(1)今年1月から、今村岳司・西宮市長が報道に異常な攻撃を加えている。
言論とメディアへの統制と支配を加速する安倍政権の雰囲気と風潮と重なり合って、一地方の問題だと見過ごせない。
(2)事の発端は、1月15日、テレビ大阪が放送した番組(制作:テレビ東京)だった。
同番組は、阪神・淡路大震災被災者のために兵庫県西宮市が借り上げている復興住宅に関して、返還期限が迫っていることを取り上げた。
これを今村岳司・西宮市長は、入居者を一方的に追い出しているかのような放送で、取材しているのに市が行っている支援策にも触れなかった、などと考えてテレビ東京に抗議。
同局も、誤解が生じる可能性があった、などとして謝罪した(1月23日)。
(3)今村市長は、(2)を踏まえて一連のメディア対策を矢継ぎ早に打ち出した。
(a)1月23日の記者会見では、以下の方針を明らかにした。
①重要政策の報道に関し、市が「偏向報道」と判断した場合、メディア名と抗議文を広報誌とホームページに掲載する。
②改善されない場合、今後その報道機関の取材には応じない。
③重要施策でテレビ局の取材を受ける際、広報課の職員が立ち会い、取材状況をビデオ撮影、録画する。
(b)1月26日、(a)に係る次の変更措置を表明した。
①(a)-①での「偏向報道」の文言は撤回する。
②(a)-②での「改善」されない場合の取材拒否措置も取り消す。
③①および②以外の措置については、(a)-③も含めて変更は加えていない。
(c)9月25日、今村市長は、間もなく返還期限を迎える復興住宅の問題について、11社が加盟する市政記者クラブが二度にわたって要望しているにもかかわらず、これまで市議会やホームページで説明しているから、などとして記者会見を拒否した。
(d)10月15日、今村市長は、市の重要施策を公表する方法として記者会見よりホームページに文書をあげるという方針を示した。同市長によれば、記者会見をしても市の見解をそのまま報道してもらえるとは考えていないので、誤解を招き、議論を呼ぶ等の内容については、会見ではなくホームページに文書で市の見解を発表していく、という。
(4)一連の諸措置は、報道機関へのきわめてあからさまな攻撃だ。取材、報道の自由への深刻な侵害だ。
(a)「偏向報道」の文言や取材拒否措置は取り消されたものの、当局に批判的な報道についてメディア名や抗議文を公表するのは制裁的な意味を持つ過剰な規制であって、報道の自由を脅かす危険性がある。
(b)テレビ局取材へのビデオ撮影についても、取材源の秘匿も含む取材の自由そのものに公権力が介入し、メディアを監視することにほかならず、違憲の措置と呼ばざるを得ない。
(c)ホームページでの対応方針は、記者会見そのものの拒否宣言であり、取材・報道の自由を狭め、市民の知る権利を奪うことを意味する。自由なメディアと民主主義社会にあってはならない挑戦だ。
□田島泰彦(上智大学教授)「取材監視、会見拒否!今村岳司西宮市長が報道に異常な攻撃」(「週刊金曜日」2015年11月6日号)
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言論とメディアへの統制と支配を加速する安倍政権の雰囲気と風潮と重なり合って、一地方の問題だと見過ごせない。
(2)事の発端は、1月15日、テレビ大阪が放送した番組(制作:テレビ東京)だった。
同番組は、阪神・淡路大震災被災者のために兵庫県西宮市が借り上げている復興住宅に関して、返還期限が迫っていることを取り上げた。
これを今村岳司・西宮市長は、入居者を一方的に追い出しているかのような放送で、取材しているのに市が行っている支援策にも触れなかった、などと考えてテレビ東京に抗議。
同局も、誤解が生じる可能性があった、などとして謝罪した(1月23日)。
(3)今村市長は、(2)を踏まえて一連のメディア対策を矢継ぎ早に打ち出した。
(a)1月23日の記者会見では、以下の方針を明らかにした。
①重要政策の報道に関し、市が「偏向報道」と判断した場合、メディア名と抗議文を広報誌とホームページに掲載する。
②改善されない場合、今後その報道機関の取材には応じない。
③重要施策でテレビ局の取材を受ける際、広報課の職員が立ち会い、取材状況をビデオ撮影、録画する。
(b)1月26日、(a)に係る次の変更措置を表明した。
①(a)-①での「偏向報道」の文言は撤回する。
②(a)-②での「改善」されない場合の取材拒否措置も取り消す。
③①および②以外の措置については、(a)-③も含めて変更は加えていない。
(c)9月25日、今村市長は、間もなく返還期限を迎える復興住宅の問題について、11社が加盟する市政記者クラブが二度にわたって要望しているにもかかわらず、これまで市議会やホームページで説明しているから、などとして記者会見を拒否した。
(d)10月15日、今村市長は、市の重要施策を公表する方法として記者会見よりホームページに文書をあげるという方針を示した。同市長によれば、記者会見をしても市の見解をそのまま報道してもらえるとは考えていないので、誤解を招き、議論を呼ぶ等の内容については、会見ではなくホームページに文書で市の見解を発表していく、という。
(4)一連の諸措置は、報道機関へのきわめてあからさまな攻撃だ。取材、報道の自由への深刻な侵害だ。
(a)「偏向報道」の文言や取材拒否措置は取り消されたものの、当局に批判的な報道についてメディア名や抗議文を公表するのは制裁的な意味を持つ過剰な規制であって、報道の自由を脅かす危険性がある。
(b)テレビ局取材へのビデオ撮影についても、取材源の秘匿も含む取材の自由そのものに公権力が介入し、メディアを監視することにほかならず、違憲の措置と呼ばざるを得ない。
(c)ホームページでの対応方針は、記者会見そのものの拒否宣言であり、取材・報道の自由を狭め、市民の知る権利を奪うことを意味する。自由なメディアと民主主義社会にあってはならない挑戦だ。
□田島泰彦(上智大学教授)「取材監視、会見拒否!今村岳司西宮市長が報道に異常な攻撃」(「週刊金曜日」2015年11月6日号)
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