事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

SEALDsがんばれ 「狗賓童子の島」 飯島和一著 小学館

2015-09-17 | 国際・政治

いま国会で行われていることへの嫌悪、そして国会の外で行われていることへの応援の意味をこめて、この書を特集します。

わたしは多少なりとも山形県の離島、飛島のことは知っている。その気候、その気質、その歴史。それでは隠岐の島のことは?あれ、鳥取県にあるんだっけか、島根県だっけ。竹島との位置関係は?人口は?歴史は?

まず、わたしは孤島として隠岐の島があるものと思っていました。ところが大小180もの島がある、要するに諸島だったのだ。そして、大きく島前(どうぜん)と島後(どうご)に分けられる。

この島の性格を決定づけたのは、罪人を島流しにする場所だったということだ。特に、後鳥羽上皇と後醍醐天皇が配流された地であることが、この小説の事件に影響する。

主人公は西田常太郎、15才。大塩平八郎の乱に連座した父の罪により、この年になるのを待って隠岐に流される。彼の予想に反して、島民は彼をあたたかく迎える。なぜなら、松江藩に虐げられ、なんの見返りもなく罪人を送られ続ける島民にとって、正論を主張し、幕府を困惑させた(体制の狼狽えぶりも延々と描かれる)大塩平八郎に連なる常太郎は、一種の宝と言えたからだ。

その常太郎の成長の物語が縦糸。自活し、医者となり、島で嫁を迎える彼のことなので、途中で農業小説になり、医療小説にもなる。インフルエンザ、天然痘、コロリなどに敢然と立ち向かう常太郎は、次第に島民の尊敬を集めるようになる。

キャッチフレーズが「全島、蜂起!」だから、彼が第二の大塩平八郎となる展開かと思ったら、違う方面にお話はスライドする。蹶起の前に、体制がどのようなものだったのかをこと細かに描くのだ。つまり幕末の政治情勢について。

チャプターごとに年号が入るので、まもなく徳川幕府が倒れることを読者は知っている。なぜ徳川幕府は倒れたのか、絶海の孤島を舞台につづられ、これがひたすら読ませるのだ。以下次号

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