事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「下山事件」Shimoyama Case 森達也著 新潮文庫

2008-02-11 | 本と雑誌

Shimoyamacase01 三鷹事件松川事件と並んで終戦直後の謎の大事件に挙げられる下山事件。1949年7月、常磐線の線路で轢(れき)死体で発見された下山定則・初代国鉄総裁の死をめぐっては、「謀略説」「自殺説」があり、真相は今なお闇の中である。複雑怪奇なこの事件は取材する者を引き込み、「下山病」に感染させるとまでいわれる。
 テレビディレクターの著者もその一人。事件から約半世紀たった94年、「身内が下山事件に関ったという人物」を知り、事件にのめりこむ。本書は、取材の過程をつぶさに書くという手法で、事件の通説を洗いなおし、真相に迫ろうとしたノンフィクション。

 「放送禁止歌」「A」に続いて、またしても森達也。別に荷担しているつもりはないのだけれど、彼の仕事はどうしても無視できない。森が、オウムの後に戦後史におけるダークな部分を探っていることには「また金にならないことを」と呆れていたが、なんとこの本は現在ノンフィクション部門でベストセラー第1位である。人生最初の大当たりか。ちょっとホッとする。

 事件のことは名前ぐらいはきいたことがあるでしょう。現代史は学校ではなかなかふれることもなく(わたしは日本史自体を高校で履修していないし)、熱心な教師が熱弁をふるったとしても、この事件の闇の深さは高校生の手に負えるものではなさそうだ。驚きなのは現在もなお自殺か他殺かの結論が“本気で”出ていないということ。当時でいえば読売と朝日が他殺説をとり、毎日が自殺を主張したのだが、これが現在もまだ続いているのである。いやそれどころか、ネット上で下山事件を検索してみると、んもう気が遠くなるぐらいの件数がヒットし、しかもそれぞれがこの事件について様々な主張を行っている。森の言う“下山病”に罹った人たちであろう。

Moritatsuya01  森がこの事件を50年もたってから探ろうという話になったのは、「ちょっと面白い男を紹介したいんやけど、時間を作ってもらえないか?」と、事件に関わりのある人物の孫に紹介されたからである。紹介したのはまだ毒舌で知られる前の映画監督井筒和幸だった。

以下次号

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