語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【スウェーデン】いじめ防止の取り組み

2013年04月18日 | □スウェーデン
   

 (1)さまざまな取り組みの一例。
  (a)各学校ごとのプロジェクト。
    ①上級生や教師が「いじめr撲滅グループ}をつくり、休み時間に学校内を巡回する。
    ②上級生が数人の下級生の「おにいさん・おねえさん」になって、自分の「弟・妹」の様子を定期的にチェックする。
    ③「ファシュタ・モデル」
  (b)学校庁による指針。
  (c)民間のいじめ防止団体。
    ・民間団体が各学校に行き、いじめに関する授業やセミナーを行う。
  (d)児童保護のための公的団体(<例>児童オンブズマン)。

 (2)(1)-(a))に属する「ファシュタ・モデル」は、最近導入された。成果をあげ、注目されている。ストックホルム南部のファシュタ地区の教師が1990年代に始めた試みを原点とする。
 次のようなプロセスで行われる。ちなみに、学校庁の調査(2010年)によれば、4~9年生の7~8%がいじめに遭っていた(1.5%は1年以上の長期的ないじめに遭っていた)。
  (a)いじめ対策グループ(教師)が、生徒Aがいじめられている、という情報を得る。グループ内で、それがいじめであるか否か、どのような対策が講じられるか、を議論する。より詳しい情報を得るために、秘かに、教師やいじめられている生徒の親とコンタクトをとる。
  (b)生徒Aと個別に話す。何か起きたか、頻度、期間、誰がいじめているか・・・・。
  (c)いじめている(疑い)生徒B(B1+B2+B3・・・・Bn)が学校にいるとき、彼らを一人ずつ呼んで対話する。対話は大人2人が行い、一人が生徒と話し、一人が記録する。呼ばれる生徒Bは、事前に知らされることはない。学校がそのいじめに注目していることも知らされない。生徒 Bには、学校がいじめについて知っていること、その状況を深刻だと考えていること、いじめは直ちにやめなければならないことが知らされる。生徒 Bは、具体的に何をしたかを話す。なぜいじめたか、いじめは道徳的に許されない、といった議論は行わない。対話の雰囲気は、罰を与える、というのでもなく、許しを与える、というのでもない。話をする大人は、実際に起こったことが確かなことについてのみ話す(不確かなところがあってはならない)。生徒 B自身が、いじめをやめるために何をするかについて話す。
  (c-2)この対話が全体で最も重要な部分だ。 生徒 Bには、近いうちにまた対話に呼ばれることを知らされる。生徒 Bは、帰宅してからいじめについて親に話さねばならないこと、親が学校にコンタクトをとらねばならないことを知らされる。フォローアップの対話に至る間、大人たちが生徒 Bがいじめをちゃんと自分で止められるかどうかを確かめる。
  (c-3)生徒Aのフォローアップは長期にわたり継続的に行われる。生徒Bと大人との対話の後、状況がどうなったかについて、確認される。生徒Aが支援を受けることが重要だ。
  (d)フォローアップの対話においては、生徒A、生徒Bが現状をどう思っているかを語る。生徒Bは問題が明るみに出て自分自身の行動を正すためにヘルプを受けられたことを感謝する。
  (d-2)いじめた理由を追及するのではなく、いじめを止めるために具体的に何をするかに注目しているのが重要なポイントだ。

 (3)スウェーデン独自のいじめ防止民間団体は5~6あり、うち歴史が長くてよく知られているのは「フレンズ」だ。1997年、サラ・ダンベル(当時20歳)によって設立された。「フレンズ」は、学校、保育所、スポーツクラブで活動し、全国数ヵ所に事務所を持ち、約40人がフルタイムで働いている。活動費は、個人や企業からの寄付、いじめ撲滅のための公的資金からの援助などで賄われる。
 「フレンズ」は、ホームページで若者に向けて「どうやったら私はいじめを阻止できるのだろう?」というテーマで、次のようなメッセージを送っている。
  (a)「気にかける」
  (b)「人間がダメなのではなく、行動が間違っているんだ、と示す」
  (c)「よい雰囲気をつくる」
  (d)「やめなよ、と言う」
 ・・・・「フレンズ」のやり方は日本でも適用できるのではないか。いじめっ子に対して「やめなよ」と言うと、こんどは自分がいじめられるのではないか、と、ちょっと怖くなってしまうかもしれない。しかし、いじめられている子と、「やめなよ」と口にできる勇気を持ったあなたと力を合わせれば、もはや一人ではない。たった一人で悩まないで済む。そこから突破口が開けるのではないか。
 (a)以下、タイトルしか惹かなかったが、それぞれ詳しく語りかけている。(d)では次のように。
 「止めなさい、と言ういろいろな方法があります。いじめている子どもたちが誰かに意地悪をしているとき、いじめている子たちと一緒にならない、ということを示すだけでも、それは友だちの良い模範になります。止めなさい、ということを示す一つの良い方法は大人に話すことです。言いつけるのではありません。だって、いじめは法律違反なのですから。そうすることで、あなたはいじめられている子、いじめている子のために役立つのです。もう一つの良い方法は、友だちに手伝ってもらうことです。一緒になれば、あなたたちはより強くなれます。あななたちは、いじめに参加しない、ということで、他の子どもたちにプレッシャーをかけ、だんだんと仲間を増やしていけばよいのです」

□三瓶恵子『人を見捨てない国、スウェーデン』(岩波ジュニア新書、2013.2)
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