語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【食】激安居酒屋・弁当のカラクリ ~添加物・偽装・紛れ込む中国産~

2013年08月01日 | 社会
 (1)この数年、全品200円台や300円台をうたう居酒屋、200円台から弁当を売る弁当屋など、激安メニューを売りにするチェーンが激増している。
 激化する価格競争の裏では、さまざまなコスト削減が行われている。その結果、食品の安全が後回しにされているケースもある。「安かろう、悪かろう」
 外食産業には原材料の原産地や使用食品添加物の表示義務がない。ために、どのような食材が使用され、どこでどんな加工が行われているか、客にはわからない。
 <例>ある大手居酒屋チェーン、売りは「炭焼き」・・・・刺身やサラダ以外は、ほとんど外部の加工工場で作られた真空パックのチルド食品や冷凍食品。焼き鳥は外国産の冷凍食品。すでに串に刺している状態になっていて、味や焦げ目が最初からついているものを、炭火で軽くあぶって客に出す。

 (2)実は、居酒屋メニューで添加物が多く使われているのは和食。特にお通しで出てくるような総菜類には多い。1品に20~30種類も使われていることがある。
 弁当屋の場合も、メインのおかずよりも、添え物のポテトサラダ、漬物、ひじきの煮物、キンピラゴボウなどによく使われている。二束三文の食材でも、さまざまな添加物を加えればおいしく感じさせることは簡単だ。
 <例>唐揚げ、トンカツ・・・・中国などの加工地である程度調理されてから冷凍で日本へ運ばれてくる。揚げ物などは凍結前に一度軽く揚げる技術(「白挙げ」)が用いられ、店で再びサッと揚げると、余分な油が残らず、作りたての感じが出る。
 かかる食品加工の段階でさまざまな添加物が使用されるが、店では加熱して盛り付けるだけ。だから、店側は店内の調理過程では添加物を使っていない、と言う。

 (3)外食産業では、添加物を使った味の「偽装」が横行している。提供している料理のほとんどにグルタミン酸ナトリウムなどの化学調味料(アミノ酸などの旨み調味料)が使用されている。
 <例>弁当屋で販売している総菜パックの表示には「調味料(アミノ酸)」と書かれている。化学調味料を使って不自然に味つけしていれば、味を偽装していることになる。

 (4)居酒屋で食事すると異常に喉が渇くのは、料理に使われている塩のせいだけでなく、グルタミン酸ナトリウムの影響もある。だしの素、塩、醤油、味醂、酢と調味料の多くにもグルタミン酸ナトリウムが入ったものを使っていて、多くのナトリウムを摂取してしまうのだ。
 居酒屋としては、アルコール類の売れ行きを伸ばすために必要不可欠な「装置」だ。
 <例>2%の塩水は辛くて飲めないが、化学調味料と蛋白加水分解物を加えると劇的に美味しくなる。これに塩を加えた3つが加工食品の黄金トリオ。あとは風味付けのエキスや香料を加えるだけで、どんな味にも演出できる。
 蛋白加水分解物は、蛋白質を塩酸で分解し、旨みとなるアミノ酸を作り出し、粉末化したもの。問題なのは、塩酸という劇薬で強引に分解する過程で、発癌性物質(DCPやMCPD(クロロプノパノール類))を含む塩素化合物ができてしまうことだ。欧州では規制対象だが、日本では規制基準すらない。それらが塩味のついているメニューのほとんどに使用されている。次の冷凍食品に使用されている。すなわち、枝豆、イカゲソ、たこわさび、ステーキ類、子持ちししゃも、たこ焼き、ポテトフライ、薩摩揚げ、ほっけの開き、餃子、ホタルイカの沖漬、ピザ、チヂミ、もつの煮込み、エビの唐揚げ、イカの一夜干し、ソーセージ・・・・人気商品ばかりだ。

 (5)居酒屋で鶏肉料理が多いのは、儲けが大きいから。かつては卵を産まなくなった廃鶏が好んで使われていたが、現在は南米産の格安ブロイラーを使っている業者が多い。肉の味を良くしたり柔らかくしたりするには添加物を使えばいい。
 あと利益率が高いのはレバーを始めとする内臓類。外国産は輸入できないことが多いが、中には密輸に近い形で仕入れる業者も。コンテナ一つでも国内に入れてしまうと莫大な利益が出る。
 それでも、ブラジル産の肉を日本で串さし加工しているならまだしも、ブラジルから輸入した鶏肉をいったん中国に入れ、加工する業者もいる。中国では串さしの工賃が日本の8分の1で済むからだ。
 鶏肉はEU諸国に輸出している国のものが安心だ。EUはホルモン剤の規制が厳しいから、輸出国はその基準に合わせて養鶏するからだ。タイ、ブラジルはEU諸国に輸出しているから比較的安心だ。しかし、ホルモン剤や抗菌剤の使用が多い中国はそうではない【注】。
 中国では「速成鶏」の存在が社会問題になっている。わずか40~45日間で3.5kgまで太らせて出荷する。過剰にホルモン剤を投与し、丸々と太らせるのだ。ちなみに、日本やブラジルでは51~55日程度で2.5kgになったら出荷するのが通常だ。
 さらに、中国では身動きできないほど狭い不衛生なスペースで飼育されるため、鶏はすぐ病気になる。ために、中国の養鶏家は平均して18種類もの抗生物質を投与している。
 そんな中国から、加熱処理された鶏肉が、日本へ215,000トン(2012年)も輸出されているのだ。

 (6)たこ焼きやピザも中国産の冷凍食品が多い。5年前、日本に流通した商品から有毒物質のメラミンが検出されたことがある。
 それだけではない。中国では小麦粉の製造過程で漂泊が行われていて、過酸化ベンゾイルなどの劇薬が使われていることもある。2年前に中国政府が使用禁止を打ち出したが、まだ収まっていない。中国産小麦を使う食品には注意を要する。

 (7)薩摩揚げは、スケソウダラなどの身をペースト状にして、小麦グルテンで弾力を増したり植物油を混ぜ合わせて作り込むが、身を結着させるための添加物の量も多くなる。

 (8)焼き魚でも、ホッケなどの干物類に混合油(動物性油脂や植物性油脂を乳化配合したもの)を注入し、熱風乾燥機に入れて乾かし、それを焼いて出す店もある。注入しているので、焼いたとき異常に脂がのって美味しそうに見えるのだ。

 (9)子持ちししゃもは、本物は年間千トンしか獲れず、激安居酒屋に出回ることはない。ニセモノの正体は、カペリン(カラフトししゃも)だ。雄に明太子を注入した明太ししゃもも流通している。雄の腹に魚体が傷ついて売り物にならない雌の卵を注入した「偽造子持ちししゃも」が作られていたこともあった。

 (10)サラダ類も安心できない。鮮度保持のため、亜硝酸塩やポリリン酸塩などを溶かした専用の液に15分間浸けると、野菜は長時間みずみずしいまま萎れない。こうした処理を行った野菜を居酒屋で使っているケースは多い。

 (11)米にも添加物がある。味が落ちる古米に「精米改良剤」をスプレーすれば、光沢や白度が増して古米独特の匂いが消える。
 精米改良剤には、甘みをつけてご飯の保湿力効果を高める合成甘味料「D-ソルビット」、光沢を与えるプロピレングリコール、米を割れにくくするリン酸塩などの添加物が含まれている。D-ソルビットはリン酸塩と一緒に添加されることが多いが、この場合、リン酸塩はミネラルの吸収を悪くし、骨を弱くしたり味覚障害を引き起こす可能性がある。
 プロピレングリコールは、石油から作られるプロピレンを液体プラスチック状にしたものだが、溶血作用があるため、本来は食品への使用は制限されている。だが、スプレーなどで散布する場合はキャリーオーバー扱いとなり、表示義務がなくなる。要するに、外食産業では野放しなのだ。激安弁当には、こうした古米を使ってコストダウンを図っているケースもある。

 【注】
【食】中国産鶏肉の危険(2) ~有機塩素・残留ホルモン~
【食】日本マクドナルドが輸入する中国産鶏肉の危険 ~抗生物質~
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【食】中国食品の有害物質混入、表示偽装 ~黒心食品~
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【食】中国産薬漬け・病気鶏肉を輸入する日本マクドナルド

□椎名玲(ジャーナリスト)+本誌取材班「「激安ニセモノ食品」が危ない ③居酒屋・弁当チェーン編」(「週刊文春」2013年8月1日葉月特大号)
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 【参考】
【食】成型肉の発癌リスク ~原発事故被曝牛も激安焼肉店に~
【食】安い牛肉の食中毒リスク ~成型肉~
【食】安い回転寿司の吐き気がする事実 ~代用魚・添加物・薬剤~
【食】【TPP】多くの食品衛生法違反 ~交渉参加国からの輸入品~
【食】モンサントの不自然な食べもの
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【食】「多古町旬の味産直センター」の試み ~農業経営の安定化~
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