語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
読書
大岡昇平+社会問題・社会保障

【池上彰】の情報整理術 ~新聞の切抜きを「選ぶ力」と並べる力」~

2016年06月25日 | 批評・思想
 <新聞記事のスクラップというアナログ的な方法が、実に役立っています。
「このテーマを集めなければ」という義務感からではなく、自分の興味のおもむくままにスクラップを続けることがポイント。自分がどんなジャンルに興味・関心を持っているかが見えてくるのです。
 情報の整理のためと言って分類やファイリングに時間やお金をかけている人がいますが、これでは本末転倒。本章で紹介する私の新聞記事整理法は、みなさんがきっと驚かれるほどシンプルです。
 大切なのは、どの情報を選ぶかという「選ぶ力」と、それをどう並べるかという「並べる力」。何を選び、どう並べるかを考えることで、独自の見方が生まれ、わかりやすく伝える方法が見つかるのです>【「第3章 私の情報整理術」(★)の扉】

 *

 序章 情報活用力をいかに高めるか
 第1章 私の情報収集術
 第2章 私の取材・インタビュー術
 第3章 私の情報整理術★
  40年以上続けている新聞記事のスクラップ
  新聞記事のスクラップで、自分の興味・関心がわかる
  一定期間「寝かせて」から、まとめて整理する
  試行錯誤を経て、現在は極めてシンプルな整理法に
  手帳の整理に時間をかけるのは本末転倒だ
  アイデアメモは書き損じの紙の裏で十分
  三種類の筆記用具を持ち歩く理由
 第4章 私の読書術
 第5章 私のニュースの読み解き方
 第6章 私の情報発信術

□池上彰『情報を活かす力』(PHPビジネス新書、2016.7.1)
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【佐藤優】書誌

2016年06月25日 | ●佐藤優
 ※2016年5月29日現在。なお、「●」は所持するもの。

 《追加分》
●『右肩下がりの君たちへ』(ぴあ、2016)/共著:津田大介、ほか
●『使える地政学 日本の大問題を読み解く』(朝日新聞出版、2016)
●『貧乏物語 現代語訳』(講談社現代新書、2016)
●『世界史の大転換 常識が通じない時代の読み方』(PHP新書、2016)/共著:宮家邦彦
●『21世紀の戦争論 昭和史から考える』(文春新書、2016)/共著:半藤一利
●『自分を動かす名言』(青春出版社、2016)
●『組織の掟』(新潮新書、2016)
●『佐藤優選  ― 自分を動かす名言』(青春出版社、2016)
●『復権するマルクス 戦争と恐慌の時代に』(角川新書、2016)/共著:的場昭弘
●『動因を探せ 中東発世界危機と日本の分断』(徳間書店、2016)
●『佐藤優さん、神は本当に存在するのですか?』(文藝春秋、2016)/共著:竹内久美子
●『新・地政学 ~「第三次世界大戦」を読み解く』(中公新書ラクレ、2016)/共著:山内昌之
『竹中先生、これからの「世界経済」について本音を話していいですか』(ワニブックス、2016)/共著:竹中平蔵
『右肩下がりの君たちへ』(ぴあ、2016)/共著:津田大介ほか
『いっきに学び直す日本史 近代・現代 実用編』(東洋経済新報社、2016)/共著:山岸良二
『いっきに学び直す日本史 古代・中世・近世 教養編』(東洋経済新報社、2016)/共著:山岸良二
『いま、公明党が考えていること』(潮新書、2016)/共著:山口那津男

(1)著書
●『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社、2005 →増補版:新潮文庫、2007《解説:川上弘美》)
  ※第59回毎日出版文化賞特別賞
●『自壊する帝国』(新潮社、2006 →新潮文庫、2008《解説:恩田陸》)
  ※第5回新潮ドキュメント賞および第38回大宅壮一ノンフィクション賞
●『日米開戦の真実 大川周明著「米英東亜侵略史」を読み解く』(小学館、2006 →小学館文庫、2011)
●『獄中記』(岩波書店、2006年 →改訂版:岩波現代文庫、2009)
●『国家と神とマルクス 「自由主義的保守主義者」かく語りき』(太陽企画出版、2007 →角川文庫 2008)
●『地球を斬る』(角川学芸出版、2007 →角川文庫 2009)
●『国家の謀略』(小学館、2007)
●『野蛮人のテーブルマナー ビジネスを勝ち抜く情報戦術』(講談社、2007 →講談社+α文庫、2009)
●『野蛮人のテーブルマナー 「諜報的生活」の技術』(講談社、2009)
●『私のマルクス』(文藝春秋、2007 →文春文庫 2010)
●『インテリジェンス人間論』(新潮社、2007 →新潮文庫 2010)
●『国家論 日本社会をどう強化するか』(NHKブックス、2007)
●『世界認識のための情報術』(週刊金曜日、2008)
●『交渉術』(文藝春秋、2009 →文春文庫、2011)
●『テロリズムの罠 右巻 忍び寄るファシズムの魅力』(角川ワンテーマ21、2009)
●『テロリズムの罠 左巻 新自由主義社会の行方』(角川ワンテーマ21、2009)
●『外務省ハレンチ物語』(徳間書店、2009 →徳間文庫、2011)
●『神学部とは何か 非キリスト教徒にとっての神学入門』(新教出版社、2009)
●『「諜報的(インテリジェンス)生活」の技術 野蛮人のテーブルマナー』(講談社、2009)
●『甦る怪物 私のマルクス ロシア篇』(文藝春秋、2009)
●『功利主義者の読書術』(新潮社、2009 →新潮文庫、2012)
●『沖縄・久米島から日本国家を読み解く』(小学館、2009)
●『はじめての宗教論 右巻 見えない世界の逆襲』(NHK出版新書、2009)
●『はじめての宗教論 左巻 ナショナリズムと神学』(NHK出版新書、2011)
●『日本国家の神髄 禁書「国体の本義」を読み解く』(扶桑社、2009)
●『この国を動かす者へ』(徳間書店、2010)
『3・11クライシス!』(マガジンハウス、2011)
『予兆とインテリジェンス』(産経新聞出版、2011)
●『人たらしの流儀』(PHP研究所、2011)
●『佐藤優のウチナー評論』(琉球新報社、2011)
●『この国を壊す者へ』(徳間書店、2011)
『世界インテリジェンス事件史 祖国日本よ、新・帝国主義時代を生き残れ!』(双葉社、2011)
●『インテリジェンス人生相談 復興編』(扶桑社、2011)
『共産主義を読みとく いまこそ廣松渉を読み直す『エンゲルス論』ノート 廣松渉エンゲルス論との対座』(世界書院 2011)
●『外務省に告ぐ』(新潮社 2011 →新潮文庫、2014)
●『野蛮人の図書室』(講談社、2011)
●『国家の「罪と罰」』(小学館 2011)
●『新・帝国主義の時代 左巻 情勢分析論篇』(中央公論者、2013)
●『新・帝国主義の時代 右巻 日本の進路篇』(中央公論者、2013)
●『神学の履歴書 ~初学者のための神学書ガイド~』(新教出版社、2014)
●『紳士協定 私のイギリス物語』(新潮社、2012/新潮文庫、2014)
●『帝国の時代をどう生きるか 知識を教養へ、教養を叡智へ』(角川oneテーマ21、2012)
●『読書の技法 誰でも本物の知識が身につく熟読術・速読術「超」入門』(東洋経済新報社、2012)
●『人間の叡智』(文春新書、2012)
●『同志社大学神学部』(光文社、2012)
●『人に強くなる極意』(青春新書インテリジェンス、2013)
●『知の武装: 救国のインテリジェンス』(新潮新書、2013)
●『国境のインテリジェンス』(徳間書店、2013 →徳間文庫、2015)
●『地球時代の哲学 池田・トインビー対談を読み解く』(潮出版社、2014)
●『元外務省主任分析官・佐田勇の告白: 小説・北方領土交渉』(徳間書店、2014)
●『先生と私』(幻冬舎、2014/後に幻冬舎文庫、2016)
●『佐藤優の沖縄評論』(光文社知恵の森文庫、2014)
●『「知的野蛮人」になるための本棚 (PHP文庫、2014)
『野蛮人のテーブルマナー 完全版』(講談社、2014)
●『宗教改革の物語 近代、民族、国家の起源』(KADOKAWA、2014)
●『いま生きる「資本論」』(新潮社、2014)
●『修羅場の極意』(中公新書ラクレ、2014)
●『逆境を乗り越える技術』(ワニブックス、2014)
●『「知」の読書術 』(集英社(知のトレッキング叢書)、2014)
●『私の「情報分析術」超入門 仕事に効く世界の捉え方』(徳間書店、2014)
●『創価学会と平和主義』(朝日新書、2014)
●『私が最も尊敬する外交官 ナチス・ドイツの崩壊を目撃した吉野文六』(講談社、2014)
●『佐藤優の10分で読む未来 キーワードで即理解 新帝国主義編』(講談社、2014)
●『日本国家の神髄 ~禁書『国体の本義』を読み解く~』 (扶桑社新書、2014)
●『「ズルさ」のすすめ』(青春新書インテリジェンス、2014)
●『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』(「文藝春秋」2015年2月臨時増刊号)
●『世界史の極意』(NHK出版新書、2015)
●『神学の思考 キリスト教とは何か』(平凡社、2015)
●『危機を克服する教養』(角川書店、2015)
●『人生の極意』(扶桑社新書、2015)
●『プラハの憂鬱』(新潮社、2015)
●『国家の攻防/興亡』(角川新書、2015)
●『希望の資本論』(朝日新聞出版、2015)/共著:池上彰
●『危機を克服する教養 ~知の実践講義「歴史とは何か」~』(KADOKAWA、2015)
●『超したたか勉強術』(朝日新書、2015)
●『知性とは何か』(祥伝社新書、2015)
『国境のインテリジェンス』(徳間文庫カレッジ、2015)
●『ケンカの流儀 -修羅場の達人に学べ』(中公新書ラクレ、2015)
●『いま生きる階級論』(新潮社、2015)
●『イスラエルとユダヤ人に関するノート』(ミルトス、2015)
●『知の教室 ~教養は最強の武器である~』(文春文庫、2015)・・・・『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』再構成したもの。
●『お金に強くなる生き方』(青春新書インテリジェンス、201)
●『同志社大学神学部 私はいかに学び、考え、議論したか』(光文社新書、2015)
●『官僚階級論 ~霞が関(リヴァイアサン)といかに闘うか』(モナド新書、2015)
●『この国が戦争に導かれる時 超訳:小説・日米戦争』(徳間文庫、2015) 
『「池田大作 大学講演」を読み解く 世界宗教の条件』(潮出版社、2015)
●『佐藤優の「地政学リスク講座2016」 日本でテロが起きる日』(時事通信出版局、2015)
●『外務省犯罪黒書』(講談社エディトリアル、2015)
●『資本主義の極意 明治維新から世界恐慌へ』(NHK出版新書、2016)
●『危機を覆す情報分析 ~知の実戦講義「インテリジェンスとは何か」~』(KADOKAWA、2016)
●『組織の掟』(新潮新書、2016)
●『動因を探せ 中東発世界危機と日本の分断』(徳間書店、2016)
●『自分を動かす名言』(青春出版社、2016)
●『使える地政学 日本の大問題を読み解く』(朝日新聞出版、2016)
●『貧乏物語 現代語訳』(講談社現代新書、2016)

(2)共著(対談)
●『国家の自縛』(産経新聞出版、2005 →扶桑社文庫、2010)/聞き手:斎藤勉(産経新聞元モスクワ支局長)
●『国家の崩壊』(にんげん出版、2006)/聞き手:宮崎学
●『北方領土「特命交渉」』(講談社、2006 →講談社+α文庫、2007)/共著:鈴木宗男
●『インテリジェンス―武器なき戦争』(幻冬舎新書、2006)/共著:手嶋龍一
●『ナショナリズムという迷宮 -ラスプーチンかく語りき』(朝日新聞社、2006 →朝日文庫、2010)/対談:魚住昭
『アメリカの日本改造計画』(イースト・プレス、2006)/共著:関岡英之・小林よしのり・西部邁ら
『反省 私たちはなぜ失敗したのか?』(アスコム、2007)/共著:鈴木宗男
『国家情報戦略』(講談社、2007)/共著:高永哲
『中国の黒いワナ』(宝島社、2007)/共著:青木直人・西尾幹二
『佐藤優 国家を斬る』(同時代社、2007)/コーディネーター:宮崎学、連帯運動・編
●『国家と人生 寛容と多元主義が世界を変える』(太陽企画出版、2007 →角川文庫、2008)/対談:竹村健一
●『正義の正体』(集英社インターナショナル、2008)/共著:田中森一
●『大和ごころ入門』(扶桑社、2008)/共著:村上正邦
●『ロシア闇と魂の国家』( 文春新書、2008)/対談:亀山郁夫
『情報力―情報戦を勝ち抜く“知の技法”』(イースト・プレス、2008)/共著:鈴木琢磨
『政治を語る言葉』(七つ森書館、2008)/山口二郎・編
●『暴走する国家 恐慌化する世界―迫り来る新統制経済体制(ネオ・コーポラティズム)の罠』(日本文芸社、2008)/共著:副島隆彦、
『第三次世界大戦 左巻 新・帝国主義でこうなる!』(アスコム、2008)/共著:田原総一朗
『第三次世界大戦 右巻 新・世界恐慌でこうなる!』(アスコム、2008)/共著:田原総一朗
●『テロルとクーデターの予感-ラスプーチンかく語りき2』(朝日新聞出版、2009)/対談:魚住昭
●『インテリジェンス人生相談 社会編』、『同 個人編』(扶桑社、2009)
●『知の超人対談 岡本行夫・佐藤優の「世界を斬る」』(産経新聞出版、2009)/ 共著:岡本行夫
●『ぼくらの頭脳の鍛え方 必読の教養書400冊』(文春新書、2009)/共著:立花隆
『徹底討論沖縄の未来』(芙蓉書房出版、2010)/共著:大田昌秀、沖縄大学地域研究所・編
●『猛毒国家に囲まれた日本 ロシア・中国・北朝鮮』(海竜社、2010)/共著:宮崎正弘
『小沢革命政権で日本を救え 国家の主人は官僚ではない』(日本文芸社、2010)/共著:副島隆彦
『週刊とりあたまニュース 最強コンビ結成!編』(新潮社、2011)/共著:西原理恵子
『国家の危機』(KKベストセラーズ、2011)/共著:的場昭弘
●『聖書を語る 宗教は震災後の日本を救えるか』(文藝春秋、2011 →文春文庫、2013)/共著:中村うさぎ
『沈黙より軽い言葉を発するなかれ』(創出版、2012)/対談:柳美里
●『はじめてのマルクス』(週刊金曜日、2013)/共著:鎌倉孝夫
●『世界と闘う「読書術」 思想を鍛える1000冊』 (集英社新書、2013)/共著:佐高信
●『知の武装 救国のインテリジェンス』(新潮新書、2013)/共著:手嶋龍一
『新・帝国主義時代を生き抜くインテリジェンス勉強法』(講談社、2014)/共著:荒井和夫
●『聖書を読む』(文藝春秋、2013)/共著:中村うさぎ
●『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方』(文春新書、2014)/共著:池上彰
●『喧嘩の勝ち方 喧嘩に負けないための5つのルール 』(光文社、2014)/共著:佐高信
●『賢者の戦略』(新潮新書、2014)/共著:手嶋龍一
●『死を笑う うさぎとまさると生と死と』(毎日新聞社、2015)/共著:中村うさぎ
●『希望の資本論』(朝日新聞出版、2015)/共著:池上彰
●『反知性主義とファシズム』(金曜日、2015)/共著:斎藤環
●『崩れゆく世界 生き延びる知恵』(キャップス、2015)/共著:副島隆彦
●『「殺しあう」世界の読み方 (田原総一朗責任編集 オフレコ!BOOKS)』(アスコム、2015)/共著:田原総一朗・宮崎学
●『とりあたま大学: 世界一ブラックな授業!編』(新潮社、2015)/共著:西原理恵子
●『イスラエルとユダヤ人に関するノート』(ミルトス、2015)
●『国家のエゴ』(朝日新書、2015)/共著:姜尚中
●『異端の人間学』(幻冬舎新書、2015)/共著:五木寛之
●『インテリジェンスの最強テキスト』(東京堂出版、2015)/共著:手嶋龍一
●ニッポン放送「高嶋ひでたけのあさラジ!」編『90分でわかる日本の危機』(扶桑社新書、2015)
●『政治って何だ!? - いまこそ、マックス・ウェーバー『職業としての政治』に学ぶ-』(ワニブックスPLUS新書、2015)/共著:石川知裕
●『大世界史 現代を生きぬく最強の教科書』(文春新書、2015)/共著:池上彰
●『あぶない一神教』(小学館新書、2015)/共著:橋爪大三郎
●『インテリジェンスの最強テキスト』(東京堂出版、2015)/共著:手嶋龍一
●『第3次世界大戦の罠 -新たな国際秩序と地政学を読み解く』(徳間書店、2015)/共著:山内昌之
●『平和なき時代の世界地図 戦争と革命と暴力 単行本』(祥伝社、2015)/共著:宮崎学
●田原総一朗・責任編集『「殺し合う」世界の読み方』(文化放送、2015)/共著:宮崎学
●『マルクスと日本人 社会運動からみた戦後日本論』(明石書店、2015)/共著:山崎耕一郎
●『創価学会を語る』(第三文明社、2015)/共著:松岡幹夫
●『小学校社会科の教科書で、政治の知識をいっきに身につける』(東洋経済新報、2015)/共著:井戸まさえ
●『新・地政学 ~「第三次世界大戦」を読み解く』(中公新書ラクレ、2016)/共著:山内昌之
●『佐藤優さん、神は本当に存在するのですか?』(文藝春秋、2016)/共著:竹内久美子
●『復権するマルクス 戦争と恐慌の時代に』(角川新書、2016)/共著:的場昭弘
『竹中先生、これからの「世界経済」について本音を話していいですか』(ワニブックス、2016)/共著:竹中平蔵
『右肩下がりの君たちへ』(ぴあ、2016)/共著:津田大介ほか
『いっきに学び直す日本史 近代・現代 実用編』(東洋経済新報社、2016)/共著:山岸良二
『いっきに学び直す日本史 古代・中世・近世 教養編』(東洋経済新報社、2016)/共著:山岸良二
『いま、公明党が考えていること』(潮新書、2016)/共著:山口那津男
●『21世紀の戦争論 昭和史から考える』(文春新書、2016)/共著:半藤一利
●『世界史の大転換 常識が通じない時代の読み方』(PHP新書、2016)/共著:宮家邦彦
●『右肩下がりの君たちへ』(ぴあ、2016)/共著:津田大介、ほか

(3)訳書
 ゲンナジー・ジュガーノフ(佐藤優/黒岩幸子・共訳)『ロシアと現代世界 汎ユーラシア主義の戦略』(自由国民社、1996)
●J.L.フロマートカ(Josef Lukl Hromadka、日本ではロマドカの名称でも知られる)『なぜ私は生きているか J.L.フロマートカ自伝』(新教出版社、1997)
 アレクサンドル・レベジ(工藤精一郎/工藤正広/黒岩幸子・共訳)『憂国』(徳間書店、1997)
●ヨゼフ・ルクル・フロマートカ (平野 清美・訳/佐藤優・監訳・解説)『神学入門 ~プロテスタント神学の転換点』(新教出版社、2012)
 ヨゼフ・ルクル・フロマートカ (平野 清美・訳/佐藤優・監訳)『人間への途上にある福音 キリスト教信仰論』(新教出版社、2014)
●アモス・ギルボア/エフライム・ラピッド・編(佐藤優・監訳/河合洋一郎・訳)『イスラエル情報戦史』(並木書房、2015)
●『この国が戦争に導かれる時 超訳:小説・日米戦争』(徳間文庫、2015) 
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 【参考】
【佐藤優】の仕事早わかり ~略歴と書誌~
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【メディア】他社の誤報は叩き、身内の誤報は隠すのが得意技 ~産経新聞~

2016年06月25日 | 社会
 (1)「産経新聞」は、他社の誤報には容赦なく批判を加える。特に論調が自分と異なる社などの場合は、小躍りしているかのようなはしゃぎようだ。
 2014年8月に、「朝日新聞」が「従軍慰安婦」関連の記事を取り消した時が、正しくそれだ。
 しかし間もなく「産経」自身が同様の“誤報”を垂れ流していたことを指摘され、大恥を晒した。その様子は、「週刊金曜日」に掲載された植村隆氏の体験記に詳しい。

 (2)「産経」も誤報記事を掲載しているのに、他紙の誤報を責めることを、「産経」は繰り返している。
 1996年7月のアトランタ五輪でマラソンの有森裕子・選手が銅メダルを獲得した時のことだ。同選手の言葉「自分で自分をほめたい」は、同年の「新語・流行語大賞」を受賞するなど、レース終了直後から注目され、広く話題になった。
 「産経」の同年7月30日付けコラム「産経抄」は、「一部新聞ではこれが『自分をほめてあげたい』と記述されている。困った“改悪”である」と決めつけた。
 しかし、「産経」自身、前日29日の社会面では正確に伝えたものの、スポーツ面は違っていた。そこには「自分で自分をほめてやりたいと思います」とある。
 「産経抄」は、「せっかく有森さんが折り目正しい日本語を使ったのに」と他紙を批判していたのに、だ。この件で「産経」は訂正も謝罪もしていない。

 (3)今回また、「産経」はアンフェアな報道をしでかした。
 6月10日社会面の「八重山日報特約」記事だ。元米海兵隊員の事件に抗議する19日の県民大会に関し、石垣市議会が会場の変更を求める決議を7日採択したという。大会が那覇市・奥武山(おうのやま)陸上競技場で開催される。これに合わせ、高校野球沖縄大会の試合場が、隣接する沖縄セルラースタジアム那覇から他に移された。決議は、このことを不当としている。
 離島の高校チームは旅費負担などから、開会式直後に試合日程が組まれる。その大会初日にプロ野球の公式戦にも使用される球場を政治的集会で使えないのは、球児の夢を壊すものだ、と決議にある。

 (4)一見もっともに思える。
 ところが、同決議は沖縄大会の初日18日を19日と取り違えているものだった。多数決で決議を強引に採択した自民党系議員は立ち往生の状態にある、と8日の県紙2紙は伝えた。
 だが、石垣島の「産経」系「八重山日報」は、決議文のまま8日の一面トップで大きく伝え、誤りを拡げた。

 (5)離島の高校生の立場を代弁したはずが、事実の取り違えで恥をさらした同市議会の保守系会派。沖縄唯一の保守系新聞を自称し、「産経」傘下に入った「八重山日報」。ともに尖閣諸島問題で強硬方針を掲げる中山義隆・石垣市長を支持している。
 中山氏は、2010年の市長就任時の施政方針演説が、小田原市長のパクりだったことで知られている。
 共通しているのはズサンさだ。
 「産経」の記事では、日程取り違えの件に全く触れていない。論調を同じにする者の恥は隠すということだ。

□高嶋伸欣(琉球大学名誉教授)「他社の誤報は叩き 身内の誤報は隠すのが『産経』の得意技」(「週刊金曜日」2016年6月17日号)
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【沖縄】独立は夢物語ではない ~その経済力と平和外交~

2016年06月24日 | 社会
 (1)普天間だけでなく、沖縄県内にあるすべての米軍基地が無条件で返還され、辺野古にも他のどこにも代替施設をつくらずにすむ方法がある。すなわち、琉球国として独立することだ。日本でなくなれば、日米安保条約や日米地位協定の適用を受けないから、米軍基地が存在する根拠がなくなる。
 1972年の復帰から44年、琉球は米国との交渉を日本政府に委ね、期待を裏切られ続けてきた。
 しかし、琉球国として独立すれば、一対一で米国と交渉する立場を得る。 
 琉球新報が2015年5月に行った「独立に関する県民世論調査」では、
   日本の中の1県のままでいい 66.6%
   日本国内の特別自治州などにすべき 21.0%
   独立すべき 8.4%
だったから、まだまだ少数とはいえ、少しずつ増えている。
 
 (2)基地問題で不満や失望を抱えてはいるものの、独立するといわれると経済がうまくいくか心配・・・・これが多くの県民意識だろう。
 しかし、その心配は要らないばかりか、むしろ独立したほうが発展する。
 なぜか。
 沖縄県は、今年度予算について、「歳入面では、県税等の自主財源の割合が低く、国の地方財政制度に大きく依存した脆弱な構造である」と指摘している。
 しかし、独立すれば、まず財源不足が解消される。
 <例>1972年の返還から現在までに使われた沖縄振興予算の9割は公共事業だが、うち半分は東京などに本社を持つ大手建設会社が受注している。米軍基地内の工事を請け負うには100億円の保証金を積む必要があるので、現実的に大手ゼネコンしか受注できず、県内企業は排除されているのだ。
 ほかの産業でも、同じことが起こっている。
 こうした植民地経済から、独立によって脱却できる。

 (3)世間には、「沖縄は米軍基地への経済依存度が高い。他県より多くのカネを日本政府から貰っている」という勘違いがあるらしい。
 しかし、基地関連の収入は、現在、県民総所得の5%まで下がっている。
 2013年度の国からの財政移転(①国庫支出金+②地方交付税交付金)は、全国14位。
 沖縄新興予算という名前が誤解を与えているようだが、これは上乗せではなく、他県も貰う①国庫支出金と③国直轄事業の合計のことだ。
 2016年度において、
  (a)沖縄振興予算(①+③) 3,350億円
  (b)地方交付税交付金(②) 2,066億円
 独立すれば、(a)+(b)=約5,400億円は貰えない。
 その代わり、県内徴収分の国税(所得税、法人税、消費税など)と地方税等の県の自主財源が琉球国の税収となる。2013年度の実績では、合わせて4,654億円だ。金額は減るものの、振興予算の使い道が限定されているのに対して、こちらは自由に使えることが大きな意味を持つ。
 基地の跡地利用の経済効果からは、前記の減額分を補う数字が出ている。米軍の牧港住宅地区は、返還後に那覇新都心として再開発され、県立博物館や美術館、ショッピングモールなどができてにぎわっている。
 沖縄県が2015年に発表した調査結果によれば、地代収入や軍雇用者所得などによる米軍住宅当時の経済効果は52億円だったが、現在は32倍に及ぶ1,634億円だとのこと。普天間飛行場についても、返還されれば3,866億円の経済効果をもたらすと、沖縄県と関係市町村は試算している。現在の120億円に比べ、やはり32倍に達する大幅な増加だ。

 (4)基地は観光産業にとってもマイナスだ。
 そもそも、沖縄の観光産業は大きく伸びている。2015年度、沖縄県を訪れた観光客は、過去最高の794万人だった。うち国内客は79%だが、大型クルーズ船による中国本土などからの外国人は167万人に達し、前年比69.4%の大幅増となった。
 ところが、過去のデータを見ると、米国が中東で戦争を始めたり、テロが起こると、米軍基地を抱える琉球の観光客数は落ち込む。

 (5)このように、基地の存在が経済の発達を阻害している。こうした現実を県民が認識させ、世論の喚起を促すことが、独立への第一歩となる。実際に独立するには、次の5つの手順が必要だ。
   ①沖縄県会議員のうち、独立支持派を過半数まで増やす。
   ②県議会が、国連脱植民地特別委員会の「非自治地域」リストに琉球を加えるよう決議する。
   ③「非自治地域」と認められた琉球は、国連や各国国際機関からの協力を受けながら、脱植民地化の活動を行う。
   ④国連の監視下で住民投票を実施し、独立支持が過半数を占めれば、世界に独立を宣言。独自の政府を作り、国連に加盟申請する。
   ⑤国際法に基づき、平和的に独立する。日米をはじめとする他国と外交関係を結び、対等な交渉によって米軍基地、自衛隊基地を撤去させる。

 (6)(5)の“国連型”の独立なら、日本政府の承認は不要だ。
 もう一つは、“スコットランド型”だ。かねてから独立運動の盛んなスコットランドでは、1941年9月にイギリス連邦からの独立を問う住民投票が行われた。このときイギリス政府との間に、賛成が過半数を占めれば独立を認める合意があらかじめなされた。
 しかし、日本政府はこうした合意に応じそうもない。“国連型”の独立が現実的だろう。

 (7)スコットランドの投票結果は、賛成45%、反対55%で独立は叶わなかったが、賛成票の多くが若い世代だったことは特徴的だ。また独立を支持する大きな理由に、イギリスが国内唯一の核ミサイル潜水艦基地を押しつけていることへの反発や、かつて独立国だった点が挙げられているのは、琉球とよく似ている。
 琉球が日本に統治された時期は、
   ①琉球処分(1879年)から敗戦(1954年)まで
   ②復帰(1972年)から現在まで
であって、①+②=110年余でしかない。
 そして、日本の統治下に入ることも、20万人の戦没者を出した沖縄戦も、戦後の米国統治も、すべて琉球人の意思ではなかった。独立を決める住民投票で、琉球人は初めて自己決定権を行使し、自らの将来を決めるのだ。

 (8)独立を回復した琉球連邦共和国は、人口140万人、有人島約50。日本国憲法の9条に倣い、非武装中立国家となる。
 これまでは日本との格差是正を求めてきたが、今後は地の利を生かし、アジア近隣諸国との連携強化を広く図る。
 参院選を経て憲法改正の動きが加速すれば、在日米軍基地の74%も押しつけられている琉球は、再び戦場になる危険が高まる。そうなれば、独立運動は活発化するだろう。
 県民の意識次第では、2020年の東京五輪に琉球国代表団を送り込むことも、決して夢物語ではない。

□松島泰勝(龍谷大学経済学部教授)「「琉球独立」は夢物語ではない」(「文藝春秋」2016年7月号)
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【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~

2016年06月23日 | ●佐藤優
(1)格差の拡大
 共産主義に勝利して、資本主義と資本家はあまりにも貪欲になりすぎた。資本の増殖に血道をあげ、過剰で不公平な競争を押しつけて、人の気持ちを顧みなくなった。その結果が、格差を極端にまで広げたいまの世界だ。
 たとえば、あれだけ石油が出る中東で、なぜ大勢の人がいまだに貧困にあえいでいるのか。どう考えたって、国際石油資本とそれに連なる王族や独裁権力者に富が偏在しているからだ。
 こうした状況を打ち破ろうと、二つの流れが出てきた。
 (a)国家や民族の枠を超えたグローバルなイスラム主義によって克服しようという動き。イラク北部からシリア東部を占拠している「イスラム国」の運動がそれ。
 (b)いまの国民よりもっと下位のネーション、つまりもっと小さな民族に主権を持たせることで危機を乗り越えようという動き。近代化以降、ときには複数の民族を一つの「国民」に統合してきた従来の国民国家を、さらに純化する動きともいえる。英国からの独立を問う住民投票があったスコットランドがそうだ。

(2)帰属意識に変化
 この二つの流れが、従来の国民国家の土台を揺るがせ始めた。いずれも、人々の帰属意識に変化が生まれている。
 イラクの場合は、スンニ派のアイデンティティーが変容した。フセイン政権時代には、独裁下とはいえイラク人という国民意識が一応あった。スンニ派かシーア派かは、それほど大きな問題ではなかった。ところが新生イラクでは多数派のシーア派が権力を握り、スンニ派は新政権に自己同一化ができなかった。そこに民族や部族を超えた存在として「イスラム国」が登場した。
 彼らの理屈では、
 (a)イスラム革命が成功して預言者ムハンマドの後継者によるカリフ制が確立すれば、みんな平等で豊かになる。成功だ。
 (b)失敗しても、殉教者はあの世で幸せになれる。これも成功だ。
 どっちに転んでも成功する教義を作り上げ、行動させて問題を解決しようとしている。この世界観に、イラク人という国民意識を持てなくなったスンニ派の人々がなびき始めた。民族か、部族か、宗教か。人々の帰属意識は時代と状況で変化するわけだ。
 オバマ米政権は「イスラム国」への空爆に踏み切ったが、本当に倒すには幹部をピンポイントで除去するしかない。そこでイランとの協調関係が生まれる可能性がある。自分たちに同調しない人を皆殺しにする「イスラム国」は、シーア派のイランにとっても脅威なのだから。

(3)世界各地に火種
 スコットランドでは、民族的なアイデンティティーが強まったことで独立の機運が盛り上がった。人々が恐れたのは、このまま人材も資源も流出し、ロンドンに吸い取られていく未来です。人口530万の自分たちで回していったほうが豊かになれる、という計算もあった。1707年に併合されるまでスコットランドは王国だった、という記憶は300年程度では消えないのだ。イングランドとの格差が広がり、独自の言語も廃れ、軍事負担も過剰だ。こんな問題提起が噴出し、民族意識に火がついた。
 ウクライナでは、親米欧勢力が権力を握った瞬間に深刻な間違いを犯した。言語政策です。ウクライナ語のみを公用語にすると言った。すぐに撤回はしたが。19世紀以降、ロシア語化が進んだ東部と南部の人々は衝撃を受け、混乱につながった。
 民族の根っこにあるのが言語だ。世界には何千もある。しかし国の数は、国連加盟国で200ほど。つまり一つのナショナリズムが成功して国家が生まれる陰で、膨大な数の失敗がある。いつ、どこで発火するかわからない潜在的なナショナリズムの火種は世界各地にあるのです。

(4)現行システムの微調整
 ただ、国民国家のシステムはそう簡単に崩れるとは思えない。いまのところ資本主義に代わる仕組みはなく、資本主義は国民国家と相性がいい。そもそも国民国家の成立が均質の労働力を生み、資本主義を育ててきた。いま世界で起きているのは、現行システムの微調整だと見るべきだ。

□佐藤優(聞き手・萩一晶)「貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~(耕論)揺らぐ国民国家~」(朝日デジタル 2014年10月4日)
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 【参考】
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 
【佐藤優】独裁者の「再選」が放置される理由 ~バッシャール・アル=アサド~
【佐藤優】経済と政治を行き来する新大統領の過去 ~ペトロ・ポロシェンコ~
【佐藤優】安倍首相とイスラエル首相「声明」の意味 ~ベンヤミン・ネタニヤフ~
【佐藤優】ロシアが送り込んだ「曲者」の正体 ~ウラジーミル・ルキン~
【佐藤優】ロシアは日本をどう見ているか ~日本外相の訪露延期~
【佐藤優】ウクライナ衝突の「伏線」 ~オレクサンドル・トゥルチノフ~
【ウクライナ】危機の深層(2) ~ブラック経済~
【ウクライナ】危機の深層(1) ~天然ガス~
【ウクライナ】エネルギー・集団的自衛権・尖閣問題 ~日本外交のジレンマ(3)~
【ウクライナ】米国の迷走とロシアの急成長 ~日本外交のジレンマ(2)~
【ウクライナ】と日本との歴史的関係 ~日本外交のジレンマ(1)~
【佐藤優】ウクライナ危機と米国が陥った「恐露病」
【佐藤優】プーチン政権がついに発した「シグナル」の意味 ~ロシア外交~
【佐藤優】プーチンは「世界のルール」を変えるつもりだ ~クリミア併合~
【ウクライナ】暫定政権の中枢を掌握するネオナチ ~クリミア併合の背景~
【佐藤優】北方領土返還のルールが変化 ~ロシアのクリミア併合~
【佐藤優】ロシアが危惧するのは軍産技術の米流出 ~ウクライナ~
【佐藤優】新冷戦ではなく帝国主義的抗争 ~ウクライナ~~
【佐藤優】クリミアで衝突する二大「帝国主義」 ~戦争の可能性~
【佐藤優】「動乱の半島」クリミアの三つ巴の対立 ~セルゲイ・アクショーノフ~
【佐藤優】ウクライナにおける対立の核心 ~ユリア・ティモシェンコ~
【ウクライナ】とEU間の、難航する協定締結に尽力するリトアニア
【佐藤優】ロシアとEUに引き裂かれる国 ~ウクライナ~

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【英国】EU離脱がもたらす世界危機 ~困る米国、喜ぶロシア~

2016年06月23日 | 社会
 (1)1975年6月、イギリスではEC離脱を問う国民投票が行われた。政府は、その判断材料として「イエスと投じる理由」「ノーと投じる理由」の両方の公平に添付した公報文書を作成した。当時はそれだけ政府に余裕があったわけだ。
 イギリスと大陸ヨーロッパとは複雑な関係にある。「イギリスはヨーロッパの一部である」という感覚は、一般的なイギリス人は持っていない。
 ウィンストン・チャーチルは、第二次世界大戦終結の翌1946年、「鉄のカーテン」演説とともに、もう一つ重要な演説を行った。そこで彼は、大戦で疲弊した大陸諸国に「ヨーロッパは統合して一つになりなさい。ただし、私たちは参加しません」と。つまり、
   ○ブリテン・アンド・ヨーロッパ
   ×ブリテン・イン・ヨーロッパ
 他方、イギリス人のアイデンティティの中枢を占めていたのは、米国との“特別な関係”だ。さらに身近なのは、豪州・カナダなど旧植民地を含めた白人のアングロサクソン・コミュニティだ。
 大陸ヨーロッパ側にも、イギリスのヨーロッパへの帰属意識を多分に疑問視する声があった。その筆頭は、シャルル・ド・ゴール仏大統領だ。イギリスは、1963年と67年に欧州経済共同体(EEC)への加盟申請を行ったが、2回とも拒否権を持つド・ゴールから却下されている。米ソに対抗する第三極をめざしていたド・ゴールは、「イギリスは、米国からのトロイの木馬になる」とその理由を語っている。
 イギリスのECへの加盟申請がようやく受理されたのは、パリの5月革命でド・ゴールが失脚した1969年のことだ。当時のイギリスは、経済苦境に陥っていたから、進展する統合ヨーロッパへの一日も早い参加を望んだ。しかし、それでも終始、「本当にこれでよいのか」という人びとの自問は続いた;。
 そして40年余、その積み残されてきた問いが、今回、再び行われることになった国民投票で投げかけられているのだ。

 (2)今回のEU離脱問題をめぐって、日本の報道では経済的ダメージの大きさばかりが強調されるが、現地で重視されているのは、やはりアイデンティティの問題だ。
 たしかに、国境管理を行わないEUの制度を利用して、移民やテロリストがイギリスに入ってくる。さらにEU本部のある「ブリュッセル官僚」によって、イギリスの国家主権がこれ以上制約されてよいのか、という懸念もある。
 しかし、その根底にあるのは、「我々はヨーロッパと運命をともにしてよいのか」という、あの永遠の問いなのだ。

 (3)現在、英国内で、論戦の行方はどんな構図になっているのか。
 EU残留を支持しているのは、「エスタブリッシュメント(既成の支配層)」に属する人びとや集団だ。そして、彼らがもっぱら主張しているのは、やはり離脱に伴う経済的なデメリットだ。
 その他、王室や産業界、学界を初めとする指導的な階層においては、残留派が圧倒的な多数を占めている。野党の労働党やスコットランド民族党なども「残留」を唱えている。

 (4)離脱派はどこに存在するのか。
 その象徴的な人物が、キャメロン首相と同じ保守党のボリス・ジョンソン前ロンドン市長(51)だ。先日、サディック・カーンというイスラム教徒のロンドン市長が誕生し、日本でも話題を呼んだが、その前任者が彼だ。この国民的人気の高い政治家が、現在のEU離脱論の大きな流れを生み出しているのだ。
 ジョンソンは、市長になる前に下院議員を2期務め、現在は再び国会議員に転身している。ニューヨーク生まれ(両親はイギリス国籍)の彼がユニークなのは、自身が「ワンマン・メルティング・ポット」(一人で人種のるつぼ)と形容するように多彩な出自のバックグラウンドを持っている点だ。先祖をたどると、オスマン時代にスルタンに仕えていたトルコ高官、スイス系、ユダヤ系、ロシア系、また現在のイギリス王室に連なる血まで入っている。とにかく派手好きでテレビにも出まくっているジョンソンだが、専門の学者をもうならせる知性と教養の持ち主でもある。彼の名著『チャーチル・ファクター』(最近邦訳された)は、その証だ。それも当然で、彼はイートン校からオックスフォード大学の中でも成績優秀者しか入れないベリオール・カレッジへ進学して、古典学を優等の成績で卒業している。これはイギリスの学歴序列からするとトップ中のトップだ。しかも、グラッドストーンが所属し、チャーチルも演説するなど数々の歴史的舞台となってきた弁論部「オックスフォード・ユニオン」の学生代表まで務めた。
 大学卒業後は、保守系の全国紙デイリーテレグラフに入社。1990年代、ブリュッセル特派員として、猛烈な反EU記事を次々にロンドンに送っている。ちょうどEU創立を定めたマーストリヒト条約が成立する前後のことだ。ジョンソンの記事は、保守党のユーロ・スケプティック(欧州懐疑派)議員がこぞって読み、国会質問で取り上げ、「イギリスの国家主権が制限される」「こんなに譲歩すると英国企業が不利益をこうむる」と政府を追及する材料として重宝された。ペンで身を立て、政治家の枠にとどまらない人気者なのだ。
 このジョンソンが最有力の次期首相候補とされている。「ポスト・キャメロン」のライバルと目されるオズボーン財相(45)との激しい争いが、より一層彼を駆りたてている。
 彼は今回、自腹でバスを仕立てて、イングランドの西端から全国キャラバンを始め、「EUから離脱しよう」と大キャンペーン運動を展開。その模様は、連日テレビによって放送されている。 
 そんな彼が、最近のインタビューで「EUはヒトラーと同じだ」と発言したことで世界的に注目を集めた。その発言の趣旨は、次のようなことだ。
 「ヨーロッパを一つに統合しようという儚い夢を描くのはやめよう。ローマ帝国が滅んでから、ナポレオンも、無敵艦隊を率いたスペインのフェリペ二世も、直近ではヒトラーもすべて悲劇的な結果に終わっているではないか」
 これは、イギリス人の歴史観からすると、非常に真っ当で正統的な解釈だ。伝統的なイギリス外交の勢力均衡策とは、大陸ヨーロッパが一つの強力なパワーで統一され、イギリスが孤立しないように、常に列強間の勢力をバランスさせる。これが近代イギリスの「勝ちパターン」だった。ジョンソンの主張は決して突飛なものではない。だからこそ、広範な支持を集めたのだ。

 (5)他に離脱派のスター的存在として、元保守党党首でこの3月までキャメロン内閣の労働・年金相だったイアン・ダンカン・スミス(彼の曾祖母は日本人)や、英国独立党(UKIP)の党首で演説の名手として名高いナイジェル・ファラージュがいる。

 (6)とはいえ、彼らを支持し、草の根に広がるサイレント・マジョリティとなって離脱派を形成しているのは、教育水準のあまり高くない庶民層の人びとだ。あるいは、グローバル化する経済構造において、成長から取り残された人びとと言い換えることもできる。
 今回の問題が世界的潮流の一部である所以だ。米国のトランプ旋風にも通じるものがあるのだ。事実、ジョンソンは離脱反対派から「イギリスのトランプ」と呼ばれている。
 世界的な外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」(3/4月号)の特集は、「反格差、反緊縮の動向にどう応えるか」というテーマだった。今やこれが、どこの国でも最大のテーマとなり、世界秩序の中心問題になってきた。当然、イギリスのEU離脱問題とも密接に関わっているのだ。

 (7)もう一つ、離脱派を支える代表的な勢力がある。それは、皮肉にも、経済格差を生み出す象徴とされるグローバル時代の申し子、ヘッジファンドに代表される「ニュー・マネー」と呼ばれるシティの新興金融機関だ。
 背景にあるのは、EU諸国で進んでいる一連の金融規制だ。リーマン・ショックを経験して、サブプライムローンに象徴される投機的な金融取引が大陸諸国とりわけ独仏で強い反発を呼び、金融取引や役員ボーナスに対する規制強化が唱えられた経緯がある。

 (8)イギリス国内で金融界の存在は大きい。そのイギリスのGDPの12%はロンドンの金融街シティで稼ぎ出されている。
 このシティの中核を占める大銀行や、イングランド銀行、そして王室に連なる富豪グループ、ファイナンシャル・タイムズやエコノミストなど経済メディアは「オールド・マネー」と呼ばれ、他の「エスタブリッシュメント」勢力と同様にEU離脱に反対している。

 (9)仮にイギリスがEUから離脱すれば何が起こるか。
  (a)短期的には、為替や株式市場は乱高下して、世界経済は嵐のようになることは間違いない。むろん、英国経済への影響も甚大だ。英財務省は「2年以内に少なくとも50万人が職を失い、ポンドの下落で物価は大幅に上昇する。労働者の収入も、2年以内に3%程度減少する」との試算を発表した。
  (b)ユーロの価値もガクンと下がる。イギリスはユーロ圏に入っていないが、イギリスとEUのつながりはユーロの基軸通貨としての価値を高めていた。ドルとの協調関係が保障されていたからだ。イギリスのEU離脱でえ、ユーロは数あるローカル通貨の一つに転落してしまう。
  (c)何より大きいのは、世界経済の「マーケットは果てしなくグローバル化し、統合されていく」という一方通行と思われてきた冷戦後の流れが逆回転し始めることだ。30年代のブロック経済化、80年代のサッチャリズムによるグローバル化など世界経済の構造転換をリードしてきたイギリスが、またも世界の先頭を切って、今度は市場をあえて狭くする方向に逆走することになる。
  (d)TPPに象徴される広域自由貿易圏、あるいはグローバルな金融市場のあり方が大きく変わる節目になる可能性もある。ヨーロッパの統合をモデルにしてきたASEAN諸国にとっても相当なインパクトだろう。世界中の国際的経済システムや様々な地域統合の枠組みに対する信頼も大きく揺らぎかねない。
  (e)経済だけでなく、世界秩序の大変動が起きる可能性もある。EU加盟国でも離脱に向けた動きが加速するだろう。そうなればEUは確実に立ち枯れしていく。そんな中、経済力を背景にEU内で発言力を高めているのがドイツだ。イギリスが抜けることで、「ドイツのためのEU」になることは間違いない。
  (f)こうした状況を歓迎しているのはロシアだ。常にEUとNATOの「東方拡大」を怖れてきたロシアは、EUが弱体化することでもっとも利益を得る。メルケルとプーチンの個人的関係もあり、ウクライナ紛争にもかかわらず、独露は近年になく親密になっている。ビスマルクがドイツを統一できたのはロシアの助けがあったからだ。ゴルバチョフのペレストロイカのおかげで東西ドイツが統一できた。第二次世界大戦の伏線になり、日本が見通しを誤る要因にもなった、あの独ソ不可侵条約も記憶の底から蘇るに違いない。この2国の結びつきが世界を大きく動かしてきた歴史があるのだ。こうした視点から見ること(中西輝政のいわゆる「歴史の土地鑑」)、こうした背景を知っておくことが現代の情勢分析でも重要だ。
  (g)大いに困るのは米国だ。イギリスを通じてヨーロッパに影響を与えていた米国は、その足場を失う。欧州大陸が米国の影響圏から離れ、ドイツの比重が大きくなり、地政学的にはロシアに引き寄せられてしまうことになる。それは、米国がもっとも怖れている事態だ。経済的にも、米国が主導するドル基軸体制や金融・貿易ルールのグローバル化に従わない、脱米的な経済圏に変質していこう。
  (h)日本にとっても、短期的には米国と同じように、日本のヨーロッパにおける「足掛かり」を失ってしまうことが大きい。日本企業がヨーロッパに進出する際はイギリスに拠点を置き、報道各社は欧州総局をロンドンに構えているのが象徴的だ。研究者の世界でも、イギリスの大学や研究機関の魅力は、いずれも大陸ヨーロッパとの地理的、政治経済的な結びつきによってイギリスの価値が高められていたのだ。

 (10)EU離脱をめぐる今回の動きによって顕在化した世界秩序の多極化傾向は、仮に国民投票で「残留」が決まったとしても、今後も国際社会を揺るがし続けるだろう。
 <例>イギリスは中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加をいち早く表明したが、これもEU離脱と背中合わせの関係にある。
 というのも、米国一極のグローバル社会では世界銀行(ADB)といった特定の機関にとかく機能が統合されていく。それに対して、中国があえて「機能がかぶってもかまわないではないか」とグローバル化の中での多極化を進める、という意思を示したのがAIIBだ。まさにポスト米国的な多極化時代の発想だ。イギリスが、その変化を敏感に感じ取ったのが、AIIBへの参加という決断だった。

□中西輝政(京都大学名誉教授)「「英国EU離脱」が世界を破滅させる 経済格差が蘇らせる“大英帝国の亡霊”」(「文藝春秋」2016年7月号)
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【TPP】は日本を貧困化させる ~米ウォール街が狙う日本の金融~

2016年06月22日 | 社会
 (1)「金融」はTPPでどのように扱われているか。
 TPPは金融危機の防波堤になりえず、むしろ危機を招く可能性がある。リーマン・ショックの反省から、世界は「行き過ぎた規制緩和」や「ルールの抜け穴探し」を是正する方向にうごいてきた。ところが、TPPの金融ルールでは逆流が起きている。安全・安心への配慮より効率・利益が重視されている。
 どういうことか。
 国境の壁を取り払い、資金の流れを阻害させることなく自由に流動させる金融を目指すというのがTPPだ。しかし、カネを扱う仕事は、野放図にしておくと事故や暴走が起きかねない。業者には厳格なルールを課すのが金融の宿命だ。リーマン・ショックは金融機関の暴走で起こった危機だった。失敗の教訓から米国では、議会が金融機関に誠実な業務を義務づけるさまざまなルールを設けた(「プルーデンシャル(忠実)原則」)。ところが、TPPではこの原則が後退している。

 (2)どの条項か。
 非常にわかりにくい書き方だが、TPPの本質を物語る記述が金融サービスの章にある。
 <締結国はプルーデンシャル理由に基づく措置の採用又は維持を妨げられない。この措置には金融機関又は越境金融サービス提供者が受託義務を負う投資家、預金者、証書保有者を保護するための、又は金融システムの信認性と安全性確保のためのものが含まれる。もし同措置が本協定上の諸規定に合致しない場合、同措置は同諸規定の下で締結国の責務及び義務を回避する手段として用いられてはならない>
 普通の人が読んでも、何のことかサッパリわからない。
 解説すると・・・・
 前段で、加盟国はそれぞれの国の責任でプルーデンシャル原則を金融に取り入れてかまわない、と言っている。預金者保護や金融システムの安全を護るための措置だからだ。
 ところが、後段でこの原則がひっくり返されている。「もし同措置が」で始まる文章を見ると、要するに「各国が設ける金融規制がTPP協定の規定とぶつかる場合」は「加盟国がTPPのルールに従わない手段にしてはならない」としている。つまり、TPP協定は金融の健全性より優先される、ということだ。
 プルーデンシャル原則はあっていい、しかしTPPに沿わない金融ルールはダメ、という規定だ。

 (3)TPPのルールが上位ということだ。
 6,000ページもある協定文書の数行に大事なことが、しかもわかりにく表現で書いてある。それがTPPの流儀だ。
 そもそもTPPの源流である4ヵ国(シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリ)の協定に「金融」は入ってなかった。米国が入り、12ヵ国参加型のTPPに改組する過程で、金融は投資と並んで協定項目となったのだ。
 金融資本など多国企業は、どこの国に行っても活動を妨げられることがあってはならない。金融も投資も「内国民待遇」を求めている。国内業者と同等の競争条件を与えることを各国政府は義務づけられた。競争力のある米国の銀行・証券、<例>シティバンクやゴールドマン・サックスなどが存分に力を発揮できるようにするためだ。そして、各国の法体系よりTPP協定を上位に置く。金融の暴走に歯止めを掛ける措置を政府が取ろうとしても、TPPのルールが優先する。外資が政府を訴えることもできる。まさに強者のためのTPPだ。
 なぜそんなことをするのか。
 アジア・太平洋のカネを取り込みたいからだ。米国は国際収支も財政も赤字。国内にカネが足りない。世界から資金を集め、それを運用して儲けるのがウォール街だ。勃興する太平洋地域の貯蓄は米国の銀行や証券会社が吸い上げてメシのタネにする。

 (4)リーマン・ショックはウォール街の金融資本のやり過ぎが原因だった。
 その反省に立ち、米国議会は法律で金融資本の活動を制限した。金融機関に説明責任と透明性を求める金融規制改革法(「ドッド・フランク法」)が2010年に成立した。ウォール街を包囲しようと呼びかける市民運動の高まりが背景にあり、「大きすぎて潰せない」という銀行優遇に終止符を打つ法律とされる。それでも金融資本は低金利政策で息を吹き返してきた。元気になると不自由な金融規制を押し戻そうとする。TPPはそのせめぎ合いの舞台だ。米国では、TPPの金融条項はドッド・フランク法を無力化するものとして問題視されている。大統領予備選挙で民主党のサンダース候補が善戦したのも、反ウォール街の姿勢を鮮明にしたからだ。

 (5)カネは経済に欠かせない燃料であ。しかし、取り扱いを誤ると火事や爆発を起こす。
 金融は一種の危険物だ。各国の金融当局は厳格なルールを設け、その国の金融システムを護り、「焦げ付き」が出ないよう目を光らせている。だから外資金融の荒稼ぎには警戒的だ。
 しかし、この国境を越えるマネーはすばしっこい。儲かると見ればドッと流れ込み、危ないとわかるといっせいに逃げ出す。流入すればバブルが起こるほど活気が出るが、逃げ出すと経済はペシャンコになる。稼いだカネまで持っていくので流入前より資金は減ってしまう。途上国市場は金融資本の草刈り場だ。地域経済の安定とか、投資先への責任という考えは金融資本にはない。貪欲に、いかに儲けるか。それが金融資本の行動原理だ。
 アジア通貨危機(1997年)の混乱がそうだった。
 マレーシアでは、マハティール首相(当時)が固定相場制に切り替え、外資の流出を食い止めた。プルーデンシャル原則に沿った独自の規制だった。
 しかし、今回「TPP優先」の規定が設けられたことで、こうした措置には微妙な問題が生じるだろう。TPP協定に触れる可能性だ。逃がそうとしたカネを止められ、「損をさせられた」と外資が訴えるかもしれない。TPPの規定は曖昧で、解釈の余地を残している。シロかクロかの判定は交渉で決まる。そうなると強いのは米国だ。各国は、独自の規制を設けることに躊躇することになりかねない。

 (6)日本への影響はどうか。
 気がかりなのは、国有企業章の附属文書だ。それぞれの国が民営化を留保(条約の適用を制限、または除外)する団体を指定している。唯一、日本だけが留保がない。米国でさえ連邦住宅金融抵当公庫や連邦住宅抵当公庫などの政府が支援する金融機関を留保に挙げている。同じような機関である(株)ゆうちょ銀行、(株)かんぽ生命、日本政策金融公庫に留保がないことは、民営化や外国資本の傘下になっても構わないと政府が判断したということを意味する。
 ウォール街に狙われる。
 米国は、対日年次改革要望書などで政府の後ろ盾がある金融機関を問題にしてきた。郵貯・簡保の次は共済と言われている。農協が扱うJA共済の資金規模は52兆円ある。在日米国商工会議所は、「共済等と金融庁監督下の保険会社の間に平等な競争環境の確保を」と要望している。つまり、「共済の優遇をやめろ」と言っている。JA共済に限らず県民共済などは庶民の使い勝手がよい小口保険サービスとされてきた。郵貯・簡保を問題にしたのと同じやり方で、共済を攻めてくるだろう。
 それぞれの国にある独自の制度を認めないというか。
 米国は自分に都合の悪い制度を「非課税障壁」と非難する。共済の先には、300兆円超と言われる日本企業の内部留保や日銀の緩和マネーもあると見られる。こうした資金が日本市場から流出すれば、国内の貧困化が進む。難解なTPP協定の条項には、米政府を背後から動かす金融資本の狙いが込められている。

□和田聖仁(弁護士/TPP交渉禁止・違憲訴訟の会副代表)/構成:山田厚史(ジャーナリスト、デモクラTV代表)「米ウォール街が狙う日本の金融 ~デモクラTV共同企画 TPPの闇を斬る 第6回~」(「週刊金曜日」2016年6月10日号)
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 【参考】
【TPP】の闇:遺伝子組み換え食品 ~不安だらけな“食の安全”(2)~
【TPP】の闇:食品添加物 ~不安だらけな“食の安全”~
【TPP】の闇 ~格差を拡大した米韓FTA~
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【佐藤優】天皇制を作った後醍醐、天皇制と無縁な沖縄~網野善彦『異形の王権』~

2016年06月21日 | ●佐藤優
 (1)網野善彦(1928-2004年)は、日本中世史研究に民俗学、民族学、図像学(イコノグラフィー)の成果を学際的に取り入れて、新解釈を提示した。傑出した知識人だ。『異形の王権』は、南北朝時代の後醍醐天皇(1288-1339年)に焦点を定め、その時代を読み解いたユニークな作品だ。
 『異形の王権』は、深刻な問題以外に、知的好奇心を満たすエピソードがたくさん盛り込まれている。その意味では、読者サービスについてもよく考えて書かれた作品だ。
 <例>中世において、女性の一人旅が多かったが、想定されるリスクに対して、どう対処していたのか。・・・・この謎を網野はこう解き明かす。
 <こうした女性の一人旅に当たって、当然おこりうる危険を、彼女たちはどのようにして乗り切っていたのか、という疑問が直ちに生じる。それは時代を遡れば遡るほど、一層大きかったに相違ないからである。これに完全な解答を出すことはたやすくないが、私はこうした一人で旅をする女性の場合、性が解放されていたのではないか、と考える。『御伽草紙』の「物くさ太郎」に「辻取とは、男もつれず、輿車にも乗らぬ女房の、みめよき、わが目にかゝるをとる事、天下の御ゆるしにて有なり」とあることは周知のとおりである。道を行く女性に対する女捕、辻捕は『御成敗式目』をはじめ法令でしばしがきびしく禁じられているにもかかわらず、一方では天下の公許ともいわれているのである。これは伴もつれず、輿にも乗らないで道を歩く女性--一人で旅する女性が、男に「捕られる」ことをむしろ当然とする慣習があったことを前提にしなくては理解できないことではなかろうか。もちろんそれが強姦になり、付随する騒ぎがおこれば、さきの法令が発動したであろうが、圧倒的に多くの場合は、問題にされることもなく打ち過ぎたに相違ない>
 旅の女性に対する「女捕」が、半ば公認され、旅行中のセックスに対するタブー感が稀薄であったので、女性の一人旅が可能であったと結論づける。

 (2)本書で考察の中心となる後醍醐とは、いったいどのような人物か。網野によれば、
 <たしかに後醍醐は異常な性格の持ち主であった。佐藤(進一、歴史学者)はその性格の特徴を「既成の事実を観念的に否定する」点に求めつつ、「不撓不屈と謀略、したがって多分の柔軟性をもった目的主義を身上とする」と評している。目的のためには手段を選ばず、観念的、独裁的、謀略的で、しかも不撓不屈。まさしくヒットラーの如き人物像がここに浮かび上がってくるが、このような異常な性格の天皇を時代の表面に押し出した14世紀の日本列島の社会の激動する状況を、その深部から明らかにすることなしに、またその中で後醍醐を突き動かした、前近代において恐らくは最も深刻な天皇の地位の危機の実情を解明することなしに>
 南北朝時代の前後で日本の社会構造が変化したことを理解できないのである。

 (3)日本の特徴は、政治と社会と文化に天皇が埋め込まれていることだ。
 天皇制という言葉は、そもそもソ連のモスクワに本部を置いていたコミンテルン(共産主義インターナショナル)が作成した「32年テーゼ」によって普及した概念だ。天皇制という言葉の中に、制度であるから改変可能であるという前提がある。しかし、日本人の社会と文化と天皇(皇統)は深く結びついており、人為的に改変することは不可能だ。
 このように天皇が日本の社会と文化に深く突き刺さり、容易に変更できるメカニズムではなく、改変不能なシステムになったのは、後醍醐によるところが大きい。
 この点について、網野は以下の指摘をする。
 <その「権威づけの装置」の一つとして、儀礼を「家業」としつつ、天皇は江戸時代を通じてその地位を保ちつづけた。なぜそうなったか、南北朝から戦国の動乱の中でなぜ天皇が消滅しなかったのか。これはなお未解決の問題といわざるをえないが、それがさきの権威の構造の転換の仕方に関わっていることは間違いなく、さらにまた後醍醐による「異形の王権」の出現と、その執念が南朝として、細々とではあれ存続しつづけたことに多少とも規定されていることは否定できない。室町幕府がついに南朝を妥当し切ることができず、北朝との合一という形で動乱を収拾せざるをえなかった事実を、われわれは直視する必要がある。室町期以降、天皇家が生きのびた直接の出発点がここにあるとすれば、そこに後醍醐の執念の作用を認めないわかにはいかないのである>

 (4)南朝と室町幕府によって支援された北朝の力関係を比較すれば、軍事的にも経済的にも北朝の方が圧倒的に強かった。万世一系という観点からも、北朝の天皇も、持明院統という正真正銘の皇統に属する。
 にもかかわらず、室町幕府は南北朝の統一という形で、王朝分裂を収拾しなくてはならなかった。後醍醐は、死を前にして「玉骨はたとえ南山(奈良県吉野山)の苔に埋もるとも、魂魄は常に北閥(京都)の天を望まん」と述べた。天皇の御陵は南向きに建てられる事例が多いが、後醍醐の陵は、後醍醐の遺言に従って京都を臨む北向きに建てられている。権力の正当性に死後も固執する後醍醐の姿勢を、室町幕府は無視することができなかったのだ。

 (5)後醍醐が果たした社会的機能について、網野はこう述べる。
 <後醍醐は、非人を動員し、セックスそのものの力を王権強化に用いることを通して、日本の社会の深部に天皇を突き刺した。このことと、現在、日本社会の「暗部」に、ときに熱狂的なほどに天皇制を支持し、その権力の強化を求める動きのあることとは決して無関係ではない、と私は考える。いかに「近代的」な装いをこらし、西欧的な衣裳を身につけようと、天皇をこの「暗部」と切り離すことはできないであろう。それは後醍醐という異常な天皇を持った、天皇家の歴史そのものが刻印した、天皇家の運命なのであり、それを「象徴」としていただくわれわれ日本人すべても、この問題から身をそらすわけには決していかないのである。
 天皇と天皇制の問題は、こうした形でいまもなおわれわれの前に存在しつづけている。その意味でかつて「皇国史観」が後醍醐に与えた「中興の帝」という評価、あるいは近年村松剛が強調する「後醍醐帝なくして明治大帝なし」という評価とは全く逆の視点から、天皇史上、特異な位置を占める後醍醐の果たした役割については、さらに徹底した学問的追究がなされなくてはなるまい>

 (6)網野の言説は、日本人が普段、意識するよりもはるかに深い位相の所に天皇が突き刺さっているということを明らかにした天で画期的な意味がある。
 網野が『異形の王権』の初版を刊行したのは1986年だった。あれから30年が経ったが、日本社会の「暗部」にとどまらず、ヘイトスピーチを含む「行動する保守」という表象で「ときに熱狂的なほどに天皇制を支持し、その権力の強化を求める動き」が強まっていることは間違いない。

 (7)(6)と同時に、網野が見落としていた要素が、日本の国家統合に深刻な危機をもたらしている。それは沖縄問題だ。
 「天皇と天皇制の問題は、こうした形でいまもなおわれわれの前に存在しつづけている」と網野は強調するが、厳密に言うならば、これは沖縄以外の日本に存在し続けている問題だ。
 沖縄人の圧倒的多数は、天皇信仰を日本人と共有していない。むろん、沖縄人にも日本に過剰同化している人びとが、ごく一部だけ存在し、その人たちは日本人以上に日本人的に振る舞おうとする。もっとも、こういう人たちが、日本人から同等のパートナーと認められていないという体験をすると、無気力になるか、あるいは極端な沖縄独立論に振れる。
 南北朝時代を通じて明らかになったのは、日本では王朝交替が起きないという現実だ。
 これに対して、沖縄人の心には天の意思が変われば、地上の王朝も変化するという中国流の易姓革命思想が深く焼き付いている。『異形の王権』の言説では、沖縄を理解できないということを頭の片隅に置いておくと、沖縄問題の構造が見えてくる。

□佐藤優「網野善彦/異形の王権 ~ベストセラーで読む日本の近現代史 第34回~」(「文藝春秋」2016年7月号)
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 【参考】
【佐藤優】外交官の論理力、安倍政権と共産党、研究不正が起きるシステム
【佐藤優】遅読家のための読書術、電気の構造、本屋大賞
【佐藤優】外山滋比古/思考の整理学
【佐藤優】何が個性で、何が障害か
【佐藤優】大宅壮一ノンフィクション賞選評 ~『原爆供養塔』ほか~
【佐藤優】英才教育という神話
【佐藤優】資本主義の内在的論理
【佐藤優】米国の戦略策定、『資本論』をめぐる知的格闘、格差・貧困問題の起源
【佐藤優】偉くない「私」が一番自由、備中高梁の新島襄、コーヒーの科学
【佐藤優】フードバンク活動、内外情勢分析、正真正銘の「地方創生」
佐藤優】日本の政治エリートと「天佑」、宇宙の生命体、10代が読むべき本
【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論
【佐藤優】第三次世界大戦の可能性、現代東欧文学、世界連鎖暴落
【佐藤優】司馬遼太郎の語られざる本音、深層対話、米政府による暗殺
【佐藤優】著名神学者のもう一つの顔 ~パウル・ティリヒ~
【佐藤優】総理が靖国参拝する理由、NPO活動の哲学やノウハウ、テロ対策の必読書
【佐藤優】今後、起こりうる財政破綻 ~対応策を学ぶ~
【佐藤優】社会の価値観、退行する社会
【佐藤優】夫婦の微妙な関係、安倍政権の内在的論理、警察捜査の正体
【佐藤優】情緒ではなく合理と実証で ~社会の再構築~
【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
【佐藤優】中国株式市場の怪しさ、イノベーションの障害、ホラー映画の心理学
【佐藤優】普天間基地移設問題の本質、外務省犯罪黒書、老後に快走!
【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~
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【佐高信】激しい創価学会批判で当選した菅義偉官房長官

2016年06月20日 | 社会
 (1)自民党が、“創価学会党”である公明党と連立政権を組んだのは1999年だ。
 だが、その3年前には、自民党の機関誌「自由新報」の「新進党=創価学会ウォッチング」で、8回にわたり学会批判が掲載された。1996年年頭号から1997年10月21日付け号まで。内藤国夫・ジャーナリストと俵孝太郎・政治評論家が交互に執筆した。
 連載の開始に当たって同紙編集部は、新進党の党首選挙が小沢一郎と羽田孜の対決になったことに触れ、「声を大にしていわなければならないこと」として、「新進党が政権を担うに足る国民政党をめざすとするならば、党の根本にかかわる問題として党首選挙で最大の争点にならなければならないはずの創価学会との関係について、なんの論争も起きていない点」を指摘している。
 この指摘は、それから20年後の今、そのまま自民党にはね返ってくる問題だ。

 (3)驚くべし、このシリーズの40回(1996年11月5日付け)で内藤は、自分の居住地の衆議院神奈川2区で「当選が、至難視された新人候補の菅義偉氏」を応援した、と報告している。
 内藤は、菅を「小此木彦三郎通産大臣(当時・故人)の秘書官を経て横浜市議を二期務めたあと代議士への飛躍に挑戦した侠気(おとこぎ)にあふれる男」と紹介している。
 内藤は、それまで総選挙レベルで自民党の候補者に投票したことはなかった。それが、妻子を説得してませ菅に投票させたのは、菅が「選挙期間中、党本部がハラハラするほど厳しい創価学会批判演説をやってのけた」からだ。
 「当確です」
の連絡を受けて、内藤は菅の選挙事務所まで出かけ、菅の当選御礼の挨拶を聞いた。笑顔ではなく悲壮感さえ漂っているように見えたのは、同区で競った相手が学会出身で、現職の上田晃弘だったからだろう。学会は連日1万人前後の全国動員をかけて上田を全面支援した。
 表情を引きつらせながら菅は次のように語った。
 「私は選挙期間中、政教分離の大切さをずっと訴え続け、創価学会という巨大組織と真っ向から戦った。私の学会批判選挙に対する妨害があまりにも激しく、政党同士の戦いとは思えなかった。戦った相手は宗教団体だったと私は思っている。こういう選挙はもう二度としたくない」
 <例>選挙期間中の同年10月18日15時過ぎ、選挙カーに乗った菅が演説していると、
 「創価学会を批判するな」
と中年の女性が4、5人絶叫しながら、乗っている自転車もろとも選挙カーにぶつかってきた。また、割れんばかりに窓ガラスを叩いた。
 身の危険を感じた菅陣営は、最終日の19日に選挙カーの前後に警備車を2台つけて突発事件の発生に備えた、という。

 (4)菅はちょうど20年前のこの時の体験を忘れたのか?
 それとも学会の怖ろしさが身にしみて、以後、自ら学会への接近を図ったのか?

 (5)周知のように、官房長官として、いま安倍晋三内閣を支える菅は、自公「合体」政権の立役者として、佐藤浩・創価学会副会長と太いパイプを持ち、「政教一致」の政治を切り盛りしている。
 「政教分離の大切さをずっと訴え続け、創価学会という巨大組織と真っ向から戦った」かつての“初心”は、とうの昔に捨て去ったらしい。
 泉下の内藤は、それをどう思っているだろうか。
 自民党と創価学会という水と油との野合の内幕を暴いた佐高信『自民党と創価学会』(集英社新書)は版を重ねているが、菅のような鉄面皮の政治家や、彼と手を組んだ学会の信者には届いていないらしい。

□佐高信「激しい創価学会批判で当選した菅義偉 ~新・政経外科~」(「週刊金曜日」2016年6月17」日号)
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 【参考】
【佐高信】舛添を支援した自公と連合東京の責任
【佐高信】自民党と創価学会、水と油の野合
【戦争】おやじ、一緒に牧野村へ帰ろう ~戦没者の遺族の声~
【政治】岸信介の悪さの研究
【読売】「不正」を隠蔽する「不適切」という表現 ~東芝・不正経理~
【人】安倍首相とやしきたかじん“純愛妻”の共通点 ~百田尚樹~
【政治】巨大脱税疑惑隠しの自分勝手解散 ~安倍晋三~
【政経】竹中平蔵とアベノミクス ~ブラック国家ニッポン~
【本】『海賊と呼ばれた男』の著者、百田尚樹の実像 ~本屋大賞~
【震災】世論を買い占める東電、恥ずかしい広告を出す政府~佐高信と寺島実朗の対談~

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【片山善博】教育、図書館、議会の力 ~カーネギー自伝~

2016年06月20日 | 批評・思想
 鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの波乱に満ちた人生からは、さまざまな教訓を引き出せる。それは時代や読む人の関心によって異なる。
 彼は、教育への投資や公共図書館の重要性を説く。貧しくて学校に通えなかったカーネギーは、必要な知識を図書館で得た。その経験から、意欲のある少年少女のためにお金でできる最も良いことは、図書館を充実させることだと言う。経済格差が広がる現下のわが国でも、図書館の意義はすこぶる大きい。
 地方自治にも一家言ある。故あってか米国ではなく故郷の英国を例に取り、高潔で公共心のたくましい議員によって運営される自治体を高く評価する。
 批判されることの多いわが国の地方議会の在り方を考える上でとても参考になる。

□片山善博(慶應義塾大学教授)「教育、図書館、議会の力 ~名著未読再読~」(「週刊ダイヤモンド」2016年6月25日号)の「Book Reviews」から引用
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 【参考】
【片山善博】らの鼎談 違法性がなくても知事の適性がない ~舛添は日本の恥(2)~
【片山善博】&増田寛也&上脇博之 舛添知事は日本の恥だ ~辞任勧告~
【片山善博】舛添都知事問題は自治システム改善の教材
【社会】防災体制の点検、真剣に ~平素の備えが大切~
【片山善博】口利き政治の弊害と政治家本来の役割
【片山善博】選挙権年齢引下げと主権者教育のあり方
【片山善博】TPPから見える日本政治の悪弊 ~説明責任の欠如~
【片山善博】政権与党内の議論のまやかし ~消費税軽減税率論議~
【経済】今導入すると格差が拡大する ~外形課税=赤字法人課税~
【片山善博】【沖縄】辺野古審査請求から見えてくる国のモラルハザード
【片山善博】川内原発再稼働への知事の「同意」を診る
【片山善博】違憲と不信で立ち枯れ ~安保法案~
【片山善博】【五輪】新国立競技場をめぐるドタバタ ~舛添知事にも落とし穴~
【片山善博】「ベトナム反中国暴動」報道への違和感
【片山善博】文部科学省の愚と憲法違反 ~竹富町教科書問題~
【片山善博】都知事選に見る政党の無責任 ~候補者の「品質管理」~
【片山善博】JR北海道の安全管理と道州制特区
【政治】地方議会における口利き政治の弊害 ~民主主義の空洞化(3)~
【政治】住民の声を聞こうとしない地方議会 ~民主主義の空洞化(2)~
【政治】福島県民を愚弄する国会 ~民主主義の空洞化(1)~
【社会】教育委員は何をなすべきか ~民意を汲みとる~
【社会】教育委員会は壊すより立て直す方が賢明
【社会】「教員駆け込み退職」と地方自治の不具合
【政治】何事も学ばず、何事も忘れない自民党 ~公共事業~

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【医療】ブタの心臓を人間へ ~異種移植~

2016年06月20日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)「生命倫理」が壁となり、技術の暴走を防ぐ役割を果たしてきた二つの分野で、その壁が破られようとしている。
  (a)人間の受精卵の遺伝子操作。
  (b)他の動物の組織や臓器を人間に移植する異種移植。

 (2)(1)-(a)については、2015年、中山大学(中国)の研究者がゲノム編集技術を用いて人間の受精卵の遺伝子操作を行い、その成果を書いた論文を科学誌に拒否されるなど物議を醸した。
 それがきっかけになり、2015年12月、20ヵ国の科学者が集まり、国際会議が開かれ、その結果、基礎研究に限定したものの受精卵操作を容認した。
 日本でも4月22日に内閣府・生命倫理専門調査会が、やはり基礎研究に限定して容認する報告をまとめることが明らかになった。

 (3)(1)-(b)については、日本では「異種移植の実施に伴う公衆衛生上の感染症問題に関する指針」に基づき、これまで事実上、異種移植を認めてこなかった。
 しかし、このたび厚生労働省の研究班が、この指針を見直すことにし、新指針を同省審議会にかけることになった。対象は、ブタの膵臓にあるランゲルハンス島(膵島)のⅠ型糖尿病患者への細胞移植だ。Ⅰ型糖尿病患者は生涯にわたってインシュリンを注射しなければならないが、その負担が軽減されるというのが理由だ。

 (4)これまで異種移植が認められてこなかった背景には、
  (a)拒絶反応
  (b)ブタのDNAに内在するウイルスの遺伝子が人間に持ち込まれる危険性
の二点がある。
 (a)に係る研究は二つ。
  ①ブタの細胞の遺伝子を操作する方向で開発が進められてきた。米ハーバード大学の研究チームが取り組んできたのが、ゲノム編集技術を用いてブタの細胞の表面にあるマーカー遺伝子を破壊し、人間の免疫細胞がブタの細胞を異物と認識しないようにするもの。
  ②ブタの細胞の表面を特殊な膜で包み、免疫細胞が攻撃しないようにするやり方。国立国際医療研究センターがこの方法での異種移植を計画している。

 (b)の問題では、厚労省研究班は、これまで海外で行われたブタの膵島細胞移植の臨床研究では人間への感染例が見られなかったということを、異種移植容認の根拠にしている。
 しかし、それだけでは移植例が少なく、期間も短く、リスクが大きい。
 そのため、今回の指針改定では、30年の経過観察期間を設定する予定だ。

 (5)そこで今、注目されるののがゲノム編集技術を用いたウイルス遺伝子の不活化だ((4)-(a)-①)。
米ハーバード大学の研究チームが、ブタのウイルス関連遺伝子を同時に62個破壊し、ウイルスの感染力を1,000分の1にしたと報告している。
 2016年3月には、大塚製薬工場の研究チームが、アルゼンチンで糖尿病患者へのブタの膵島細胞移植を行い、国内の学会で「効果があった」と報告している。
 まだ日本国内では倫理違反になるため、海外で移植を行ったようだが、これも別の意味で倫理違反と言われても仕方ない行為だ。
 
 (6)米ミズーリ出会い学の研究チームは、「ブタ繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)」というウイルス感染症にかかりにくいブタを開発している。
 中国の企業BGIは、ミニブタより小さな「マイクロブタ」を開発し、ペットとして売り込もうとしている。
 ブタのゲノム編集が活発化すると、ブタの心臓の人間への移植へと進む可能性がある。すでにブタの心臓をヒヒに移植し、2年半生存させた、という報告があって、膵島の次は心臓だと移植医療は考えているからだ。

□天笠啓祐「なぜ今、異種移植を容認? ゲノム編集技術で進むリスクの抑制」(「週刊金曜日」2016年6月3日号)
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【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ

2016年06月19日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)テレビ(ビデオ)ゲームは子どもの発達に悪い・・・・という認識は根強い。
 しかし米国では、注意欠陥多動障害(ADHD)の症状を改善する「医療用ゲーム」の承認をめざす臨床試験が始まった。

 (2)2016年2月、注意障害の専門誌にADHDの注意力を高めるゲーム「ATENTIVmynd」のプレ臨床試験に関するレビューが掲載された。試験では、
  (a)8~12歳のADHD小児40人を2群に分け、
   ①ゲームを提供・・・・8週間、週に1時間もくしくは20分×3回のゲームで遊ぶ。
   ②通常のケアを提供
  群とも3ヶ月間、経過観察した。
  (b)両群とも3ヶ月間、経過観察した。3ヶ月後、医療者と両親が、ADHDの症状評価スコアを使って日常生活を採点した結果、(a)-①の場合、
   ①医療者の評価では36%
   ②両親の評価で31%
改善していた。具体的には、衝動的な行動が有意に改善し、宿題や算数のテスト、国語の文法の間違いが減ったという。
  (c)このゲームの肝は、
    「目標に向けて注意や行動を制御する機能:実行機能」
の訓練ができること。いわゆる「ラン&ジャンプ系ゲーム」の一種で、用意された山あり谷ありのコースをキャラクターが走る。ゲーム自体はシンプルだが、要所でアイテムを獲得し、不要なものをパスする注意力と認知的制御が要求される。タブレット用アプリなので、日常生活に取り入れやすい点もポイントだ。

 (3)もうひとつの「Project:EVO」というゲームは、2016年5月から承認をめざす最後の臨床試験を開始。8~12歳のADHD小児が参加する。
 こちらもマルチタスクを要求されるラン&ジャンプ系ゲームで、処理の優先順位をつけ、課題を切り替える能力の訓練が可能だ。

 (4)ADHDの行動改善は、これまで行動療法や薬物療法が主流だったが、最近は「実行機能」の改善をめざす認知トレーニングが注目されている。(2)と(3)の2つのゲームもその一つ。
 ゲームで獲得した「実行機能」を生活にどう落とし込むか、という課題はあるが、近い将来、「ゲーム療法」がADHD支援の必須アイテムになるかもしれない。

□井出ゆきえ(医学ライター)「ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ--米国 ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.2~」(「週刊ダイヤモンド」2016年6月4日号)
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 【参考】
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
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【佐藤優】新しい帝国主義時代、地図の「四色問題」、ベストセラー候補の研究書

2016年06月19日 | ●大岡昇平ノート
   
 ①池上彰『知らないと恥をかく世界の大問題7 Gゼロ時代の新しい帝国主義』(角川新書 820円)
 ②一松信『四色問題』(講談社ブルーバックス 980円)
 ③淀川裕美『保育所2歳児クラスにおける集団での対話のあり方の変化』(風間書房 6,500円)

 (1)①は、新しい帝国主義時代の到来という切り口から、国際情勢を掘り下げて分析している。
 <アメリカは銃社会でもあります。そして市民に銃を所持することについての権利を保護することを訴える「全米ライフル協会」(NRA)は、共和党右派とのつながりを強めています。
 アメリカ合衆国憲法修正第2条には「規律ある民兵は自由な国家の安全にとって必要であるから、市民が武器を保有し携帯する権利はこれを侵してはならない」とあります。
 憲法が、銃を持つことの正当性の根拠となっているのです>
 米国憲法の基本理念に、自由に武器を保有し、携帯する権利が含まれていることを理解しないと、米国で銃規制が困難な事情が分からなくなる。

 (2)地図は4色で完全に塗り分けることができるという「四色問題」は、事実として誰もが認めるが、証明は極めて難解だ。ようやく1976年に米イリノイ大学のケネス・アッペル、ヴォルフガング・ハーケン両教授が、コンピューターを用いて解決した。
 <四色問題のような永年にわたる歴史的な大難問となると、「解決された」といっても、本当に完全かという疑念がつきまとう。まして計算機による大量検査の結果とあれば、当然その追試が欠かせない。もっとも前出の解説記事で竹内外史が指摘している通り、「計算機で証明するのでは正しいかどうか分からないという人もあるが、それはもちろん当たらない。証明をチェックするのと同様に、計算機のプログラムをチェックすることが出来るのだから問題はない」のである>
 という著者の指摘には説得力がある。

 (3)③は、博士論文をベースにした研究書だが、抜群に面白く、知的刺激に富む作品だ。
 <本研究では、バフチンの言語論を参考に「対話」という語を用いる。バフチン(2002)によれば、「ことばを用いたあらゆる交通、ことばによる相互作用は、発話の交換という形態のうちに進む。つまり、対話[ダイアローグ]という形態をとる」>
 著者は、ロシアの文芸批評家で哲学者のバフチンの方法で、保育所における2歳児のコミュニケーションについて分析する。2~3歳児が示す確認、伝達、模倣というコミュニケーションが作り出すタペストリーのような世界は実に面白い。
 著者が、本書をベースに新書サイズの一般書を書けば、ベストセラーになることは間違いない。

□佐藤優「ベストセラー候補の研究書 ~知を磨く読書 第154回~」(「週刊ダイヤモンド」2016年6月25日号)
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 【参考】
【佐藤優】ねこはすごい、アゼルバイジャン、クンデラの官僚を描く小説
【佐藤優】外交官の論理力、安倍政権と共産党、研究不正が起きるシステム
【佐藤優】遅読家のための読書術、電気の構造、本屋大賞
【佐藤優】外山滋比古/思考の整理学
【佐藤優】何が個性で、何が障害か
【佐藤優】大宅壮一ノンフィクション賞選評 ~『原爆供養塔』ほか~
【佐藤優】英才教育という神話
【佐藤優】資本主義の内在的論理
【佐藤優】米国の戦略策定、『資本論』をめぐる知的格闘、格差・貧困問題の起源
【佐藤優】偉くない「私」が一番自由、備中高梁の新島襄、コーヒーの科学
【佐藤優】フードバンク活動、内外情勢分析、正真正銘の「地方創生」
佐藤優】日本の政治エリートと「天佑」、宇宙の生命体、10代が読むべき本
【佐藤優】組織成功の鍵となる人事、ユダヤ人の歴史、リーダーシップ論
【佐藤優】第三次世界大戦の可能性、現代東欧文学、世界連鎖暴落
【佐藤優】司馬遼太郎の語られざる本音、深層対話、米政府による暗殺
【佐藤優】著名神学者のもう一つの顔 ~パウル・ティリヒ~
【佐藤優】総理が靖国参拝する理由、NPO活動の哲学やノウハウ、テロ対策の必読書
【佐藤優】今後、起こりうる財政破綻 ~対応策を学ぶ~
【佐藤優】社会の価値観、退行する社会
【佐藤優】夫婦の微妙な関係、安倍政権の内在的論理、警察捜査の正体
【佐藤優】情緒ではなく合理と実証で ~社会の再構築~
【佐藤優】中曽根康弘、21世紀の資本主義分析、北樺太の石油開発
【佐藤優】日本人の思考の鋳型、死刑問題、キリスト教と政治
【佐藤優】中国株式市場の怪しさ、イノベーションの障害、ホラー映画の心理学
【佐藤優】普天間基地移設問題の本質、外務省犯罪黒書、老後に快走!
【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~

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【食】市販のトマトケチャップの添加物 ~原材料が問題~

2016年06月18日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)ケチャップとは、「野菜などの材料をピューレ状にして調味したソース」を指す。
 だが、今やケチャップとはトマトケチャップのことだと理解されているほど、トマトケチャップは人気の調味料だ。ピザやパスタなどには不可欠で、消費世界一は米国だ。日本でも人気は高く、消費トップはポリ容器500g入りを1人当たり年間1.32本消費している奈良県だ【注1】。

 (2)トマトケチャップは、完熟したトマトを
   →粉砕
   →裏ごしして種子や果皮を取り除き、濃縮させてピューレを作る
   →食塩、砂糖、食酢、種々の香辛料およびタマネギまたはニンニクなどを入れて調味する
という工程で作られる。
 トマトは、次のように定義される【注2】。
  (a)濃縮トマトに食塩、香辛料、食酢、砂糖類及びたまねぎ又はにんにくを加えて調味したもので可溶性固形分が25%以上のもの
  (b)(a)に酸味料(かんきつ類の果汁を含む。)、調味料(アミノ酸等)、糊料等(たまねぎ及びにんにく以外の農畜水産物並びに着色料を除く。)を加えたもので可溶性固形分が25%以上のもの

 (3)だから、トマトケチャップに食塩・砂糖・食酢などが使われるのは当然なのだが、食の安全を考える時に気になるのが、これら原材料の素性だ【注3】。
  (a)砂糖と一緒に使われるぶどう糖果糖液糖は、異性化糖と呼ばれる「ぶどう糖と果糖の混合糖」だ。原料はサツマイモ・ジャガイモ・トウモロコシで、現在、日本が輸入している異性化糖の主流原料は安価なコーン・スターチ。砂糖の1.2~1.7倍もの甘みを持ち、「取り扱いや保存が楽、価格が安い」とメーカーにとってはいいことずくめなのだが、
   ①体内に吸収されやすく、急激な血糖値上昇を引き起こしやすい。
   ②長期摂取が腹部での体脂肪異常増加やトリグルセリド(肝臓で作られる脂質の一種)を増加させることが指摘されている。

  (b)醸造酢も、本来の「醸造=発酵・熟成」という伝統製法で作られた酢であるという確証は何一つない。小麦やトウモロコシなどの穀類で作られた酢でも、醸造アルコールを混ぜて作った酢でも、JAS法の定義ではみんな「醸造酢」だ。純米酢でない限り醸造アルコールが使用されていて、醸造アルコールの主原料であるサトウキビの搾りかすは、多量に摂取すると、脳の麻痺や中毒性が指摘されている。

  (c)原材料であるトマトは、日本でもトマトケチャップの生産に輸入トマトペーストやトマトピューレを多く使用している。ここで問題なのは、輸入ペーストなどに含まれる添加物だ。日持ちをよくするため塩化カリウム(ソルビン酸カリウム)が使用されていると言われているが、仮に使用され残留していたとしても製造会社には表示義務がない。また、とまと栽培時のホルモン剤「トマトトーン」についても、今なお使用疑惑は払拭されていない。

  (d)甘味に使われる異性化糖の原材料コーン・スターチや醸造酢の原材料に使われる小麦やコーンは9割が米国からの輸入穀物。遺伝子組み換え大国からの輸入穀物がノンGMO(非遺伝子組み換え)とはとうてい考えられない。輸入に頼る食品で生産される加工食品の安全性を考える時、消費者がその「素性」を正確に知ることは困難だ。

 (4)トマトの赤い色は「リコピン」というファイトケミカルだ。高い抗酸力が活性酸素を除去し、老化や病気予防に働く。加熱すると含有量が増加するため、トマトケチャップやトマトピューレは本来優れた健康食品なのだ。
 しかし、原材料の素性が不確かなトマトケチャップは、遺憾ながら、食べても健康に必ずしもつながらないのだ。

 【注1】「地域の入れ物」
地域の入れ物
 【注2】「トマト加工品品質表示基準」(最終改正 平成23年9月30日消費者庁告示第 10号)
トマト加工品品質表示基準
 【注3】市販のトマトケチャップの原材料
 <例1>カゴメ「カゴメトマトケチャップ」・・・・トマト、糖類(砂糖、ぶどう糖果糖液糖)、醸造酢、食塩、たまねぎ、香辛料
 <例2>キッコーマン食品「デルモンテ トマトケチャップ リコピンリッチ」・・・・ トマト、糖類(ぶどう糖果糖液糖、砂糖)、醸造酢、食塩、たまねぎ、でん粉、香辛料

□沢木みずほ(薬食フードライフ研究家)「トマトケチャップは添加物と無縁だ--と思っているアナタへ」(「週刊金曜日」2016年6月10日号)
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【TPP】の闇:遺伝子組み換え食品 ~不安だらけな“食の安全”(2)~

2016年06月17日 | 医療・保健・福祉・介護
 (7)なぜ遺伝子組み換え(GM)食品を推進するのか。
 米国で商品化されて20年、生物特許という新たな分野が確立され、種子が特許となった。
 GMの種子は大きく分けると2種類ある。
  (a)食べた虫が死ぬ農薬のような物質を細胞内に作る種子。
  (b)除草剤でも枯れない耐性を持つ種子。
 トウモロコシ、大豆、ナタネなどに応用されている、良い種子を皆で分かち合う、というのではなく、特許を持つ種子を囲い込み、農産物の市場を支配する戦略だ。

 (8)GMで農薬がいらなくなる・・・・わけではない。
 その逆だ。世界最大の種子会社となったモンサントが創った種子は、強力な除草剤「ラウンドアップ」と併用される。ラウンドアップを散布すると、GM植物だけが残る、という使い方だ。農薬と種子の両方を売るビジネスが世界で展開されている。今や種子市場において、次の上位3社で、GM種子は世界の53%を支配している。
   モンサント(27%)
   デュポン
   シンジェンタ

 (9)農薬メーカーが遺伝子組み換えの種子を作っているのだ。
 生物特許は米国の食料戦略に組み込まれている。巨大化した種子産業は、豊富な資金で他国の種子会社を買収する。種子が寡占化されると、GM種子しか手に入らなくなる。
 すでにインドの綿花で起きている。
 種子で食料を支配し、食料で世界を支配する戦略だ。

 (10)日本は大丈夫か。
 心配だ。作付けが始まるかもしれない。日本で認可されたGM作物は、環境影響評価や食の安全評価も済ませている。住民や自治体が作付けに反対して止めているのが現状だ。
 日本は米国に次ぐ世界第二の消費国だ。TPPで新たなルール作りが始まれば、始めたい業者に追い風になる。政府は、農業特区で株式会社による農業を認める構えだ。種子メーカーは日本に子会社を設け、作付けを始めることもできる。種子会社が米国に買収されることも起こる。

 (11)世界の動きはどうだろうか。
 GMの種子は、北米・南米が中心で、インドなどアジアの途上国に広がっている。欧州は、慎重な国が大勢だが、スペインや東欧で始まっている。
 世界規模でせめぎ合いが起きていて、政府の姿勢が弱い日本は狙われている。

 (12)日本は世界第二の消費国なのだ。
 消費者は、意識しないままGM作物の小麦・大豆・ナタネなどを食べている。これらを加工した異性化糖や食用油・醤油など多くの食品に表示がない。
 EUでは、原料に使われるGM食品は、すべて表示義務がある。日本は検出できる製品に限り、表示が認められている。豆腐に表示されても、醤油やサラダ油は表示できない。製品から検出できないからだ。
 EUのような強い姿勢を示せないのは、米国に屈しているからだ。

 (13)安全性はどうか。
 種子会社は「危険性はない」と主張するが、カーン大学(フランス)が行った実験は衝撃を与えた。
 従来は、3ヵ月までラットの変化を見るものだったが、同大学は長期にわたる実験を行った。4ヵ月を過ぎたラットに腫瘍ができることを確認した。GMの餌を摂るラットは、オスもメスも短命という結果も出ている。
 カナダの調査では、妊婦の90%以上の血液に殺虫性タンパクが検出された。

 (14)消費者にとってGM食品を「使っていません」という表示は大事な情報だ。
 しかし、米国では「GM食品が悪いとの印象を消費者に与える」として、表示を非関税障壁と主張してきた。
 TPPでは、現行制度を変えるとは書かれていない、と政府は言っている。
 しかし、問題は日米二国間協議という抜け道だ。円滑な貿易を妨げる要因をなくしていくことが日米で合意され、「成果ある結論を出す」と約束した。貿易の技術的障害とか衛生植物検疫ルールとか、一般にはわかりにくい言葉が協定書に並んでいる。難解な言葉の裏に多国籍企業の意図が隠れている。
 典型は、企業が政府を訴えることができるISDS条項だ。訴訟に持ち込むことだってできる。圧力をかけらえれると、自発的に米国の要求をのむ、というのがこれまでの日本の対応だった。
 TPPで農産物が安くなる、とも言われているが、関税が少し下がっても末端価格はそれほど安くなるまい。
 TPPで安くなるのは、私たちの命だ。

□安田節子(食政策センター・ビジョン21代表)/構成:山田厚史(ジャーナリスト、デモクラTV代表)「“食の安全”は不安だらけ! ~デモクラTV共同企画 TPPの闇を斬る 第5回~」(「週刊金曜日」2016年6月3日号)
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 【参考】
【TPP】の闇:食品添加物 ~不安だらけな“食の安全”~
【TPP】の闇 ~格差を拡大した米韓FTA~
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