語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【食】成型肉の発癌リスク ~原発事故被曝牛も激安焼肉店に~

2013年07月27日 | 社会
 (1)焼肉店で成型肉が多いベスト・スリーは、カルビ、ハラミ、タンだ。
 タンの成型肉は、肉をふつうにカットすると形にバラつきが出るので、同じ形にカットするために、折り曲げて結着しているケースが多い。牛タンの喉のあたりは筋肉だから丸くなっていない。いろんな部位を集めて丸く形を整えているのだ。
 カルビは、霜降り加工以外に、赤身と脂身を二層に結着している場合もある。

 (2)店側はよい肉を使っているかのようにアピールしたいので、成型肉を使っていることをあまり知られたくない。だから、「やわらか加工を施して食べやすくしています」などと書いて、消費者が逆に「いい肉だ」と勘違いするような表示が目につく。
 「よく焼いて食べましょう」という表示は、「自己責任で食べてください」という意味だ。

 (3)成型肉は、見た目だけでは天然の肉と区別できない。だが、七輪で焼いてみると、肉厚の成型カルピ肉などは、トングで挟むだけで結着した筋に沿って肉がバラバラに崩れたり、肉の脂に火がすぐにつき、中まで火が通っていないにも拘わらず表面がすぐ焦げてしまう。その肉をトングで押すと、中からどんどん脂が溢れてきて、残った肉は縮れた筋肉のようになる。薄い成型カルピ肉も、焼くと火が出やすく焦げやすい。焼き加減が非常に難しい。
 焦げた肉は発癌リスクがあるので、なるべく食べないほうがよい。他方、成型肉は焦げるほどしっかり焼かないと食中毒が懸念される。だから、成型肉は避けたほうが安心だ。

 (4)肉の焦げは昔から体に悪い、とされている。近年、様々な調査報告が発表されている。
  (a)高温で焦げるほどに調理された肉を食べ続けると、膵臓癌になる恐れが60%以上高くなる。【ミネソタ大学、2009年】
  (b)豚肉や牛肉の赤身肉を週に1.5回以上フライパンで焼いて食べている人は、進行性前立腺癌の危険率が30%も上昇する。直火焼きなどで高温調理した赤身肉を週に2.5回以上食べると危険率はさらに40%まで上昇する。【アミット・ジョシー博士らの研究チーム、南カルフォニア大学公衆衛生学教室】

 (5)高温調理すると、蛋白質から発生するHCAs、脂質の焦げ部分に含まれるPAHsなどが癌物質に変化するため、発癌性が上昇する可能性が高くなる。だから、焦げた人工霜降り肉なぞ、とんでもない。そもそも、脂だらけの肉は動脈硬化を引き起こす飽和脂肪酸が多分に含まれているのだから。【白澤卓二・順天堂大学大学院医学研究科教授(加齢制御医学講座)】

 (6)成型肉のほか、激安焼肉店を支えているのは、安価な外国産牛肉だ。
 今年2月、米国産牛肉の輸入月齢が30ヵ月以下まで緩和された。ために、米国産牛肉が大量に日本に入ってきている。
 米国産牛肉のなかでも9,激安焼肉店で一番重宝されるのが「タン」だ。米子気宇では牛タンを食べる食習慣がない。国産牛の3分の1ほどの価格で仕入れることができる。
 だが、米国産のタンは、BSE問題がクローズアップされた時期に、扁桃などのプリオンが溜まりやすいとされる危険部位がタンについたまま輸入されるケースが再三あった。<例>「トロタン」として出されている脂肪部分が付いたタンは、扁桃が近い下の付け根の部分だ。

 (7)激安焼肉店の中には、国産牛しか使っていないところもある。
 だが、ある焼肉店に表示してあった個体識別番号を調べてみると、「H23 11 06 去勢(雄)ホルスタイン種」とあった。この牛は、一昨年11月に福島県二本松市で出生後、1ヵ月で栃木県に売られていた。福島県の酪農関係者によれば、この年に誕生した福島県の牛は、原発事故の影響で全く売れなかった、という。
 最近では、ホルスタイン種の去勢された雄の仔牛の売値は、4~5万円。原発事故の後は、売れても仔牛で1~1.5万円くらいだった。それでも売れない牛なんてたくさんいた。この店で出している牛は、出生が2011年11月だから、種付けは震災が起きる直前の1月か2月。餌にもよるが、仔牛が胎内にいる間に母牛が被曝した可能性8もある。この年の7月に牛肉から放射性物質が検出されたが、これは飼料由来のものだった。餌が汚染されていた福島県、栃木県、宮城県、岩手県は、一時期出荷制限を行っていた。この仔牛は出荷制限解除のすぐ後に生まれたことになる。【福島県の酪農関係者】

□椎名玲(ジャーナリスト)+本誌取材班「「激安ニセモノ食品」が危ない ①焼肉チェーン店編」(「週刊文春」2013年7月18日号)

 【参考】
【食】安い牛肉の食中毒リスク ~成型肉~
【食】安い回転寿司の吐き気がする事実 ~代用魚・添加物・薬剤~
【食】【TPP】多くの食品衛生法違反 ~交渉参加国からの輸入品~
【食】モンサントの不自然な食べもの
【食】【TPP】原産地表示の抜け道 ~食のグローバル化~
【食】「多古町旬の味産直センター」の試み ~農業経営の安定化~
【TPP】「限界農業」化の危機 ~農業の持続可能性~
【TPP】持続可能な農業を ~いま必要な政策~
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【TPP】国家主権の放棄 ~国民の知らないところで~
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【TPP】医療制度崩壊を招くTPP参加
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【TPP】蚕食される医療保険制度 ~審査業務という盲点~
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【震災】復興利権を狙う米国
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