語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【読書余滴】「標準家庭」の幻想

2010年06月29日 | □スウェーデン
 子ども手当や消費税率のアップ、エコポイントや電気料金値上げなどの経済的影響の解説にあたって、しばしば「標準家庭」がマスコミに登場する。しかし、「標準家庭」という仮想家族は、幻想にすぎない。
 21世紀の日本には、「サザエさん一家」のごとき大家族は、もうほとんどないのは周知のことだが、「核家族」さえ過去のものなのだ。
 そう指摘するのは、『生殖医療と家族のかたち』。

 いわく、実態として、もはや日本における「核家族」の比率は減少の一途をたどる一方だ。現代日本のもっとも標準的な家庭は、独りで暮らす「単身家庭」である。この状況は、あまり知られていない。片親と子どもからなる「単親家庭」も増加している。
 日本では、戦前の1920年ごろからもっとも多い家族形態は「核家族」だった。
 これから家庭を持とうとし、子どもを育てようとする世代(20代後半から30代)の多くは、1970年ころから1980年代初頭に生まれた。この時代の子どもたちの目に映った家族は、父母がいて、子どものいる家族だった。
 ところが、1980年代に入ってから離婚率が上昇する。この傾向は、欧米に遅れること20年だ。また、第二次ベビーブームと呼ばれる1970年前後生まれの女性世代の未婚率は、1980年代後半から1990年代にかけて急上昇している。そして、1985年から1990年にかけて、女性の平均出産年齢も上昇した。この結果、1973年生まれの人は209万人いる一方、1985年生まれは151万人、1990年生まれは122万人しかいない。

 要するに、世代人口の減少と出生率の低下という2要因が、相乗的に最近のいちじるしい出生数の減少をもたらした。
 かくて、いまの日本では、両親と子どものいる世帯は4分の1にすぎない(老人のみ世帯の増加もこの傾向に拍車をかけている)。

【参考】石原理『生殖医療と家族のかたち -先進国スウェーデンの実践-』(平凡社新書、2010)
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