常軌を逸した習近平体制の暴走

2016年07月19日 | 社会
 (1)国際法を守る陣営と、守らない陣営との対立が、際立つ形で浮上した。
 2016年7月12日、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が、南シナ海における中国の主張や行動は国連海洋法条約に違反するとしてフィリピン政府が訴えた件に関して、中国が南シナ海に独自に設定した境界線「九段線」には法的根拠がないとの判断を示した。裁定はこれで確定し、上訴はない。
 「南シナ海」は2000年前の古代から中国の海」としてきた主張が全面的に否定された。中国の完敗だ。

 (2)裁定の骨子、南シナ海のほとんどを中国領とする根拠としての九段線の否定のほかは、次のとおり。
  (a)中国がスプラトリー諸島のミスチーフ礁で造成した人工島はフィリピンの排他的経済水域の200カイリ内にあり、フィリピンの主権を侵害する。
  (b)スプラトリー諸島には国連海洋法の定義で定められる島はない。したがって、そこに人工島を造成しても、人工島を基点にして排他的経済水域、領海などは形成されない。
  (c)中国は、フィリピン漁民の活動を著しく妨害した。
  (d)中国は、生態系に取り返しのつかない害を与えた。

 (3)習近平政権には、さぞ激震が走ったことであろう。だが、中国側はこの裁判自体を認めず、裁定も受け入れないと早くから宣言してきた。米国が空母10隻を南シナ海に展開しても中国は恐れないなどと強弁してきた。
 実際、仲介裁判所の裁定公表の日程が決まると、中国はその直前まで、1週間にわたって最大規模の軍事演習を行った。
 裁定の公表当日も、習首席を筆頭に強い拒否を意思表示した。
 習主席は、北京で開かれたEUの会議でトゥスクEU大統領に向かって、「中国の南シナ海における領土主権と海洋権益は、いかなる状況下でも裁定の影響を受けない。裁定に基づくいかなる主張や行動も受け入れない」と宣言した。王毅外相は、「裁定に至る手続きは終始、法律の衣をかぶった政治的茶番だ」と批判した。

 (4)国際法を真っ向から否定する姿を見せつけも、アジアインフラ投資銀行に参加し、出資し、共に仕事をしようとする欧州諸国の理解を得られると中国首脳はマジメに考えているのだろうか?
 法を守らない中国に、透明な金融政策を期待することなぞできない、と考えようともしないのか?
 中国側の反応は、常軌を逸している。習体制は異常だ。

 (5)言葉による拒否だけでなく、中国は新たな軍事行動もとった。南海艦隊は海南省三亜市の海軍基地に最新鋭のミサイル駆逐艦「銀川」を配備し、命名式をやってみせた。スプラトリー諸島のミスチーフ礁とスービ礁には建設済みの飛行場があるが、そこで民間機による試験飛行を行い、成功したと発表した。中国は法の支配を離れて力の支配を選択した・・・・ということを世界に示したのだ。
 法に基づく国際社会の秩序を尊ぶ国々にとっての課題は、今回の裁定をどう具現化していくか、だ。まず南シナ海の支配を着々として強める中国に対して、21世紀のアジア秩序は国際法、平和的話し合い、各民族の尊重という普遍的価値と原則に基づくべきだと主張し続けることが大事だ。

 (6)次に、中国の暴走を抑止する力を形成することだ。
 各国が共に助け合う仕組みを構築し、米国を中心とする軍事的枠組みの強化に、日本が貢献しなければならない場面だ。
 南シナ海で起きることは東シナ海でも必ず起きる。アジアの秩序と安定のために、力を尽くすことが日本を守ることになる。
 そのために3分の2の議員発議で憲法改正を実現せよ、以下略。

 【注】
【櫻井よしこ】米でも絶賛の中国の要人が豹変 ~永遠なのは国益~

□櫻井よしこ「南シナ海問題で完敗でも拒否する中国 常軌を逸した習近平体制の暴走 ~オピニオン縦横無尽~」(「週刊ダイヤモンド」2016年7月23日号)
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 【参考】
【櫻井よしこ】米でも絶賛の中国の要人が豹変 ~永遠なのは国益~
【櫻井よしこ】西側は自国第一主義を深め、中国は民主主義の限界に自信を深める ~英国のEU離脱~
【読書余滴】櫻井よしこ『異形の大国 中国』(2) ~商売上手な中国、政治主導の経済~
【読書余滴】櫻井よしこ『異形の大国 中国』(1) ~踏んだり蹴ったり~

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【櫻井よしこ】米国でも絶賛の中国の要人が豹変 ~永遠なのは国益~

2016年07月19日 | 社会
 (1)戴秉国(たい・へいこく)は中国の要人。胡錦濤前政権の外交トップを務めた実力者。
 米国をはじめとする世界が戴をどれほど重視していたかはヒラリー・クリントンの回顧録“Hard choices(困難な選択)”、2014年刊からも見えてくる。
 同書に日本関連の記述は殆どない。勧告に関する記述の方が多い。他方、中国に関して2章に渡って詳細に記されている。
 2009年早春、クリントン国務大臣(当時)は初の外遊先に日本を選んだ。22時間滞在したが、日米対話は上滑りするだけで成果を残さなかった。ところが、日本の後に訪問した中国では丸4日を過ごした。そのとき出会ったのが戴秉国だ。
 戴氏はクリントン氏の気持ちを掴んだ。
 「会った瞬間から会話が弾んだ。われわれは(その後)何年もわたって会話を重ねた。彼は私に度々講義(lecture)をするのだった。いかに米国のアジア政策が間違っているか、彼は皮肉をちりばめながら、しかし、穏やかな笑顔を忘れずに語る」
 ある日の会話では、戴氏が胸から一葉の写真を取りだして見せた。小さな可愛い女の子、恐らく戴氏の孫の写真だ。戴氏は語った。
 「われわれの仕事は全てこの子たちのためですよ
 クリントン氏は、「彼の心情はそのまま私の心情でもあった」と述懐する。クリントン氏の未来世代にかける「情熱を共有」したことが、二人の関係が長く太く杖付いたことの基本だとクリントン氏は書いている。
 健康維持のための運動と長時間の散歩を戴氏に勧められてまんざらでもない彼女の姿勢は、彼に対する親近感の表れでもあろう。
 ヘンリー・キッシンジャー元国務長官も戴氏についてクリントン氏に申し送りしていた。「中国で会った人物の中で恐らく最も素晴らしく、かつ開明的人物」だと。そして、その識見の深さと、中国政界における戴氏の重要性を強調した。

 (2)米要人に絶賛された戴氏はしかし、豹変した。
 戴氏は、7月5日、米ワシントンで講演し、南シナ海領有権問題に関してオランダ・ハーグの常設仲介裁判所が7月12日に下す裁定は「ただの紙くずだ」と語った。
 中国外務省が公開した資料では、戴氏は次のようにも語っている。
「仲裁裁判所の決定は何も重大なことではない」
「いかなる国家も中国に対し、裁定に従うよう強制してはならない」
「フィリピンが挑発的な行動を取れば、中国は決して座視しない」
 激しい対米発言もしている。
「たとえ10隻の空母戦闘群全てを南シナ海に派遣しても、中国人を脅すことはできない」
 国家間の関係の前には、個人的友情や好意など、木っ端微塵に吹き飛ぶのだ。永遠なのは国益だけだ。

□櫻井よしこ「米でも絶賛の中国の要人が豹変 国家間で求められる国益の要点 ~オピニオン縦横無尽~」(「週刊ダイヤモンド」2016年7月16日号)
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 【参考】
【櫻井よしこ】西側は自国第一主義を深め、中国は民主主義の限界に自信を深める ~英国のEU離脱~
【読書余滴】櫻井よしこ『異形の大国 中国』(2) ~商売上手な中国、政治主導の経済~
【読書余滴】櫻井よしこ『異形の大国 中国』(1) ~踏んだり蹴ったり~

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【櫻井よしこ】西側は自国第一主義を深め、中国は民主主義の限界に自信を深める ~英国のEU離脱~

2016年07月19日 | 社会
 (1)日本を含む西側諸国は、自由と民主主義こそ大事で、中国にはそれが欠けていると、中国を批判してきた。
 だが、6月23日の英国の投票結果を見て中国は、西側の民主主義とはこんなものかと自信を深めているだろう。

 (2)ロシアと中国は、6月23日と25日、ウズベキスタンと中国の北京で立て続けに異例の首脳会談を行った。西側の混乱を分析し、それをどのように自分たちの勢力拡大につなげていくかを話し合った。両国が宇宙における軍拡競争をも念頭に共同戦線をつくる構えであることが発表資料から読み取れる。

 (3)EU離脱は、連合王国英国の輝きをおよそ全て消し去るほどの負の影響をもたらすだろう。国土の3分の1を占めるスコットランドは、スコットランド領内にある北海油田、英国の原子力潜水艦の母港といわれるクライド海軍基地を持って、英国から独立するだろう。
 米国系銀行を筆頭に、各国金融機関は欧州本部をパリ(フランス)、またはダブリン(アイルランド)に移し、英国経済の柱であり続けてきた金融センター、ロンドンのシティーも力を落としていきかねない。
 EUの側からは英国の離脱決定直後から早期の手続き会誌を要請する声があがった。離脱後の政策を描ききれていないから時間をかけて手続きを進めたい英国とは対照的に。

 (4)英国が連合王国の座を自ら放棄し、小国へと縮小していくプロセスからEUは学べるだろうか。疑問だ。
 どの国も全体像を見渡すことなく、「自国第一」の排他的思考に陥りつつある。EUには自国第一主義の遠心力が働いている。
   ①フランスの極右政党「国民戦線」のマリーヌ・ルペン党首。
   ②ドイツの「ドイツ人のための選択肢」のフラウケ・ペトリー党首。
 強硬派が力をつけている。オランダ、ポーランド、チェコ、スロバキア、オーストリアでも同様の傾向が色濃い。  

 (5)バラバラになりかねないEU、弱くなるEUと米国の関係、その間隙を中露が突いてくる。
 <例>東シナ海における中国人民解放軍の空軍機の自衛隊機に対する威嚇行動【産経、6月29、30日】
 中国人民解放軍の戦闘機が「攻撃動作を仕掛け、空自機がミサイル攻撃を回避しつつ戦域から離脱した」と、織田邦男・元航空自衛隊空将が明らかにした。「産経」はさらに、中国軍戦闘機が6月17日を含めて複数回、空自機に攻撃動作を仕掛けたと報じた。
 これまで空自と中国空軍の間にはこれ以上は互いに接近しないという暗黙の了解があった。しかし、いま中国空軍はその一線を越えたのみならず、空自機に正面から向き合う体勢をとった。織田氏はこれを事実上の戦闘行為と指摘した。

 (6)中国の挑戦は、空だけでなく海でも起こっている。
 中国は、初めて沖縄県尖閣諸島および鹿児島県口永良部島の海に軍艦を入れてきた。
 東シナ海での対日策の強硬化に見られるように、中国もロシアも西側の混乱に乗じて攻勢に出てくるだろう。

□櫻井よしこ「英国のEU離脱で深まる自国第一主義 西側民主主義の限界に自信深める中国 ~オピニオン縦横無尽~」(「週刊ダイヤモンド」2016年7月9日号)
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 【参考】
【読書余滴】櫻井よしこ『異形の大国 中国』(2) ~商売上手な中国、政治主導の経済~
【読書余滴】櫻井よしこ『異形の大国 中国』(1) ~踏んだり蹴ったり~

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【佐藤優】人びとの認識を操作する法 ~ゴルバチョフに会いに行く~

2016年07月18日 | ●佐藤優
 

 (1)ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』や『罪と罰』の新訳で日本にドストエフスキーブームを再来させた亀山郁夫(名古屋外国語大学学長/元東京外国語大学学長/ロシア文学者)氏が2014年12月にゴルバチョフ・元ソ連大統領と会談した。
 この会談の内容が微妙にずれているところが面白い。

 (2)亀山氏は、ソ連崩壊について、文学的、思想的問いかけを誠実に行っているのに、ゴルバチョフから返ってくるのは、政治的返答だけだ。
 ウクライナ問題に亀山氏が、
 「そもそもロシア・ウクライナ紛争の問題の根はどこにあるとお考えでしょうか」
と、ゴルバチョフの母親がウクライナ人、父親がロシア人であることに踏み込んで尋ねているのに、ゴルバチョフの以下の回答は紋切り型だ。
 <クリミアはかつてロシアが獲得した領土です。そのために多くの血が流されました。ロシアは何世紀にもわたって、黒海への出口を求め、クリミアを得るために戦いました。(中略)
 ウクライナ人がソ連邦から離脱した時、ロシア人はクリミアの返還をエリツィン[当時の大統領]に提言すべきでした。(中略)現在のクリミア状況に関して言えば、クリミアの住民は独自に住民投票を実施することを求め、2014年3月に実施しました。そして80%以上の住民がロシア編入に賛成しました。賛成したのはロシア人たちです。彼らはウクライナから独立し、ロシアに戻ることを望んでいました。結果を見て、ロシアはクリミア編入を了解しました>

 (3)こんな釈明に納得する国際政治の専門家は一人もいない。
 クリミア住民の大多数がロシアへの編入を望んでいたのが事実としても、あの住民投票は、黒海に駐留するロシア軍の策動がなければできなかった。
 ゴルバチョフがここで述べたことは、プーチン政権のプロパガンダそのものだ。積極的な嘘はつかないが、重要事項はあえて考察の対象から外して語ることにより相手の認識を操作する。
 ソ連共産党内の権力闘争で身につけた技法は、既にゴルバチョフの人格の一部になっているのだろう。

□亀山郁夫『ゴルバチョフに会いに行く』(集英社、2016)
□佐藤優「ゴルバチョフ流「認識操作術」 ~読まずにいられない Book 160~」(「AERA」2016年7月25日号)
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 【参考】
【佐藤優】ハイブリッド外交官の仕事術、トランプ現象は大衆の反逆、戦争を選んだ日本人
【佐藤優】ペリー来航で草の根レベルの交流、沖縄差別の横行、美味なソースの秘密
【佐藤優】原油暴落の謎解き、沖縄を代表する詩人、安倍晋三のリアリズム
【佐藤優】18歳からの格差論、大川周明の洞察、米国の影響力低下
【佐藤優】天皇制を作った後醍醐、天皇制と無縁な沖縄 ~網野善彦『異形の王権』~
【佐藤優】新しい帝国主義時代、地図の「四色問題」、ベストセラー候補の研究書
【佐藤優】ねこはすごい、アゼルバイジャン、クンデラの官僚を描く小説
【佐藤優】外交官の論理力、安倍政権と共産党、研究不正が起きるシステム
【佐藤優】遅読家のための読書術、電気の構造、本屋大賞
【佐藤優】外山滋比古/思考の整理学
【佐藤優】何が個性で、何が障害か
【佐藤優】大宅壮一ノンフィクション賞選評 ~『原爆供養塔』ほか~
【佐藤優】英才教育という神話
【佐藤優】資本主義の内在的論理
【佐藤優】米国の戦略策定、『資本論』をめぐる知的格闘、格差・貧困問題の起源
【佐藤優】偉くない「私」が一番自由、備中高梁の新島襄、コーヒーの科学
【佐藤優】フードバンク活動、内外情勢分析、正真正銘の「地方創生」
佐藤優】日本の政治エリートと「天佑」、宇宙の生命体、10代が読むべき本
【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論
【佐藤優】第三次世界大戦の可能性、現代東欧文学、世界連鎖暴落
【佐藤優】司馬遼太郎の語られざる本音、深層対話、米政府による暗殺
【佐藤優】著名神学者のもう一つの顔 ~パウル・ティリヒ~
【佐藤優】総理が靖国参拝する理由、NPO活動の哲学やノウハウ、テロ対策の必読書
【佐藤優】今後、起こりうる財政破綻 ~対応策を学ぶ~
【佐藤優】社会の価値観、退行する社会
【佐藤優】夫婦の微妙な関係、安倍政権の内在的論理、警察捜査の正体
【佐藤優】情緒ではなく合理と実証で ~社会の再構築~
【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
【佐藤優】中国株式市場の怪しさ、イノベーションの障害、ホラー映画の心理学
【佐藤優】普天間基地移設問題の本質、外務省犯罪黒書、老後に快走!
【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~

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【水木しげる】+武良布枝 好きなことだけやる ~長寿の秘訣~

2016年07月18日 | 生活
 (1)対談当時、水木しげるは90歳(満93歳で没)。長寿の秘訣なんて何もないという。
 細君(武良布枝)は市役所でやっている定期健診に「無理やり捕まえて連れて行く」が、どこも悪くないと。
 60歳代くらいまでは、一日中、何かの締め切りに追われる生活だった。70歳代になってちょっと落ち着いてきたが、ホッとしているヒマなんかない。90歳代になっても、こういう対談の企画を持ち込まれて忙しい。
 1日のスケジュールは、365日、まったく同じ。起きるのはだいだい10時ごろ。
 <眠るだけ眠る。健康の秘訣は眠り狂うっちゅうことかな>
 夫人、<たまに朝6時ごろに起きてくることもありますが、起こさないと半日寝てます。それで朝食兼昼食を食べてから、ゆっくり新聞に目を通して、お昼前後に自宅を出て、ここ(事務所)まで歩いて行きます。だいたい1キロぐらいを、ゆっくり1時間くらいかけて。途中で腰をおろすのによさそうなところを見つけて休んだりしているようです。行き帰りには、(次女の)悦子が付き添っています>

 (2)この年齢でも肉が好きだそうだ。すき焼きとかトンカツもぺろりと食べる。胃が丈夫で、軍隊にいた2年間、お腹を壊すということがなかった。腹がすいたらカタツムリを焼いて食べたりした。
 アルコールは飲めない。付き合いでビール1杯飲んだだけで真っ赤になってしまう。
 漫画仲間は徹夜自慢が多かったが、雑誌の連載を減らしても睡眠時間を確保した。
 夫人、<今も寝床に入ったかと思うと、すぐホチャッと寝てしまいます(笑)。年をとると夜中に目が覚めるとか眠りが浅くなるとか聞きますけれど、驚くほどよく寝ますね> 
 夫人、長寿の秘訣は<やっぱり睡眠と、あとは、何があっても物事に動じない“自然体”なところでしょうか。漫画家には結構神経質な方も多いようですが、こっちはドシっと動かない。眉間にシワ寄せている感じじゃなくて、雰囲気は案外明るいんです>
 水木しげる、長寿の秘訣は<やっぱり、好きなことだけやってきたから。ずっと漫画描いてメシを食っていくということが、このごろは不思議に感じるね。本が売れた売れないで一喜一憂していたのは20年前までで、その心配がなくなってからは、ずっと幸福な状態が続いている>

 (3)水木しげるが好きなことは、寝ることと食べること。絵を描くことは仕事。
 漫画を描くためには、絵だけじゃなくてストーリーをつくらなきゃいけないというので、海外の小説から日本の古典まで読んで勉強した。
 子どもの時から哲学的傾向があって、カントもヘーゲルも読んだ。聖書も。最後にはゲーテを尊敬するようになった。
 <ゲーテは言っていることが幅広いし、なかなか面白い>
 次女悦子、<「お父ちゃんはゲーテの言うとおりに生活しているんだ」と言っていたよね>
 <ニーチェも読んだが、あれはちょっと刺激が強すぎて、自分が立ち上がって何かやらにゃならんという気持になる。その点、ゲーテはやんわり「これこれこうだ」とくるんだ>
 <ゲーテの弟子のエッカーマンが書いた『ゲーテとの対話』の三冊本を暗記するまで読んだ>【注】

 【注】「【本】水木しげるが選ぶゲーテの賢言 ~『ゲゲゲのゲーテ』~

□『文藝春秋クリニック アンチエイジング決定版!元気で長生きはこんな人』(文春ムック、2016)の水木しげる×武良布枝「対談:ゲゲゲの夫婦が語る「睡眠と図太さがヒケツ」(初出は『文藝春秋』2012年8月号)
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 【参考】
【本】水木しげるが選ぶゲーテの賢言 ~『ゲゲゲのゲーテ』~
【震災】水木しげるとの対話:戦争と震災 ~生き残ることの意味~
【旅】一口八態妖怪天井画 ~大山・「圓流院」の水木しげる~
書評:『妖怪天国』
書評:『妖怪と歩く -ドキュメント・水木しげる-』

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【佐藤優】書誌

2016年07月17日 | ●佐藤優
 ※2016年7月17日現在。なお、「●」は所持するもの。

 《追加分》
●『世界インテリジェンス事件史』(光文社文庫、2016)
●『右肩下がりの君たちへ』(ぴあ、2016)/共著:津田大介、ほか
●『使える地政学 日本の大問題を読み解く』(朝日新聞出版、2016)
●『貧乏物語 現代語訳』(講談社現代新書、2016)
●『世界史の大転換 常識が通じない時代の読み方』(PHP新書、2016)/共著:宮家邦彦
●『21世紀の戦争論 昭和史から考える』(文春新書、2016)/共著:半藤一利
●『自分を動かす名言』(青春出版社、2016)
●『組織の掟』(新潮新書、2016)
●『佐藤優選  ― 自分を動かす名言』(青春出版社、2016)
●『復権するマルクス 戦争と恐慌の時代に』(角川新書、2016)/共著:的場昭弘
●『動因を探せ 中東発世界危機と日本の分断』(徳間書店、2016)
●『佐藤優さん、神は本当に存在するのですか?』(文藝春秋、2016)/共著:竹内久美子
●『新・地政学 ~「第三次世界大戦」を読み解く』(中公新書ラクレ、2016)/共著:山内昌之
『竹中先生、これからの「世界経済」について本音を話していいですか』(ワニブックス、2016)/共著:竹中平蔵
『右肩下がりの君たちへ』(ぴあ、2016)/共著:津田大介ほか
『いっきに学び直す日本史 近代・現代 実用編』(東洋経済新報社、2016)/共著:山岸良二
『いっきに学び直す日本史 古代・中世・近世 教養編』(東洋経済新報社、2016)/共著:山岸良二
『いま、公明党が考えていること』(潮新書、2016)/共著:山口那津男

(1)著書
●『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社、2005 →増補版:新潮文庫、2007《解説:川上弘美》)
  ※第59回毎日出版文化賞特別賞
●『自壊する帝国』(新潮社、2006 →新潮文庫、2008《解説:恩田陸》)
  ※第5回新潮ドキュメント賞および第38回大宅壮一ノンフィクション賞
●『日米開戦の真実 大川周明著「米英東亜侵略史」を読み解く』(小学館、2006 →小学館文庫、2011)
●『獄中記』(岩波書店、2006年 →改訂版:岩波現代文庫、2009)
●『国家と神とマルクス 「自由主義的保守主義者」かく語りき』(太陽企画出版、2007 →角川文庫 2008)
●『地球を斬る』(角川学芸出版、2007 →角川文庫 2009)
●『国家の謀略』(小学館、2007)
●『野蛮人のテーブルマナー ビジネスを勝ち抜く情報戦術』(講談社、2007 →講談社+α文庫、2009)
●『野蛮人のテーブルマナー 「諜報的生活」の技術』(講談社、2009)
●『私のマルクス』(文藝春秋、2007 →文春文庫 2010)
●『インテリジェンス人間論』(新潮社、2007 →新潮文庫 2010)
●『国家論 日本社会をどう強化するか』(NHKブックス、2007)
●『世界認識のための情報術』(週刊金曜日、2008)
●『交渉術』(文藝春秋、2009 →文春文庫、2011)
●『テロリズムの罠 右巻 忍び寄るファシズムの魅力』(角川ワンテーマ21、2009)
●『テロリズムの罠 左巻 新自由主義社会の行方』(角川ワンテーマ21、2009)
●『外務省ハレンチ物語』(徳間書店、2009 →徳間文庫、2011)
●『神学部とは何か 非キリスト教徒にとっての神学入門』(新教出版社、2009)
●『「諜報的(インテリジェンス)生活」の技術 野蛮人のテーブルマナー』(講談社、2009)
●『甦る怪物 私のマルクス ロシア篇』(文藝春秋、2009)
●『功利主義者の読書術』(新潮社、2009 →新潮文庫、2012)
●『沖縄・久米島から日本国家を読み解く』(小学館、2009)
●『はじめての宗教論 右巻 見えない世界の逆襲』(NHK出版新書、2009)
●『はじめての宗教論 左巻 ナショナリズムと神学』(NHK出版新書、2011)
●『日本国家の神髄 禁書「国体の本義」を読み解く』(扶桑社、2009)
●『この国を動かす者へ』(徳間書店、2010)
『3・11クライシス!』(マガジンハウス、2011)
『予兆とインテリジェンス』(産経新聞出版、2011)
●『人たらしの流儀』(PHP研究所、2011)
●『佐藤優のウチナー評論』(琉球新報社、2011)
●『この国を壊す者へ』(徳間書店、2011)
『世界インテリジェンス事件史 祖国日本よ、新・帝国主義時代を生き残れ!』(双葉社、2011)
●『インテリジェンス人生相談 復興編』(扶桑社、2011)
『共産主義を読みとく いまこそ廣松渉を読み直す『エンゲルス論』ノート 廣松渉エンゲルス論との対座』(世界書院 2011)
●『外務省に告ぐ』(新潮社 2011 →新潮文庫、2014)
●『野蛮人の図書室』(講談社、2011)
●『国家の「罪と罰」』(小学館 2011)
●『新・帝国主義の時代 左巻 情勢分析論篇』(中央公論者、2013)
●『新・帝国主義の時代 右巻 日本の進路篇』(中央公論者、2013)
●『神学の履歴書 ~初学者のための神学書ガイド~』(新教出版社、2014)
●『紳士協定 私のイギリス物語』(新潮社、2012/新潮文庫、2014)
●『帝国の時代をどう生きるか 知識を教養へ、教養を叡智へ』(角川oneテーマ21、2012)
●『読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門』(東洋経済新報社、2012)
●『人間の叡智』(文春新書、2012)
●『同志社大学神学部』(光文社、2012)
●『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス、2013)
●『知の武装: 救国のインテリジェンス』(新潮新書、2013)
●『国境のインテリジェンス』(徳間書店、2013 →徳間文庫、2015)
●『地球時代の哲学 池田・トインビー対談を読み解く』(潮出版社、2014)
●『元外務省主任分析官・佐田勇の告白: 小説・北方領土交渉』(徳間書店、2014)
●『先生と私』(幻冬舎、2014/後に幻冬舎文庫、2016)
●『佐藤優の沖縄評論』(光文社知恵の森文庫、2014)
●『「知的野蛮人」になるための本棚 (PHP文庫、2014)
『野蛮人のテーブルマナー 完全版』(講談社、2014)
●『宗教改革の物語 近代、民族、国家の起源』(KADOKAWA、2014)
●『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)
●『修羅場の極意』(中公新書ラクレ、2014)
●『逆境を乗り越える技術』(ワニブックス、2014)
●『「知」の読書術 』(集英社(知のトレッキング叢書)、2014)
●『私の「情報分析術」超入門 仕事に効く世界の捉え方』(徳間書店、2014)
●『創価学会と平和主義』(朝日新書、2014)
●『私が最も尊敬する外交官 ナチス・ドイツの崩壊を目撃した吉野文六』(講談社、2014)
●『佐藤優の10分で読む未来 キーワードで即理解 新帝国主義編』(講談社、2014)
●『日本国家の神髄 ~禁書『国体の本義』を読み解く~』 (扶桑社新書、2014)
●『「ズルさ」のすすめ』(青春新書インテリジェンス、2014)
●『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』(「文藝春秋」2015年2月臨時増刊号)
●『世界史の極意』(NHK出版新書、2015)
●『神学の思考 キリスト教とは何か』(平凡社、2015)
●『危機を克服する教養』(角川書店、2015)
●『人生の極意』(扶桑社新書、2015)
●『プラハの憂鬱』(新潮社、2015)
●『国家の攻防/興亡』(角川新書、2015)
●『希望の資本論』(朝日新聞出版、2015)/共著:池上彰
●『危機を克服する教養 ~知の実践講義「歴史とは何か」~』(KADOKAWA、2015)
●『超したたか勉強術』(朝日新書、2015)
●『知性とは何か』(祥伝社新書、2015)
『国境のインテリジェンス』(徳間文庫カレッジ、2015)
●『ケンカの流儀 -修羅場の達人に学べ』(中公新書ラクレ、2015)
●『いま生きる階級論』(新潮社、2015)
●『イスラエルとユダヤ人に関するノート』(ミルトス、2015)
●『知の教室 ~教養は最強の武器である~』(文春文庫、2015)・・・・『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』再構成したもの。
●『お金に強くなる生き方』(青春新書インテリジェンス、201)
●『同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか』(光文社新書、2015)
●『官僚階級論 ~霞が関(リヴァイアサン)といかに闘うか』(モナド新書、2015)
●『この国が戦争に導かれる時 超訳:小説・日米戦争』(徳間文庫、2015) 
『「池田大作 大学講演」を読み解く 世界宗教の条件』(潮出版社、2015)
●『佐藤優の「地政学リスク講座2016」 日本でテロが起きる日』(時事通信出版局、2015)
●『外務省犯罪黒書』(講談社エディトリアル、2015)
●『資本主義の極意 明治維新から世界恐慌へ』(NHK出版新書、2016)
●『危機を覆す情報分析 ~知の実戦講義「インテリジェンスとは何か」~』(KADOKAWA、2016)
●『組織の掟』(新潮新書、2016)
●『動因を探せ 中東発世界危機と日本の分断』(徳間書店、2016)
●『自分を動かす名言』(青春出版社、2016)
●『使える地政学 日本の大問題を読み解く』(朝日新聞出版、2016)
●『貧乏物語 現代語訳』(講談社現代新書、2016)
●『世界インテリジェンス事件史』(光文社文庫、2016)

(2)共著(対談)
●『国家の自縛』(産経新聞出版、2005 →扶桑社文庫、2010)/聞き手:斎藤勉(産経新聞元モスクワ支局長)
●『国家の崩壊』(にんげん出版、2006)/聞き手:宮崎学
●『北方領土「特命交渉」』(講談社、2006 →講談社+α文庫、2007)/共著:鈴木宗男
●『インテリジェンス―武器なき戦争』(幻冬舎新書、2006)/共著:手嶋龍一
●『ナショナリズムという迷宮 -ラスプーチンかく語りき』(朝日新聞社、2006 →朝日文庫、2010)/対談:魚住昭
『アメリカの日本改造計画』(イースト・プレス、2006)/共著:関岡英之・小林よしのり・西部邁ら
『反省 私たちはなぜ失敗したのか?』(アスコム、2007)/共著:鈴木宗男
『国家情報戦略』(講談社、2007)/共著:高永哲
『中国の黒いワナ』(宝島社、2007)/共著:青木直人・西尾幹二
『佐藤優 国家を斬る』(同時代社、2007)/コーディネーター:宮崎学、連帯運動・編
●『国家と人生 寛容と多元主義が世界を変える』(太陽企画出版、2007 →角川文庫、2008)/対談:竹村健一
●『正義の正体』(集英社インターナショナル、2008)/共著:田中森一
●『大和ごころ入門』(扶桑社、2008)/共著:村上正邦
●『ロシア闇と魂の国家』( 文春新書、2008)/対談:亀山郁夫
『情報力―情報戦を勝ち抜く“知の技法”』(イースト・プレス、2008)/共著:鈴木琢磨
『政治を語る言葉』(七つ森書館、2008)/山口二郎・編
●『暴走する国家 恐慌化する世界―迫り来る新統制経済体制(ネオ・コーポラティズム)の罠』(日本文芸社、2008)/共著:副島隆彦、
『第三次世界大戦 左巻 新・帝国主義でこうなる!』(アスコム、2008)/共著:田原総一朗
『第三次世界大戦 右巻 新・世界恐慌でこうなる!』(アスコム、2008)/共著:田原総一朗
●『テロルとクーデターの予感-ラスプーチンかく語りき2』(朝日新聞出版、2009)/対談:魚住昭
●『インテリジェンス人生相談 社会編』、『同 個人編』(扶桑社、2009)
●『知の超人対談 岡本行夫・佐藤優の「世界を斬る」』(産経新聞出版、2009)/ 共著:岡本行夫
●『ぼくらの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊』(文春新書、2009)/共著:立花隆
『徹底討論沖縄の未来』(芙蓉書房出版、2010)/共著:大田昌秀、沖縄大学地域研究所・編
●『猛毒国家に囲まれた日本 ロシア・中国・北朝鮮』(海竜社、2010)/共著:宮崎正弘
『小沢革命政権で日本を救え 国家の主人は官僚ではない』(日本文芸社、2010)/共著:副島隆彦
『週刊とりあたまニュース 最強コンビ結成!編』(新潮社、2011)/共著:西原理恵子
『国家の危機』(KKベストセラーズ、2011)/共著:的場昭弘
●『聖書を語る 宗教は震災後の日本を救えるか』(文藝春秋、2011 →文春文庫、2013)/共著:中村うさぎ
『沈黙より軽い言葉を発するなかれ』(創出版、2012)/対談:柳美里
●『はじめてのマルクス』(週刊金曜日、2013)/共著:鎌倉孝夫
●『世界と闘う「読書術」 思想を鍛える1000冊』 (集英社新書、2013)/共著:佐高信
●『知の武装 救国のインテリジェンス』(新潮新書、2013)/共著:手嶋龍一
『新・帝国主義時代を生き抜くインテリジェンス勉強法』(講談社、2014)/共著:荒井和夫
●『聖書を読む』(文藝春秋、2013)/共著:中村うさぎ
●『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方』(文春新書、2014)/共著:池上彰
●『喧嘩の勝ち方 喧嘩に負けないための5つのルール 』(光文社、2014)/共著:佐高信
●『賢者の戦略』(新潮新書、2014)/共著:手嶋龍一
●『死を笑う うさぎとまさると生と死と』(毎日新聞社、2015)/共著:中村うさぎ
●『希望の資本論』(朝日新聞出版、2015)/共著:池上彰
●『反知性主義とファシズム』(金曜日、2015)/共著:斎藤環
●『崩れゆく世界 生き延びる知恵』(キャップス、2015)/共著:副島隆彦
●『「殺しあう」世界の読み方 (田原総一朗責任編集 オフレコ!BOOKS)』(アスコム、2015)/共著:田原総一朗・宮崎学
●『とりあたま大学: 世界一ブラックな授業!編』(新潮社、2015)/共著:西原理恵子
●『イスラエルとユダヤ人に関するノート』(ミルトス、2015)
●『国家のエゴ』(朝日新書、2015)/共著:姜尚中
●『異端の人間学』(幻冬舎新書、2015)/共著:五木寛之
●『インテリジェンスの最強テキスト』(東京堂出版、2015)/共著:手嶋龍一
●ニッポン放送「高嶋ひでたけのあさラジ!」編『90分でわかる日本の危機』(扶桑社新書、2015)
●『政治って何だ!? - いまこそ、マックス・ウェーバー『職業としての政治』に学ぶ-』(ワニブックスPLUS新書、2015)/共著:石川知裕
●『大世界史 現代を生きぬく最強の教科書』(文春新書、2015)/共著:池上彰
●『あぶない一神教』(小学館新書、2015)/共著:橋爪大三郎
●『インテリジェンスの最強テキスト』(東京堂出版、2015)/共著:手嶋龍一
●『第3次世界大戦の罠 -新たな国際秩序と地政学を読み解く』(徳間書店、2015)/共著:山内昌之
●『平和なき時代の世界地図 戦争と革命と暴力 単行本』(祥伝社、2015)/共著:宮崎学
●田原総一朗・責任編集『「殺し合う」世界の読み方』(文化放送、2015)/共著:宮崎学
●『マルクスと日本人 社会運動からみた戦後日本論』(明石書店、2015)/共著:山崎耕一郎
●『創価学会を語る』(第三文明社、2015)/共著:松岡幹夫
●『小学校社会科の教科書で、政治の知識をいっきに身につける』(東洋経済新報、2015)/共著:井戸まさえ
●『新・地政学 ~「第三次世界大戦」を読み解く』(中公新書ラクレ、2016)/共著:山内昌之
●『佐藤優さん、神は本当に存在するのですか?』(文藝春秋、2016)/共著:竹内久美子
●『復権するマルクス 戦争と恐慌の時代に』(角川新書、2016)/共著:的場昭弘
『竹中先生、これからの「世界経済」について本音を話していいですか』(ワニブックス、2016)/共著:竹中平蔵
『右肩下がりの君たちへ』(ぴあ、2016)/共著:津田大介ほか
『いっきに学び直す日本史 近代・現代 実用編』(東洋経済新報社、2016)/共著:山岸良二
『いっきに学び直す日本史 古代・中世・近世 教養編』(東洋経済新報社、2016)/共著:山岸良二
『いま、公明党が考えていること』(潮新書、2016)/共著:山口那津男
●『21世紀の戦争論 昭和史から考える』(文春新書、2016)/共著:半藤一利
●『世界史の大転換 常識が通じない時代の読み方』(PHP新書、2016)/共著:宮家邦彦
●『右肩下がりの君たちへ』(ぴあ、2016)/共著:津田大介、ほか

(3)訳書
 ゲンナジー・ジュガーノフ(佐藤優/黒岩幸子・共訳)『ロシアと現代世界 汎ユーラシア主義の戦略』(自由国民社、1996)
●J.L.フロマートカ(Josef Lukl Hromadka、日本ではロマドカの名称でも知られる)『なぜ私は生きているか J.L.フロマートカ自伝』(新教出版社、1997)
 アレクサンドル・レベジ(工藤精一郎/工藤正広/黒岩幸子・共訳)『憂国』(徳間書店、1997)
●ヨゼフ・ルクル・フロマートカ (平野 清美・訳/佐藤優・監訳・解説)『神学入門 ~プロテスタント神学の転換点』(新教出版社、2012)
 ヨゼフ・ルクル・フロマートカ (平野 清美・訳/佐藤優・監訳)『人間への途上にある福音 キリスト教信仰論』(新教出版社、2014)
●アモス・ギルボア/エフライム・ラピッド・編(佐藤優・監訳/河合洋一郎・訳)『イスラエル情報戦史』(並木書房、2015)
●『この国が戦争に導かれる時 超訳:小説・日米戦争』(徳間文庫、2015) 
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 【参考】
【佐藤優】の仕事早わかり ~略歴と書誌~
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【佐藤優】ハイブリッド外交官の仕事術、トランプ現象は大衆の反逆、戦争を選んだ日本人

2016年07月17日 | ●佐藤優
   
 ①宮家邦彦『ハイブリッド外交官の仕事術 情報収集から大局観を構築するまで』(PHP文庫 620円)
 ②副島隆彦『トランプ大統領とアメリカの真実』(日本文芸社 1,500円)
 ③加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(新潮文庫 750円)

 (1)①は、外務省で中東、米国、中国と外交の最前線で活躍した宮家氏の体験に裏づけられた実践的な仕事のノウハウを伝える。宮家氏は、シミュレーション・ゲームを重視する。
 <あなたの競争相手の立場に立つ。自分が相手だったら、あなたを、あなたの会社を、そして日本をどう見るかを考えてみてください。もちろんこれだって、「言うは易く行うは難し」でしょう。しかし、日常的な知的体験を簡単に実践できる場があります。それがシミュレーション・ゲームです>
 確かにシミュレーション・ゲームで疑似体験を済ませておくことが、複雑な交渉で勝利を収める鍵になる。

 (2)②は、トランプ現象の本質が「大衆の反逆」だとみる。
 <トランプ陣営の幹部スタッフは、他にマイケル・グラスナー(選挙対策本部副部長)、スチュアート・ジョリー(全国活動部長)、カトリーナ・ピアソン(全国スポークスウーマン・広報係)、ダニエル・スカヴィーノ・ジュニア(ソシアル・メディア担当部長)、サム・クローヴィス(全国委員会共同委員長兼政策顧問)、サラ・ハッカビー・サンダース(上席顧問。元アーカンソー州知事で、共和党の大統領選挙予備選にも出馬したマイク・ハッカビーの娘)といった人たちである。
 彼らはみな「非エリート」だ。東部の一流大学であるアイヴィーリーグの出身者は一人もいない>
 という副島氏の指摘は事柄の本質を突いている。もはや既存のエリートでは、米国の危機を乗り切ることができないという民衆の集合意識がトランプ旋風となって表れているのであろう。

 (3)世界がきな臭くなっている。③から学び、再び同じ過ちを繰り返さないようにしなくてはならない。
 <戦争は、国家と国家の間でなされます。そして、戦争に訴える国家が究極的にめざすのは、敵対国の憲法原理、すなわち、国家を成り立たせている社会の基本秩序を書きかえることでした。第二次世界大戦の敗北によって日本は、大日本帝国憲法と天皇制という憲法原理を連合国の手で書きかえられ、日本国憲法と象徴天皇制を新たな憲法原理として手中にすることとなりました。
 ならば、憲法を講ずるためには、その前提として、1945(昭和20)年8月15日に敗戦を迎えた戦争について考える必要があるのではないでしょうか>
 という加藤氏の指摘はその通りだ。
 敗戦の前と後とで、いったい日本の何が変わり、何が変わらなかったかについてきちんと整理する必要がある。

□佐藤優「きな臭くなっている世界 ~知を磨く読書 第158回~」(「週刊ダイヤモンド」2016年7月23日号)
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 【参考】
【佐藤優】ペリー来航で草の根レベルの交流、沖縄差別の横行、美味なソースの秘密
【佐藤優】原油暴落の謎解き、沖縄を代表する詩人、安倍晋三のリアリズム
【佐藤優】18歳からの格差論、大川周明の洞察、米国の影響力低下
【佐藤優】天皇制を作った後醍醐、天皇制と無縁な沖縄 ~網野善彦『異形の王権』~
【佐藤優】新しい帝国主義時代、地図の「四色問題」、ベストセラー候補の研究書
【佐藤優】ねこはすごい、アゼルバイジャン、クンデラの官僚を描く小説
【佐藤優】外交官の論理力、安倍政権と共産党、研究不正が起きるシステム
【佐藤優】遅読家のための読書術、電気の構造、本屋大賞
【佐藤優】外山滋比古/思考の整理学
【佐藤優】何が個性で、何が障害か
【佐藤優】大宅壮一ノンフィクション賞選評 ~『原爆供養塔』ほか~
【佐藤優】英才教育という神話
【佐藤優】資本主義の内在的論理
【佐藤優】米国の戦略策定、『資本論』をめぐる知的格闘、格差・貧困問題の起源
【佐藤優】偉くない「私」が一番自由、備中高梁の新島襄、コーヒーの科学
【佐藤優】フードバンク活動、内外情勢分析、正真正銘の「地方創生」
佐藤優】日本の政治エリートと「天佑」、宇宙の生命体、10代が読むべき本
【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論
【佐藤優】第三次世界大戦の可能性、現代東欧文学、世界連鎖暴落
【佐藤優】司馬遼太郎の語られざる本音、深層対話、米政府による暗殺
【佐藤優】著名神学者のもう一つの顔 ~パウル・ティリヒ~
【佐藤優】総理が靖国参拝する理由、NPO活動の哲学やノウハウ、テロ対策の必読書
【佐藤優】今後、起こりうる財政破綻 ~対応策を学ぶ~
【佐藤優】社会の価値観、退行する社会
【佐藤優】夫婦の微妙な関係、安倍政権の内在的論理、警察捜査の正体
【佐藤優】情緒ではなく合理と実証で ~社会の再構築~
【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
【佐藤優】中国株式市場の怪しさ、イノベーションの障害、ホラー映画の心理学
【佐藤優】普天間基地移設問題の本質、外務省犯罪黒書、老後に快走!
【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~


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【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い

2016年07月16日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)女性なら一度は、「生理がなかったら楽なのに」とため息をついたことがあるだろう。
 寝込むほどの痛みや吐き気、気分の変調を伴う「月経困難症」であればことさら。繁忙期や出張に月経が重なったときの心身の負担は語りつくせない。二日酔いの朝の状態が一日中続き、ひどい腹痛や腰痛を抱えて働き続ける自分が想像できるだろうか。それが毎月1週間~10日間は繰り返されるのだ。

 (2)男性陣にはあまり知られていないが(関心がない?)、経口避妊薬の低用量ピルは月経をコントロールする側面を持つ。月経に伴う症状を軽減し、月経周期を自分のスケジュールに合わせてずらすことだってできる。
 問題は、低用量ピルの長期服用には「肺塞栓症」のリスクがつきまとうことだ。
 肺塞栓症は、ふくらはぎの静脈にできた血栓がはがれ、肺動脈を詰まらせる病気だ。一般に、
   ・低用量ピル非服用者の塞栓症リスクは1万人当たり1~5人/年
   ・低用量ピル服用者の塞栓症リスクは1万人当たり3~9人/年
とされる。

 (3)メーカー各社は副作用を減らすべく、有効成分の含有量や組成、投与法に工夫をこらしてきた。
 先日、2010年7月~12年9月にフランス在住の女性で、低用量ピルを服用している15~49歳が対象の調査結果が報告された。
 544万3,916人の女性のうち、病気を発症したのは次のとおりだった。
   ・肺塞栓症・・・・1,800人(1万人当たり3.3人)。
   ・脳梗塞・・・・1,049人(1万人当たり1.9人)。
   ・心筋梗塞・・・・407人(1万人当たり0.7人)。
 低用量ピル別で肺塞栓症リスクが有意に低かったのは、有効成分のエストロゲン量が0.02mgの「超」低用量ピル。なかでも、もう一つの有効成分である黄体ホルモンとして、第2世代の「レボノルゲストレル」が配合されている複合錠剤が最も低かった。

 (4)現在、日本で使用可能な超低用量ピルは、2010年以降に承認された2種類のみ。それぞれ第1世代、第3世代の黄体ホルモン複合剤だ。第2世代の著低用量ピルは承認されていない。
 女性の社会参加を促すなら、こうした面での支援も必要ではないか。

□井出ゆきえ(医学ライター)「塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.305~」(「週刊ダイヤモンド」2016年6月25日号)
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 【参考】
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

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