(1)メディアの政権批判に対する安倍政権の不寛容は、ここ数年顕著になっている。毎月のように閣僚や与党議員から問題発言が飛び出している。
海外メディアの論調が変わりつつある。大手海外メディアでさえも、このような憂慮すべき傾向を認識するようになっている。
安倍政権のニュースメディアに対する威嚇に対し、海外から批判がたかまっており、その言葉づかいも激しさを増している。これはかなり異例のことだ。
(2)米国の主要紙の紙面は、全世界の出来事に焦点を当てている。最近では、シリアなどの国での悲惨な暴力、欧州の難民危機、世界経済の低迷、ドナルド・トランプ氏の大統領選挙運動における「米国型ファシズム」の台頭などが見出しを飾っている。
それに比べて、比較的平和で豊かな日本のニュースが注目を集めるのは難しい。
だが、実際、米国や英国の主要紙のほとんどが、安倍晋三・首相のメディア対策にスペースを割いているのだ。
<例1>2016年3月5日付け「ワシントン・ポスト」電子版。
同紙は、「ニューヨーク・タイムズ」と並んで米国の二大高級紙の一つとみなされている。
「抑圧される日本の政権批判報道」と題した同紙の社説は、安倍首相のメディア対策に対し、明らかに反対の立場を示している。ただし、若干手加減して痛烈な非難は控えている。
同紙は、安倍政権の戦争法と日本の再軍備化の方向に賛同したことから政権寄りと目されたが、それでも以下のように断言している。
<それにもかかわらず、日本が第二次世界大戦後、最も誇るべきなのは経済の「奇跡」ではなく、メディアの独立性を含む自由主義制度の確立であった。安倍氏の掲げる目標がたとえ立派なものであっても、そのような自由を犠牲にして追求すべきではない>
(3)<例2>2016年2月17日付け「ガーディアン」電子版。
同紙は、英国の主要紙。ジャスティン・マッカリー氏による記事は、安倍政権のメディア対策をもっと徹底して批判している。
記事は、安倍首相とその同僚の問題発言と行動の数々を紹介しているが、その主眼は古館伊一郎氏、国谷裕子氏、岸井成格氏の3人のニュースキャスターの降板にある。
<3氏が夜の報道番組を間もなく降板することは、ジャーナリストという職業にとって損失であるだけではない。3氏は、メディアに苛立ちを強める安倍晋三・首相とその支持者によるメディア弾圧によって降板させられたとの批判がある>
安倍政権が3氏を狙い撃ちにしたのは、
<3人とも皆、権力の濫用から公益を守るというジャーナリズムの使命を信じていた>
からだ、と同記事は示唆している。
(4)未来に目を向けると、二つのシナリオが考えられるだろう。
(a)国際的批判の高まりを受けて、日本のメディアが盛り返し、民主主義における自らの役割をよりよく果たせるようになる。
(b)右翼主義者が勢いづき、現在のソフトな脅しからあからさまな抑圧へとシフトする。
(b)の、暗い未来の格好の例が、エルドアン・トルコ大統領の卑劣な政権批判抑圧だ。
□マイケル・ペン「安倍首相のメディア対策に高まる国際的批判 ~マイケル・ペンのペンと剣~」(「週刊金曜日」2016年4月1日号)
↓クリック、プリーズ。↓
【参考】
「【メディア】自民党のテレ朝への圧力が契機に ~停波問題~」
「【メディア】安倍政権による行政指導の誤り ~放送電波停止発言~」
「【メディア】高市総務相は「脅し」の政治家、報道は「健忘症」」
「【メディア】総務大臣には、停波命じる資格はない ~放送電波停止発言~ 」
「【メディア】や高市発言にみる安倍政権の「表現の自由」軽視」
「【古賀茂明】一線を越えた高市早苗総務相の発言」
「【メディア】政治的公平とは何か ~「NEWS23」への的外れな攻撃~」
「【NHK】をまたもや呼びつけた自民党 ~メディア規制~」
「【テレビ】に対する政権の圧力(2) ~テレ朝問題(9)~」
「【テレビ】に対する政権の圧力(1) ~テレ朝問題(8)~」
海外メディアの論調が変わりつつある。大手海外メディアでさえも、このような憂慮すべき傾向を認識するようになっている。
安倍政権のニュースメディアに対する威嚇に対し、海外から批判がたかまっており、その言葉づかいも激しさを増している。これはかなり異例のことだ。
(2)米国の主要紙の紙面は、全世界の出来事に焦点を当てている。最近では、シリアなどの国での悲惨な暴力、欧州の難民危機、世界経済の低迷、ドナルド・トランプ氏の大統領選挙運動における「米国型ファシズム」の台頭などが見出しを飾っている。
それに比べて、比較的平和で豊かな日本のニュースが注目を集めるのは難しい。
だが、実際、米国や英国の主要紙のほとんどが、安倍晋三・首相のメディア対策にスペースを割いているのだ。
<例1>2016年3月5日付け「ワシントン・ポスト」電子版。
同紙は、「ニューヨーク・タイムズ」と並んで米国の二大高級紙の一つとみなされている。
「抑圧される日本の政権批判報道」と題した同紙の社説は、安倍首相のメディア対策に対し、明らかに反対の立場を示している。ただし、若干手加減して痛烈な非難は控えている。
同紙は、安倍政権の戦争法と日本の再軍備化の方向に賛同したことから政権寄りと目されたが、それでも以下のように断言している。
<それにもかかわらず、日本が第二次世界大戦後、最も誇るべきなのは経済の「奇跡」ではなく、メディアの独立性を含む自由主義制度の確立であった。安倍氏の掲げる目標がたとえ立派なものであっても、そのような自由を犠牲にして追求すべきではない>
(3)<例2>2016年2月17日付け「ガーディアン」電子版。
同紙は、英国の主要紙。ジャスティン・マッカリー氏による記事は、安倍政権のメディア対策をもっと徹底して批判している。
記事は、安倍首相とその同僚の問題発言と行動の数々を紹介しているが、その主眼は古館伊一郎氏、国谷裕子氏、岸井成格氏の3人のニュースキャスターの降板にある。
<3氏が夜の報道番組を間もなく降板することは、ジャーナリストという職業にとって損失であるだけではない。3氏は、メディアに苛立ちを強める安倍晋三・首相とその支持者によるメディア弾圧によって降板させられたとの批判がある>
安倍政権が3氏を狙い撃ちにしたのは、
<3人とも皆、権力の濫用から公益を守るというジャーナリズムの使命を信じていた>
からだ、と同記事は示唆している。
(4)未来に目を向けると、二つのシナリオが考えられるだろう。
(a)国際的批判の高まりを受けて、日本のメディアが盛り返し、民主主義における自らの役割をよりよく果たせるようになる。
(b)右翼主義者が勢いづき、現在のソフトな脅しからあからさまな抑圧へとシフトする。
(b)の、暗い未来の格好の例が、エルドアン・トルコ大統領の卑劣な政権批判抑圧だ。
□マイケル・ペン「安倍首相のメディア対策に高まる国際的批判 ~マイケル・ペンのペンと剣~」(「週刊金曜日」2016年4月1日号)
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【参考】
「【メディア】自民党のテレ朝への圧力が契機に ~停波問題~」
「【メディア】安倍政権による行政指導の誤り ~放送電波停止発言~」
「【メディア】高市総務相は「脅し」の政治家、報道は「健忘症」」
「【メディア】総務大臣には、停波命じる資格はない ~放送電波停止発言~ 」
「【メディア】や高市発言にみる安倍政権の「表現の自由」軽視」
「【古賀茂明】一線を越えた高市早苗総務相の発言」
「【メディア】政治的公平とは何か ~「NEWS23」への的外れな攻撃~」
「【NHK】をまたもや呼びつけた自民党 ~メディア規制~」
「【テレビ】に対する政権の圧力(2) ~テレ朝問題(9)~」
「【テレビ】に対する政権の圧力(1) ~テレ朝問題(8)~」